2013-09-01

【6】『素人にも分かる経済の真相』シリーズ〜貿易の自由化って必要?〜

参院選でも自民が圧勝し、いよいよTPP交渉が具体的になってきました。様々な問題が指摘されているにもかかわらず、安倍政権は暴走しています。
※TPPの問題点は以下の過去記事をご覧ください↓
【2】TPPって何?:基礎知識の整理
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<比較生産費説を主張したリカード:リンクより>
TPPの問題性については今までもいろいろ議論されてきましたが、なぜヤバイか?なぜ騙しなのか?の核心についてはあまり議論されていないのではないでしょうか?
政府・財界やマスコミは、自由貿易を拡大すればハッピーになれるということを大前提にしているわけですが、果たして本当なのでしょうか?今回は、自由貿易が必要だとされる理論的根拠について、素人なりに検証してみたいと思います。
過去記事は以下をご覧ください↓
【1】経済学が役に立たないのは、なんで?
【2】金貸しって、何?
【3】お金を使う意味って何?
【4】金利って何?
【5】株って必要なの?
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■自由貿易のメリットとデメリット
先ず、自由貿易のメリットとデメリットについて考えてみましょう。
●自由貿易のメリット
・日本では手に入らない(昔は高嶺の花だった)外国製品が安く輸入できるようになった。(ex.高級ウィスキー、ワイン、バナナ、ブランド品等)
・家電製品など、日本が得意としてきた製品も安くなった。(賃金の安い外国(中国やベトナム等)で製造して逆輸入)
●自由貿易のデメリット
・安い外国製品の輸入が増えると、国内の雇用が奪われる、賃下げ→デフレが進む。
・国民生活の根幹に関わる産業が自由化されると、国民の生存が外国(金貸し)企業に左右され、自分たちの生活を自分たちで守ることができなくなる。
Ex.1 国内の農業は大打撃。生き残って行けない。(自給率低下、そもそも国民の生存に関わる食料問題を市場原理で論じていいのか?)
Ex.2 食の安全基準、健康に関わる規制が、外国(金貸し)企業の圧力で捻じ曲げられていいのか?(ex.モンサント→遺伝子組み換え食物の表示禁止)
Ex.3 医療の自由化→お金持ちだけが高額医療の恩恵、貧乏人は医療サービスが切り捨てられていく。(命に関わる問題を市場原理に乗せていいのか?)
・そもそも会社は誰のもの?という観点から考えて、企業が外国に出て行くことに意味があるのか?国内の雇用を切り捨て、外国の安い賃金で働かせて企業が利益を上げたとしても、結局株主(金貸し)のためでしかない。社員や社会は全然潤わない。
勝ち組と負け組みの経済格差が開いていく→国際関係、社会秩序が不安定になる。
Ex.1 EUは勝ち組ドイツ、フランスと負け組みPIIGSとの格差拡大。
Ex.2 米国内でも1%の大金持ちと大衆との格差拡大→中間所得層の没落→99%デモ。
Ex.3 日本も自民(小泉→安倍)の新自由主義政策で格差拡大。
Ex.4 後進国でも市場拡大が進むほど、所得格差拡大。(中国、ブラジル、インド等)
消費者にとってはメリットがある反面、社会全体でみると、消費者にとっての目先のメリットを上回るようなメリットがあるのかどうか疑問ですね。むしろ、問題点の方がはるかに大きいのではないでしょうか?
※実は、「安物買いが人生を破綻させる」という点で、以下の投稿が参考になります。
生活を壊していく100円ショップ

■自由貿易の理論的な根拠?
マクロでみると自由貿易の拡大は大きな問題をはらんでいるわけですが、にも関わらす、自由貿易を拡大することはいいことだと賛美されています。
その理論的な根拠の代表的なものとして、リカードの「比較生産費説」というのがあります。その理論は本当に正しいのか?を考えてみましょう。
●比較生産費説とは?
ややこしい話ですが、簡単に言うと、「各々の国には得意な財と不得意な財があるので、他の国に比べてより生産性が優れている得意な財に特化して、不得意な財はそれを生産するのが得意な国と貿易した方が、お互いにメリットがある」という理論です。

>“より生産性が優れている財に特化して生産した方がお互いにより利益を得ることができる”
>貿易しない場合に比べて、総労働量に変化がないにもかかわらず、それぞれの財の生産量が増加する。
>このような“詐欺”的説明でリカードは、自由貿易がお互いの国民経済にとって有利なものだと主張した。
>財の特性にふれることもなく二つの財だけを比較するだけで、国民経済の利害を論じるとはなんとも雑ぱく話である。
「自由貿易主義」は、世界レベルで需要規模が大きく付加価値も大きい財の生産分野で国際競争力を誇っている国民経済の国家が主張する「保護貿易主義」なのである。
「比較優位」というリカードの“詐欺的理論”が今なお生き延びている不可思議 後編

