2010-07-21

BRICs徹底分析〜ブラジル編その1:『新世紀ブラジル』

BRICs各国を中国、インドと扱ってきました。今回からブラジルを数回に分けて扱っていきます。
ブラジルは2008年に、日本からのブラジル移住100周年を迎えました。
プロレスのアントニオ猪木さんが日本からのブラジル移民だったことは良く知られています。その他に皆さんはブラジルのどんな事をご存知ですか?
 
 ・英雄ペレ選手を生んだサッカー大国
 ・リオのカーニバル
 ・コーヒー豆の生産が世界一
 ・世界最大の熱帯雨林アマゾンが広がっている
 ・日本とは地球の裏側の位置にある 
 
上記以外に他の特徴をすぐさま挙げられる人は少ないのではないでしょうか?
知っているようで意外と知らないブラジルですね。 
 
今回は第1回として、『新世紀ブラジル』と銘打って、今世界で最も活力に溢れているブラジルの側面をいくつか紹介したいと思います。
1.世界のスポーツの祭典が立て続けにブラジルで開催 
(1)2014年サッカーワールドカップの開催が決定している。
(2)2016年リオデジャネイロでのオリンピック開催が決定している。
 
 
2.経済大国への道を歩むブラジル  
(1)世界一を目指す農業大国
(2)鉄鉱石は生産量世界1位
(3)2008年に埋蔵量3位とも言われる海底油田発見
 
 
3.ブラジルを牽引してきた、優れた指導者ルラ大統領とその路線 
 
その前に応援を 
 
  
 

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1.世界のスポーツの祭典が立て続けにブラジルで開催 
 
(1)2014年サッカーワールドカップの開催が決定 
 
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【2017年10月31日 AFP】(一部更新)国際サッカー連盟のジョセフ・ゼップ・ブラッター会長は30日、サッカーW杯2014年大会を、唯一立候補していた南米のブラジルで開催することを正式に発表した。 
 
5度の優勝を誇るブラジルが開催国となるのは1950年以来2度目。この年リオデジャネイロのマラカナン・スタジアムで20万人近くの観客を前に決勝に臨んだブラジルは、ウルグアイに2−1で敗れているが、神話的な会場である同スタジアムに全面的な改修を施したことがブラジルの開催地決定における鍵となった。 
 
欧州サッカー連盟のミシェル・プラティニ会長もブラジルでのW杯開催を歓迎しており「ブラジルはサッカーに多くをもたらした国であり、W杯史上最多の優勝回数を誇る世界最大のサッカー大国だ。ブラジルでのW杯開催はメッカやエルサレムへの巡礼のようなものだ」と語っている。リンク

前回の決勝ではスタジアムに20万人も集めたんですね。「サッカーでのメッカやエルサレムへの巡礼のようなもの」というのもすごいですね。つい先頃、南アフリカでのワールドカップが大盛況のうちに終わりましたが、自国のチームを応援する熱狂振りは愛国心を最も象徴的に現しているように感じました。ブラジルでの国民の熱狂が今から目に見えるようです。 
 
(2)2016年リオデジャネイロでのオリンピック開催が決定 
 
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ブラジル大統領、歓喜の涙 
 
2016年の第31回夏季五輪開催地にリオデジャネイロが選ばれた。開催決定発表後に開かれた記者会見で、感極まったブラジルのルラ大統領が泣きだした。「(最後の訴えの場の)プレゼンテーションの最中に泣くわけにはいかなかった」と涙をぬぐい、「皆さんは過去に何度も喜び、私たちは何度も悲しんだのだから」と喜びを爆発させた。 
 
リオデジャネイロが「南米初の五輪開催」という歴史的な瞬間を刻んだ。経済成長を続け、途上国から先進国の仲間入りを目指すブラジルは、五輪開催が決まったことで「未来へ向けたスタート」を切ることになる。 
 
