2010-04-08

電子マネー市場はどうなる?〜欧州における法規制〜

ECBA.jpg シリーズバックナンバー
1.電子マネーは新しいお金となり得るか?
2.電子マネーはいかに普及してきたか?
3.電子マネーと共に普及するポイントシステムの現状
4.電子マネーの”マネー”としての可能性

前回投稿「電子マネーの”マネー”としての可能性」において、電子マネーの拡大は現在の中央銀行を中心とする通貨制度の根幹を揺るがす可能性があるということが書かれています。だとすれば、中央銀行が電子マネーに対して何らかの規制をかけるべく動いていることが容易に想像されます。
そこで今回は、欧州における電子マネーに関する法規制について調べて見ました。
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それでは、欧州における電子マネーの歴史を「欧州における電子マネーの規制について−ノンバンクに対する規制を中心に−(流通科学大学論集)」(片木進)より引用しながら、追ってみましょう。

1.欧州通貨機構(EMI)の報告書
欧州では1990 年代初頭より、ICカード方式のプリペイドカードの発行が活発となり、Danmont(デンマーク)や Primeur(フランス)等は小売り拠点で使用できる汎用カード(multi-purpose card)を発行した。これらのカードはいずれもノンバンク発行のものであり、金融機関は発行に総じて慎重であったが、各国の銀行もProtonカード(ベルギー)、Chipknipカード(オランダ)、Quickカード(オーストリア)等を発行するに至った。こうしたノンバンクと銀行の汎用カードをめぐっての競合は、各国の中央銀行や財務省の注目を集めることとなり、歴史的に長期にわたり金融機関が担ってきた決済システムを、ノンバンクにも開放してよいか、汎用カードが経済社会にもたらす問題点にはどのようなものがあるか、等について研究する必要に迫られた。欧州通貨機構(European Monetary Institute、EMI、欧州中央銀行ECBの前身)の議長であるDuisenberg は機構内にタスクフォースを組成、研究に当らせたが、ワーキンググループは1994 年 5 月に「プリペイドカードに関する欧州通貨機構理事会への報告書」を取りまとめ提出した。その内容は多岐にわたるが、最大の注目点は、発行を金融機関に限定するとしたことであった。
機構の考え方は、中央銀行の立場から将来これが銀行券と競合し、ひいては金融政策の効果を損なうことを強く懸念したものであった。(中略)かくして各国は欧州通貨機構の考え方に沿い、発行者を金融機関に限定する形で法制化を図った。

やはり、中央銀行側(欧州通貨機構)が電子マネーの発展を見越して危機感を抱き、法制化によって現行の金融体制を維持しようと動いていました!
ここで、”ノンバンク”について、念のために押えておきましょう。
「ノンバンク」とは、融資は行うが、預金の受け入れは行わない各種金融機関の総称です。証券や銀行などの免許制の金融機関と異なり、貸金業規制法に基づいて登録をするだけで営業することができます。ノンバンクには主として、消費者金融、クレジットカード会社、信販会社、リース会社が含まれます。ちなみに、アメリカでは銀行などの金融機関以外をすべて「ノンバンク」と呼び、日本でいうところの「ノンバンク」は「ノンバンク・バンク」と呼ぶそうです。

2.電子マネー指令の成立
(1)欧州委員会の提案
欧州委員会の考え方は機構とはやや異なるものであった。その背景は間近(1999 年)にユーロへの通貨統合を控えていたからである。委員会は、電子マネーは今後商取引の重要なツールになると考え、うまく利用すればEU 諸国の通貨統合を安価かつ有効に促進することができる、と考えた。従って委員会は電子マネーの発行を金融機関のみに限定することに懐疑的で、ノンバンクの参入により革新と競争を促すことが必要と主張した。その考えは1998 年 7 月の「電子マネー機関の業務の遂行と監督に関する欧州理事会指令のための委員会の提案(メモ)」で初めて示された。そこでの主な提案は、①金融機関以外に電子マネーを発行できる機関として新たに「電子マネー機関」(Electronic Money Institution、EMI)を創設すること、②EMIに対する規制はやや緩いものとし、参入しやすい環境を作ること、③EMIに対しては所謂single passportを認め、ある国で免許を取得すれば EU域内すべてにおいて業務ができるものとすること。

