BRICs徹底分析〜インド編 その1.何故インドではソフト産業にシフトしたのか?
前回までBRICs分析の第一弾として4回にわたって中国を扱ってきました。今回からはBRICsの中でも中国に次ぐ高いGDP成長率を維持し、世界経済を牽引するインドを数回にわたって扱います。
中国が世界の工場と呼ばれ、インドは世界のソフト工場と呼ばれるほどインドにおいてはソフト産業の占めるウェートが高い。IT関連の輸出額は年々飛躍的に増加をたどり2010年には総額600億ドルに上る見込みです。
今回はその1としてインドのソフト産業が大きく育ってきた要因について見て行きたいと思います。
インドにおいてソフト産業が伸びている要因を3点挙げたいと思います。
1.ソフト産業で力を発揮する人材基盤
2.政府のソフト産業育成で生まれるソフトウェア団地
3.成長著しいソフトウェア企業群
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1.ソフト産業で力を発揮する人材基盤
(1)インド人は数学が得意
九九の暗算表です。谷田一虎氏のブログから写真をお借りしました。
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インドは古代から数学に秀でていました。紀元前2600年頃からのインダス文明の時代から10進法に基づく計算を行っていました。インド人がゼロの概念を発見したことは有名です。
現在の小学校では最低限30×30までは九九を暗算で覚えることが必須となっているようです。
(2)英語が準公用語として採用されている
インドの100ルビー札には18の言語と英語が表記されています。その事に象徴されるようにインドは多民族国家です。
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1947年に独立を果たしたあと、公用語となったヒンズー語が共通言語として期待されました。しかしながら北部の民族の使用言語であるヒンズー語に対して南部の民族からは強く反発されました。そこで英語が南北インドの異民族の接着剤の役目を果たすようになりました。1950年には公用語のひとつになりました。
都市部のホワイトカラー層(中間層)の家庭は転勤も多く、転勤ごとに言語が変わるのを避けるため90%程度が英語教育を行う学校に通わせています。この事が結果的に英語を使えるインドのIT技術者が国際的にも重宝されるという結果をもたらしました。
(3)カースト制度が人々をIT産業への志向に向かわせた
ご存知にようにインドではカーストという身分制度が今も色濃く残されています。アーリア人の侵略と先住民族の征服によって自然発生的に生まれた身分階級制度です。1950年にカーストによる差別は禁止されていますが、5000年以上続いた習慣は簡単には消えることなく続いています。
まずは教科書的なおさらいから。
格差脱出研究所さんのブログからお借りしました。
2006年では、下記の構成になっているようです。
バラモン(僧侶・司祭階層):人口の5%
クシャトリア(王侯・武士階層):人口の7%
ヴァイシャ(平民階層):人口の3%
シュードラ(上記3カーストに奉仕する階層):人口の60%
不可触民、指定三間部族民:人口の25%
(笹川陽平さんのブログの記事から転載させていただきました。)
インドでは、身分によって従事できる職業が決まっていますが、カースト制が出来た時に無かった新しい産業(exIT産業は)は選択することができます。
カースト制から外されている階級の仕事とされているのは、清掃、芸能、皮革、酒造、織師、竹細工、金銀細工、弓矢製造、植木栽培、医者、産婆、占星術、洗濯、散髪、動物飼育などです。医者は死体の処理まで任されていたので、下層階級の仕事でした。
((知られざる人類婚姻史と共同体社会より)リンク
多くのインドの子供たちにとって出身カーストが低くても能力が高ければチャンスがつかめる「IT技術者」「ソフトウェア設計者」「医師」は将来なりたい人気の職種になっています。
違う観点では、IT企業の中にあってもインドの技術者は専門職に徹底し、一人一人の役割が明確で、手順書に書かれたとおりの仕事のスタイルを守り、上位者の命令には忠実といわれます。プロジェクトの規模が大きければ大きいほど、大量の技術者を投入すればするほど、彼らのやり方の優位性が目立つといわれます。このこともカースト制度の土壌が寄与しているとの見方をする人もいるようです。
2.政府のソフト産業育成で生まれるソフトウェア団地
ソフトウエア・テクノロジー・パーク(STPI)
