2010-08-04

BRICs徹底分析〜ブラジルその3 資源大国ブラジルの巨大企業

前回は「農業大国への道」というタイトルで、ブラジル農業の底知れない潜在能力と穀物メジャー関与の功罪について紹介しました。
今回は資源大国ブラジルの鉄鉱石と巨大企業に着目して、その実態に迫ります。
約22〜27億年前にシアノバクテリアという光合成生物が大量発生します。この光合成反応は、二酸化炭素を吸収し、糖類を生成し、余分な酸素を放出します。この放出された酸素は、海水中の鉄イオンと反応し、海水に溶けない酸化鉄となり、海底に堆積します。この過程は数億年続いたとみられています。世界中の海底に、広大な赤鉄鉱の鉱床が形成されたのです。 
 
その後、造山活動により海底にあった鉱床は隆起し地上に押し上げられた。現在の主要な鉄鉱石鉱山はこのようにして形成されました。 
 
ブラジルは世界有数の資源大国です。
特に、鉄鉱石は埋蔵量で世界第一位、生産量で世界第二位の規模を誇っています。 
 
鉄鉱石の他にも、ニッケル、ボーキサイト、銅、金、マンガン、ニオブ等 鉱物資源を豊富に産出していますが、これらの鉱物資源の多くは、世界最大の鉱物生産企業ヴァーレ社(旧社名:リオ・ドセ)の手によって産出されています。 
 
1.世界最大の鉄鉱山 カラジャス鉄鉱山 
 
2.世界最大の鉄鉱生産企業 ヴァーレ社  
 
3.ブラジルの巨大企業のゆくえ 
 
露天掘りで採掘されているカラジャス鉄鉱山

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1.世界最大の鉄鉱山 カラジャス鉄鉱山 
 
カラジャス鉱山は1967年に発見されました。
ブラジル北部の州であるパラー州に位置する、世界最大の鉄鉱山です。
ブラジルの資源大手ヴァーレ社が所有しています。 
 
カラジャス鉱山の位置を示す地図です。 
 
  carajas2_map.png 
 
ブラジルの鉱山一覧から借用リンク 
 
以下は、「ブラジル紹介:カラジャス鉱山鉄道」から引用させていただきます。リンク

世界最大のカラジャス鉱山はアマゾン河南東のパラー州とマラニョン州に跨る広大な地域を占め、巨大なマシーンを使って露天掘りで鉄鉱石を採掘しています。 
 
カラジャス鉱山、露天掘り風景 
 
カラジャス鉱山のスケールの大きさは露天掘りの巨大な鉱区の写真でも分かりますが、鉄鉱石を運ぶカラジャス鉄道がそれを雄弁に物語っています。
因みに、カラジャス鉄道は鉄鉱石を892km離れたサンルイス港に運ぶために1985年に敷設された鉄道で、CVRD(*注 ヴァーレ社)が運営に当っています。 
 
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サンルイスの積出港 
 
列車の向う先はマラニョン州サンルイスの積出港です。 
 
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(引用終わり)

世界最大のカラジャス鉱山の一端を見ましたが、そのスケールのすごさに圧倒されます。 
 
サンルイス港までの長距離輸送を効率的に行なうため考案されたのが、車両を極限にまで連結する手法で、機関車2両で180両の貨車を連結した長大なものといいます。貨車1台を10mとすると、車両の全長は1.8kmになるようです。サンルイス港からカラジャスへの帰りは、空っぽの貨車なので、機関車4両、貨車360両も連結する為に、なんと、その全長は3.5km以上というものすごさです。・・・想像の限界を超えていますね。 
 
2.世界最大の鉄鉱生産企業 ヴァーレ社 
 
ヴァーレ社 (CVRD) は、リオデジャネイロに本社を置くブラジルを代表する民間企業です。国営時代はリオ・ドセと呼ばれていました。 
 
主力商品は鉄鉱石であり、鉄鉱石の生産・販売のシェアは35%で世界一の地位を占めています。ヴァーレ社、豪・英のリオ・ティントとBHPビリトンは鉄鉱石3大メジャと称され、3社で世界の鉄鉱石輸出量の約80%を占めています。 
 
鉄鉱石からペレット、ボーキサイトからアルミ地金製造など、各種の鉱物採掘とその半加工品の製造、イタビラ(ミナス・ジェライス州)とカラジャス(パラ州)の2大鉄鉱山から専用港までの社有鉄道と海上輸送の総合管理、沿線での植林事業やその利用を目的とした紙パルプ製造など、多岐にわたる事業を展開する一大コングロマリットです。 
 
