2012-06-13

米国はどのように衰退してゆくのか?(5)〜米軍分裂の可能性は?〜

 前回の記事では、アメリカの侵略の原動力である軍産複合体について扱いました。アメリカの政策決定にはペンタゴンと固く結びついた軍事産業が背景にあることがわかりました。
米国はどのように衰退してゆくのか?(4)〜侵略国家の中枢、軍産複合体〜
今回は、米軍の内部で分裂があるのかについて追求してみたいと思います。

 株式会社ワシントンD.C.の混乱が深まっている。CIA上層部などによると、ワシントンD.C.にいる多くの政治家が米軍部による政変に備えて国外逃亡の準備を始めているという。
 米軍部とオバマの関係悪化に拍車が掛かったのは、オバマが『大統領は、司法プロセスを通さなくとも国民を殺害、もしくは無期限に刑務所に入れる権限がある』と米国市民に対して堂々と主張した一件が切っ掛けだった。この一線を越えたオバマの言動に、米軍部もさすがに愛想を尽かした格好だ。最近もまた、オバマをはじめ、第三次世界大戦を狙うワシントンD.C.にいる米連銀の賄賂漬け奴隷政治家が「イラン核開発疑惑」を理由にイランへの攻撃命令を下したところ、米軍部は再びこれを却下している。
ベンジャミン・フルフォード有料メルマガ ≪2011-12-05号Vol.153

 この記事によれば、ワシントンと米軍の亀裂が深刻でワシントンが軍を統率しきれておらず、米軍がクーデターを起こすというのです。(!)果たして本当なのでしょうか?周辺の記事から見ていきたいと思います。

NSC-table.jpg
米国国家安全保障会議(画像はこちらからお借りしました)

続きを読む前に、応援お願いします

にほんブログ村 経済ブログへ


 米国内で軍の統率が取れていないのではないかという話は以前からありました。例えば、2007年のプーチン首相の暗殺疑惑の際、米軍の高官から情報リークがあったことで未遂に終わりました。


(画像はこちらからお借りしました)

イラン訪問中のプーチンをカタールから核(小型のものだろう)ミサイルで攻撃して抹殺しようとしたが(すでに米軍はイランの1200カ所のターゲットを3日で攻撃するプランを立てている)、それに失敗して米首脳はパニックっているようだ。プーチンを爆殺して、米・イスラエルのイラン攻撃に対して、ロシア側から反撃させない計画だったが、そのシナリオは潰れた。決行前に米軍の高官から情報がロシアに流れた(というかロイターなどの一般メディアでも報道された。あくまで“自爆テロ”ということだが)。一般にこういった情報が流れていること自体、ブッシュが軍を統制できていないことを示す(先日、独シュピーゲル誌のコラム記事にも同様のものがあったが)。今米軍は内乱状態である。9月にはB-52の核「誤」搭載の関係者が不審死。 自国の偵察衛星を自軍の反対勢力が打ち落とす(ペルーに落下)。10月には空軍の高官が「自殺」している。 (後略)
米国、プーチン暗殺未遂-You are screwed[2007.11.3]

 反米・反イスラエルのプーチンは、ユダヤ金貸し勢にとって邪魔な存在です。そのプーチン暗殺を阻む勢力が米軍の中にいる、つまり金貸しに反抗する勢力が存在するということがわかります。しかも、このとき暗殺を阻んだのは高官。軍内の反金貸しの勢力はある程度の大きさではないかと考えられます。またこの記事によれば、ブッシュ政権時代末期にはそれ以外にも米軍内部分裂が起こっていることを暗示する事件がいくつもあったようです。

★金貸しが戦争屋ハリバートンを米国から引き剥がした
 同じ年、米軍事産業のハリバートン社が本社をドバイに移すというニュースがありました。


(画像はこちらからお借りしました)

ベトナム戦争で、米軍の食糧・燃料・水・兵器・弾薬の供給を担当した、文字通り戦争の「生命線」=兵站部を担ったのが、チェイニー副大統領の経営するハリバートン社であった。
クリントン政権時代のユーゴ空爆でも、現在のブッシュ政権のアフガニスタン戦争、イラク戦争でも、兵站部を担ったのは、ハリバートンであった。
1919年に創立され、長年、米国・米軍の戦争の「心臓部」であった戦争屋ハリバートンは、米国を「見捨て」、本社をドバイへ移し、形式的に営業部をテキサス州ヒューストンに置き、会社登記はデラウェア州に置く事を決定した。
米軍の「心臓部」が、遂に「米国を見捨て」、世界政府の「軍隊」へと「成長する」時が来た。
世界の真実を求めてより)

 この2007年のハリバートンの移転には背後にドイツ貴族とサウジアラビアの王子がかかわっており、この貴族・王室のネットワークがビジネスの基盤となっていることが書かれています。つまり金貸し=欧州貴族の手引きでハリバートンが移転したということです。(リンク)そして、これに対し「税金逃れ」だと民主党の議員が猛反発しています。(リンク
 前国防長官のゲーツも、オバマ政権によって軍縮の方向を示す(F22の開発中止等)たびに軍事産業から反発をくらっていましたが、前回の記事で見たような軍産複合体の結びつきは弱まっているように思えます。

★イラン制裁問題での迷走
 イランの核開発に対してアメリカは長年干渉を続けてきました。「核なき世界」を標榜するオバマ政権下でも特に厳しい制裁を行ってきているように見えますが、2011年後半からのイラン核開発疑惑を巡り、これまで一枚岩だと考えられてきたアメリカとユダヤ=イスラエルの意見のばらつきが目立ちます。


