2010-10-31

ゴールドの真相に迫る−10 ゴールドの歴史(6)〜第一次世界大戦による市場システム崩壊から世界大恐慌、金本位制の崩壊〜

前回記事では、アメリカにおけるゴールドラッシュを経て、ヨーロッパ、続いてアメリカでの金本位制の確立される過程をピーター・バーンスタイン著『ゴールド—金と人間の文明史』14〜16章より紹介した。
今回は、1918年の第一次世界大戦以降〜金本位制の崩壊までを紹介していく。
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●第一次世界大戦による市場システムの崩壊〜金本位制の再構築へ(第17章)【1918年〜1920年後半】
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第一次世界大戦を経て、ヨーロッパの世界は壊滅してしまう。800万人以上もの死傷者を出し、その半数以上は連合国側の人間であった。財政的にもひどい状況で、国債は大部分を国民から借りていたものの、1914年の何倍にもなってしまう。さらに、連合国はアメリカにも20億ドル近い借金をする事に。当時のイギリス、フランス、ドイツによる金の総保有量は、戦争が終わったときにわずか20億ドル程度にすぎなかった。
西欧諸国は地域によっては、数年経ってもその恐ろしい状態から回復せず、大恐慌を待たずして、多くの人々が飢餓に苦しみ、失業率は上昇、貨幣価値への疑念が広がっていた。こうして、第一次世界大戦前の高度経済成長期の時を想い、戦後復興に向けて、金本位制に制度を戻そうと躍起になっていく。

貨幣価値への不振によって、社会構造、財産所有権の確率された秩序、経済発展等が、強力なかつ破壊的な影響をこうむることがわかる。戦後世界の不安定な状況下で、新奇をこのむ実験をすることは、当局にとっても、ごく一握りのーとりわけ金融界のー専門家にとっても、まったく魅力がなかった。復興への道は金で舗装されていなければならなかったのだ。

しかし、かつての様な各国の協力を大前提とした金本位制が効率的に機能する土壌は、最早西欧には無かった。

金本位制の発展をうながした基本的かつ本質的な条件のほとんどは、四年間の大惨事によってぼろぼろになっていた。政治的な同盟、政府の資金、国際的な債務、世界的な銀行業と融資におけるイギリスの指導的地位、そして産業効率の状態などが、ほとんど見る影もなく変わり果てていた。

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にも関わらず、人々は金本位制を盲目的に信じ込んでしまったが故、その制度を復帰。しかし協力体制の機能しない西欧では自国の都合を優先させざるを得ず、金本位制は次第に崩れ出していく。当時のイギリスでは、世界を牽引してきた過去の栄光を復活させようと金本位制を再び導入したが、輸入が増加し、政府予算が赤字化していたイギリスでは、金を確保する間の長期間の高金利政策に失敗。国内の経済活動は停滞→失業率が増加し、全国的にストライキが発生。イギリスの大部分は麻痺状態に陥った。

だが、資本が出て行ってしまう国々にとっては、まるでうまみがなかった。そうした国々では資本を国内に留めておく為に金利が急騰した。イギリス、ドイツ、イタリア、オーストリアが、十月に株式市場が大暴落したとき、すでに不況に向かっていた。ドイツの失業率だけをとっても、1928年の夏から1929年の末までには四倍になっていたのである。

こうして株式市場が高騰→暴落。結果、金本位制を維持出来ず、世界は大恐慌を迎える事になってしまう・・
●世界大恐慌と金本位制の崩壊(第18章)【1920年後半〜1930年代】
□世界大恐慌⇒金本位制の崩壊
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第一次世界大戦後、大量生産・大量輸出によって発展したアメリカでは投機熱高まりの様相を見せていた。しかし、その投機熱によるだぶついた資金が限界に達し、1929年10月、アメリカを震源地とし、資本主義諸国の市場は大恐慌に陥った。この間で、紙幣、証券の信用が地に落ち、紙幣の買い支えと急速な現物(金)買いの流れが、国家の金準備金の激減を招いた。
1929年、アメリカに次いで、イギリス、ドイツ始め多くのヨーロッパ諸国の中央銀行は、金融政策のために目減りした証券の買い支えを行った結果、金準備金が次から次へと流出していった。
イギリス、ドイツは金と貨幣の流出によるパニックで、金本位制は事実上機能しなくなっていた。結果、1931年9月イギリスは再度金兌換停止せざるをえなくなり、他国も続いて、一年後には、47カ国のうち、金本位制をとっていたのは、合衆国、フランス、スイス、オランダ、ベルギーだけとなった。六年後には、通貨または銀行預金の金との兌換を国民に許していた国は一つもなくなっていた。金本位制⇒管理通貨制への移行によって、ようやく金の流出を防ぐことができた国家は、続いて、金準備が最も多いアメリカから金を手に入れようとする動きに出る。