リオ・ドセからヴァーレに変遷する流れを年表で示します。 
 
・1942年6月、リオ・ドセ設立。戦争中のアメリカ、イギリスに鉄鉱石を供給する国営企業だった。
・1997年5月、ブラジル国内のナショナル製鉄などの企業連合体が普通株の41.7%を取得し民営化された。
・2002年3月、普通株の国家保有分をすべて売却。
・2006年10月、カナダの鉱業大手、インコ社を180億ドルで買収。
・2007年11月、対外的な呼称を「ヴァーレ」に改めると発表した。 
 
好調な鉄鉱需要と純益の伸び 
 
ブラジル日本商工会議所「デイリー経済情報」より引用

昨年のヴァーレ社の純益は51.8%減少 2010/02/11
金融危機の影響で世界的に鉄鉱石需要が減少した影響を受けて、昨年のヴァーレ社の純益は51.8%減少の102億5,000万レアルまで減少、レアルの為替が大幅に上昇したためにドル換算では59.5%減少の53億5,000万ドルであった。
金融危機直後にヴァーレ社は操業の中止や人員整理でルーラ大統領から名指しで批判されたが、世界経済の回復並びに中国の鉄鉱石需要に牽引されて昨年の最終四半期の純益は前年同期比7.7%増加の26億3,000万レアルまで回復してきている。
リンク

中国の鉄鉱需要が牽引する形で世界の鉄鉱需要が急激な伸びを見せる状況において、本年、第2四半期の純益は66億3,500万レアル(*注 円換算¥3250億円)を記録しています。
鉄鉱石は3大メジャーが世界の資源を独占し、価格は一方的に上がるばかりです。新日鉄のブラジルのヴァーレ社からの輸入価格は08年度77ドル、09年度55ドル、2010年度は09年度の90%高の100〜110ドルと史上最高価格での取引となっています。
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3.ブラジルの巨大企業のゆくえ
桜井敏浩氏「急展開するブラジルの産業再編とポスト民営化」より引用させていただいた。リンク

リオ・ドセ社の民営化 
 
CVRD(リオ・ドセ)の民営化は、・・・Valepar グループが、1株32レアル(当時の交換率で30.1米ドル)、総額33.3億レアル(31.4億ドル)という高値で落札した。Valepar にはブラジル銀行年金基金(Previ)等の4大年金基金、背後にはブラジル民間銀行第一位の Bradesco や米国の Nations Bank(その後 Bank of America と合併)等の銀行、その他国際的な大投機家ジョージ・ソロス氏が関与する投資ファンドも加わっていた。 
 
このValepar グループを率いたのは、繊維関係で財を成したVicunhaという企業グループのオーナー一族の一人、ベンジャミン・スタインブルック氏、当時43歳である。スタインブルック氏は、広く人材を外部からも雇い入れて、部門担当責任者に当て、彼らを直轄指揮して経営にあたり、短期間に効率性を上げるという姿勢は、従来の国営企業経営からの大きな転換となった。 
 
2段階の民営化 
 
この金融資本や投資ファンドを主体にした Valepar グループが、民営化買収の後CVRD(リオ・ドセ)の事業経営を効率化して、大幅な利益を上げる実績を示したことは、一見民営化したがゆえの成功例と見られるが、ここで想起すべきは、国営製鉄所8社の民営化後の推移である。
1991年のウジミナス製鉄に始まった一連の民営化で、落札者の中では Bozano Simonsen 等の金融資本が大きな割合を占めた。それらは直ちに外部から有能な経営者を入れて、人員削減等合理化策を推進し、それまでの赤字体質から短期間に脱却して、数年で黒字基調の経営に転換させた。 
 
それを好感して株価が上昇したところで、これら金融資本は株式を売却し、大きなキャピタル・ゲインを獲得して身を退くという経緯が見られた。 
 
製鉄各社は、その後新たな株主の下で中長期的視点に立った設備投資や、さらなる地道な合理化などを行い、経営基盤を固めてきたというのが実態である。 
 
産業再編の行方 
 
これまでブラジル産業界に起きつつある事象を、民営化されたリオ・ドセ社と、現在進行中の製鉄分野での産業再編の具体的な動きを例に説明してきた。これらの状況をみて強く印象づけられるのは、ブラジルの産業が想像以上に、世界経済のいわゆるグローバル化の動きの影響を受けていることである。 
 
資本は有利な投資対象を求めて、国境を越えて自由に出入りし、多国籍企業は地球規模での拠点づくりの一環として、南米市場の将来性を見据え、その要であるブラジルを組み込みつつある。 
 
これらの動きの対象は、CVRD(リオ・ドセ) や製鉄産業だけに留まらず、ブラジルの産業の多くの分野で大なり小なり見られる現象である。 
 
結局はリオ・ドセ問題に 
 
二つには、問題というには明白な形では表面化しておらず、政府・BNDES(注:国家経済社会開発銀行)は建前としても明言を避けているが、外資の参入をどこまで認めるかという、ナショナリズムに関わる意向である。 
 
