2012-08-31

『世界経済の現状分析』【2】米国経済の現状(ファンダメンタルズ)

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(8月6日 シカゴ金融街で行われた雇用を求めるデモンストレーション “flickr”より By ProgressIL
)

前回から始まった『世界経済の現状分析』シリーズ。
その一回目は、以前までの圧倒的な存在感は無いまでも、未だ「アメリカ」を置いて世界経済の話しは語れません。
ということで今回はアメリカのファンダメンタルズをテーマに、統計データと実際の国民生活との乖離などについて迫ってみたいと思います。
まずはいつものヤツをお願いいたします。

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「アメリカは持ちなおしたのか?」そんなウワサがちらほらと出てきている。
実際、アメリカの経済統計の変化を見てみると、08年のリーマンショックから徐々にではあるが数字は改善している。(プロローグでも紹介のあった『米国経済指標』を見てみましょう。
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<GDP・景気・物価・金融・株式>
・GDPは09年はマイナスが目立つが、10年以降はプラスで推移。
・消費者景気信頼感指数は09年の20〜30%台からすると、12年度で60〜70(1985年を100)に回復。
・国債の金利は08年ごろからと比較すると、12年に来て急激に低下傾向。
・FRBによる通貨供給は9兆ドルを超えて10兆ドルに迫る勢い。

<雇用・鉱工業・消費・販売・貿易・原油価格>
・失業率は09年10月が10%とピーク。10年は9%後半、11年は9%前半から8%台、12年は8%前半まで低下。

これらの統計データを見ると徐々にではありますが、アメリカ経済は回復しつつあることが見て取れます。しかしネットで検索してみると国民や専門家の多くが、いまだ回復を確信できない状況が報告されています。ウォールストリートジャーナルの記事を引用します。

気まぐれな改善から抜け出せない米経済
ウォール・ストリート・ジャーナル 8月18日(土)15時17分配信
 ミシガン大学が17日に発表した8月の米消費者信頼感指数によると、米国の消費者は経済に自信を持ちつつある。
しかし、3年間の断続的な回復後に芽生えたこのところのささやかな成長がさまざまな脅威によって帳消しにされてしまうのではないかとの懸念が拭えないでいる。
 今年下半期は出だしこそ緩慢だったが、ここ数週間のうちに発表された経済統計は好調で、景気後退の懸念は和らいだ。しかしその一方で、景気回復がまだら模様で、回復のペースが遅いことも明らかになった。
 ***途中省略***
 経済成長率は停滞したままだ。今年第2四半期の米国内総生産(GDP)の速報値は年率で前期比1.5%増にとどまり、多くのエコノミストは今年下半期の成長率もこれをやや上回る程度と予想
している。失業率は過去3カ月のうち2カ月にわたって悪化、現在は8.3%と高止まりしている。17日発表の消費者信頼感指数には、景気回復が一進一退を繰り返している様子が表れた。つまり、消費者は現状については明るい見方をしているものの、今後についてはさらに悲観的
になっている。
 これまでの経済統計に見通し改善の兆しが表れたことで、米連邦準備制度理事会(FRB)は今後、難しい決断を迫られる可能性がある。FRB高官はこれまで何カ月もの間、失業率を低下させるには経済成長が遅すぎるとの懸念を抱えてきた。今月初め、FRB高官は景気刺激を目的に新たな措置を講じる方向に傾きつつあると強く示唆した。景気が自律的に回復している兆候があちこちにみられるようになり、FRB高官の中には、対策を講じることに消極的になる向きもあるかもしれない。ただ、統計が回復したといっても、内容的にも持続期間の点でも、多くの高官の見方を大きく変えるほどではない可能性はある。
 ***途中省略***
 最近の統計を見ると、夏の初め以降、明らかに回復
していることがわかる。夏の初めには雇用者数の増加が停滞し、消費支出も減少したことを受けて、多くのエコノミストが米国は再度、景気後退に陥りつつあるとの見方を示していた。少数ではあったが、米国は既に景気後退期に入った主張したエコノミストもいた。しかし、米国経済は景気後退入りしたとか、立ち直ったとかいう極端な状態にあるのではない。緩慢かつ不安定な成長パターンから抜け出せない
でいるのだ。
***途中省略***
 MFRのエコノミスト、ジョシュア・シャピロ氏は
「全体としては、非常に停滞した回復と言える」

と述べた。同氏は
「信用・資産バブルが崩壊したあとの回復はかなり長いプロセスとなる。われわれはまだその過程にある」

と続けた。
***以上引用***

上記記事からも分かるように、数値的には回復基調であることは確認できるものの、国民はもちろん、エコノミスト達も、いまだ将来に向けた確固たる成長イメージがもてないのである。そればかりか、更なる景気後退の不安や、数値的な回復基調とはかけ離れた雇用や給与の実態があるようです。
次は米国民の生活実態について調査してみました。

●ITは雇用を生まずに所得格差だけを広げるのか?米国の失業率が回復しない本当の理由
>米国では、GDPに占める企業収益の比率はこの50年で最も高くなっているが、GDPに占める労働の取り分の比率はこの50年で最低水準になっている。即ち、企業はその儲けを設備投資とIT化には振り向けたが、採用と賃上げは抑えたのである。
>ITの発達をうまく利用した人々は、大きな所得を得たが、そうでなかった人々の所得は下がった。1983年から2009年の間に、米国世帯のトップ20%の所得は上がったが、その下80%の所得は下がった。
更に細かく見ていくと、トップ5%が富の80%を得て、トップ1%が富の40%を得ているという大きな格差を生んでしまった。
>儲けている人が更に儲けたところで超過分は貯蓄に回ってしまい、消費に回らない。消費はGDPの70%を占めているので、こういう状態が長く続けばやがてGDPも頭打ちとなる。更に、貧しい家庭に生まれた子どもは、貧しいがゆえに良い学校へも進学できず、機会の平等が損なわれる。更にこれが深刻化すると「打倒!ウォールストリート」のようなデモがいま以上に頻発するかもしれない。

