2012-06-06

米国はどのように衰退してゆくのか?(4)〜侵略国家の中枢、軍産複合体〜

08年世界金融危機以降、米国覇権の凋落は明らかとなりましたが、現在のところ、その崩壊は緩慢に進んでいるように見えます。

マスコミから米国の情勢は殆ど発信されず、せいぜい大統領選の推移が時おり流れる程度で政治・経済的に大きなニュースはありません。その一方で、ネット上では、米軍やCIAの分裂、州の独立、旧支配階級の一斉逮捕など、驚くべき事態の急展開を伝える記事が増えています。米国内は一体どうなっているのか、状況が読みにくくなっています。本シリーズでは、衰退の途にある覇権国家アメリカを改めて扱ってみたいと思います。

前回は現在のアメリカの軍事力を扱い、「アメリカの侵略の要である軍事力がどれほどの規模なのか」が解りました。

米国はどのように衰退してゆくのか?(3)〜アメリカの侵略を支えてきた軍事力〜

今回は、「アメリカの軍事力拡大が生み出した軍産複合体とその支配を止めようとした動き」を紹介したいと思います。

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軍事予算の推移と軍産複合体の形成

アメリカの軍事力拡大を語るには、軍産複合体は欠かせません。軍産複合体の悪行をアメリカの戦争と軍事費とともに見ていきたいと思います。

 

米国の連邦政府の軍事予算は、1940年はわずか17億ドルでした。それが、第二次世界大戦に参戦する段階で圧倒的に拡大し、1945年の予算は、830億ドルに膨らんでいます。また、1945年の軍事予算830億ドルは、連邦予算の90%を占め、対GDP比率で38%となっています。まさに、戦時国家の軍事予算です。

軍事予算は、1848年には91億ドルと戦時予算の1/9にまで縮小しました。しかし、1950年に朝鮮戦争が勃発し、再度軍事予算が急拡大していきます。そのピークは停戦が行われた1953年であり、総額528億ドル、連邦政府予算に占める比率69%です。

継続的な軍事費が、兵器産業と軍の恒常的な結合をつくり上げ、アンゼンハワー大統領が指摘する「軍産複合体」が生み出されます。

軍事予算の推移は、アメリカ合衆国行政管理予算局(Office of Management and Budget、略称OMB)の長期統計からです。

 

1960年代前半の軍事予算は、500億ドルの水準で推移しますが、1963年にケネディが暗殺され、その後を継いだジョンソン政権の下で、1965年から始まるベトナム戦争で、また拡大し、1969年には825億ドルと1.5倍程に達しています。
米中国交回復を行ったニクソン政権、その後を継いだフォード政権はあまり軍事予算を拡大させていません。フォード政権と交代したカーター政権も、エジプト・イスラエルの和平交渉をまとめるなど、平和外交・軍縮外交を基調とした為に、軍事予算はあまり拡大していません。緩やかに増加しているのは、インフレに伴う増加です。

それが、1981年からレーガン政権で一変します。レーガン政権は、ソ連を「悪の帝国」と呼び、この悪の帝国から米国を防衛する為にと、「戦略防衛構想」(通称スターウォーズ計画)を立案し、巨額の宇宙兵器開発と配備を行っていきます。カーター政権の1000億ドルの軍事予算を、3000億ドル(1989年)と3倍にも膨らませています。

このレーガン政権の軍事費急拡大、ハイテク兵器・宇宙兵器の導入で、米国の軍産複合体が一層強固なものになりました。

 

レーガン政権が膨らませた軍事予算を、パパ・ブッシュ政権は継続させますが、1993年からのクリントン政権は一定削減し、1998年には2860億ドルと、約5%、インフレ率を考えると10%程度削減しています。軍産複合体にとって、クリントン政権は歓迎できない政権でした。

軍産複合体が期待し、梃入れを行って成立したのが、ジュニア・ブッシュ政権です。政権1年目の2001年に9.11が起り、アフガン介入を行い、2003年にはイラク戦争に突入していきます。軍事費は急速に拡大し、2003年には4000億ドル、2005年には5000億ドル、2008年には6000億ドルと急ピッチで増加しています。2008年以降は、リーマンショック後の景気後退を防ぐために、さらに軍事予算を膨張させ、2010年予算(ブッシュ政権最後の予算)では、7000億ドルに達しています。

