2008-01-03

一日3兆ドル(350兆円)が取引される投機市場、外国為替市場

1929年の世界大恐慌を契機に英国ポンドと並ぶ国際決済通貨となり、1944年のブレトンウッズ体制のもとで、基軸通貨として世界の経済を支配してきたドル体制が揺らいでいる。 
 
ドル基軸通貨体制の揺らぎの始まりは、1971年のニクソンショック・ドルの金兌換停止であった。
ドルの金兌換停止により、米国ドルは単なる紙切れとなった。 
 
しかし、その後、ドルと主要国通貨との交換レートを市場メカニズムにより決定することで、国際的な貿易やサービスの取引は、依然としてドルを中心に回ってきた。 
 
通貨間の交換レートは、最初は、貿易決済、サービス収支、資本投資の需給という『実需』によって決定されていた(決定されるとされていた。)
【実需とは、米国輸出で獲得したドルを売る企業と原油輸入にドルを買う(円を売る)企業の需給関係で交換レート(ドル・円売買レート)が決まること。】 
 
しかし、この通貨交換市場(外国為替市場)は、投機化し、今や、一日3兆ドルという規模に膨張している。 
 
外国為替市場の現状をいくつかの側面から取り上げてみる。 
 
まずは、一日3兆ドルという数字について 
 
外国為替市場の実態は、3年に一度、BIS(国際決済銀行)から、調査統計が発表されている。 
 
その調査統計によると、2007年4月の一日の外国為替取引の総量は、3兆2100億ドル(約353兆円)である。 
 
2005年の世界全体の輸入が、9兆7270億ドル、輸出が9兆8950億ドルであり、また、2005年の世界のGDPは、43兆6160億ドルである。 
 
現在の外国為替取引は、3日間で世界貿易の総額を取引しており、14日間で世界のGDP総量を取引してしまう。 
 
正に、実需を離れたマネーゲーム市場(投機市場)と化している。 
 
外国為替市場の推移(単位:10億ドル)

     1992年 1995年 1998年 2001年 2004年 2007年
一日取引   820 1,190 1,490 1,200 1,880 3,210

 
2001年から2004年の3年間で57%の増加、2004年から2007年では71%の増加と、2000年代になって急速に膨張している。 
 
続きを読む前に、クリックを! 
 
 

にほんブログ村 経済ブログへ


どこで、どの通貨が取引されているのか 
 
一日3兆ドルの取引が、どこで行なわれているかを見てみます。 
 
国別の取引額の推移(単位:10億ドル)

     1998年 2001年 2004年 2007年
英 国   637   504   753 1,359
米 国   351   254   461   664
日 本   137   147   199   238
スイス    82    71    79   242
シンガポール   139   101   125   231
香 港    79    67   102   175

 
国別のシェアの推移(単位:%)

     1998年 2001年 2004年 2007年
英 国  32.5  31.2  31.3  34.1
米 国  17.9  15.7  19.2  16.6
日 本   6.9   9.1   8.3   6.0
スイス   4.2   4.4   3.3   6.1
シンガポール   7.1   6.2   5.2   5.8
香 港   4.0   4.1   4.2   4.4

 
最大の外国為替取引が行なわれているのが、英国(シティ)である。一日1兆ドル以上の通貨交換取引が行なわれている。 
 
次いで、米国で、6600億ドルの取引。日本、スイス、シンガポールで2300〜2400億ドルの取引である。 
 
上記6各国で、世界の90%の取引が行なわれている。 
 
次に、取引される通貨の比率を見てみます。2007年の数字です。 
 
米ドルとユーロ 27%、 米ドルと円 13%、米ドルと英国ポンド 12%、米ドルと豪州ドル 6%、米ドルとスイスフラン 5%、米ドルとカナダドル 4%である。 
 
個別通貨の比率を見てみます。(全体は200%です。) 
 
通貨別シェアの推移(単位:%)

     2001年 2004年 2007年
米ドル  90.3  88.7  86.3
ユーロ  37.6  37.2  37.0
日本円  22.7  20.3  16.5
英ポンド  13.2  16.9  15.0
スイスフラン   6.1   6.1   6.8
豪州ドル   4.2   5.5   6.7

 
米国ドルが、90%前後を占めている。統計数字からみると、ユーロのシェアは必ずしも大きくない。
上記で確認できる事は、米国(NY)、英国(シティ)、日本(東京)、スイス(チューリッヒ)、シンガポール、豪州(シドニー)という金融市場の発達した都市間で、金貸し達が、通貨信認をめぐって毎日、巨額の投機取引が行なっている事である。 
 
この投機取引の中で、ドルの信認がどうなるのか、今年の最大の注目点である。 
 
なお、2008年のドル・円為替は、円高の1ドル109円台でスタートした。 
 
参考 : Triennial Central Bank Survey 
 
リンク 

List    投稿者 leonrosa | 2008-01-03 | Posted in 08.金融資本家の戦略No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2008/01/446.html/trackback


Comment



Comment