2009-07-25

ロシアと金貸し−3

 
【ソ連時代〜現在】
 
前回まで、アメリカに限らず欧州の金融資本が市場拡大の障害となっていた帝政ロシア(ロマノフ朝)を解体すると共に、解体後のソ連へに対して軍事力を中心とした市場拡大の状況を見てきました。軍事力に関しては、冷戦構造を作り上げることで、民族紛争(代理戦争)を利用した武器消費・武器市場の拡大と連動した戦略であったと考えられます。(前回は、こちら
 
今回は最後として、ソ連時代から現在までの動きをまとめます。大筋としては、「第3次世界大戦 最強アメリカ VS 不死鳥ロシア」ジョン・コールマン著(太田龍監訳)が分かりやすいので、主要な部分を要約して紹介します。文中で「300人委員会」なども出てきますが、その存在の真偽は取りあえずおいておき、コールマン博士の主旨を尊重したまとめとしています。
 
中でも興味深いのは、あの「ペレストロイカ」が「民営化」による資産の収奪だったという点。社会主義では流動化しにくい資産を民営化によって流動化可能ならしめて収奪する手法は身近に聞いた話と同じで生々しい。ゴルバチョフ〜エリツィンによるペレストロイカは、当時民主主義国家から見ると好ましいこととして映っていましたが、その実態は・・・・また、鉄人プーチンの本意はどこに・・・・
 
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         ロシア大統領ウラジミール・プーチン。KGB出身、柔道五段。
 
今回、ロシアの歴史を市場中心に見たことで、近代世界の真の歴史が垣間見えた気がします。
 

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「第3次世界大戦 最強アメリカ VS 不死鳥ロシア」ジョン・コールマン著(太田龍監訳)より
 
▲ロスチャイルドによる帝政ロシアの解体
 
ロスチャイルド家が、ロシアの不安定化を助長するために日本を満州から駆逐するために、1905年の日露戦争に日本を踏み切らせるように画策した。ロシアは日露戦争の戦費をロスチャイルド家の銀行から融資を受けたことによって、ロスチャイルド家への依存が始まる。その結果、ロシア革命が起き、その後の1905年と1917年にロスチャイルドが融資拡大を拒否するとロシア国家は衰退の道をたどることになる。(ロスチャイルドは日露戦争においては、シフを通じて日本にも戦費を融通しており、その目的は帝政ロシアの解体にあったことは間違いないだろう。)レーニンは、ロスチャイルド家の言いなりに働くために遣わされた従者にすぎなかった。
 
▲国際銀行連合による資産略奪
 
ロシアを狙ったのロスチャイルドだけではなく、「国際銀行連合」と例えられるロスチャイルド家と同盟を結んだイギリス、ドイツの銀行数行が中心に計画されている。実際、MI6の諜報員がロシア革命を指示するためにロシアに派遣され、ボルシェビキの手に渡った数十億ルーブルが資金を提供したロンドン・シティやウォール街の銀行にきちんと環流されているかを確かめていた。フィリップ・フランシスは『毒入りのコップ』で、「イギリス政府は、世界のマネーキングたちの大衆に仕掛けている経済戦争の隠れ蓑である。」と表現している。1910年、同じ銀行資本グループが第一次大戦の準備を始めた。ロシアの莫大な財産を国際社会主義とその銀行家が掌握するためのものであった。ボルシェビキ指導者と諸銀行間で調印された合意によって、ボルシェビキの天下になれば、当該銀行には莫大な資本が流れ、原材料資産がすべて略奪される手筈になっていた。つまり、ロシアは気づかないうちに略奪されることになったのだ。
 
▲莫大な資産が国際銀行へ
 
ロマノフ家所蔵の芸術品や宝石類はニューヨークに船積みされ、天文学的な価格で売却された。シドニー・ライリーとブルース・ロックハートが入手したバクー油田を含む「利権」はその千倍にあたる。こうした利権により、6000億ドルの資産がロシアから強奪された(MI6文書より)。トロツキーは誇らしげに「金持ちを打ちのめすために根こそぎロシアから略奪した」ことを認めている。大英博物館の記録では、1917年8月時点でロシアは、12億9560万ルーブル相当の金を保有していた(海外保有分はそれと同額程度と言われていた)。ベレストリトフスク条約に従って、ドイツの銀行家が1億2000万ルーブルを、ミルナーの銀行が1億9450万ルーブルを受け取った。2億5430万ルーブルはウラジオストックに送られ不明の目的地に輸出された。トロツキー達は、ロシア人民の財産7億2600万ルーブルを外国資本に引き渡した。ボルシェビキの人民委員会が国民から没収した30億ルーブル以上は、いろいろな国際銀行に送られた。ロシア国立銀行は8億1223万ルーブルを略奪された。
 