パネッタ国防長官(画像はこちらからお借りしました)

●イスラエル国防長官「期限迫る」パネッタ「イスラエルが攻撃する可能性」(リンク
 イスラエルのバラック国防長官は2日、「イランの核開発阻止に期限が迫っている」とし、イラン核施設に対する空爆の方針を明らかにした。米国のパネッタ国防長官は、イスラエルが早ければ今年4月にイランの核施設を攻撃する可能性が高いと見ていると、米紙ワシントン・ポストが3日付で報じた。

●パネッタ国防長官「イランは核爆弾は開発していないし、所持もしていない、またアメリカはイランが核兵器を開発しようとしているという情報も持っていない」(リンク

●イスラエルも分裂?参謀総長「イランは核兵器開発に進まない」(リンク
 イランによる核開発問題でイスラエル軍のガンツ参謀総長は25日、イランは「非常に理性ある指導者」に導かれており、イスラエルに脅威を与える核兵器開発に進むとは受け止めていないとの考えを示した。
参謀総長の今回の発言は、イランに対する欧州諸国の経済制裁は同国に核開発計画を放棄させるほどの効果を挙げておらず、時間切れが迫っているとするネタニヤフ・イスラエル首相に反論する形ともなった。

 金貸し=戦争屋からすればイランへの武力攻撃は当然ですが、今やそれを支持するのもイスラエルの一部勢力(ネタニヤフ首相派)だけのようです。そして長い間イスラエル・ロビーに操られていたアメリカも、金貸しの思惑通りに動いてはいないようです。

★米露合同軍事演習

 2012年5月12日、アメリカのコロラド州で米露合同軍事演習が行われました。米本土でロシアが軍事演習を行うのは史上初。両者は冷戦時代よりお互いを敵視し、様々な場面で対立していたことを考えれば、非常に異例なことだと言えます。


向かい合う米ロ両軍(画像はこちらからお借りしました)

12日、ロシアの空挺部隊の代表団はコロラド州のフォートカーソン基地で行われる初の反テロ共同演習に参加するため米国へと向かった。
今回の共同演習には米国側からは陸軍特殊作戦部隊がロシア側からは特殊部隊の偵察班が参加する。
ロ米両国の空挺部隊は、偵察・破壊工作ミッションにおいて国際テロ組織の大規模な施設の発見および占拠を想定した軍事訓練を共同で行う。
タス通信 2012/05/12

 この演習は、オバマとプーチンが仕掛けたものだと分析しているブログもあります。(リンク)少なくとも、こうしてニュースになる以上、オバマはこの事を容認していたと思われます。
★まとめ
 以上の事象及び前回前々回の記事も踏まえて、米軍内部でどのような分裂が起こっているか考えてみます。
 まず前提として、これまでの米軍はイスラエル・ロビーと強く結びついたネオコン(その背後にブッシュ・CIA=軍産複合体=金貸し)の主導で動いていました。しかし軍縮に向かうオバマ政権になってネオコンをとりまく情勢は悪化しました。イラン問題を見ても、オバマ政権のイスラエル・ロビーからの離反は見て取れます。またそもそも米軍の中にもネオコンと対立する勢力が存在していました。これは、プーチン暗殺未遂事件で米軍の高官が情報をリークしたことからも見て取れます。
 ではその軍内部の対立構造はどのようになっているのでしょうか。当ブログでは3記事の結論として、

米陸軍=愛国派
VS
米軍(主に海軍?)=金貸し=軍産複合体=ネオコン=イスラエル


という勢力分布があると仮説を立ててみます。
 陸軍は独立戦争前からその前身が存在し、本土防衛を主任務としているという特徴があります(⇒愛国精神が根付きやすい)。また陸軍は四軍の中でも兵器に金がかからないこともあり、軍産複合体=金貸しとの結びつきは比較的薄いといえます。前回の記事で見たように、軍産複合体に警鐘をならしたアイゼンハワーも、イラン攻撃にブレーキをかけたパネッタも陸軍出身です。
 一方、海軍ができたのは独立戦争でイギリス海軍と戦った時です。リンクによれば、当時のアメリカ海軍は欧州の金貸しに雇われていた海賊や欧州の海軍崩れで構成されていたようです。その後第二次世界大戦を迎え、兵器に金のかかる海軍(⇒海兵隊)は軍産複合体=金貸しとの結びつきがさらに強くなっていきます。また軍の特徴として、海軍(⇒海兵隊)は海外に出て戦争をすることが主任務となっています。
 このことから、米軍内に対立構造が存在しているとしたら、四軍の中でも愛国精神のある陸軍と、金貸しの息のかかった軍(主に海軍)との対立が考えられるのです。
 ベンジャミンの記事が訴えるように米軍の反ユダヤ勢力がクーデターを起こそうとしているのかはわかりませんが、米軍内での分裂は深刻になってきているのではないでしょうか。さらに、軍だけでなく、政府中枢そのものも分裂の度を強めている可能性があります。11月の大統領選次第では、新たな動きも出てくるかもしれません。
 引き続き、注目していきましょう。
 来週からは、軍と同じくアメリカを動かしている金融について見ていきたいと思います。
 お楽しみに

List    投稿者 banba | 2012-06-13 | Posted in 07.新・世界秩序とは?No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2012/06/1884.html/trackback


Comment



Comment