2013-08-29

新たなバブルが始まった?(11)〜TPPを巡る安倍政権と米戦争屋〜

前々回「核武装を前提とした原発政策」では米戦争屋と安倍首相の思惑を探り、軍拡・核武装の流れを見てきましたが、今回は米戦争屋と安倍政権、さらには金融勢力などTPPを巡るそれぞれの狙いを探ります。

カレイドスコープ
「内田報告−マレーシアTPP交渉会合の中味がよく分かる」
を中心に記事を構成しています。
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ブルネイでの閣僚会議の記念撮影

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2013年7月15日から25日まで、マレーシア東部のリゾート地、コタキナバルで開かれたTPP第18回会合に、TPP交渉参加を正式表明した日本が初めて臨みました。
しかし、彼らが参加できたのは最後の2日間と半日だけ。それも、1000ページのテキストを読んだだけで終了。

また、8月23日に終了したブルネイでは、TPP交渉の冒頭に閣僚会合が開かれました。異例の開催を求めたのは米国であり、通常、開催国が担う議長も米通商代表部(USTR)のフロマン代表が務めています。


 
◆秘密裏に進む日米協議

本質的にTPPとは多国間交渉を装った日米交渉であり、さらにはグローバル企業が国家の名を借りて自分たちに都合の良いルールを押しつけていく場です。したがって国民の反対や他国からの横やりを排除する仕組みがあちこちに仕掛けられています。
中でも「日米並行協議」をはじめとする「二国間協議」は、より秘密性の高い密室会合で何が行われているのか、まったく見えません

これだけの交渉ですから、官僚は国民に知らせる義務があるはずですが、それを一切にせずに、多国籍企業によって署名を強要された「秘密保持契約書」を絶対視しています。自民党の大半の政治家でさえ情報が遮断されています。

さらに安倍首相は官僚を縛る「秘密保全法」の10月成立に向けて動き出しています。

政府が国の機密情報を漏らした国家公務員らへの罰則強化を盛り込む「特定秘密保護法案」の概要が27日、分かった。「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の4分類に関する事項のうち「特段の秘匿の必要性」がある機密を「特定秘密」に指定する。特定秘密を漏らした国家公務員らには最高で懲役10年を科し、厳罰化を図る。(産経新聞13.8.29)

もはや政治家やマスコミにリークすることもできなくなり、官僚たちは国益ではなく、多国籍企業の利益のためだけに働く奴隷になってしまうということです。

ブルネイでは二国間協議はほとんど進展せず、日本は米、豪と協議を開催することさえできませんでした。
しかし、そのような状況下でも安倍政権は年内妥結を目指しています。このままでは短期間の協議で国内での反論も議論の余地もないままに、米国の要求を丸飲みさせられることは明らかです。


 
◆TPPの本丸 製薬と金融

では米国の狙いは何でしょう。それは医薬・金融・映画や特許などの知的財産分野です。

マレーシアのTPP会合では、知財が焦点になりましたが、これを引っ張っていったのは、製薬会社とコンテンツ産業でした。この会合でも製薬会社は、特許期間の延長によってパテント収入を得たいと主張していました。

薬害を被った人が製薬会社を訴えた場合、ISD条項を使って逆に訴えられる可能性があります。
なぜなら、TPPとは企業に道徳的、倫理的な振る舞いを求めることはなく、あくまで自由で際限のない企業活動ができるように特権を与えるものなので、薬害の被害者は製薬会社ではなく、行政を訴えることになります。

ちなみに、第一三共、エーザイは在米支社経由で米国側でTPP交渉に参加しています。

薬価が上がれば、保険財政の規模は変わらないので、使える薬の範囲が狭まる。すると保険適用外の薬を使わざるを得なくなってしまいます。
ここにアフラックのような外資の保険会社が、どうしても日本市場がほしい理由があります。

米国に恭順の意を表すかのように、日本郵政がアフラックのガン保険を全ての郵便局で販売する業務提携に合意しました。アフラックのガン保険の日本市場でのシェアはすでに8割。完全な独占状態を許しているのは、日米の政治協議によって成し遂げたられたもので、ここに多国籍企業のTPP特権の姿を見ることができる。

実は、以前から、かんぽ生命は日本生命ともガン保険の共同開発などを検討し、ガン保険を出したいという要望を出していました。しかし、麻生太郎は「TPP交渉参加に備え、かんぽ生命を巡りアメリカとの間において協議中」とした上で、事実上、日本のガン保険は認可しない、という方針を出したのです。

