宇宙船地球号パイロットのマニフェスト(5) トリウム・エネルギーが生むポスト・ドルの準備通貨「UNI」
冒頭筆者は、一事業家であると自己紹介しました。いやむしろ、今ここに新しいビジネスモデルを提起していることからすれば、一起業家(アントレプレナー)であるという方が当っているでしょう。そこには、ソシアル・アントレプレナーとして、ビジネスモデルをもって人類の全面的崩壊に立ち向かうことができるという自負があるからです。
何せ68歳で新規に起業しようとするわけですから、今さら目先収束をするわけにはいきません。国連という舞台におけるスティグリッツ博士や、デスコト前総会議長の国際通貨金融システム改革の闘いに、声援を贈っていればそれでいいというわけにはいきません。単一の超国家的準備通貨実現のためには、ビジネスの力をもってペアとなる車輪をつくり、合わせて両輪となす闘いを欠かすことはできないと考えています。
ということで、5回目をお届けしますが、例によって今後の進捗を一覧にしておきます。バックナンバーについては、リンクになっています。
1.「石油・ドル本位制」に代わる世界システムをつくる
2.石油に代わる代替エネルギー資源としてのトリウム
3.人類が必要とする8万kWe、84万基のトリウム原子炉
4.トリウム原発によるBOP優先の安価な電力供給計画
5.トリウム・エネルギーが生むポスト・ドルの準備通貨「UNI」(本稿)
6.地域通貨「アトム」から国際準備通貨「UNI」への出世街道
7.「見えざるカミの手」による布石か? シーランド要塞跡
8.金融崩壊の今こそ、金融再生を担う新しい人材が必要
9.工程表に従い、エンジニアリング企業とシーランドを確保
10.2050年の人口を基に策定したマーケティング・エリア
11.総額1680兆円の建設費を要するトリウム・エネルギー
12.トリフィン・ジレンマのない「アトム」だから「UNI」に出世できる
13.ケース・スタディとしての「朝鮮半島エリア」(上)
14.ケース・スタディとしての「朝鮮半島エリア」(下)
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トリウム・エネルギーをバックボーンに生まれる新しい基軸通貨「UNI」
前回までに紹介したトリウム・エネルギーが、ポスト「石油・ドル本位制」の「石油」に代替する「エネルギー」問題についての私の戦略ですが、実は当然のことながら、今日まで「石油」との排他的・独占的交換性によって「基軸通貨」としての地位を保ち続けてきた「ドル」に代替する新しい「基軸通貨」、すなわち国際準備通貨も、「石油」に代替するトリウム・エネルギーをバックボーンに創出される可能性をもっていると考えられます。
実は今(2009)年3月9日、スウェーデンの「Thorium ElectroNuclear Ltd.」のエリング氏が、彼のブログ上で、「Torro」という、トリウムをバックボーンとする新しい「基軸通貨」の構想を、思考実験と称して提案し、私を驚嘆させました。
http://thoriumblog.wordpress.com/2009/03/09/thought-experiment-the-torro/
まさにユングのシンクロニシティ(!)としか言いようがありません。全く同じことを、私も、かねてからエリング氏と全く無縁の空間で構想してきていたからです。もっとも私がトリウム・エネルギーをバックボーンにしたドルに代わる基軸通貨に付けるべく提案したいと考えている名称は、「Torro」ではなく、「UNI」です。「UNIque」(ユニーク)で、「UNIversal」(ユニバーサル)に流通し、国連「UN」機関が管理する「International reserve currency」(国際準備通貨)の「UNIt」(単位)である、という意味の名称です。
中性子1個を取り込んでウラン233となるトリウムは、世界中に普遍的に存在するモナザイトという土砂から、希少金属を採取した残滓に含まれており、ウランの4倍もの埋蔵量があるとされています。ウランに比べてはるかに低コストの核燃料になりますが、全埋蔵量を電力に換算すると、文字通り天文学的に無尽蔵のエネルギーとなります。言い換えれば人類は、トリウムというほぼ無尽蔵の新しい「Gold」を手にしているわけですから、トリウム・エネルギー産業の発展とリンクして流通していく新しい基軸通貨「UNI」の実現は、絶大な可能性をもち、かつ必然性をもっていると確信しています。
国連スティグリッツ報告が明示した単一の超国家的国際準備通貨の必要性
今、中露が基軸通貨「ドル」に対する代替プランを提案して、米国の一極支配を支えてきた「石油・ドル本位制」に揺さぶりをかけていますが、ノーベル経済学賞受賞者で、コロンビア大学の教授であるジョセフ・E・スティグリッツ博士は、著書「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」(徳間書店)の第9章で、次のように書いています。
驚くほど簡単な解決策がある。はるか昔にケインズが提唱したこの方策は、準備金として機能する新たな不換紙幣(ケインズは“バンコール”と名づけた)を国際社会が提供するというものだ。世界各国は、例えば危機が発生したときにかぎり、この不換紙幣──ここでは“世界紙幣”(注:原書では「Global GreenBacks」)とよぶ──と自国通貨との交換を保証するものだ。
スティグリッツ博士の提言は、今(2009)年9月21日の「国連総会議長諮問に対する国際通貨金融システム改革についての専門委員会報告」(国連スティグリッツ報告)の最終報告書として結実し、9月24・25日のG20や、9月28日の世界銀行ゼーリック総裁の「基軸通貨ドルの当然視は間違い」という発言にも、強力な影響を及ぼしています。博士は現存の通貨やそれらのバスケットでは、「石油・ドル本位制」の根本的矛盾は解決しないとし、単一の超国家的国際準備通貨を創設することが必然であり、必要であると説いています。しかしながら、G20のような国際的政治力学の峻烈な主導権争いの駆け引きの場で、国際的弱者の立場に十二分に配慮した国際準備通貨の創設ができるかどうかについては、まだまだ不安が残ります。
トリウム・エネルギー産業の「ビジネス」の力で補完してこそ実現する新通貨
国連ミレニアム開発目標(MDGs)の中には、2015年までに貧困を半減させるという目標がありますが、国連関連のどのような機関の取り組みよりも、BRACやグラミン銀行から世界中に拡大普及しつつあるマイクロファイナンス(マイクロクレジット)という「ビジネス」の方が、はるかに貧困の克服にとって大きく寄与してきています。
また原丈人氏が率いる「デフタ パートナーズ・グループ」が、バングラデシュにおいてBRACと共同でつくった、「公益資本主義」の具現化である「デフタ・bracNetモデル」も、「ビジネス」が貧困の克服に寄与している典型的な事例でしょう。
私は「宇宙船地球号のパイロット」を自負する一事業家として、トリウム・エネルギー産業という21世紀最大規模の基幹産業を興し、これとリンクして発行し流通させる新しい基軸通貨、「UNI」を、現代の「バンコール」として、低開発国(BOP=ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)優位の立場に立って創設することにより、スティグリッツ博士等の国連における単一の超国家的国際準備通貨創設の闘いを、「ビジネス」の立場から補完できるのではないかと考えており、そのプロセスを、シミュレーションしています。
シミュレーションの考え方としては、基軸通貨「UNI」の前身となるローカル・カレンシー(例えば後述の「アトム」)を創設し、これをトリウム・エネルギー産業の「ビジネス」の力でインキュベートして孵化、育成した後に、「UNI」に転換していくというようなシナリオです。
((6)地域通貨「アトム」から国際準備通貨「UNI」への出世街道 につづく)
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