FRBの国債引受→通貨発行益増大がアメリカの国力を衰弱させている
米国ではFRBが中央銀行の機能、通貨発行を担っているが、政府機関ではなく民間出資によって成立している銀行であることは周知の事実である。
民間である以上は収益を上げていくことが不可欠だが、何を最大の収益としているのだろうか。
FRBは米国政府が発行する国債(財務省証券)を引き受けて、ドル(小切手)を発行する。
バランスシートでは、「資産」の欄に米国債、「負債」の欄に発行銀行券(ドル紙幣)が記載される。
米国債は返済期限と利子が発生する純粋な(米政府の)借金である。一方、ドル紙幣は返済期限も利子も発生しない。
この差額が収益となり、米国債を引き受ける=ドルを発行するほど、その利益は増大する。
米国債の利子の支払いが滞れば、FRBの利益は減少するが、アメリカではFRBの設立と同時に所得税が利子の支払い財源として制定されている。
~前略~
中央銀行が作られた国家の通貨は、政府が国債を中央銀行に引き渡すことで発行される。
例えばドルの場合は、アメリカ政府が国債(財務省証券)を発行する。FRBが国債を引き受け、代わりに同額の小切手を発行して政府に渡す。その小切手を政府がFRB傘下の銀行に入れるとドルが発行される。
国債には金利(額面金利)がつくため、政府→FRBへの利払いが必要となり、その利払いは発行通貨が多くなればなるほど増える。そして、その利払いのため、FRB創設とともに所得税が導入された。
つまり、中央銀行体制下における通貨とは、国債と引き換えに発行された「政府の借金」なので、政府は中央銀行に対して国債相当分(=発行通貨相当分)の金利を支払い続けている。
なお、その利払いの原資として整備されたのが「所得税」であり、金利は国民が負担する仕組みとなっている。
と言うことで多くの通貨が発行されるほど、中央銀行は多くの利息を手に入れることが出来るほか、通貨発行益(シニョレッジ)でも儲けられる。なお、通貨発行益とは、例えば30円位で刷ることが出来る1万円札を1万円として渡すことで得られる利益(ここでは9970円)だ。このように、通貨発行権を活用することで労せず国民の富を収奪することが出来るのだ。こんな美味しい通貨発行権を、国際金融資本が放棄するのだろうか。
ザ・国際金融資本のロスチャイルド家のマイヤー・アムシェル・ロスチャイルドは「私に一国の通貨発行権と管理権を与えよ。そうすれば、法律は誰が作っても良い。」との言葉を残しているように、国際金融資本はイングランド中央銀行を手始めに、世界中に中央銀行を作って通貨発行権を掌握した。
日本でも、イギリス・フランス(のロスチャイルド家)が明治新政府・幕府のバックについて明治維新・戊辰戦争が誘発された後、日銀が明治10年に設立された。
さらに、第一次世界大戦は人類史上初の「総力戦」となり莫大な戦費を費やした結果、中央銀行を持たないドイツ帝国・オスマン帝国・オーストリアハンガリー帝国と、戦勝国のロシア帝国が崩壊した。
中銀があった国は、国債発行で莫大な戦費を賄うことが出来た一方で、崩壊した帝国には中銀がなかった。戦費調達のため保有する金(ゴールド)を放出するほかなく、それが制御不能のインフレを招いた結果、帝国崩壊へと繋がった。
なお、崩壊した四帝国から莫大な金(ゴールド)を手に入れたのは、中立国ポジションを維持していた工業大国のアメリカ(FRB)であり、金(ゴールド)を独占したFRBが発行するドルは基軸通貨となった。第一次世界大戦でアメリカが中立を維持していたのは、金(ゴールド)の独占が理由の一つかもしれない。
~後略~
米国の財政が悪化し、米国債が大量に発行されるほど、FRBを通じてその出資者に流れる利益は大きくなり、その反動が国民への徴税としてのしかかる。
その結果、国力(生産力)は衰退し、国債依存が強まる悪循環となる。
既に世界情勢としては、基軸通貨ドルの引力は衰退し、米国債の引き受け手は減っている。
最後までFRBは引き受けるだろうが、国債の利子払い(原資は徴税)はいずれ限界を迎える。
※国庫納付金で多少循環させても国力の衰退は回復しない
ドル離れが加速するほど、ドル発行の必要性は薄まる。
改めてFRB(中央銀行)の役割と存在理由を冷静に見直すことが、新しい経済システムを構築する入口となるのではないだろうか。
by 小石丸
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