事実上、日本の保険会社がガン保険で新規参入することは許されず、これで国内の保険会社は完全に日本のがん保険市場から締め出されたことになります。

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◆安定雇用の崩壊と切り売りされる企業

TPPを利用して、安倍政権によって、「手切れ金解雇」、「残業代ゼロ」、「派遣労働の拡大」などを実現する規制の大幅緩和が行われる可能性が高まっています。

TPPには、労働者保護の規制を撤廃しようという動きがあります。規制緩和によって外国人が大量に流入してきた場合は、国内の労働者の賃金が下がるのは明らかです。新自由主義の下では肌の色より、費用対効果が重視されるのです。マレーシアのTPP会合にタイミングを合わせて、竹中平蔵が移民の受け入れをやるべきだと発言していました。

規制緩和を進める米国の狙いは企業買収にあります。日本企業の競争力を阻害する労働者保護を緩和し、企業価値を高めやすくするのが狙いです。不採算部門を撤退し、優良事業だけ残すリストラも実行しやすくなります。もはや金貸しにとって企業は単なる商品として切り売りされる存在となってしまいました。

日米二国間協議に盛り込まれている事項
「投資分野で日本企業に対するM&Aをもっと容易にするための措置」
からも伺えます。


 
◆安倍政権の狙い

日本のTPPの場合の最大の獲得目標が「現状維持を少しでも多くすること」。日本の農業を売り渡し、代わりに得るものがあるとすれば自動車産業くらいのものです。
しかし、その自動車産業も、日米自動車協議で、事前に「米国は関税据え置き」が決まっています。

このような負け戦にわざわざ出て行くのは、TPPの枠の外側に安倍政権がどうしても手に入れたいものがある、と考える以外にありません。

それは軍事力です。

日本が、東アジアでの軍事的優位を築くためには、アメリカの協力や承認が必要です。(承認されるためには、アメリカの属国のように徹底的に、すべてを捧げなければならない)

参院選後の7月23日には、国民に関与させないまま、集団的自衛権の行使が可能になるように、事実上の改憲へ進む、と安倍は明言し、さらに、今まで守ってきた武器の輸出に関する「禁輸三原則」を撤廃して、武器の輸出ができるようにすると発言しています。

さらに、原発を手放さないのも表向きにはエネルギー自給を高めることですが、本音は核保有を狙っているからでしょう。米では戦争屋が窮地に陥り、原発廃止へと進む中、安倍は日本がいつでも世界有数の核保有国になれる手筈を整えていると考えられます。既に国内のプルトニウムは原爆5千発分にも上ります。いずれ米英


 
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◆真相は

しかし、米戦争屋がこの事態を許容するのでしょうか。
そもそも日本が国家として優位性を企てながら、TPPでは軍事やエネルギーと並ぶ重要な柱である食糧自給を手放そうとするスタンスは完全に矛盾しています。

米国は戦後、「低強度戦争」と名付け、出来るだけ軍事力を使わない「ソフト・パワー」で日本を支配してきました。

6、逆らう言論人、ジャーナリストは、そのジャーナリストのセックス・スキャンダル等をマスコミに流し失脚させ、必要であれば軍の諜報組織を用い、事故に見せかけ殺害する。
7、他国の食料、エネルギー自給を破壊し、米国に依存しなければ食料、エネルギーが入手出来ないようにシステム化し「米国に逆らえないシステム」を作る。
るいネット「米国の軍事支配戦略〜出来るだけ軍事力を使わず「低強度戦争」で日本を支配」

このような米国に安倍も麻生も面従腹背が通用するとは思わないでしょう。
甘利TPP担当大臣もかつてマスコミに対し「日本のことなどどうだっていい」などと暴言を吐いた過去もあり、彼らも国益や軍拡よりも自分のことしか考えていないようにしか見えません。

やはり、米戦争屋が生き残りをかけ、米を捨て日本を乗っ取ろうとしていると考えるのが自然です。彼らは日本に核保有を認めても日本支配は揺るがないと確信しているのです。

その結果、日本国民の財産は金貸しが奪い、国民は米戦争屋によって奴隷化される。彼らは国家に寄生し、衰弱したら新たな国家に移りゆくウィルスのような存在なのです。TPPとは日本だけでなく米国でさえ「国家」が戦争屋や金貸しなどグローバル企業に吸い尽くされ捨てられる存在へと追い込む場なのです。

List    投稿者 tsuji1 | 2013-08-29 | Posted in 08.金融資本家の戦略No Comments » 

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