金貸し、窮地の暴略 その5〜追い詰められた金貸しの今の目論見は?〜
その1 〜ロックvsロスチャvs欧州貴族の覇権闘争史の再整理〜
その2 〜00年以降の金貸しの戦略と結果〜
その3 〜窮地に陥る必然構造
その4 〜金貸し支配を揺るがす勢力の台頭〜
これまで見てきたように、時代の必然として、金貸しは現在、存亡の危機に近いところまで追い詰められている。300年前に編み出した騙しの方法論、儲けの方法論は通用しなくなっている。今まさに進行中の、化学兵器を理由にしたシリア現政権への攻撃は10年前のイラク戦争とそっくりの手口であり、世界中の誰もがそれを感じていることだろう。
それでも強引にコトを推し進めようとしている様は、まさに暴略である。
彼らは生き残りをかけて、今、何を考えているのだろうか?
◆中央銀行制度の限界を感じ始めた?
第二次大戦後に金貸しが主導した戦争や民主化革命には、いわゆる戦争経済=軍産複合体の利益や市場利権の確保という目的以外に、ある具体的な目的があった。
’61年ベトナム戦争→’63年ベトナム国営中央銀行設立→’88年独立改革
’90年ソビエト連邦崩壊→’91年ロシア中央銀行設立
’01年911〜イラク戦争→’02年アフガニスタン中央銀行設立、’04年イラク中央銀行設立
’11年リビア内戦→’11年ベンガジ中央銀行設立(リビア国営中央銀行廃止)
金貸しにとって、彼らが仕掛ける「民主化」の具体的な果実は、中央銀行制度の設立、あるいは支配権の掌握である。
研究者の中には、イランは世界でロスチャイルドが支配するにいたっていない中央銀行を持つ三つの国の一つである、と指摘している者たちがいる。9月11日同時多発テロ以前には、7カ国の中央銀行がそうであった:アフガニスタン、イラク、スーダン、リビア、キューバ、北朝鮮、イランである。しかしながら、2003年までに、アフガンとイラクはロスチャイルドのタコに食われてしまった。また2011年には、スーダンとリビアが同じく食われてしまった。リビアではまだ国内で戦闘が続いている時、ベンガジ市にロスチャイルド銀行が設立されたのである。
ROCKWAY EXPRESS
これらの国の多くは、今だ貧困の圧力が働いている途上国や中進国だ。とりわけ利息を禁じてきたイスラム国家の転換は、彼らに残された市場拡大の可能性の一つである。
翻って、先進国の中央銀行制度はどうか。
今や米連銀も日銀も欧州も、世界金融危機で膨れ上がった国家債務と価値の無いクズ債権を引き受けるため、大量の紙幣を刷って量的緩和を続けている。その結果、通貨価値は下がり続け、金利は限りなくゼロに張り付いている。これは何を意味しているのか。
市場は、云わば国家というモチに生えたカビである。カビがどんどん繁殖すれば、やがてカビ同士がくっつく。世間では、それをグローバル化などと美化して、そこに何か新しい可能性があるかのように喧伝しているが、それも真っ赤な嘘であって、市場が国家の養分を吸い尽くせば、市場も国家も共倒れになるだけである。
超国家・超市場論11 市場は社会を統合する機能を持たない
市場は、生存圧力(実体的には貧困の圧力)に基づく私権闘争を圧力源=活力源にしている。従って、市場活動によって物的な豊かさが実現すれば(=貧困の圧力が消滅すれば)、必然的に市場は活力源を失って衰弱(=縮小)してゆく。そして、むしろこの矛盾と限界こそ、市場の現実に差し迫った絶体絶命の限界である。
もし、国家(国債)による延命策がなければ、(バブル化もせず)市場はすんなり縮小過程に入った筈である。要するに、このまま市場を放置すれば市場は急速に縮小し、国家が延命策を施し続ければ国家が崩壊する。
超国家・超市場論12 市場の拡大限界は、国家の統合限界でもある
300年来、市場は国家に寄生することで拡大を続けてきた。そして、市場の権化である金貸したちが発明した最も効率的な寄生の方法論が、債務からマネーを創造し「国家に金を貸す」中央銀行制度だった。しかし今や、先進国の中央銀行は、国家に市場拡大の原資を与え、その上がり(利息)を貪るためではなく、借金を残して市場縮小してゆく宿主国家を破綻させないために機能する存在になってしまった。
さらに、この中央銀行制度のカラクリに気づき始めた一部の国家が、金貸し支配からの脱却を試み始めている。
「大きすぎて銀行を破綻させられない」は嘘かもしれない
ハンガリーの勇気ある判断〜国家主権を発動して「政府発行通貨」発行を断行しようしている
頭の良い金貸したちは、日本バブルが弾けた20世紀終盤には、このような事態がいずれ到来するであろうことに気づいていただろう。そして、旧い手法がまだ通用する途上国の市場化で延命しながら、先進国では、次なる支配の仕掛けを編み出さなければならないと考えているのではないか。
◆当面の難敵・中国をどう攻略するか?
