G20な国々 ドイツ連邦共和国
今回はG20でのドイツ連邦共和国の可能性を探ってみたいと思います。
ドイツといえば、第二次大戦で日本と同様に敗戦国となり、アメリカ、イギリス、フランス、ソビエト連邦に分割占領され、ベルリンの壁によって東西ドイツに分裂しました。冷戦時代を通じて東西ドイツは資本主義と共産主義の対立する最前線なったのです。しかし1989年ベルリンの壁は崩壊し、1990年に再統一されました。
同じ敗戦からの復興という点で日本とドイツの共通点等があるのか、調べてみたいと思います。
ドイツ「解放」の瞬間 無条件降伏文書に署名するJodl陸軍大将
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まずは基礎情報を整理してみます。日本貿易振興機構(JETRO)より
一般事項国・地域名:ドイツ連邦共和国 Federal Republic of Germany
面積:35万7,114平方キロメートル
人口:8,222万人(2007年末)
首都:ベルリン 人口342万人(2007年末)
言語:ドイツ語
宗教:カトリック、プロテスタント、ユダヤ教
基礎的経済指標実質GDP成長率:2.5% [2007年]
名目GDP総額:2兆4,229億ユーロ [2007年] 3兆3,161億4,288万ドル [2007年]
一人あたりのGDP(名目):40,400ドル [2007年]
消費者物価上昇率:2.3% [2007年]
鉱工業生産指数伸び率(前年比):5.9% [2007年]
失業率:9.0% [2007年]
経常収支(国際収支ベース):1,807億7,900万ユーロ [2007年] 2,474億2,622万ドル [2007年]
貿易収支(国際収支ベース):1,953億4,800万ユーロ [2007年] 2,673億6,633万ドル [2007年] 財のみ
外貨準備高:443億2,650万ドル [2007年]
為替レート(期中平均値、対ドルレート):0.7306ユーロ [2007年]
為替レート(期末値、対ドルレート):0.6793ユーロ [2007年]
財政赤字対GDP比:0.0% [2007年]
輸出額:9,652億3,600万ユーロ [2007年] 1兆3,210億8,650万ドル [2007年]
対日輸出額:130億2,200万ユーロ [2007年] 178億2,278万ドル [2007年]
輸入額:7,698億8,700万ユーロ [2007年] 1兆537億1,880万ドル [2007年]
対日輸入額:243億8,100万ユーロ [2007年] 333億6,947万ドル [2007年]
直接投資受入額:378億5,600万ユーロ [2007年] 518億1,225万ドル [2007年] ネット、フロー、国際収支ベース。利益再投資含む
日独戦後復興過程の違いは何か
戦後奇跡の経済復興を遂げた日本、ドイツの両大国に今何が起きているのか?より以下引用
旧西ドイツ復興過程の特徴;連合国側(主として米国)の強い改革要請にも拘わらずドイツは其の主な社会体制(ゲルマン文化・文明)維持の思想を貫き、様々な分野で懸命に努力し多くの成功を勝ち取った。従って、戦後復興の基礎はあくまでもドイツ流(ゲルマン流)であった。
ドイツは自国の文化・文明の優越性(エスノセントリズム)を信じ、占領は一時的なものであり、やがて自分たちによる統治が始まる時、思想的、制度的、価値観的、文化・文明的混乱が生じないよう配慮がなされた。従って驚くほどアングロ・アメリカン的影響を受けていない。
これに対し、戦後日本の復興はそれまでの日本文化・文明を物の見事に破棄ないし否定し半ば盲目的に占領軍(米国)の文化・文明(アメリカ的文化・文明、価値観、制度等)を受け入れ、利用し戦後の復興を成し遂げることに成功したといえるのではないだろうか。 🙁
ドイツ人気質とは?
