2010-06-27

CO2排出権市場ってどうなっている?2 排出権取引の仕組み

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前回のエントリーでは、今月3日から三井住友銀行が個人向け国債に温室効果ガスの排出権を付けたものを販売しており、身近なところで排出権取引が浸透しつつあるということを紹介しました。今回は、排出権取引の仕組みについて京都議定書排出権を中心に調べてみたいと思います。
1997年12月に京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」において『京都議定書』が採択され、気候変動枠組条約における附属書Ⅰ国(後述)の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある排出削減の数値目標が設定されました。
そして、排出削減目標を達成するための補足的な仕組として市場原理を活用する京都メカニズム(下記の3つ)が導入されました。
①共同実施(JI) <京都議定書第6条>
②クリーン開発メカニズム(CDM) <京都議定書第12条>
③国際排出量取引(IET) <京都議定書第17条>
簡単に説明すると、
・『共同実施』とは、温室効果ガス排出量の上限が設定されている国同士が協力して、それらの国内において排出削減プロジェクトを実施し、その結果生じた排出削減量に基づいてクレジットが発行される
・『クリーン開発メカニズム』とは、温室効果ガス排出量の上限が設定されている国が関与して、排出上限が設定されていない国(途上国)において排出削減プロジェクトを実施し、その結果生じた排出削減量に基づいてクレジットが発行される
・『国際排出量取引』とは、温室効果ガス排出量の上限が設定されている国間での、排出枠・クレジットの取得・移転(取引)
今回は上記3つの京都メカニズムの実施の結果生じる排出権(クレジット)の取引の仕組みについて扱います。
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まずは、冒頭で出てきた『温室効果ガス』、『附属書Ⅰ国』、『数値目標』について説明しておきます。
『温室効果ガス』とは、
 二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類
『附属書Ⅰ国』
   
 温室効果ガス排出量の上限を設定している国で、下表の国々が附属書Ⅰ国とされている国です。
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(リストはこちらからお借りしました)
『数値目標』
 附属書Ⅰ国は、2008年〜2012年の5年間(第1約束期間)の温室効果ガス排出量の上限を設定しています。各国の初期割当量は下式で計算されます。
  
  各国の初期割当量=基準年排出量×排出削減数値目標×5年
 ここで、基準年排出量とは1990年の温室効果ガスの排出量のこと、排出削減数値目標は日本の場合、−6%です。
・排出量取引の概要
 冒頭に挙げた京都メカニズム(共同実施、クリーン開発メカニズム、国際排出量取引)により、京都ユニットと呼ばれる排出権(クレジット)が生じます。京都ユニットとは、初期割当量(AAU)、国内における植物等による吸収量(RMU)、共同実施やクリーン開発メカニズムで発行されたクレジットの取得分(ERU、CER等)のこと。取得したクレジットは各国の国別登録簿に登録されます。そして、これらが排出権市場で取引されることになります。なお、京都ユニットにおける最小取引単位は1t(CO2換算)です。
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・国際取引ログ(ITL)
 各国ごとに取得したクレジットを登録する国別登録簿があり、これを国連の下部組織であるUNFCCCという機関のコンピュータを介して世界各国と電子的に結びます。そのネットワークが国際取引ログ(ITL)です。このネットワークを介して排出権の国際取引が行なわれます。
 2007年末にやっと、日本の環境省にあるコンピュータとの接続が世界で初めて完了しています。
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(表はこちらからお借りしました)
取引の流れを具体的に書くと次のようになります。

UNFCCCでは、自らが認定したプロジェクトにより、実際に地球上からCO2が1トン減ったと見なせるかどうかを判定します。削減が認定された場合には、1CO2トンごとに「排出権」として認められ、シリアルナンバー(通し番号)が付けられて、CDM登録簿に順次、登録されます。例えば、日本の商社が、シリアルナンバー100万から200万までの100万CO2トンの「排出権」を購入した場合、ITLネットワークを通じて、日本政府にある国別登録簿上の商社名義の口座にこれらの「排出権」が移動してくるのです。いわば、”空気の電子取引”のようなことが行なわれているわけです。
商社が購入した「排出権」の多くは、電力会社や鉄鋼メーカー等の、CO2を大量に排出する企業に売却されます。これらの大口「排出権」需要者は、自らも100万CO2トン、200万CO2トンという単位で「排出権」を商社経由で、あるいは直接購入し、経団連の自主行動計画に基づく排出量削減目標を達成しようとしています。つまり、自主努力だけでは達成できない削減目標を、「排出権」の購入で実現するわけです。

     (『排出権取引とは何か』北村慶著より引用)
1-CO2トン当たりの相場は1,000円〜2,000円程度で、「排出権」購入には多額のお金が必要になります。日本は世界一の「排出権」購入国になると言われており、現在の日本が化石燃料に替わるエネルギーとして「原子力発電」に舵を切っている理由は、この辺りのこともありそうですね。
次回は、「排出権」の種類について扱います。お楽しみに。

List    投稿者 shushu | 2010-06-27 | Posted in 07.新・世界秩序とは?10 Comments » 

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コメント10件

 SSS | 2011.02.28 12:20

今回の京大流出事件もその典型(勉強するのはなんで?)かもしれませんね、、、

 mtup | 2011.02.28 14:01

SSSさん、コメントありがとうございます。
京大だけでなく、早大、立教大、同志社大でも同じHNで書き込みがされていたようですね。
最近、卒論をコピペして炎上した女子大生もいたようですが、何のために大学に行って、最終的に何をしたいのかがない学生が多いのは間違いなさそうです。
彼らに活力を与えてやる『答え』を供給するのが急務のように感じます。
これからもよろしくお願いします。

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