2008-05-31

「ロシアは海外投資を受ける立場から積極的な国際投資家に変身する」

世界株式市場が揺れ動いているときに、新興市場が堅調であることを報じているニュースを目にするたびに、20世紀に依拠する政治経済発想を脱皮する時期が来たと改めて確信する。先進国とエマージング諸国、BRICsなどという選別のしかたを続ければ世の中で起きていることがよりわかりにくくなる気がしてならない。 
 
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先回に続いて井本氏の記事を紹介します。 
 
井本沙織のロシア見聞録・第11回
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経済大国になった中国、資源大国であり経済大国の座を取り戻そうとしているロシアの動きを見るに当たって、今までとは別の考え方が必要である。中国もロシアも高成長を続けているが、原油価格が100ドルという歴史的なハードルを超えた瞬間、この2カ国を1つのグループに入れることは不適切であることには誰もが気付くだろう。資源を確保しようとしている国家戦略(中国)と資源の市場を確定しようとしている国家戦略(ロシア)は正反対とまではいかないにしても同じであるはずがない。 
 
ロシアは経済大国だと考えよ 
 
つまり、政治という土台から離れて、経済面において中国とロシアを比較しながら、それぞれの国に対する日本の戦略を決めること(戦略が存在しているのであればの話だけれど)は不適切であろう。中国も、ロシアも発展途上国ではなく、今は経済大国であることを認めて、そして、それぞれの国の性格や戦略を見極めた上で、日本のこれからの立場を考えることが極めて重要である。 
 
そこで日本とロシアの経済関係について考えてみたい。ソ連が崩壊した後、日本企業も政府も新生ロシアと新しく築く経済関係について模索し続けてきた。ソ連時代に2国間の貿易高で1番になったことがある日本は、ソ連にとっては重要な貿易相手であった。しかし、90年代に入りソ連が崩壊した後、ロシアは深刻な経済危機に陥り、財政が著しく悪化し、新規取引どころか先約の支払いのリスケジューリングを余儀なくされた。支払い能力のない国が貿易相手として認められないのは当然の成り行きであった。 
 
それに加えて、両国の間で、第2次大戦の悲しい遺産として残った北方領土問題が、経済協力関係の構築への道の障害物であった。ロシアの危機的な状況がいずれ改善され、潜在力のある大国として復活し、国際経済舞台においても大きな役割を果たすであろうという先見を持ち、困ったロシアに先行投資する余裕を持った日本企業はほとんどなかった。

 
 
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日本・ロシア両国経済が落ち込んでいた90年代を超えて

90年代の日本の長期不況を考えれば、先見の欠如という点で日本企業を責める気にはならない。しかし、止まない雨はないのと同じように、90年代後半に入ると、日本経済もロシア経済も持ち直し、あるいは、持ち直したかに見えた。そして、ロシアへの進出について検討し始める企業が出てきた。だが折悪しく、97年、日本経済はアジア通貨危機で少なからず影響を受け、一方、98年8月のロシア通貨危機がロシアの経済回復への道を遠ざけたのである。

それから10年経った今、状況は信じられないほどの速さで変わってきた。

2000年以降のプーチン時代の経済回復、および、石油高騰の追い風で高成長を続けているロシアに対して、トヨタ自動車をはじめ多くの日本企業が進出を決めた。ロシアは2007年、経済成長率は7%を上回り、GDPと株式市場の時価総額はともに1兆ドルを超えた。世界10位の経済大国であり、外貨準備高は3位である。

この経済はもちろん日本の投資家だけではなく、世界の投資家の目を引いている。そのことについては、ロシアに対する直接投資が年々に増加していることが物語っている。ロシアに対する海外からの直接投資は、2007年で471億ドルであり、前年比で58%伸びている。ロシア経済の見通しが中期的には良好であることから、日ロ経済関係が正常な状態に戻り、これからこのパターン、つまり日本からロシアへの投資という形で伸びていくと考えることは不自然ではない。しかし、私は、この考え方はもう少々時代遅れであることをここで強調したい。

石油輸出への依存から脱却を図ろうとしているロシア政府も民間企業も海外から投資をパッシブに受ける身ではなくなっている。経済を多様化し、国内製造業の強化の下でイノベーション・ベースに乗っ取った経済成長パターンの確保は、ロシアにとっては最重要な課題である。そのためには、日本が持つ優れたものづくりの技術やノウハウは、不可欠である。

海外企業の技術を狙い、買収に動くロシア企業

したがって、欲しい技術やノウハウを確保するためにはロシア企業自ら積極的に出向いて、海外企業に出資したりして、あるいは買収したりすることによって、目当ての技術を手に入れる動きも増えるだろう。つまり、力の付いたロシア企業が日本の企業に投資し始める時期はさほど遠い将来ではないという可能性があるのだ。

ロシア企業のアペタイト(欲望)が日に日に増していることについては、ロシアからの直接投資の増加を見れば一目瞭然である。2007年、ロシアから海外への直接投資は478億ドルであり、前年比で2倍増えた。また、2008年のロシア企業のIPOの予定が公開されたリストには、東南アジアおよび東京証券取引所での株式公開を検討している企業が入っている。

日本で株式の新規上場を目指す動き、調達資金で日本に投資も>br>
こうしたことを照らし合わせると、ロシア企業の日本への関心が高まっていることが浮き彫りになる。これからは、日本で株式を公開して知名度を上げるとともに、調達した資金を日本企業への投資に向けると考えられる。それも必ずしもエネルギー産業ではない。

ロシアが必要としているのは、ソ連時代に欠如していた民生品、つまり日常品の現代的な製造技術である。そうした流れの中で日本企業はロシア企業と敵対的な関係で終わるか、それとも新時代の戦略的なパートナーシップを築けるのか。今の両国の政治経済の戦略を見極める力にかかっているのではないかと思う。このように、経済世界では10年前に考えられないほど、攻める側と攻められる側の立場が急激に変わりつつある。

このことこそ、今の時代の特徴であろう。私見ではあるが、未解決である北方領土の問題は、ダイナミックな新しい今の時代に即した解決が望まれる。そしてそれが両国にとっても、そして世界にとっても、共存と共益を重視した新しいパートナーシップのお手本になればと祈ってやまないのである。

ロシアにおける直接投資の推移(単位:百万ドル)

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紹介は以上です。

あのラスプーチンと呼ばれた佐藤優氏は「白いハゲタカ」と呼ばれるロシアの政府系ファンドによる日本買収戦略であり、各々方努々も油断召されるなと否定的です。

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しかし、ロシアの経済力は米国覇権を揺るがし、新たな国際情勢の流れを創り出しています。
古いイデオロギーではロシアを正確に見透せない気がしてなりません。

List    投稿者 unkei | 2008-05-31 | Posted in 07.新・世界秩序とは?1 Comment » 

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コメント1件

 hermes light coffee | 2014.02.02 3:04

hermes europe 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 地方経済がどうして破綻してきたか ある市の事例から ①

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