質実剛健、勤勉、実直、後進性、アングロサクソンやラテン系にない独特のゲルマン文化を持つ。商人気質より物作り、職人気質。1873 年の岩倉視察団(特命全権大使欧米回覧実記)の言葉を引用すると「もし英・仏・独・米の 4 カ国の人にそれぞれ 1 日 6 時間の時間を与えて仕事をさせるとどうするか。
アメリカ人は 4 時間で終わり、あとはぶらぶらして遊び楽しむ。
フランス人も 4 時間でおえて、その後は酒を飲み、歌い踊る。 🙂
イギリス人は 5 時間で済ませ、1 時間は別な仕事に励む。 🙄
ドイツ人は精を出すが、6 時間でおわらず、更に夜までもかかって努力する 」となかなか鋭い観察をしていて面白い。尚視察団一行はドイツ(当時のプロシャ帝国)に英・仏・米の先進工業国にはない、日本社会との類似性があると見て、親しみを感じ取り、日本の将来像構築の礎にしてはとの考えも芽生えさせたようだ。
ドイツの経済
ドイツ経済に忍び寄る「失われた10年」2009年04月08日(Wed) Financial Timesより以下引用
ヨーロッパ一、世界でも非常に発達した市場の一つである。アメリカ合衆国ドルの為替レートでは世界で3番目、購買力平価(PPP)ベースのGDPでは世界で5番目の規模となっている。
しかし、近年のドイツの経済は停滞気味にあった。外部からの影響や旧東ドイツ地域の支援による経済の疲弊のためである。国家生産の3分の1を占める輸出は、ドイツの経済に対して大きな影響力を持っている。そのため輸出はドイツのマクロ経済拡大への重要な要素の一つとなっている。
「nation of shoppers(買い物客の国)」ではなく「nation of shippers(輸出企業の国)」であるドイツは、世界的な需要減退——先週ロンドンで開催されたG20サミットの焦点の1つ——のせいで窮地に追い込まれ、ドイツ政府は世界経済に大きな影響を与えかねないドイツ経済の瓦解を避けるために手を打つよう大きな圧力をかけられているのだ。
ドイツが抱えているリスクは、ちょうど1990年代の日本のように、国内に成長の源を見いだせず、ひたすら世界経済の潮目が変わることを待つ「失われた10年」——長期に及ぶ経済停滞——に突入する危険である。
昨年9月半ばの米リーマン・ブラザーズの破綻後、ドイツは脆い存在だった。何しろ同国の輸出は昨年、GDPの47%強を占めていた。日本の20%足らず、米国の約13%と比べても相当高い数字である。
また、ドイツの工業基盤は機械と装置に偏っており——「投資財」は輸出全体の40%以上を占める——、輸出先も欧州およびアジアの新興国に偏っていた。
危機が米国の住宅および資本市場に限られている間は、ドイツは影響を受けずに済んだ。ところがリーマン破綻で銀行が機能麻痺に陥り、世界全体で景況感が急激に悪化すると、各地の企業が投資計画を凍結、ドイツの工場は誰も買いたがらない工業製品を作っていることに気づく羽目になった。
「世界最大の駐車場−」。ドイツ北部ブレーメンの近くに、独メディアがこう皮肉る港がある。行き先がなくなり、野ざらしとなっている輸出用の高級車が多いときで数千台。欧州最大の経済大国の現状を如実に物語っている。 輸出の“花形”であるベンツを製造する独ダイムラーの昨年の純利益は、前年比65%減。BMWも昨年、約1万人のクビを切った。
ドイツなブログ−ドイツもろもろなんでもかんでも世界不況のため欧州は経済版「鉄のカーテン」により引用
ドイツのカールテオドル・ツー・グッテンベルク経済相は米国政府に、ドイツの自動車メーカー、オペルの救済を妨害しないよう要求した。グッテンベルク氏は「これまでベルリンで行われた米国代表との交渉の一部は馬鹿げたものだった」と述べた。彼はドイツのつなぎ融資がオペルだけに使用されることを保証するよう求めた。オペルに関するトップ会談は、親会社のゼネラル・モーターズ(GM)が最大で3億5000万ユーロに上る新たな資金要求を行ったため、決裂していた。一方、ワシントンの米財務省はGMの個人債権者に対し、債務削減のための修正案を提示した。この米自動車大手は27億ドルの負債を抱えている。
今日のドイツニュース オペル問題でドイツ政府は米国に保証を求めるより引用
ドイツが輸出に重点を置く姿勢は、1945年以降、数十年間にわたる経済状況によるところが大きい。デフォルト(債務不履行)が相次ぎ、ハイパーインフレに苦しんだ戦前の経験を考えると、ドイツには、貿易黒字を出す以外に選択肢がほとんどなかったと、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のアルブレヒト・リッチュル教授は主張する。
