2011-05-13

【韓国経済の光と闇】IMFの国家支配〜4.IMFが作り出す社会

いよいよ韓国経済シリーズも第4回目になりました。

第1回目では、韓国の好景気、そしてそれが生み出す影の部分といった韓国の実態。
第2回目では、アジアの通貨危機と、それを仕組んだ金貸し達の存在。
第3回目では、韓国がアジア通貨危機、そしてIMFの介入によって受けた影響。
を明らかにしてきました。

第4回目では、IMFの介入がどのように影響して韓国社会が変貌していったかを明らかにしたいと思います。

改めて、IMFの処方箋によって韓国経済はその後復活発展しましたが、一方で失業率や自殺率が高い状況となっています。
なぜこうなってしまったのでしょうか?IMFの介入からその原因を探ってみましょう。

IMFの融資条件は、大きく以下の3つです。

①高金利政策 ②リストラ ③市場開放

手始めに、なぜこの方策が有効なのか、を検証してみましょう。

これまで一般に国家が赤字を出して借金まみれになるということは、過剰消費が主原因となっています。
つまり収入(=生産)以上に出費(=消費)が多いということです。(国家レベルで考えると、輸出よりも輸入の多い状態)
IMF230507.jpg
したがって高金利にすると、お金持ちは銀行に預けておくとかなりの金利収入が見込めるので、消費を抑え貯金に回します。お金を持っていない人は、借金すると返せなくなるので、これもできるだけ消費を抑えます。そうして消費は抑制され、次第に収入に応じた消費を行うようになり、健全な経済状態に戻っていくのです。

企業でいえば支出の多くを占める人件費削減(=リストラ)があります。生産効率の悪い水ぶくれした組織体制をスリム化することで成果をUPさせていくのです。

そして市場開放によって市場の競争に勝ち残ることを目指し、市場競争圧力に晒され続けることで、効率的な経営を持続させていくことを意図しています。

では、この方策がアジア通貨危機に対して本当に有効だったのでしょうか?

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アジア経済危機は、そもそも過剰消費が原因ではありません。

原因は、言わば投資家の為替の大幅下落操作によってもたらされた、輸出額の大幅減と輸入額の大幅増による貿易赤字と、為替の下落を食い止めようとして政府が外貨を使い果たしたことによるものです。アジア諸国は生産基盤をしっかりと持っていました。

したがってそのしっかりした生産力を持っていたアジアの国々に、IMFの方策を行うとどうなったのか?

金利高とリストラにより内需(=消費)は落ち込み、内需の落ち込みとリストラによって生産力そのものも落ち込み、国内経済全体が一気に冷え込んでしまったのです。

さらにIMFの方策は2つの格差を生み出しました。
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1つは、金利高によってお金を持つものと持たざるものの差。お金を持っていれば高金利によって高い利息を得る事が出来ます。逆にお金がなく借金をしてしまうと、返済に窮することになります。(一方で高金利政策は、当時の韓国のお金を持っている統合階級がIMFの条件を受け入れやすくすることの狙いもあったでしょう。)
1998年に「利息制限法(金利の上限を定める法律)」が廃止され、年利200%もの高金利で貸し出しする金融業者が大量に出現しました。突然の失業で収入を絶たれた家族は、生活費や住宅ローン返済のために仕方なく借金を重ね、多重債務からサラ金地獄に陥って夜逃げし、家族ともどもホームレスになる人も増えたようです。

もう1つが、人員削減による正規雇用労働者と非正規雇用労働者の差です。

この2つの格差によって、お金持ちと正規雇用労働者がいわゆる「勝ち組」に、そうでない人たちが「負け組」という新しい社会階層が誕生し、儒教を屋台骨として形成されていた韓国社会が一気に塗り替えられたのです。

このことを経済の観点で、もう少し詳しく見てみましょう。

非正規雇用労働者とは、いわゆる契約社員や派遣労働者、パートタイム労働者のことで、前回記事にもありましたが労働市場を柔軟にするための「整理解雇制」によって、韓国労働者のうちの多くの比率を占めるようになりました。(給与も低く、雇用形態も不安定な派遣労働者については、日本でも派遣切り問題が取り上げられました。その日本における非正規雇用労働者比率は最高で33%でしたが、韓国では半数以上の55%にも及びます。)
正規雇用労働者に比べて給料は、格段に安く月収88万ウォン(約7万円)世代と呼ばれる大卒でも非正規雇用労働者の若者が大量に存在しているです。韓国の平均月収が約230万ウォン(約18万)なので、平均の40%程度ですが、非正規雇用労働者のためこれ以上の昇給が望めないのです。

このような人件費削減は、実は市場開放によるグローバル化が起因しています。

韓国は日本とは異なり、GDPの輸出依存度が非常に高く2009年値で43.64%もあります。輸出産業によって韓国の国力が成り立っているのです。
その輸出企業はグローバル化により、中国やインドなどの極端に人件費の安い国の企業とも競争しなければならない。そこを勝ち抜くには必然的に人件費を抑える必要があるのです。
そのため新しい市場開拓のアイデアを出すような優秀な社員にはきちんとした給与を、比較的単純業務を担う人たちは、企業経営の論理からの低い給与を、という待遇の差を出しているのです。

