2009-04-01

ドル崩壊、世界通貨(SDR?)はどうなるのか

4月2日のG20首脳会議では、各国の財政出動、中央銀行による膨大な資金供給、一定程度の金融取引の規制・監督が合意され、それなりの声明が発表されるだろう。 
 
しかし、肝心のテーマ、ドル崩壊と世界基軸通貨の再興については、英米と中露南米諸国が応酬するだけで、何も進まない。

今週ロンドンでG20首脳会合を目前に控えるが、現状を見る限りこの首脳会合は決裂に終わる可能性が高まっている。先ず発展途上国とロシアや中国がドルに代わる新しい通貨を提案していることに対し、アメリカが反対をし、ヨーロッパも意見がまとまっていない。

G20首脳会議は失敗に終わる可能性が高い(ベンジャミン・フルフォード氏) 
 
世界基軸通貨を巡る、中国と米国の応酬を見てみます。 
 
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  <写真は、中国人民銀行と周小川総裁> 
 
また、歴史の中に埋もれてしまった、ケインズの世界通貨・バンコールについても、簡単にみます。 
 
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IMFのSDRを世界基軸通貨とし、ドル1極体制からの転換を図る提起が、中国人民銀行総裁から行われた。

中国人民銀行の周小川総裁は23日、国際金融システムの制度改革を進める上で、IMF(国際通貨基金)に対し「スーパーソブリン(超国家=国際)準備通貨」の創設を求めた。IMFの特別引き出し権(SDR)の活用範囲を広げて準備通貨とする案で、SDRの構成通貨とその組み入れ比率の見直しを提案している。 
 
SDRは1969年、固定為替相場制のブレトン・ウッズ体制において金や米ドルの供給不足を補完する、加盟各国のための国際的な準備資産として創設された。だがその後のブレトン・ウッズ体制の崩壊でSDRが導入当初にもくろんだ必要性は後退し、現在は政府や国際機関の間での活用にとどまっている。 
 
周総裁は人民銀ウェブサイトに掲載された論文で、今回国際金融危機が発生し、世界中に波及したのは、既存の国際金融制度(ドル一極体制)が持つ固有の脆弱(ぜいじゃく)性とシステミックリスクの表れだと指摘。国際金融制度改革にあたり、個別の国のリスクから独立し、長期的安定を維持できる主権を超越した国際準備通貨の創設を訴えた。 
 
今の国際危機について、どの通貨を基軸通貨とすれば「国際的な金融安定を確保でき、世界の経済成長を促進できるのか」という問題を提起したとし、加盟各国の準備通貨への要求を満たすにはSDRの利用範囲を広げるべきだと訴えた。

「ドル終焉」にらむ中国 国際準備通貨提唱、米は反発(サンケイ・ビジネス・アイ) 
 
一方、米国からは、『今後もドルは基軸通貨であり続ける』、『ドルに代わる通貨は拒否する』という、根拠の乏しい発言だけが行われている。

20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)に出席するため英国に向かうオバマ大統領を乗せた大統領専用機上で、ギブズ大統領報道官は、新たな基軸通貨創設をめぐるロシアや中国の発言に関する記者団の質問に対し「世界の基軸通貨は現在も今後もドルだ、との立場をかなり明確に示してきた」と答え、「米経済の強さと大きさは比類がない」と述べた。(30日ロイター) 
 
ガイトナー米財務長官とバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は24日、ロシアなどが提案しているドルに代わる新たな主要準備通貨の創設を拒否する考えを明らかにした。
バックマン下院議員(ミネソタ州、共和党)はドルに代わる新たな国際準備通貨をめぐる提案について、米下院金融委員会でガイトナー長官に対し、「米国は断固として拒否するか」と質問した。これに対し長官は「その通りだ」と回答。バーナンキ議長も同じ質問に対し「わたしも否定する」と答えた。(24日ロイター)

新たな基軸通貨、世界通貨が、これからの重要テーマになって行きます。 
 
そこで、ケインズの構想した、国際中央銀行・ICUと決済通貨(世界通貨)バンコールについて、扱ってみます。 
 
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   (ジョン・メーナード・ケインズ) 
 
ケインズの忘れられた貿易機関構想より引用です。

イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、世界貿易のルールを全面的に作り替える構想を打ち出していた。彼が提唱したのは、国際貿易機関(ITO)の創設である。また、それを支える国際中央銀行として国際清算同盟(ICU)を設け、国際貿易の決済通貨となる「バンコール」を発行する。 
 