欧州委員会は、中央銀行側(欧州通貨機構)とは反対の立場をとったわけです。
ここで、”欧州委員会”について押えておきましょう。
欧州委員会とは、欧州連合の政策執行機関で、法案の提出、決定事項の実施、基本条約の支持、連合の日常の運営を担っている組織です。委員会は27人の委員による合議制で運営されており、1つの加盟国から1人の委員が選出されます。委員は出身国よりも欧州連合全体の利益を代表することが求められます。ということは、金貸しと言えども、この組織を操ることは難しいのかもしれません。

(2)欧州中央銀行(ECB)の反撃
欧州委員会の提案に対し、機構の後身であるECBは98年8月に直ちに反論し、「電子マネー報告書」を発表した。ここでは、電子マネーの正常な発展のためには発行機関は金融機関に限定するのが最良の方法であると繰り返しつつも、仮にEMI の創設を認めるのであれば、あやふやな参入条件でなく、明確な法規制が必要であると主張した。これは委員会の提案が電子マネーの将来について見守る姿勢に傾いており、参入条件もかなり緩いものであったからである。その主張の理由としてECBは、①明確な指針がないと市場の分断化が生じ非効率となること、②市場の自由な発展の後に規制しようとすると、極めて高コストにつくこと、③早期の規制により将来の不確実性を除いてこそ革新を促進すること、等を挙げている。ECBは具体的に7つの参入条件を提示し、EMIの規制強化を行うよう主張している。電子マネーの将来について中央銀行が最も惧れたのは貨幣の価値尺度が多数出現することである。即ち規制のないままに電子マネーの発行を自由に認めれば、多くのノンバンクが発行し、アメリカのフリーバンキング時代のように様々な価値尺度を持ったマネーが出現する惧れがある。中央銀行は1国1通貨の原則を維持したいと思っており、そうした価値尺度の複数化を回避するため、電子マネーの法貨への兌換義務を主張したものである。

(3)電子マネー指令の発出
最終的な指令は 2000年9月に Directive2000/46/ECとして発出されたが、ECBの主張の多くを盛り込んだものとなった。いわば妥協の産物として完成しており、当初のEMIに対する緩い規制はかなり厳しいものへと変化した。その主な内容は、①電子マネーの定義を明確化したこと、②EMIに対する参入条件を細かく規定したこと、③国内業務に限定したノンバンクに対する参入条件非適用制度(waiver 条項)を定めたこと、の 3点である。

欧州中央委員会(その裏には金貸しの存在あり)は、自らコントロールできないマネーが膨らむことを最も恐れています。発行主体を一部基準を満たすノンバンクにも開放するという歩み寄りの姿勢は見せましたが、電子マネーの法貨への兌換義務は死守し、モノとサービスが電子マネーのみで交換される世界を未然に防いでいる と言えるでしょう。
次回は、電子マネーが地域社会においてどのように有効活用されているのか、具体例を紹介します。

List    投稿者 shushu | 2010-04-08 | Posted in 07.新・世界秩序とは?3 Comments » 

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コメント3件

 日本を守るのに右も左もない | 2010.11.27 23:19

北朝鮮の延坪島砲撃事件と中・ロのドル離れの背後にあるものは?

11月23日、北朝鮮が韓国・延坪島を砲撃した事件の背後にあるものは? いつも応援ありがとうございます。 …

 ryujin | 2010.12.11 23:10

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金貸しと政治勢力の関係図解はとても判りやすいですね。
次期国家主席と目される習近平がロックフェラー系とすると、ロスチャ系の現政権に対し、ロック系が巻き返しに成功しつつあるということでしょうか?
現実はもっと複雑なのでしょうが。

 hermes men belt | 2014.03.13 6:18

hermes bags celebrities jehovah’s witnesses 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 連載!『中国は誰が動かしているのか?』5 欧米の闇勢力と中国内部派閥の関係は?

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