・・・これはむしろ地下資源採掘というナショナリズムに触れやすい、CVRD(リオ・ドセ) という企業への外資の経営権保有を警戒しての議論であることは明らかである。(引用終わり)

カルドーゾ政権に始まりルーラ政権に引き継がれる開放経済体制下では、グローバリズムとナショナリズムの攻防が激しく水面下で渦巻いているように思います。 
 
民族派のルーラ大統領は、グローバル化の波に飲み込まれようとするヴァーレ社に対し、宥めたり抄かしたり忙しい対応振りを見せています。

ルーラ大統領はヴァーレの2010年の129億ドル投資に対して賞賛 2009/10/20 
 
金融危機後に世界の鉄鉱石や鉄鋼需要が縮小した影響でヴァーレ社は今年の投資計画予算142億ドルを50億ドル削減したために、ルーラ大統領から批判されていた。 
 
昨日、ルーラ大統領とヴァーレ社のロジェール・アグネリ会長は会談を持ち、アグネリ会長が2010年の投資計画予算を129億ドルとブラジルの民間企業の投資計画では最大となり、ルーラ大統領から賞賛された。 
 
この投資計画で同社の従業員は12.0%増加の8万1,400人と大幅な雇用創出に結びつき、また2014年の鉄鉱石輸出は50%増加の4億5,000万トンが予想されている。
ルーラ大統領はヴァーレ社に対して単なる鉄鉱石輸出企業から付加価値の高くて大幅な雇用増加が見込める鉄鋼生産を盛んに奨励している。 
 
同社はパラー州にパラー圧延鋼社(Alpa)に27億6,000万ドル投資して年間250万トンを生産、2013年の操業を予定、またセアラー州に韓国の東国製鋼と共同で300万トンの製鉄所を建設する。 
 
またエスピリット・サント州に年産500万トンのUBU製鉄所を建設して操業は2014年を予定、中国を除いて世界鉄鋼需要が回復していないために投資パートナー選定に困難を極めている。(2009年10月20日付けエスタード紙)

最後に ブラジル日本商工会議所「デイリー経済情報」より関連する記事を紹介しておきます。 
 
生産していない鉱山を接収か 2010/03/10 
 
ルーラ大統領は肥料生産拡大を要請 2010/04/01 
 
今後5年間に鉱業部門への投資は540億ドルに増加 2010/04/30
 
 

List    投稿者 unkei | 2010-08-04 | Posted in 07.新・世界秩序とは?9 Comments » 

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コメント9件

 mosimobox | 2011.05.14 21:41

浜岡原発停止で、自治体が真っ先に交付金を気にするのは薄々感じていましたが、この時期にあそこまで露骨だともううんざりですね。。。
エネルギー問題に答えが出るかは次回を楽しみにしていますね^^

 kuromusi | 2011.05.14 21:42

凄い、恐ろしいペンタゴンですね!
そうやって利権を自分たちでがっちり獲得し、守ろうとする姿勢が見えますね。
これらをどうやって崩していくかが問題ですね。皆で皆のためにを社会を構成する考えにしていきたいです。

 遊撃手 | 2011.05.14 21:57

>原発利権に関しては、見事な五角形というよりは、原発自治体は半分騙されている気もしますが、結局、この原発利権ペンタゴンに対し、一般国民は全くの蚊帳の外、ということは言えると思います。
図解には、「国民」の存在がないんですね。
これ、一番の衝撃でした。
国民には、何のメリットがない政策が、原子力発電。
・・・ばかりか大震災を受けて、多くの国民の生死を左右する大事故を起こし、国民生活を脅かしている。
何なのでしょうか?・・・このイライラ、モヤモヤは??
早くスッキリしたいものです!!

 hey | 2011.05.14 22:02

利権のもとに恐ろしいペンタゴンが存在しているのですね!!!
ペンタゴンにありながら、自治体は半分被害者という構造はあわれです。
交付金ありき・借金で財政を考えること自体、ふつうの一般の感覚からかけ離れています!
一般の国民の意識で国を動かせたら、日本はとても平和で可能性に満ちた国になりますね☆

 のん | 2011.05.14 22:04

前回の利権構造といい、マスコミ&政府の露骨なまでの騙し!
それに便乗して自身の市町村を駄目にしている負の構造が浮き彫りになりましたね☆
私たち国民に知らされない事実がわかったのでそれをどう変えていくかの追求も楽しみにしています。

 ざしきわらし | 2011.05.14 22:17

マスコミ、地方自治体も含めてのペンタゴン体制に国民が搾取されている事実に改めて驚き、怒りを感じました。
利権の為ではなく、国民のために何かしようとする人達が多く出てくることように、これからも追求していきたいと思いました。

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