●ウォール街を占拠せよ
>”We are the 99%”はウォールストリートを占領せよの参加者たちのスローガンである。
>1979年から2007年の間に、アメリカの上位1パーセントの収入は、平均すると275パーセント増加した。同じ期間に、60パーセントを占める中間所得層の収入の増加は40パーセントに、下位20パーセントの最低所得層では18パーセントの増加に留まっている
>2007年において、最も裕福な1パーセントが合衆国の全ての資産の34.6パーセントを所有

●1960年代以来最も高い米国の貧困率
>公式な貧困率は2010年の15.1%から2011年には15.7%まで増大するとし、1965年以来、最も高い貧困率であることが判明した。2011年には米国人口の約4700万人、または6人に1人が貧困状態

●見捨てられた人々:中流だったアメリカ人が今やテント暮らしに
多くの州では非合法となっているのだが、今夜、何万人もの元中流アメリカ人が車の中で寝泊りしている。何万人もの人々がテント村や路上で眠っている。その反面、アメリカ中の市町村ではテント村やホームレスの人々を自分達の地域から追い出す方策を議会で通過させている。ひとたび職を失い自宅を失えば、この国ではいうなれば見捨てられた人々になるのだ。悲しいかな、この「見捨てられた人々」の数はアメリカ経済が崩壊する中、増加し続けている。
>今日、シアトルのほぼ3分の1のホームレスの人々が車で寝泊りしている。
>カリフォルニア州ベニス市では、車で寝泊りしていたために人々が逮捕された。

●アメリカの失業率と健康保険の実態
>例えば、ニューヨークのフリーペーパー「AM NEW YORK」の記事には、年収7000万円だったIT系の元エリートの顛末が書かれていた。このエリートは現在「ITコンサルタント」という肩書だが、仕事が週に数時間分しかないこともザラだという。「コンサルタント」というと聞こえはいいが、実態は「オンデマンド」である。当然、収入は激減だ

これらの記事を見る限り、日本でもよくある統計数字と現実の乖離が見て取れます。大本営は日本だけではなくアメリカでも行われているようです。
そればかりか、メディアがまったく取り上げない「自治体の破綻」という事実が、ここ数年でかなりの件数発生しています。

●自治体の破綻が進む米国
>自治体の破産によって犯罪が急増、自警団が結成されているカリフォルニア州のバレホ市の様子を伝えていた。3年前に破産したバレホ市では40%の警察官 が削減されている。
2008年のリーマンショック以来、こうして破産する州や市町村の数はうなぎ登りに増加傾向にあり、 図書館などの公共施設の閉鎖、警察官や消防士、教員などの大幅削減、さらには退職した職員への年金未払いなどが起きて、日常生活に大きな問題 が発生している。
>そんな中、今月9日にはアラバマ州シェファーソン群が破産。負債額は41億ドル(3200億円)に達し、アメリアの自治体破綻では、1994年、カリフォルニア州オレンジ群の17億ドルを上回り、過去最大となった。 また、10月にはペンシルバニア州のハリスバーグが破産を申請しているが、その他にも米国自動車産業の拠点、ミシガン州デトロイトなど10あまりの自治体が 、いつ破綻申請してもおかしくない「破綻予備群」として控えていることが報じられている。
>年収100万ドル(7700万円)以上の年収者である、いわゆるミリオネアがアメリカ議会に集まり、自分たち富裕層の税金を上げるよう、自らアピールしたというニュースが伝わってきた。

●米カリフォルニア州で自治体破綻、先月以降3件目
>米カリフォルニア州サンバーナーディーノ市(人口21万人)議会は10日遅く、市が連邦破産法9条の適用を申請することを決定した。
>カリフォルニア州では先月以降、ストックトン市(人口約30万人)、マンモスレイクス町(人口約8000人)が相次いで破産法の適用を申請しており、自治体の破綻はこれで3件目となる。

●報道されないデフォルト(米国地方自治体破たん)
NY連銀が公表しましたデータによれば、1970年ー2011年までにデフォルトした地方債の件数はムーディーズが公表した<71件>ではなく、<2521件>に上り、その総額は3兆7000億ドルに上るとしています
>1986年ー2011年では、S&Pは<47件>のデフォルトとしていますが、実際には<2366件>となっており、如何に実態が隠されているか報じています

上記のような事実からは、アメリカは既に破綻が始まっているといっても過言ではないと思われます。裕福層とその他の層の格差は拡大の一方で、生活に苦しむ人々が増加していること、自治体の破綻が確実に増加していることなど、表向きの公表数字では見えてこない本当のアメリカが見えてきました。マスコミがこれらを伝えないあたりは、国民の想いを無視して国会議員・マスコミ・学者が一致団結して大企業優位の政策や、消費税増税を決定する国ですから当たり前なのかもしれません。

List    投稿者 imayou | 2012-08-31 | Posted in 07.新・世界秩序とは?No Comments » 

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