2009-08-30

イスラム社会の可能性

前投稿ではイスラム諸国の経済力を探りましたが、今回はイスラム社会を支える思想的なところを探って行きたい。
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   写真はこちらからお借りしました。
調べていて、、経済破局の状況下で、イスラムが日本に次ぐ秩序維持の可能性を持っているのではないか、、と言うことです。
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■イスラムの宗教

・イスラム教の成立過程
『縄文と古代文明を探求しよう』の“イスラム教の成立過程”をご覧下さい。
確かに、キリスト教がローマ帝国内で身分序列の下位に置かれた奴隷たちの救い(あの世での救済)として信仰され、それゆえに倒錯性が強いのに対し、イスラム教は、そういう救いという面はありますが薄く、私権や市場を肯定する面が強い(ある意味現実直視?)ように思います。
というのも、メディナを統合したイスラム共同体はその後外へ外へと武力支配を進めてゆくからです。それはキリスト教が表向き平和を唱えるのとは対象的です。

・イスラム教は商人の宗教
同様のブログの“イスラム教は、商人の宗教!①と②”をご覧下さい。
イスラム商会はまさに辻強盗集団でした。
メディナの信者たちは「メッカからシリアへ、そしてシリアからメッカへ向かうきらびやかな隊商が、メディナに銀貨一枚の通行税も払わず、保護を受けたいという謝礼もおいてゆかないことに憤慨し、それこそ辻強盗を働いてでもこうした隊商の態度を改めさせたい」と考えていたのです。
そこにマホメットが辻強盗こそ神の御意にかなう行動であると宣言しちゃうのです! (やっぱりこのあたり、キリスト教が表向き平和を唱えるのと、エライ違いです。)
この略奪強盗によって、イスラムはアラブのもっとも重要な南北縦貫道路を制御するようになります。こうして自在に交易路を操れるようになったマホメットは、メッカへの商品流通を絶って、メッカの人々を干上がらせたのちに、イスラム商会の商品を安くメッカの人民に売ります。
当然そこでは、イスラムの信仰に入るというのを条件にします。(なかなかのやり手です。)このようなことから、イスラムは宗教であるというよりは、史上最大の巨大コンツェルンの定款であり、経営組織の規約とも言われているのです。
イスラム世界は、多くの国が分立していても、神に由来する「法」を通用させることで秩序と統一性を維持しようとしたのです。つまり、他の宗教と違ってイスラム教の教え(秩序)が法にまでなっているのは、まさに、拡大しきった帝国の統合のためだったのです!!結局のところ、略奪行為だけでは国家は維持できないということなのですよね。
いかがでしたでしょうか?
戒律が厳しいと言われていますが、成立当初は略奪三昧の商人集団だったのです。
アラブ内の勢力争いの時は好き勝手に略奪していればよかったのでしょうが、拡大して帝国規模になるとそうはいきません。アラブの荒くれ者を束ねて帝国を維持してゆくために、厳しいイスラムの教え(戒律)に、あえて(回帰)収束していったのです!!

 
■イスラム諸国の教育事情

イスラムという宗教は、様々な意味で神の言葉そのものである啓典『クルアーン』を中心・主軸としている。
イスラムの信仰箇条や遵守すべき規範は、基本的には全て『クルアーン』の解釈から導出されている。
それだけ聞くと、イスラム教徒はさぞかし熱心に『クルアーン』を読んでいることだろう、と思いがちであるが、実はそうではない。「読んでいない」わけではなく、正確には「読めない」人が多いのである。
2003年の国連の非識字率統計によると、非識字率の高い国は1位のニジェール(非識字率82%)をはじめとし、アフガニスタン(非識字率は75%)等のイスラム諸国が非常に多い。
識字率は貧困とも密接に関係し、成人女性の低い識字率、女性の低い就学率と高い退学率等に起因するものとも言われており両親も教育を受けておらず非識字者であり学校教育の重要性を理解していなかったり、貧困のために子どもに労働を強いたりしている実情を表している。
近年、急激に経済が発展しているにもかかわらず、高い乳幼児死亡率、50%程度にとどまっている成人識字率、35%という初等・中等教育合計就学率。
他の途上国同様、経済発展が優先され、社会的弱者の地位が向上されていない。
パキスタンでは、人口問題に対する行政組織として人口省が存在し、女性、子ども、および福祉の対象となる者への行政組織として女性開発・社会福祉・特別教育省が存在していた。特に近年、3つの行政を行っていた女性開発・社会福祉・特別教育省から、女性開発省が独立したことを考慮すると、この分野での行政においても問題意識が高まったと言え、イスラエル諸国も同様の動きになるだろう。

