国家債務危機〜ジャック・アタリから21世紀を読み取る5
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さて前回
>移住者増→人口増と共に私権によって統合された肥大国家を維持運営するためには、どうしてもお金(私権)が必要になり、国家は借金まみれになっていく構造にあります。金貸し達は、その国家の宿命に目を付け、お金を生み出すシステムを安定的、確実なものに仕上げていったのです。
が分かりました。さらに続きを見ていきます。
ジャック・アタリ氏の「国家債務危機」によれば、20世紀に入り、世界は革命と自由のための戦いを通じて民主主義が浸透し、国民主権となっていきました。
この結果、新たに権力を持つようになった国民は権力を獲得した代償として、自らと次世代の収入と資産によって、公的債務支払いの責任を負うことになったのです。
これは第二回目で提起した問題意識・・・
>先進国の借金、どれくらいかご存知でしょうか?
日 本: 870兆円
米 国:1200兆円
英 国: 200兆円
ドイツ: 240兆円
どの国も巨額の債務を抱えています。これが会社だったらとっくに倒産しているレベルです。会社なら経営者に経営責任が問われますが、国の場合、借金を決めた政治家にその責任は問われません。その返済は、社員なら負うことはありませんが、国民はそれを負うことになります。国家は一体どうしてここまで借金を膨らませてきたのか?膨らませることが可能だったのか?
その答えが「国民主権」にありました。
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これまでの記事で確認したように、そもそも国家は身分序列が貫徹されており、統合者がその私権拡大のために侵略を行い、その侵略のための借金は自らの責任において処理(重税、踏み倒し含む)してきました。
この場合
統合者(≒独裁者?)が借金⇒国民に重税→統合者への反感が蓄積⇒反乱
となり、国民への不満が蓄積され、それが自分の地位を脅かす反乱になる可能性があるため、統合者としてはそんなに重税できない→結果として借金にブレーキがかかる、構造にあります。さらに私権をムサボルのが、統合階級に限定されている(≒市場も限定されている)こともあります。
ところが民主化された途端、国の借金は実質の統合者である政治家が決定するにもかかわらず、「国民主権」という観念に基づき、借金は国民が背負うことになります。
この場合
議会が借金⇒国民に重税→議会に不満⇒選挙→何も変らない→借金が雪だるま式に
国民にとっては不満があっても選挙で選んだのは自分達であり、諦めるしかない。むしろ政治家と同様に私権収束しており、且つ取立屋がくるわけでないので危機感が薄いので、借金を容認していくことになる。そしてついに有り得ないほどの借金を抱えることになったのです。民主化により、統合階級に限定されていた私権獲得の可能性がみんなに開かれ、市場が拡大したことも大きな要因です。
「国民主権」という観念は、「選挙」というお祭りでのガス抜きを利用して、実は「多額債務者」という本質を隠していたのです。
一方でこの頃から、戦争は大きな収入源となりにくくなってきました。
例えば、第一次世界大戦で勝利した連合国は1921年ロンドン会議で、敗戦国であるドイツに1320億金マルクもの賠償金を押し付けました。(ドイツの対GDP比によると2000%におよぶ額。)そしてヨーロッパの景気はドイツの賠償金返済に大きく左右されるのです。
1923年にはドイツの賠償金支払いの遅延により、フランスもハイパーインフレの一歩手前までになりました。
1929年以降、世界大恐慌が発生すると、ドイツはまたも不況に陥り賠償金支払いがストップし、1930年と1932年に賠償金を減額している。しかしドイツは賠償金を払いきれず、結局その支払いを再び戦争に委ねようとして第二次世界大戦に突入していきます。
第一次世界大戦でモルガン財閥を通じてヨーロッパに戦費を貸し付けてきたアメリカも、ドイツからの賠償金が滞り、そのため債務者であるフランス等からの返済が滞ってくると、金融危機も相まって、債務が膨らんできます。
これを返済するために、公的資金を市場にぶちこんで経済成長させる「ニューディール政策」を敢行します。
戦争が大きな収入源にならなくなったため、国はさらに市場拡大を推進して、経済成長によってインフレを起こし通貨価値を下げ(実質借金減)、税収を増やして返済するしかなくなったのです。
実際第二次世界大戦後の30年間は高度経済成長に恵まれインフレ率も高かったことから、西側諸国の借金はほぼ解消されました。
逆に、その高度経済成長の煽りを受けた途上国は、市場における価格差により経済破綻に向かって進行します。
ジャック・アタリ氏の「国家債務危機」では
1970年代半ば、南側諸国、さらには東ヨーロッパでは、過度な警察費・事業費の増大、行政の腐敗、無理な融資などによって公的債務が膨張した。
まずはペルー、ザイール(現コンゴ民主共和国)、トルコ、スーダン、ポーランドが、主権債務の返済に行き詰った。エクアドルは、独裁政権下にあった1968〜1979年の間に、公的対外債務は8倍に膨れ上がっている。(引用)
とあります。
そしてこの債務危機国に対して、パリクラブとロンドンクラブ、そしてIMF(国債通貨基金)が分担して対応していきます。
債務危機国は、まずIMFから融資を受ける為の条件交渉をし、次にパリクラブで、”公的債務”の延期または借り換えを行い、さらにロンドンクラブで”民間債務”のリスケジュールを行なうのである。
裕福な国家の集まりであるG7の意志を反映するパリクラブは、商業銀行の総合窓口であるロンドンクラブとともに債務のリスケジュールをする途上国に対して、必ずある前提を求める。それはIMFが債務国に対して融資条件として提示する「構造調整プログラム」に同意することである。この経済プログラムは、発展途上国の累積債務問題の解決や経済成長のためとされる、インフレ抑制、市場経済化、貿易・投資の自由化、民営化、小さな政府などの「ワシントン・コンセンサス」に基づいた政策を柱としている。(引用)
ワシントン・コンセンサスとは、南側諸国の債務危機への対策として、IMF、世界銀行、アメリカの研究者たちがワシントンに集まってまとめた政策の合意事項のことで、ついに世界は武力ではなく、金融によってコントロールされていくのです。
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