同じ要素が、保守的な財政および金融政策を促した。実験の余地がなかったのである。その結果、ドイツは国際貿易の浮沈に対処することに慣れ、輸出依存度の高さは「問題と見なされない」ようになったとリッチュル教授は言う。
メルケル首相の戦略ははっきりしている。危機を何とか凌ぎ、できる限り工業の強みを守り、いずれ訪れる景気回復を待つ——というものだ。先の取材で、輸出への依存は「2年間で変えられるようなことではない」と首相は述べた。実際、「我々はそれを変えたいとさえ思っていない」と言う。
ドイツ政府が慎重な理由の1つは、ドイツ人は消費喚起を図る政府の対策に反応しないという考え方があるためだ。欧州中央銀行(ECB)はリカード効果を引き合いに出す。
19世紀初頭の経済学者デビッド・リカードからその名を取ったリカード効果とは、消費者は政府の今の支出拡大が将来の増税を意味することを恐れ、自らの支出を削減する、という考え方だ。
さらなる財政出動に否定的なメルケル首相
しかし、緩い金融政策の結果、インフレが起きることを恐れるドイツ政府の懸念は「ハイパーインフレを経験した歴史からして、他国よりずっと大きい」とヤペッリ教授は言う。LSEのリッチュル教授はさらに、「恐らく外国人が理解していないのは、ドイツ人は既に過剰債務を抱えていると思っているということだ」とつけ加える。
既存の政府債務に加え、人口が急速に高齢化しつつある中で、賦課方式の手厚い年金制度の原資を確保するコストがある。「財政、金融政策の面で米国と英国で起きていることは、すべてのドイツ人を非常に不安にさせる」とリッチュル教授は言う。「人々は街角で再びハイパーインフレを話題にしだすだろう」
そうなると、長期的な経済構造の変化に期待する以外に道はほとんどない。ニューヨークに本拠を置く調査組織コンファレンスボードのチーフエコノミスト、バート・ヴァン・アーク氏は、「規模が大きな経済は長期的には、輸出という燃料のみで運営することはできない」と主張する。
ドイツ製造業は非常に効率的かもしれないが、海外市場に軸足を置く彼らの姿勢は、その成功の恩恵の大部分が国外へ流れてしまうことを意味する。
旧東独地域は世界的な金融危機に強い——。20日付フランクフルター・アルゲマイネが複数の専門家のこうした見方を伝えた。
ザクセン・アンハルト州ハレを本拠とする経済研究所IWHによれば、旧東独経済は主に比較的安定した内需に支えられている。また輸出先では金融危機による打撃が小さい中東欧が17%を占め、旧西独の11%を上回る。逆にドル圏への輸出が占める割合は旧西独の9.4%に対し、旧東独は8%にとどまっている。
また旧東独の銀行連盟を率いるクラウス・ワーグナーウィードゥウィルト氏は市況の変化に柔軟に対応できる中小企業が多いことが強みと分析。同地域では年商が500万ユーロ(6億8,000万円)未満の企業が全体の43%に上り、2億5,000万ユーロを超えるのは17%にすぎない。旧西独では前者が20%、後者が47%となっている。
金融危機に強いのは旧東独地域より引用
まとめ
ドイツ経済は国家生産の1/3を占める輸出が基盤となっており、内訳も自動車、機械類が中心である。輸出が経済を支えている構造は日本と同じであるが、対GDP比では日本の2倍となっておりその影響度は非常に高い。つまり今回のリーマン破綻後の金融危機は、ドイツ経済にとっても大打撃を与えたといえる。 😥
さらにドイツ政府も内需拡大対策に反応しない国民体質を分かっており、『耐え凌ぐ』が方針のようだ。 日本でも豊かさ実現し、バブル崩壊後の『欲しい物は特にない』状態で、いくら国内消費を刺激する政策が悉く失敗に終わったことからも、『耐え凌ぐ』という方針は今後の世界経済の動向(上昇の可能性)を予測するに余りに無策であるとも思える。 😈
ドイツ経済の今後は、内需に支えられている旧東ドイツ地域が鍵を握っているように思う。 8)
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匿名 | 2009.12.12 14:51
疑問1 「減価する貨幣」とは、預金がインフレで目減りする状態と何が違うのでしょうか?
疑問2 「減価する貨幣」でゴールドを買われたらどうなるのでしょうか?