ルラ政権はW杯が開催される14年の完成を目指して、リオとサンパウロなどを結ぶ高速鉄道の建設に乗り出す。リオ沖合の深海底で発見された大規模な油田は、ブラジルを中東に匹敵する主要産油国に変えるのは確実で、15年ごろには生産が本格化する。 
 
また、国際オリンピック委員会(IOC)との開催都市契約書署名式では、パエス市長がペンに何度もキスしてからサイン。南米初の五輪招致成功を、明るく、情熱的に祝福していた。リンク

旧くは、日本が東京オリンピックで新幹線を開通させ、カラーテレビを普及させ、大いに沸きかえったように、近年では中国が北京オリンピックと上海万博で大いに沸いたようにブラジルでも南米大陸で初めてのオリンピック開催に沸きかえっています。ルラ大統領の感動の涙が印象的です。 
 
2.経済大国への道を歩むブラジル 
 
2009年名目GDPは
        単位(10億USドル)
1位 アメリカ 14,256.28
2位 日本    5,068.06
3位 中国    4,908.98
4位 ドイツ   3,352.74
5位 フランス 2,675.92
6位 イギリス  2,183.61
7位 イタリア  2,118.26
8位 ブラジル 1,574.04
G7のカナダを上回って堂々の8位にランクされました。そして2010年四半期のGDP成長率は前期比2.7%、前年同期比9.0%で年率換算では中国の経済成長に匹敵する11.2%となり、ギリシア危機によりユーロ各国が低迷しているのとは対照的に世界金融危機から脱したブラジル経済の好調さが現れています。近い将来世界第5位の経済大国になるだろうと予測されています。 
 
(1)世界一を目指す農業大国 
 
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世界の穀倉ブラジル、セラード地帯に脚光、米国抜くのは時間の問題 
 
ブラジルは農業大国としての地歩を固めつつある。年間一千五百億ドルの取引き、輸出総額の四O%は農産品、畜産品で占められ、今はブラジルのエコノミストらから「緑のいかり」と呼ばれている。 
 
すでにしてブロイラー、オレンジ・ジュース、コーヒー、たばこなどについては世界最大の輸出国、牛肉輸出においては二〇〇三年度にアメリカを抜き、世界第一位に躍り上がっている。牧草を主な飼料としての一億七千五百万頭の牛は世界最大の牛頭数で牛肉輸出は昨年九月末まで前年同期比七%も増えている。 
 
この底力をもって大豆の世界一もそう遠くはない。ブラジルでは二十五年前まで見向きもされなかったセラードの開発が大きな農業牧畜発展の推進力となっている。
〜中略〜
ブラジルの農業フロンティアはこれで行き止まりとはなっていない。ブラジル政府の計算によるとなお五千万エーカー(二千万ヘクタール)の未開発農地がある。大部分は現在生産農地となっている地帯ほどの肥沃さ、ないしは地質の良さを誇る。 
 
生産者らは現在、世界一の生産性をもっとアップしようという意気に燃えている。
リンク

(2)鉄鉱石生産と輸出も世界1位 
 
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鉄鉱石生産シェア
ブラジルは世界最大の鉄鉱石生産量を誇ります。生産量ばかりでなく、輸出量も最大であり、世界の鉄鉱石輸出量に占めるシェアは32.7%にも上ります。
(楽天証券さんのHPから借用しました) 
 
(3)2008年4月海底油田発見 
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ブラジル、世界第3位埋蔵量を誇る新油田を発見 
 
【大紀元日本4月18日】ブラジル政府は4月14日、ブラジル国営石油会社ペトロブラス(Petrobras)がブラジル南西沖の海底で推定埋蔵量330億バレルの巨大油田を発見したと発表した。同社は昨年11月、推定埋蔵量80億バレルのツピ(Tupi)油田も発見した。 
 
ブラジル石油監督庁のハロルド・リマ(Haroldo Lima)長官は、国営石油会社ペトロブラスとイギリスのBGグループ及びスペインのレプソル(Repsol)石油会社との共同探査チームがカリオカ(Carioca)地区で同油田を発見したと述べた。
同長官は「新油田は世界第3位の埋蔵量を持ち、過去30年間で最大級の発見となる可能性がある」と示した。また、新油田の埋蔵量は昨年発見されたツピ油田の5倍を越える可能性もあるという。 
 