実際、韓国では実質GDPが
2007年前年比△5.1%→2008年△2.3%→2009年△0.2% という伸びを見せていますが、実質給与は
2007年前年比▼1.8%→2008年▼1.5%→2009年▼3.3% と落ち込んでいるのです。

ちなみに日本は実質GDPが
2007年前年比△2.4%→2008年▼1.2%→2009年▼6.3% に対して、実質給与は
2007年前年比▼0.1%→2008年▼1.9%→2009年▼1.9% となっています。

日本の輸出依存度は意外に10.71%と低く、内需によって経済が回転しているので、内需を支える給与を下げにくい構造にあるからです。長期デフレに苦しんでいる日本よりも経済が活性化している韓国の方が厳しい数値になっています。

しかし給与が下がっているからといって物価が安いわけではありません。これは企業の寡占化が影響しています。
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IMFの介入により市場開放と人員削減の目的で、次々と財閥を解体していきました。それぞれの財閥が様々な方向に多角経営を図っていったために、価格や品質よりもグループ内取引を優先する閉鎖性と、採算の悪い事業を保持し続ける非効率性を併せ持っていたのです。

しかしただバラバラにしたのではありません。国際競争力を付けるために、ビッグディール(大規模事業交換)が断行されたのです。

具体的には、半導体、鉄道車両、精油、発電設備、船舶用エンジン、航空機、石油化学、自動車、電子部門の9業種での事業集約が行われ、半導体では、現代電子とサムスン電子の2社体制に、自動車部門では起亜自動車を吸収した現代自動車が国内シェア80.5%(2009年)を誇るガリバー企業に成長したのです。

寡占化が進めば値段は企業の思いのまま。
実際現代自動車は国内市場においては利幅の大きい中大型車に集中して販売を展開し、さらに「新車を売り出すたびに、価格を吊り上げている。」という実情もあります。
これはアメリカにおけるGMの状況と同じで、韓国はまさにアメリカ産業構造に近づいているのです。

こうなると経済における対外交渉は、その産業の益≒特定企業の利益と直結し、国策≒企業戦略となるので、国家ぐるみ(=税金の活用も含む)で企業を支えていることになります。これは「トリクルダウン理論」に基づく政策と考えられます。
(「トリクルダウン理論」とは、本当は「富める者が富めば、貧しい者にも自然に冨が浸透する」という考え方なのですが・・・・)

では企業の業績好調によって一体誰が豊かになったのでしょうか?

それは株式会社の構造を考えれば分かります。
企業収益UP→株主への配当UPとなるため、株主が儲かっているのです。しかもサムスン電子では約49%、韓国最大の製鉄会社であるポスコは約50%、現代自動車は約40%が海外保有の株式となっており、言い換えれば外国株主を儲けさせていることになります。

企業収益が好調になっても、国内では給与ダウンに加えて、高金利や人員削減によって内需が大きく落ち込んだために、国内投資は増えません。例えば売上好調の現代自動車においても、新たな工場投資先はチェコなど海外中心になっています。これにより海外の雇用は増加しますが、国内の雇用状況は一向に改善しないのです。

つまり韓国のGDPの伸びは韓国社会にほとんど潤いをもたらしていないのです。現在の韓国では、「富めるものは富み、貧しいものはいつまでも貧しい」となっているようなのです。

そして前回の記事でも取り上げられましたが、IMFの方策は、韓国の社会構造を崩壊させました。

新しい社会階層である「勝ち組」「負け組」は、韓国には元々あった儒教からなる社会構造を崩壊させてしまったのです。
しかもその「勝ち組」「負け組」という階層は集団や社会を統合するためのものではなく、単なる個人間競争を助長させているだけなのです。

企業からすると、大幅な人件費削減のおかげで商品価格は安くできるため、海外市場においても勝ち抜くことができ、経営成績がUPします。それにより国のGDPも飛躍的に増加しました。
しかし企業や社会に充足を感じない、可能性を感じない韓国の若者が将来を悲観してしまうことで、自殺率の高さに繋がっているのだと考えられます。

IMFが作り出す社会とは経済指標に現れない大きな負を抱える社会だと言えます。

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List    投稿者 goqu | 2011-05-13 | Posted in 08.金融資本家の戦略5 Comments » 

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コメント5件

 non | 2012.07.20 2:58

なぜ日本は米国債を買い続けたまま持ち続けるのか
借金を増やし続けるのか
株価は日本だけ上がらないのか
国債についてはやはり売れない何かしらの理由があるのでしょう
スイスで逮捕された邦人2人が日銀元総裁の身内だという記事を見たときに気味の悪い感じがしました
借金は処理するつもりがない
出来るとこまでやって国民が苦しむ結果を
想像する他・・・何があるのか
株価を上げないのは日本の政策であり
株価なんか上がった日には国債さばけないじゃない
っていう事
円高なんていつだって止められるのに放置
小国スイスにしたも自国の利益を守りましたが
大国日本はそれをしません
これから日本はどん底に
向かっています
どうも政治家が日本を全く考えていない
日本人なのか?疑問が生じます。。

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とても安く購入できたと思います。本当はブラックが欲しかったのですが売切れで、購入したのはそれと迷ったシルバーです。

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