ジュニア・ブッシュ政権と軍産複合体

軍産複合体から期待されたジュニア・ブッシュ政権。兵器産業他との関係はどうだったのでしょうか。

以下、『「政治を国民の手に」国民会議』より引用

年間20兆円の戦費がかかるイラク戦争は軍産複合体にとってビジネスの宝庫である。軍産複合体には兵器や武具を開発生産している伝統的な「軍需企業」のほかに、国防総省のLOGCAP(兵站民間補強計画)に基づき兵站の民営化に参加する「兵站企業」、米軍の元兵士や元士官を高給で雇い戦地へ送り込む「傭兵企業」など様々である。
ところでブッシュ政権の最高幹部の前身は、例えばチェイニー副大統領はハリバートン(軍需大手)CEO、ライス国務長官はシェブロン(石油大手)役員、パウエル前国務長官はエアロスペース(軍用機)取締役、ラムズフェルド前国防長官もエアロスペース取締役といったように軍需大手や石油大手と密接な関係を持っている。

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<左から  チェイニー副大統領・ライス国務長官・パウエル前国務長官>

※ハリバートン(Wikipediaより)
:主要部門は資源サービスグループで、石油と天然ガス探査及び生産設備を製造する。また、イラク戦争後のイラクにおける運輸事業などの各種復興事業や、海外に展開するアメリカ軍のケータリングサービスの提供も行うなど、様々な事業を展開している。

※エアロスペース(双日エアロスペース株式会社HPより)
:航空・宇宙・陸上・海上関連機器を中心にあらゆるフィールドの最先端テクノロジーをビジネスとして扱い、企業のパートナーとして、また安全保障の担い手として、防衛産業および民間産業の発展におおきく貢献している。

軍産複合体の強力な政治力の影響か、イラク開戦以来、兵士が使う装備の価格が急上昇している。銃器、防弾チョッキなど兵士が身につける装追う備の価格は1999年に7千ドルだったが、最近では4倍の2万5千ドルに値上がりしているという。また装甲車の価格は01年に3万ドルだったが、今では7倍の22万ドルに値上がりしている。
またラムズフェルド前国防長官はイラク侵攻時に大量の地上軍派兵に反対し、新型戦闘機やIT装備などのハイテク兵器の巨額な開発事業を推進してきた。その理由の1つとして「地上軍を増やすと兵士の人件費が増え、空軍と海軍のハイテク兵器開発の軍事費が減り軍需産業に不利」になることが挙げられている。
さらに民営化された兵站業務はチェイニー副大統領と密接な関係のあるハリバートン社の子会社であるKBR社がほぼ独占的に受注している。当社は兵士への給食をはじめクリーニング、住宅など陸軍への兵站支援事業と油田の消火活動や石油採掘関係の事業を行い2003年には約7500億円の売上げを上げた。
ところで米国では最近新兵の募集が難しくなっており、本来米軍がやるべき仕事の一部を米英の元将校らが経営する傭兵企業にアウトソーシングしている。国連調査ではイラクに駐留する外国兵力のうち30%を占める5万人前後が傭兵で、その数は米軍の15万人に次ぎ2番目、3位のイギリス軍の1万人より多いといわれている。

※補足:「ブッシュ政権(2001年発足)の閣僚と財界のつながり」。ジュニア・ブッシュ政権の大臣・高官の軍事産業他とのつながりが詳細にリスト化されています。

このようにアメリカの軍事力は、軍産複合体 の支配と共に拡大してきました。一方、この不当とも言える拡大・支配に警告を発し、対立した大統領がいます。

軍産複合体と対立した大統領

○ジョン・F・ケネディ

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<ジョン・F・ケネディ>画像はコチラから

ケネディは1963年11月22日に、遊説先のテキサス州ダラスの市内をオープンカーでのパレード中に狙撃され、暗殺されます。

米国の公式見解・暗殺真相究明委員会(ウォーレン委員会)は、リー・ハーヴェイ・オズワルド一人によって行われたとしますが、さまざまな矛盾が存在し、軍産複合体・CIA説やマフィア説が存在します。