金を手にしようとする国ぐにが、猛然とアメリカに襲いかかった。ドルによって金を引きだそうとするこの衝撃は驚くべきものであった。そのときの合衆国の正式な金保有高は、四五億ドルに達していたからだ。—世界中のすべての中央銀行と国庫の金保有高の四〇パーセント以上、フランスのそれとくらべて六五パーセント以上多い額である。(中略)九月末から十月末まで、総額七億五五〇〇万ドル相当の金が合衆国から流出した。その半分近くがフランスへ、残りは主としてベルギー、スイス、オランダへ行った。連邦準備銀行の金庫室に眠る金の延べ棒の七本に一本が消えてしまったのだ。

アメリカによる金利引き上げによって、金の流出は一時的に止まったものの、アメリカ国内における世界大恐慌による経済不安、大統領交代による政治不安に恐怖感を持ったアメリカ人によって資本を海外に移したり金に交換した結果、さらに、アメリカの金準備の6億ドル以上が流出した。
□アメリカによる金価格の吊り上げと金生産量の急増
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一九三四年、一月三十日、アメリカはこの急激な金流出の防衛、むしろ金をさらに獲得するために、金価格を一オンス二〇.六七ドルから、一オンス三五ドルに引き上げた。
その結果、金の価値の急激な上昇が、金の需給に大きな影響を与えた。

人びとがぜひほしいと思っていても買う余裕がなかったあらゆるもの—食料、衣料、住居—の生産が、世界中で大幅に落ち込んでいた時、金の価格がこのように急上昇したことは金鉱労働者にとっては思いがけない幸運だったし、世界経済にとっては新しいゴールドラッシュが始まったのに等しかった。金産出量は急増した。この新しい金は、主に南アフリカから産出された。とはいえ、過去と同じように、ロシアはなおも重要な生産地だった。さらに、アジア—他の地域と同じく大恐慌に苦しめられていた—が史上初めて金を放出し、約一億ドル分を西方へ輸出していた。一九三二年、世界中の金鉱からでた二〇〇万トンの金は、有史以来十九世紀半ばまでに蓄えられた全貨幣用金の半分近くに相当した。一九三八年の産出量は一九三二年とくらべてさらに五〇パーセント増えた。

各国の中央銀行の金準備と関連する政府資金は、一九二九年の約四〇〇〇万トン(一オンス二〇.六七ドル換算で一〇〇億ドル)から、一〇年後には六〇〇〇万トン(一オンス三五ドル換算で二五〇億ドル)へと急増した。世界中の貨幣用金の増加は莫大なものだった。そのため、一九三九年までに世界の貨幣準備としての金は通貨を一〇〇パーセント金貨におきかえられる量に達していた。

これは一つの希有な瞬間だった。金がありすぎるように思えて、どう使えばいいのか誰にもわからなかったのだ。無難だと思える唯一の解決策は、大洋を越えてニューヨークへ送ることだった。合衆国はあらゆる金を一オンス三五ドルで買いとってくれるからだ。その結果、新しい金のほとんどが、大量の古い金とともに大洋を渡ってニューヨークへ運ばれた。(中略)第二次世界大戦が勃発したとき、約二〇〇億ドル、すなわち世界の貨幣用の金の六〇パーセントが合衆国に預けられていた。それとくらべて、一九二九年には三八パーセント、一九一三年には二三パーセントにすぎなかったのである。大量に退蔵されたこの金の重さは、一万五〇〇〇トン以上あった。当時、世界中で産出されていた金の一二年分に相当する重さだった。

こういったアメリカへの急速の金流入の背景には、全世界が軍事国家、あるいは共産国家への革命のさなかといった不穏な状況による資本金確保の手段だった。各国は資本を蓄えるためにも、世界で唯一三五ドルという固定価格で無制限に金を買うアメリカに金を売り、代わりに米ドル紙幣を大量に手に入れた。
(と同時に、アメリカへの金の一極集中と、全世界への米ドル紙幣の広がりは、経済・軍事でのしあがってきたアメリカの支配勢力が世界へ波及する過程でもあった。)
次回は第二次世界大戦後の金融システム構築〜ブレトンウッズ体制の構築を経て、金本位制→ニクソンショックまでの流れを見て行きたいと思います。

List    投稿者 mtr919 | 2010-10-31 | Posted in 06.現物市場の舞台裏, 08.金融資本家の戦略6 Comments » 

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コメント6件

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