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STPIとはインド・ソフトウェア・テクノロジー・パークの英文名であるSoftware Technology Parks of India の頭文字をとったもので、インドのソフトウェア産業振興を政府が全面的に支援する目的で設立された工業団地です。
86年に米国のテキサス・インスツルメンツがベンガルール(旧バンガロール)に開発センターを建設し、成功したことがきっかけとなり、91年にインド電子工業省(現情報技術省)がソフトウェアの開発輸出政策の振興機関としてSTPIを設立しました。
STPIの主な設立目的は、1)開発拠点として必要な情報通信インフラや共有施設の管理、2)輸出入に関する事務手続きの支援を一括提供するための窓口機能の統括、3)輸出促進のための市場調査や技術評価、マーケティング支援の実施、4)開発とデザインに関するIT上級技術者向け教育プログラムの提供と専門家の育成、5)通信面での運営やソリューションのコンサルテーションの実施です。
大量のデータ通信のやりとりを可能にする高速データ通信などのインフラ設備を備えて、パーク内の企業に提供しています。これにより、加盟企業は世界中のクライアントとデータ通信を行うことが可能です。
インセンティブ面では、進出企業への輸出関税免除、10年間の所得税免除の特恵措置など優遇策を実施しています。99年には、政府が売上げ税の免除期間を5年から10年に延長する特別優遇策を採用したため、STPIへの参加企業数が急増しました。
工業団地としての機能の役割もはたしたので、地域経済のインフラ整備に大きく貢献しました。
加盟企業によるソフトウェア輸出のインド全体の70%以上を占め、STPIとそのメンバー企業がインドIT産業の牽引役となっています。その中でもベンガルール(旧バンガロール)STPIの輸出額に占める割合が非常に大きく、これにチェンナイ、ハイデラバード、ノイダが続いています。
STPIが発表した05年度のソフトウェア輸出実績によれば、IT産業を牽引する南部3州の合計はインド全体の63.7%を占め、各州を所管するSTPIの発表では、カルナタカ州は前年度比36%増の3,760億ルピー、タミル・ナドゥ州は同31%増の1,411億ルピー、アンドラ・プラデシュ州は同51%増の1,252億ルピーで、3州の伸び率は全国平均を上回っています。
インド政府は、各州政府と協力して主要都市に工業団地を建設し、ベンガルール(旧バンガロール)、ハイデラバード、プネ、チェンナイ、コルカタなど十数都市に拡大させ現在では二十数都市に設置され、インドのソフトウェア輸出の政府支援策として非常に重要な役割を演じています。
リンク
3.成長著しいソフトウェア企業
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インドの業界第3位のITベンダーであるインフォシス・テクノロジーズ本社
のキャンパス内にあるメディアセンター
インフォシス・テクノロジーは年平均40%以上の成長率を達成しています。本社はバンガロールにあり、大手ITベンダーの本社などが立ち並ぶ「e-city」と呼ばれる一角にあります。「キャンパス」と呼ばれる本社の敷地内にはオフィスビルが50棟近く建ち並びます。
写真はバンガロールで2006年に開かれたIT博覧会
毎年開かれているようです。
これらSTPIのソフトウェア企業群が年々成長著しく売り上げを伸ばし、インドのソフトウェア産業を牽引しています。
以上
<その2に続く>
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コメント2件
hermes bags britain | 2014.02.01 10:45
hermes outlet woodbury commons 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 経済破局を超えて、新しい政治経済の仕組みへ 第9回:特権階級マスコミの大罪、重要な情報ほど報道しない
たつまき | 2011.08.20 4:47
ドル崩壊寸前の米国は放射線破局で存亡の瀬戸際だ:
(1)人口の3/4が住んでいる広域の48原発で上限750倍前後の放射線破局進行中で、国民の生存の脅威増大中だ
(2)ネブラスカの2原発が浸水で放射性セシウム垂れ流し中だ。非常事態宣言で避難実施中。American Fukushima Daiichiと呼んでいる。
(3)1億km2以上のCorn Belt(トウモロコシ栽培地帯)も浸水で放射線が浸透中で、食料・飼料の危機だ。
(4)オバマとマスゴミは2011.7〜8と情報隠蔽・報道をストップして、ナチ化している。ハイル・ロックフェラー!
米国は存亡の瀬戸際に追い込まれている。
詳細は:
http://gold.ap.teacup.com/tatsmaki/84.html