▲スターリンの抵抗
 
スターリンは、シオニスト銀行家を婉曲に「世界主義者」と呼んで、彼らが支配している「略奪同盟」銀行家を憎み、軽蔑した。スターリンは、10年に及ぶ粛正の末、1930年代中頃に「世界主義者」勢力を打ち破った。そして、1970年まではワン・ワールド政府の動きが邪魔されたおかげで強奪は休止されていた。
しかし、スターリンの暗殺以後、フルシチョフによって恥知らずの略奪が再開され、運べる貴重品は何から何までロシアから船積みされた。しかし、フルシチョフはシオニスト・ボルシェビキ活動を咎められ結局は追放された。しかし残り続けたボルシェビキ革命家の孫達=ネオ・ボルシェビキは、やがてロシアに毒を蔓延させ、「ペレストロイカ」と称した大策略を画策し、国家財産と経済力を「略奪同盟」の子孫達に引き渡した。「ペレストロイカ」の時代に何十億ルーブルも外国の銀行(ロシア革命中に暗躍した銀行)に移された。
 
▲操り人形のエリツィン
 
エリツィンは、「300人委員会」の祝福を受け、英米に認められて旧ボルシェビキメンバーらと共に権力の座に着いた。突然の「民営化」によって、7000億ドルが「300人委員会」の銀行(特にレカナーティ一族所有の銀行)に移されている。現場で積極的に陣頭指揮した者達は、ロシア国内の過頭支配者=オリガルヒとなり、プーチン大統領の登場までその力を発揮した。彼らはロシア銀行業の98%を支配し、手にした利益は高利の短期商業クレジットに流用された。「操り人形エリツィン」の在任中、彼らはロシアの経済発展を妨げ、ロシアは貧困の極みに陥った。
 
▲新世界秩序にロシアを組み込む為に
 
中心的人物であったベレゾフスキーは、こう語っている。「私たちユダヤ・ビジネスマンは市場経済の発展に寄与する優れた政治的仕組みをつくりあげたが、同時に自分自身のビジネスも繁栄した。彼らは政府やクレムリンで主導的な役割を果たすのみならず、みずからの目標達成のための有効活用できる主要テレビネットワーク、増え続ける国営新聞も支配している。」。彼らはみな「300人委員会」にコントロールされており、彼らの銀行は実質的にロンドンのロスチャイルド銀行の傘下にある。彼らによって冨は収奪され、ロシアの発展と超大国化は妨げられたのだが、ロシアの弱体化は超大国ロシア出現を脅威と考えた彼らの戦略でもあり、それによって新世界の秩序のなかにロシアを取り込む手段でもあった。
 
▲プーチンの逆襲
 
ネオ・ボルシェビキやオルガリヒを押さえ込むプーチンの仕事は、英米及び欧州の数国の妨害で困難を極めた。プーチンは、2000年にパミャーチ(ロシア軍内部の民族派愛国団体)の支援を受けて権力の座に就き、「民営化」に隠れた大がかりな号棟が横行した無政府状態の経済に代えて、「法の独裁制」を取り入れることを誓い、ロシア資本の輸出に鉄槌を下そうとした。オルガリヒや彼らを支援する欧米勢力の反発を受けるが、詐欺罪での告訴や警察による一斉手入れ、と治安機関による企業への捜査の結果、主たるメンバーは国外追放等の憂き目にあった。プーチンは、軍部の支持を得られなかったエリツィンとは異なり、軍首脳、大衆、とりわけ若者層を完全に見方につけた。ウォール街の銀行家達によるロシアの社会経済を徐々に崩壊させるもくろみは当てが外れた。ロシアには、西欧、とりわけウォール街は「ロシアの敵である」という認識が戻ったのである。
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by コスモス

List    投稿者 cosmos | 2009-07-25 | Posted in 08.金融資本家の戦略3 Comments » 

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コメント3件

 マロン | 2010.02.02 23:26

思想の敗北も結局、表層的に社会収束していただけであり、所詮その思想は自己の私権獲得の為でしかなかった。
貧困が消滅し、私権圧力がかからなくなると、同時に社会の事が捨象されるのは、ある意味当たり前だったと言う事ですね。

 仮面貴族 | 2010.02.03 22:54

変革を叫んで、体制を破壊しようと考えたかつての若者たち、熱が冷めると自ら体制の中に飲み込まれていった。その社会が本当にガタガタになると、今度は社会からどのように引き下がるかだけを考えている。
どこからも答えが出てこない現在、本当に新しい社会を創っていく時代になった。
現代の若者はそこから逃げるわけにはいかないし、むしろ歓迎している。
本当に新しい社会を創るのは、破壊するのではなく「答えをみんなで作り出す」手法を見い出した現代の若者たちだ。

 wholesale bags | 2014.02.10 17:46

金貸しは、国家を相手に金を貸す | 自主管理への招待(2) 〜社会は、生産力の転換によってしか根底的な変革を遂げることはできない〜

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