一方、リマ長官の発表を受け、ブラジルが石油輸出国機関(OPEC)諸国と匹敵する石油生産大国となる可能性が高まり、国際為替市場では、リアルの対ドルで大幅に上昇し、またサンパウロ証言取引所では国営石油会社ペトロブラスの株価は約8%上昇したという。 
 
新油田の発見で 中南米権力配分構図が変わるか
スペインの「El Pais」報は16日付けの社説の中で、「ブラジルは、新油田の発見で、中南米のサウジアラビアになるのではないか」と示した。
同社説は、メキシコ及びベネズエラの石油生産量が減少している中で、新油田の発見はブラジルだけではなく、中南米全体に大きな影響を及ぼし、さらにこれにより世界の権力配分構図が変わるだろう、とした。また、ブラジルは国土面積、人口及び軍事力の面において、中南米諸国において強国となっており、同時にブルックス(BRICs、経済発展が著しいブラジル、ロシア、インド及び中国の4カ国の総称)の一つで、国際社会における地位は無視できないため、将来世界石油輸出大国となれば、その重要性はますます発揮される、と評論した。
リンク

ロシアでは社会主義体制が崩れて以降、財政危機に瀕していましたが天然ガスの生産により短期間に財政を立て直したことは記憶に新しい。ブラジルは既に、債務国から債権国に転換し、好調な経済成長を遂げていますが、この原油の発見により、ロシアの天然ガス同様、強力な財政基盤が確立されることになるでしょう。一気に世界経済の主役に踊り出る予感すらします。 
 
3.ブラジルを牽引してきた、優れた指導者ルラ大統領とその路線 
  
初の正式首脳会議を開いた新興4カ国(BRICs)の首脳、左からブラジルのルラ大統領、ロシアのメドベージェフ大統領、中国の胡錦濤国家主席、インドのシン首相
2009/6/16ロシアの中部エカテリンブルク(ロイター=共同) 
 
ブラジルは1994年までの8年間、年率4853%もの超インフレに喘ぎ、6つの新通貨「レアル」発行の対応を余儀なくされました。2001年には日本円で17兆円のデフォルト(債務不履行)に陥りました。そんな中で登場したのが「反貧困」を掲げたルラ大統領でした。 
 
ルラ大統領は貧しい農民の一家に生まれ19歳の時に自動車工場のプレス工として働いていたときに事故で指を失っています。この頃から労働組合に加入し頭角を現し、2002年に自ら結成したブラジル労働者党を率いて大統領に当選します。2006年に再選を果たし5年の任期を得て現在に至っています。発展途上国向けの貿易拡大を図り、長く続いた累積債務の解消に向かい2007年には国際通貨基金(IMF)への債務を完済し、債務国から債権国に転じました。今では中国、ロシア、インドと共に新興経済国群BRICsの一角に数えられています。 
 
ルラ大統領はベネズエラのチャべス大統領ほど反米ではありませんが、アメリカとは一線を画し、中南米、南アフリカ、インド、中国、ロシアへの外交を積極的に展開しています。
ルラ大統領の任期は来年で切れますが、好調な経済を背景にブラジルの独自路線が継承されることでしょう。 
 
その2に続く 
 

List    投稿者 shigeo | 2010-07-21 | Posted in 07.新・世界秩序とは?1 Comment » 

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コメント1件

 もえおじ | 2011.04.14 13:21

民主主義の構造的問題は、庶民(平民)が自律的に考えられる自立的な市民に育ちにくいことです。 実質的には、大半の国民(平民)は上流階層の経済的影響下から逃れることはできません。 これは、どの国・社会においても同様です(共産圏では、共産党とその周辺の勢力が上流階層になる)。
そこで興味深いのは、「国民の8割が中流意識」を持つに至った日本の実態が本当はどうだったのかという点です。

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