生き残り戦略を模索する金貸したちにとって、当面のもう一つの難題が、前回記事にもある第3勢力の台頭にどう抗していくか、中でもロシアと中国、さらに絞れば、彼らとは全く異質な歴史・思想・価値観を持ち、13億の人口を擁する中国をどう攻略・支配するか、ではないか。
アヘン戦争の時代から、欧米の金貸したちは中国への進出を図り、支配を目論んできた。戦後の文化大革命や鄧小平の改革開放路線にも関与していただろう。しかし、同じアジアの日本ほど中国を支配できているとはおそらく彼らは考えていない。中国は、巨大なパイを狙う欧米の金貸したちの路線に乗って市場拡大を進めながらも、共産党独裁という政治体制は手放さずにきた。
そのため、厳しい外国資本の参入規制やネット・メディア検閲、中央銀行(中国人民銀行)の運営など、法制度、大衆共認、金融システムの根幹は、いまだ国家統制下にある。欧米の金貸したちはここに何とか侵入口を開けたいと考えているだろう。
◆金貸したちの目論見は「国家」の超越か?
こうして、追い詰められた金貸したちは今、中央銀行制度(金融支配)に代わる、あるいはこれを補完する新たな支配の方法論として、何を目論んでいるのだろう。最近の闇勢力の動きから幾つかの可能性が浮かび上がってくる。
1.肉体(生命)支配
お金の支配が通じないなら、人間の肉体あるいは生命そのものを牛耳ろうとするもので、食料支配と健康(病原体)支配、そして気象・災害支配がある。以前からモンサントが行ってきたF1種による途上国支配の手法は、ビル・ゲイツとロックフェラー財団が進める世界種子バンクという形で、先進国にまで対象を拡大しようとしている。
エイズウイルスやインフルエンザウイルスの開発、ケムトレイルによるそれらの散布、あるいは人工地震は、より過激に生殺与奪権を握ろうとするもので、主に局地的なショック・ドクトリンの手段として使用されるだろう。しかし、これはいわば化学兵器、大量破壊兵器による民間攻撃であり、事実が明るみになれば身を滅ぼしかねない諸刃の剣でもある。
2.ネット支配
アイゼンハワーが初めて指摘した軍産複合体という存在は、近年、軍産デジタル複合体などと呼ばれるようになった。それだけ金貸したちはインターネットの存在を重視しているということになる。それは、大衆の事実共認から己の身を守るためでもあるし、逆に、インターネットがマスメディアに次ぐ世界規模の共認支配の道具になりうるからだ。
スノーデン事件で暴露されたように、グーグルやフェイスブック、マイクロソフトに接近し、支配層の一角に取り込もうとしているのは、この世界共認支配への布石だと考えられる。
3.企業が国家を超越する世界秩序
これらの策を講じたとしても、最後に立ちはだかるものが国家の存在である。
先進国における中央銀行制度=国家収奪システムの限界という観点でも、中国攻略という観点でも、現在、金貸したちの生き残り戦略において、国家はもはや寄生する対象ではなく、超えなければならない存在として意識され始めているのではないだろうか。
ロスチャイルドにしても、ロックフェラーにしても、現代の金貸したちの存在形態は、「国際金融資本」あるいは「多国籍企業群」というグローバル企業体である。これは、古代国家を股にかけた交易集団を祖とする彼らにとって必然の姿だと考えられる。だとすれば、彼らの思考の行き着く先は、「グローバル企業体が国家を凌駕する」新たな世界秩序の構築であろう。
ロスチャイルドとロックフェラーは、大戦後の世界覇権をめぐって激しい対立を続けてきた。しかし、上記の大きな目的においては共同戦線を張っている可能性もある(もちろん、戦争を含む個々のビジネスの局面においては闘争を続けている)。
[ロンドン 30日 ロイター] 英ロスチャイルド家のジェイコブ・ロスチャイルド氏が率いる投資会社RITキャピタル・パートナーズ(RCP.L: 株価, 企業情報, レポート)は30日、米ロックフェラー・グループの資産運用事業の株式37%を取得することで合意したと発表した。運用事業で、大西洋を挟んだ名門による提携が実現する。ロスチャイルドにとっては、米国に基盤を築くことにもなる。
昨年5月のロイターニュース
デヴィッド・ロックフェラーのコメント
「ロスチャイルド卿と私は50年にわたり互いを知り合っています。我々2つの家族間のつながりは非常に強いままです。私は、私たちが推進中の投資運用管理と資産アドバイザー業務の株主およびパートナーとして、ジェイコブとRITを大いに歓迎します」
そして、この彼らが目論んでいる新世界秩序の構築に向けた、先進国における実験プロジェクトが、今まさに進行中のTPP(環太平洋経済連携協定)なのではないだろうか。
次回以降、このような観点から、金貸しの今後の動きと世界の行方を考察してみる。
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