普天間基地問題、どうなる?その1
鳩山首相が約束した5月末の普天間基地移設先の決定期限が迫りつつある。「腹案は既にある」と言いながら、なかなか決着する様子が見られない鳩山民主党に対して、マスコミや自民党が攻撃を強めている。
昨年の政権交代以来、マスコミで幾度も話題に上り、常に民主党攻撃の材料にされてきた普天間基地問題とは何なのか?米国や民主党の本当の思惑はどこにあるのか?私たちは、この問題をどのように考えればいいのか?今回から数回にわたり、この普天間基地問題を取り上げてみたい。
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普天間基地問題の背景には、当然のことながら日米安保条約があり、基地移設問題は最後は安保条約をどうするか?ひいては日本の国防を国民がどう考えるかという問題に帰着する。そこでまず今回は、基地問題の背景にある日米安保条約と沖縄基地問題のアウトラインをおさらいする。
●日米安保条約とは?
1951年に締結され(旧安保)1960年に改定された(新安保)。正式名は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」という、意外に短い全10条からなるこの条約を根拠にして、日本は米国の「核の傘」に入り、その第6条に従って日本国内に米軍基地が配置されている。
新日米安保条約第6条
日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
後段で述べられているのが「日米地位協定」と呼ばれるものだが、在日米軍の治外法権的な扱いや、基地返還時の原状回復義務の免除など、明らかな不平等条約であり、基地周辺の人々を苦しめる様々な問題を生み出している。
●沖縄になぜこれほど基地が多いのか?
沖縄には計37箇所の飛行場や訓練施設がある。面積にすると、日本の米軍基地の何と75%が沖縄本島に集中しており、沖縄本島の2割近くが米軍施設で占められている。
江戸時代には「琉球王国」だった沖縄が日本国の国土になったのは明治に入ってからだ。第二次大戦時には南方への前線基地として日本が軍事施設を造営し、1945年の敗戦後には、米軍が沖縄を占領し、朝鮮戦争(1950年)やベトナム戦争(1960年〜)の前線基地とされた。
米ソ冷戦時代には「反共の防波堤」とされた日本の中でも、極東の有事の際の重要な出撃拠点として位置づけられ、現在は、米国が「不安定の弧」と呼ぶ東南アジア〜中央アジア〜中東エリアにおいて国際テロなどの防止に必要だとされている(但し、これは全て米国側の理屈である)。
沖縄は、ユーラシア大陸と太平洋の結節点に位置するばかりに、歴史的に日本あるいは米国の軍事拠点に利用され、振り回されてきたのだ。
●普天間基地問題の経緯
1945年に占領軍により建設された普天間基地は、所在する宜野湾市域の25%を占め、住宅街に近いことから、当初より移設の要望が強かった。この世論に決定打を与えたのは、1995年の米兵による少女暴行事件である。以下、その後の経緯を簡単に追ってみる。(Wikipediaより)
1995年 沖縄米兵による少女暴行事件
1996年 橋本龍太郎首相と米大使が普天間基地返還に合意→SACO最終報告へ
1997年 日米政府(SACO)が名護市キャンプ・シュワブを移設候補地に決定
名護市の住民投票では過半数が反対
1998年 沖縄県の大田知事が名護市への建設に反対し凍結
稲嶺新知事が「軍民共用路線」を条件に移設を容認。
移設先を名護市辺野古崎沿岸に決定。
2004年 沖国大キャンパスに普天間の米軍ヘリが墜落。移設世論が再燃。
2005年 日米合意の移設先をキャンプ・シュワブから辺野古崎沿岸に変更。
名護市の基地移設予定地
2007年 V字型滑走路案で額賀防衛大臣(当時)と島袋名護市長が合意。
2008年 沖縄県議会で辺野古案移設の反対決議が可決。
2009年 民主党へ政権交代。沖縄では県外・国外移設派が軒並み当選。
2010年 名護市長選で移設反対派が当選。
という風に、米国、日本政府、沖縄県、そして当事者の宜野湾市と名護市が入り乱れて、移設問題は二転三転してきた。普天間基地は9割が私有地で、基地の地代で食っている地主がいたり、基地建設で稼ぎたいがために巨大な滑走路建設を主張する土建派がいたりと、県内も必ずしも一枚岩ではないことが事態を複雑にしてきた。
そこに、県外・国外移設を公約とした民主党が2009年夏に政権を握り、事態はさらに混迷を極め始めた。米国からはゲイツ国防長官らが来日し、従来の名護移設案を履行するよう民主党に圧力をかけ、国内では自民党や読売・産経のマスコミが同調。県外移設を期待する沖縄や、グアム移転を主張する社民党との板挟みにあった鳩山は、2010年5月末の移設先決断を米国に約束したが、現在は当初の公約だった県外・国外移設は実現しそうな気配はなく、大山鳴動して元の鞘に納まる可能性も漂う。
しかし、そもそも米国には、極東への軍事展開を縮小し、海兵隊は県外どころかグアムまで撤退させる計画があるとの説もある。これは一体どういうことなのか?次回は、日米各方面の“本音”はどこにあり、そこに現在どのような力学が働いているのかを考えてみたい。
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