ケインズは1940年代はじめに解決策を考え出した。戦争勃発の一因は、より安く売ることで他の国を出し抜こうとする諸国の貿易政策であり、競争激化によって引き起こされた市場の争奪戦だった。『雇用・利子および貨幣の一般理論』の著者は、いかなる国も市場を独占し、膨大な貿易黒字の累積を得ることができないような仕組みを望んだ。それがICUである。ICUは諸国の中央銀行にとっての中央銀行であり、貿易決済のための国際通貨バンコールを発行する。

国内取引は自国通貨で行われるが、国間の取引きは、相互に信認できる通貨が必要ですね。
多くの国の貿易支払として信認されるものが、決済通貨。世界中の国が信認する通貨=バンコールの提案です。

黒字国にも科せられるペナルティー 
 
ICUの仕組みは次のようなものだ。 
 
ある国の保有するバンコールは、輸出によって増え、輸入によって減る。会計年度末に、その国のICU勘定が黒字でも赤字でもなく「清算」された状態、つまりプラスマイナスがゼロに近い状態になることが目標とされる。各国通貨とバンコールの為替レートは固定されるが、調整は可能とする。 
 
ケインズ案の革新性は、バンコール残高が黒字の国もまた赤字の国と同様に世界経済システムの動揺を引き起こす、言い換えれば、債権国が債務国と同じように安定と繁栄を脅かすという認識にある。

では、各国の勘定残高を限りなくゼロに近づけ、その状態を維持させるにはどうしたらよいのか。 
 
ケインズはすばらしく巧みな方法を考え出した。ICUは新通貨バンコールを発行する中央銀行として、各国に当座貸越枠を設定する。市中銀行と個人顧客との関係と全く同じだ。当座貸越の限度額は、過去5年間の貿易額平均の2分の1とする。 
 
限度額を超えた場合、超えた分に対して利子を支払う。このように、債務国は赤字分に対してペナルティーを科せられるが、ここで実に独創的なのは、債権国、つまり国際収支勘定が黒字の国も、超過分に対して利子を払うことだ。赤字額または黒字額が大きくなるほど利子は高くなる。

貿易赤字国には、世界中央銀行(ICU)がお金=バンコールを貸してあげる。それが、当座貸越。そして、貸付額の限度を5年間貿易平均の1/2までとする。 
 
貿易赤字国は、限度額を超えるとICUからお金を貸してもらえない。バンコールが無いので、他の国は輸出してくれない。だから、必死で、赤字を減らそうとする。 
 
黒字国も利子を払う。利子で、黒字を強制的に減らされるので、黒字国は、他の国から輸入を増やそうとする。

更に、赤字国は、輸出を伸ばすために平価を切り下げ、輸出品の価格を下げることを義務づけられる。黒字国は、その逆で、輸出を抑えるために平価を切り上げ、輸出品の価格を上げる。

平価切下げとは、自国通貨の世界通貨バンコールに対する比率を安くすること。 
 
平価切下げを行うと、輸出品の価格が下がり、輸出が増加する。輸入品の価格は上がり、輸入が抑制される。平価切り上げの場合は、輸出抑制、輸入増加となる。

黒字国が輸出超過を改めない場合は、当座貸越の限度額を超えた分をICUが没収し、準備金に組み込む。ケインズは、この資金を国際警察部隊や災害時の救助活動など、全加盟国にとって有益な活動に用いることを考えた。

よくできた仕組みである。利子を払ったり、更には利益を没収されたりするのを避けるために、黒字国は、こぞって赤字国からの輸入を増やすだろう。赤字国の側では輸出が増え、貿易収支が改善に向かう。

黒字国の超過保有する世界通貨バンコールを没収してしまう所は、すごいですね。 
 
お金を、私権の力として扱うのではなく、世界貿易という、モノの生産と流れを円滑にする為に、必要な評価単位として扱っているのです。 
 
このバンコール構想は、1994年のブレトン・ウッズ会議に提案されましたが、当時の最大のゴールド=世界通貨の保有国である米国の、お金=「私権の力だ」「国力の象徴だ」の前に敗北してしまいました。 

List    投稿者 leonrosa | 2009-04-01 | Posted in 07.新・世界秩序とは?4 Comments » 

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コメント4件

 にほん民族解放戦線^o^ | 2009.09.12 1:33

「水商売」で稼いだカネは兵器産業&日本買収へ…そして貧乏人は水さえ飲めず死んでいく?

         ※画像はシーグラム社で1957年から1989年まで社長を務めたエドガー・ブロンフマン
             http://inri….

 夏も終わり | 2009.09.12 22:04

もともと水事情の悪い貧しい国で「高い水道」を民営化したら上手く行かないというのはよく考えれば分かりそうなもんですよね・・・・

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