金貸しは日本をどうする?~日本の状況(4)日本の内側から市場を飲み込む「国家戦略特別区域法」
’00年以降、金貸しは、国家・国民からの更なる搾取=貧困化に血道を上げている。TPP、消費増税と大企業有利な税制、秘密保護法、国民背番号制など、枚挙に暇がない。その極めつけは不正選挙である。
これらお上の暴走の背後には、金貸しの焦りがある。
彼らは、これから日本をどうしようとしているのか?その意図、戦略は何か?
近代~現代の金貸しの戦略を時代毎に見ていくのと並行して、最新の国内政策の実態を押さえることで、その目論見を読み解いていく。
今回は、平成25年12月13日に施行された「国家戦略特別区域法」の狙いに迫ります。
■ 国家戦略特別区域法とは
第2次安倍内閣が成長戦略の柱の一つと掲げる経済特区及びその構想。地域を絞って、そのエリア内に限り従来の規制を大幅に緩め、外資を誘致する計画。
そのための解雇規制、労働時間規制の緩和、及び有期雇用制度の制定を推奨しています。
小泉政権時代に始まったボトムアップ型政策「構造改革特区」とは異なり、国家戦略として特区プロジェクトを組むという国家主導型の特区法となっており、国民の反対等の影響に関わらず推進しようという強い意思が感じられます。
■ 戦略特区の中身
2014年3月28日に発表された特区の指定区域・内容は次の通り。
東京圏(東京都・神奈川県の全部または一部、および千葉県成田市) – 国際ビジネス・イノベーションの拠点
関西圏(京都府・大阪府・兵庫県の全部または一部) – 医療等イノベーション拠点、およびチャレンジ人材支援
沖縄県 – 国際観光拠点
新潟県新潟市 – 大規模農業の改革拠点
兵庫県養父市 – 中山間地農業の改革拠点
福岡県福岡市 – 創業のための雇用改革拠点
東京圏は外国人の在留資格を見直し、国際ビジネスやイノベーションの拠点、関西圏は再生医療などの先端医療の研究開発拠点として位置づけられました。ほか、新潟市と養父市は、農地売買の認可権限の見直しや農地の集積、企業の参入を容易にする農業改革拠点として、福岡市は創業後5年以内のベンチャー企業の雇用条件を整え、起業を促進する雇用改革拠点として、沖縄県は国際観光拠点として、それぞれの役割が求められています。
■ 政策内容はどこで決められているのか
2013年7月に実施された有識者等からの集中ヒアリング(提言)の内容が基盤となっているようです。
その中でも提言全体の約1/3を占めるほど大きな影響力を持っていたのが、ワールドビジネスサテライトでもお馴染み「ロバート・アラン・フェルドマン」。現在はモルガン・スタンレーMUFG証券株式会社チーフエコノミスト、オリックス社外取締役を務める。
また彼は竹中平蔵(パソナ会長、慶大教授)のアドバイザー的存在でもある。(ポリシーウォッチでも一緒に活動している)
※ちなみに竹中平蔵は、内閣府に特区諮問会議を設置し、戦略特区の政策を主導しています
ここでフェルドマンの提言をいくつかピックアップしてみます。
【医療】
国内未承認の医療技術・医療機器の持ち込み・使用許可解禁
米国等との疾病分類の統一化(これに基づき診療報酬を決定)
介護施設等への外国人労働者の受け入れ解禁
【教育】
海外留学(一年間)を大学卒業のための必須要件化
海外で日本移民学校を設置し卒業生に自動移民権を認める
【農業】
株式会社等による農地所有の解禁
農協への独占禁止法の適用
減反制度の廃止
米価設定の廃止
農地への不動産信託の導入
電力システム改革(小売自由化、発送電分離等)の早期実施
【規制緩和】
外国法規に基づく教育・金融・法律・医療機関等の認可の推進
社外取締役を導入した企業に対する解雇規制の緩和
解雇規制の緩和・合理化(金銭解決などを含む)
【移民政策】
全てのスキルレベルにおけるビザの発給要件の緩和(労働ビザの緩和)
積極的な移民政策の推進(医療、介護、農業の分野など)
■ 国家戦略特別区域法の狙い
上記からも明らかですが最大の狙いは「外資誘致」。重点分野は医療、農業、教育など、これからまだまだ成長が見込める産業。
日本は輸出立国であるというのは半ば常識であるかのような認識ですが、実は輸出が占める割合はGDPの1割ほどでしかない。韓国が約40%、中国が約25%、ドイツが約33%というのと比較しても日本は圧倒的に内需型の産業構造なのです。(参考)
つまり外資誘致というのは、この内需型市場を外資に譲り渡すということを意味しています。
そう考えると、これはTPPとよく似た構造を持っていることに気がつきます。
TPPは国家間の規制をぶち壊し、外側から日本の市場を飲み込もうという政策。
対して国家戦略特別区域法は、日本国内の規制をぶち壊し、内側から日本の市場を飲み込もうという政策。
追い詰められた金貸しが、「国家戦略特別区域法」によって目先的に日本市場を丸呑みしたいという意図があるのは明らかだろうと思います。
加えて戦略特区によって外資誘致が推進され、あたかも経済が活性化したかのような状況を作り上げることができれば、戦略特区内の政策をそのまま国家政策に適用(法改正)することも十分可能。そのようにして日本をアメリカ化することも視野に入っているはずです。
(戦略特区の発想は、アメリカの2002年対日年次改革要望書に記載されており、小泉政権→安倍政権がその実動部隊として動いているものと思われます)
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