■イスラム社会の婚姻制

イスラムの婚姻制に関しては『知られざる人類婚姻史と共同体社会』の“アラビアの女性”と言う投稿が詳しいです。
イスラム世界は、女性隔離、一夫多妻などの一面から、女性の地位が極端に低いとみなされがちですが、かならずしもそうとはいえない。
昔のアラビアでは、古来母系的傾向が強かったという記録があり、この母系文化は、少なからず現在まで残っているようです。
当初のアラブは、西にローマ帝国、東にササン朝ペルシャ挟まれていたが砂漠の痩せた土地は価値が低く侵略される事なく、小部族たちは遊牧や交易で生き延びていた。
交易を行っていたことから私権性も高いと思われるが、小部族間も部族間闘争が多く外圧が非常に高いので、高い集団性を維持しており、古い形の母系性もかろうじて残っている状況だったと思われます。高い外圧の中で母系性を残した私権集団と言えます。
ムハマンドの時代(7世紀頃)ビザンツ(東ローマ)王国とササン朝ペルシャの慢性的な抗争によるシリア近辺の交通が危険になり、アラビア半島経由での交易が活発に行われるようになった⇒紅海ルート(メッカ)が大繁栄した。
この時点が、ターニングポイントです!メッカが経済急成長する事で、母系の小部族集団は時代に適応して行かざる得なくなってきます。
母系社会から父系社会に  
貧富の差が拡大、社会矛盾の拡大です
 その結果は
 ★母系社会である小集団を統合し、私権闘争の国家体制へ。
 ★商業重視ゆえ、宗教的幻想化が少なく驚くほど現実的であり、
  具体的な社会規範が細かく定義されている。
  弱者救済や、女性救済の規範も数多い。
 ★商業社会だが個人主義は制御されて、集団性の高い文化が創られた。

■イスラム社会の集団性

『るいネット』の“ イスラムと日本の共通点”にある、イスラムと日本の共通性に関する記事を紹介します。
イスラムとの共通性として、信義、礼節や救済と喜捨と共同体としての規範がしっかり確立されているところは、注目すべきところでしょう。
日本とイスラムリンクより引用します。
(5)日本人一般の考え方とイスラムの共通点
A 清潔
B 信義
C 礼節
D 救済と喜捨

また

『るいネット』の“イスラム教も市場原理の危険性を悟っていた”では
彼らは、商人であるが故に、その市場原理が集団性を破壊することを熟知していたのではないだろうか?その経典である膨大な「クルアーン」に戒律的な信仰と行動原理(六信と五行)に表れているかのようだ。そして、当時の状況から、イスラム諸部族の統合と、対外戦略への統一を推し進めることによって民族の自立、尊厳を維持できなかったのだろうと思われる。
現在、イスラム諸国において、石油資源などによる対外貿易は国営とし、国内商業は民営とした、ダブルスタンダードを採用しており、憲法自体がイスラム法に則った国家が多いのも上記の理由から。
遊牧部族を起源とする国家の統合様式としては、イスラムのような、アンチ市場原理主義でなければ成立しなかったのは必然であると思う。そのぐらい、市場原理というものが危険なものであることを再認識しなければならない時期に来ている。

『るいネット』の“イスラムの地域共同体を支えるシステム”では
戦争で夫を亡くした家族に対し、近所の人が声を掛け合い、金銭等を集めて回り、当該家族に直接渡す。あるいはビジネスで成功した人物が、自由意志で慈善団体や個人に喜捨したりする、相互扶助システムの1つである「サダカ」が紹介されている。
「サダカ」はアッラーという神の下での寄付行為であるため、日本の地域共同体システムとは少々趣を異にするものかもしれないが、地域の人間関係レベルでの安定をもたらしているシステムであることは間違いない。

以上、経済テーマから少し外れて宗教、教育、婚姻性、集団性と見てきましたが、砂漠地帯故の貧しさ故に本源性(規範性の高さ、市場依存性の弱さ、一夫多妻にみられる相対的に原始的生活風習)が比較的守られてきたイスラムは日本に次いで秩序維持の可能性が高いと言えます。

List    投稿者 mukai | 2009-08-30 | Posted in 07.新・世界秩序とは?7 Comments » 

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コメント7件

 wacky | 2010.03.13 19:26

>金の裏付けのない、かつ「銀行への債券証書」である紙幣を、何で我々は当たり前の事のように、日常的に使っているのか?使わされているのか?
この理不尽さには全く同感です。私たちはどうして信じ続けなければならないのか。しかし、理不尽さを感じつつも毎日お金を使用している現実にはスッキリできません。お金そのものの存在を否定視してしまうよりは、内容(使われ方)を考え直す必要がありそうですね。

 うっちー | 2010.03.13 19:33

>一般の生活者からみれば、お金の価値は変わらず安定していた方が良いのですが、投機家にとっては変動しないと困るわけです。

変動している市場の中で、利ザヤを儲けるのが投機家。いかに市場を変動させるかが大事。
ってことは、、固定相場制より変動相場制の方が良い、ということになる。
だから変動相場制にしたのでは?
投機家(金貸し)の思惑で市場、社会が翻弄されているようにしか見えません。

 おやじ | 2010.03.13 19:35

お金は金貸しの信用創造と中央銀行制度による発行券獲得により大きく変容しました。
そして、1971年にはお金が価値の裏づけを失ったことで、為替市場にその価値が委ねられるという不安定な存在になる。その不安定さこそが、実は投機家にとってとても都合のよい状況であるという事実。
少なくとも近代以降のお金の歴史とは、一般生活者にとって、金貸しにいいように騙され続けた歴史ともいえそうですね。
そう考えると、狡猾な金貸しの所業にはあらためて憤りを感じます。

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