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<英国の毛織物>                       <ポルトガルワイン>

●比較生産費説に対する疑問
上記の参考投稿では、「英国は毛織物が得意、ポルトガルはワインが得意なので、各々得意な財に特化して貿易した方が、お互いにメリットがある」というモデルが示されていますが、このモデルには重大な疑問があります。
★2国間の2つの財で単純化したモデルにすぎず、それをもって自由貿易を正当化し、TPPで言われているような「あらゆる財を例外なく自由化すべし」という論理に飛躍させるのはあまりにも無理がある。仮に、2国間の2つの財で貿易することにメリットがあったとしても、そのメリットは、モデルで仮定されているような特殊な条件下で成立する限定的なものにしかすぎない。
★仮に限定的なメリットがあったとしても、単に生産性で比較優位にあるということをもって、それに特化した方がいいという根拠にはならない。実際の経済関係はリカードのモデルよりもっと複雑で、国民生活は多様な財によって成り立っている。当然、貿易した方がメリットのある財と貿易することにメリットのない財が混在しているわけで、国全体では貿易を拡大するとメリットよりデメリットの方が大きくなるということがあり得るが、その現実を捨象している。
★「2国間の2つの財で貿易するとメリットがある」というモデルは、生産性の違い→貿易による総生産量の増加ということを根拠にしているが、現実の取引では各々の財に「価格格差」が存在するという現実を捨象している。仮に、各々の財が「等価=投入労働量に対する対価は同じ」で交換されるのであれば、総生産量が増えれば総生産高≒総所得も増えることになるが、「価格格差」が存在する場合は、貿易によって総生産量が増えると、価格の高い方が儲かり、価格の安い方は損をするということになる。
★リカードの比較生産費説は、上記のような現実を捨象した“詐欺的理論”であり、金貸し(資金力→競争力の強い方)に都合のいい屁理屈にしかすぎないと断じて間違いない。

歴史的に突っ込んで検証してみると、そもそも市場は騙しによって成立しており、等価交換などは存在しない。現実には価格格差が存在し、騙しやすい方が儲かり、騙しにくい方は儲からないという構造になっているのが市場の実態です。
※以下の投稿が投稿になります。
市場の起源:価格格差の成立と拡がり
等価交換など存在しない
農産物はなぜ安いか?

■まとめ
●自由貿易を拡大すると、経済格差が広がる構造
・そもそも市場の起源は騙し(略奪)。
・価格格差の秘密→農産物より工業製品の方が幻想価値が大きい(騙しやすい)。→工業製品の輸出国(先進国)が儲かり、農業製品の輸出国(後進国)は儲からない。
※実は、等価交換というのはどこにもない。金をたくさん持っている方が主導し、儲かるというのが市場の実態。→リカードの「比較生産費説」は金貸しに都合のいい騙し。
・賃金格差→安い労働力を使って収奪した利益は常に経営者(金貸し)の方に蓄積される。
※自由化が進めば進むほど、後進国の安い賃金と競争するように圧力が働くので、先進国の賃金は下がり(失業が増え)、庶民の貧困化が進む。

自由貿易拡大→価格格差による収奪→収奪した利益は金貸しの方に蓄積される→勝ち組と負け組み(先進国と後進国)の経済格差拡大(格差は固定される)

●どうする?
・先ずは、新自由主義の旗印のもと、自由貿易を拡大するのはいいことだと宣伝している金貸しの騙しに気付く必要があります。
・仮に、リカードの「比較生産費説」が正しいとした場合も、そのメリットは、ある仮定条件下の限定的なものです。現実には殆どあり得ない限定的なモデルを根拠に、TPPのように貿易全般に拡大し、「例外なき自由化を図る」というのは極めて危険です。
・貿易を行う場合に、お互いにメリットが出るように話し合ってその条件を決めるというのは当たり前のことです。金貸しの宣伝には反しますが、従来から行われてきた管理貿易(国内産業は保護しつつ、お互いメリットが出るように限定的に貿易を行う)の方が正しいという認識に立ち返る必要があるのではないでしょうか?
・貿易を拡大する立場に立ったとしても、TPPではなく、日本が東南アジア諸国などと推進してきた米国(金貸し)抜きのFTA(二国間協定)で十分です。米国(金貸し)の言いなりとなって法制支配まで許してしまうのは、売国政策でしかありません。
・もっと重要なのは、自由貿易を拡大することより、内需主導型の経済戦略へ転換することです。もとより、日本経済は内需主導型であり、日本は貿易立国ではありません。
・金貸し→一部の多国籍大企業だけのメリットではなく、国民みんなが活力を持って仕事をし、安心して暮らせるような経済のあり方を追求して行きましょう。

List    投稿者 yukitake | 2013-09-01 | Posted in 08.金融資本家の戦略No Comments » 

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