2010-04-11

普天間基地問題、どうなる?その2

前回の記事(その1)では、普天間基地問題の背景を探るために、まず、日本への米軍駐留が始められた要因である日米安保条約は様々な問題を引き起こす不平等条約であること、そして、日本への米軍駐留の目的はアジア大陸へ出撃できる軍事拠点のためであること、そして、普天間基地問題について世論が沸き上がってきたのは、米兵による度重なる事件によるものであることを明らかにした。
 
普天間基地問題を考える上では、日本とアメリカの力学を知る必要があり、とりわけ在日米軍駐留費用の流れ(金の流れ)はその力学を把握する上で重要だと思われる。
 
そこで今回の第2回目では、日本が在日米軍駐留費を負担するようになった背景とその推移をおさえたい。
 
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●在日米軍駐留費は日本が「自主的に」負担している

%E9%87%91%E4%B8%B8.gif.jpg 在日米軍駐留費は、通称「思いやり予算」と言われている。1978年6月、ハト派政治家として知られた金丸信防衛庁長官が、在日米軍基地で働く日本人従業員の給与の一部(62億円)を日本側が負担すると決めたことから始まった。

防衛省のHPによれば、日本側は負担することになった理由は、「当時70年代日本の物価と賃金が高騰→円高ドル安が進むことによって、アメリカ側の負担が増加。そのために、在日米軍の駐留を円滑かつ安定的にするための施策として、財政事情などにも十分配慮しつつ、我が国が在日米軍駐留経費を自主的に負担する」とされている。
 
要するに、米軍の負担を軽減し、日本が肩代わりしているのであり、また別の言い方をすれば米軍を日本に引きとめ、駐留してもらうために、「自主的に」日本が費用負担しているのだ。
 
 
●日本の米軍基地及び、米軍の給与・生活費も日本が工面している
では、日本は具体的に在日米軍駐留のために何を負担しているのかを見ていきたい。
 
大きくは以下の四項目に分類されている。

1)在日米軍が使用する施設・区域についての提供施設整備費
2)在日米軍従業員の労務費
3)在日米軍が公用のため調達する光熱水料など
4)日本側の要請による在日米軍の訓練の移転に伴い追加的に必要となる経費(訓練移転費)

<在日米軍駐留費の負担項目の概要>

データは防衛省HPからお借りしました。
1978(昭和53)年の労務費に始まり、79(昭和54)年に隊舎や住宅の施設整備費、1991(平成3)年に米軍の給料、電気・ガス・水道などのインフラ料金、1996(平成8)年に訓練移転費など次々に日本の負担項目を増やしてきたことが分かる。
項目を見ても分かるように、在日している米軍2万人の身の回りにあるほぼすべてのものを日本が負担しているのだ。
 
<在日米軍駐留費の推移>
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グラフは防衛省HPからお借りしました。
 
日本が在日米軍駐留費を負担をし始めた78年以降、総額3兆円にも上り、割合にすると、日本は米軍駐留費用の75%を負担している。アメリカ側からすると日本は非常に気前の良い(都合の良い)国であるといえる。
 
 
次に、米国外に駐留させている米軍の駐留経費で、世界中の同盟国による2002年度の負担額を見てみよう。
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グラフはこちらからお借りしました。
世界の米軍の駐留経費の全体は、総額176億ドルであり、そのうち、日本の駐留経費は60億ドル。
日本の駐留経費のうち、日本側が44億ドルの負担をしている。
割合をおさえてみると、日本の駐留経費のうち3/4を日本が負担しており、世界駐留経費の1/4を日本が負担していることになる。
 
負担額はドイツの二・八倍、韓国の五・二倍、イタリアの十二倍、英国の十八・五倍で、日本を除く二十六カ国の米軍駐留経費負担額の合計(三十九億八千五百八十二万ドル)を上回る。
 
アメリカにとって、日本による米軍駐留費の負担はなくてはならないほどに膨らんでいる。
 
 
●3.普天間基地移設にともなう日本負担は3兆円と言われている
では、今回注目されている、普天間基地移設に伴う費用では、日本は何をどれだけ負担すると言われているのか。 

在日米軍再編に関係する費用は、
(1) 在沖縄海兵隊のグアムへの移転費用     7000億円
(2) 基地周辺自治体への再編交付金       1000億円
(3) 基地建設・部隊移転・訓練移転の費用    不明
 
(1) は、日本が7000億円を支払うことで米国と合意しました。
(2) は、総額1000億円を10年間で支出する方針です。
(3) については、政府は明確な金額を示していません。
(3) の中には、普天間基地の名護移設費用、キャンプ座間への陸軍司令部移転費用、空母艦載機部隊の岩国基地移転費用、返還された基地を更地に戻す費用など多額の建設・土木費用が含まれています。また、戦闘機の訓練移転費用も毎年支払われます。
 
ローレンス米国防副次官は、日本の負担総額を「3兆円」としました。防衛省の守屋事務次官も、グアム移転を除いた費用は2兆円といっています。しかし日本政府はこうした発言を否定しています。
普天間基地の名護移設費用だけで1兆円といわれていることを考えれば、日本負担の総額は3兆円を超えるかもしれません。これほどの事業が、総額も示されないまま開始されるのです。

今回の普天間基地移設費においても、「日本は3兆負担」というアメリカ側の言い分にとまどいながらも、負担せざるをえないというニュアンスの発言を行っている。
 
 
●米国の軍事費は年々増加している
最後に、米軍の軍事費の推移を簡単に確認し、米軍側の意向を探ってみたい。
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これは、過去5年間の米国国防費の推移であるが、過去5年どんどん増加しており、2009年は2005年比の1.4倍にまで膨れ上がっていることが分かる。
この要因は、9・11以降ブッシュ政権時代のイラク、アフガン用の軍備拡大に伴うものだと思われる。
 
と考えると、第1回でも簡単に触れたように、アメリカはこれまでの過剰出費から、極東への軍事展開を縮小し、グアムに撤退しようと考えていることも筋が通る。
 
以上のことから、アメリカ側は軍備負担をできる限り軽減するために、日本に負担を押し付けて続け、日本も完全にアメリカに従い続けてきた。
このことから考えると、金の流れからみた日米間の力学関係は一貫してアメリカ優勢に働いている。
 
 
しかし、在日米軍がグアムに撤退する計画の説は、以上の論理だけでは説明できない部分もある。
国外に出れば日本が米軍の費用を負担する理由がなくなり、アメリカとしては不利となる。
では、なぜアメリカはグアム撤退説が浮かび上がっているのだろうか?
 
次回は、米軍基地のグアム移転説はどのようなものなのか?、では、なぜ日本はグアム移転を推進しないのか?その真相に迫ってみたい。

List    投稿者 hasihir | 2010-04-11 | Posted in 07.新・世界秩序とは?1 Comment » 

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