◆軍産複合体の意を受けた政府主犯説
ケネディはその大統領就任中に、ベトナム戦争からの早期撤退を計画したが、急進的なベトナム戦争撤退の方針が産軍複合体の利害と対立して、ケネディ暗殺につながったという説。

◆サム・ジアンカーナを中心としたマフィア主犯説
サム・ジアンカーナは、ケネディ家と古くから深いつながりを持っており、ケネディの当選の陰の功労者であることが明らかになっている。しかし、ケネディ政権が弟のロバート・ケネディを中心にしてマフィアに対する壊滅作戦を進めたことを「裏切り」と受け取ったジアンカーナらを中心としたマフィアが、「裏切り」への報復と壊滅作戦の停止を目論んで行ったとするもの。

イスラエルの核武装に反対していた。

ケネディはまた、イスラエルの核開発に対し強硬に対応した数少ない合衆国大統領として知られている。建国直後から、アメリカやイギリス、フランス等から明暗の力を得て核開発に邁進したイスラエルだが、ケネディは大統領就任直後から「イスラエルが核を取得することは中東に大きな戦禍をもたらすことになる」という考えを元に、何度も外交勧告を行い、ついには査察団まで送り込んでいる。

ケネディが、軍産複合体、核兵器開発勢力にとって、好ましくない大統領であったことは確かです。

○ドワイト・D・アイゼンハワー

<アイゼンハワー氏の離任演説>

元陸軍で大統領になったドワイト・D・アイゼンハワー氏は、1961年の離任演説で以下の内容を話しています。

アイゼンハワー「告別演説」 訳 斉藤眞 一部解りにくい部分を改)

第2次世界大戦まで、アメリカは軍需産業というものを持ったことがなかった。というのも、アメリカでは、時間的な余裕があったため(平時に)鋤<すき>を作っていたものが、必要に応じて(戦時に)剣を作ることですますことが出来たからである。しかし現在では、一旦緩急になってから急に国防の備えをなすという危険を冒すわけにはいかなくなっている。その点、我々は大規模な恒久的な軍需産業を創設することを余儀なくされている。(一部略)我々は、アメリカの全会社の年間純総所得を上回る額を、軍事費のために年々消費しているのである。
こうした大規模な軍事組織と巨大な軍需産業との結合という現象は、アメリカ史上かつてなかったものである。その全面的な影響力・・・経済的な政治的なさらには精神的な影響力までもが、あらゆる都市に、あらゆる州政府に、連邦政府のあらゆる官庁に認められる。我々としては、このような事態の進展をいかんとも避けられないものであることはよく解っている。だが、その恐るべき意味合いを理解しておくことを怠ってはならない。
(一部略)政府部内の色々な会議で、この軍産複合体が、意識的にであれ無意識的にであれ、不当な勢力を獲得しないよう、我々としては警戒していなければならない。この勢力が誤って擡頭(=台頭)し、破滅的な力をふるう可能性は、現に存在しているし、将来も存続し続けるであろう。
この軍産複合体の勢力をして、わが国民の自由や、民主的な過程を危殆ならしめることがあってはならない。何事も仕方のないこととしてはならない。警戒心を怠らぬ分別ある市民のみが、この国防上の巨大な産業と軍事の機構をして、わが国の平和的な手段と目的とに合致せしめ、安全と自由とを共に栄えしめることが出来るのである。

アイゼンハワーの警告、ケネディの抵抗があっても、アメリカの軍産複合体は、レーガン政権、パパ・ブッシュ政権、ジュニア・ブッシュ政権の元で、一層強固な勢力を形成していきました。

次回は、財政事情から、軍事費を削減せざろう得なくなったアメリカ、軍事費削減に向けて舵を切ろうとしてきたオバマ政権での軍産複合体、政権内の軋轢、亀裂に迫ってみます。

List    投稿者 MITA | 2012-06-06 | Posted in 07.新・世界秩序とは?No Comments » 

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