2021-01-28

【金による新基軸通貨】金価格高騰もまだまだ破格に安い?(吉田繁治氏)3

【金による新基軸通貨】金価格高騰もまだまだ破格に安い?(吉田繁治氏)2の続き。

「金価格高騰もまだまだ破格に安い?「金レシオ」でわかる今後の伸び代とリスク=吉田繁治」から転載。

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1980年代の反ゴールドキャンペーン:金価格の暴落

FRBは密かに「反ゴールドキャンペーン」としていました。

あとに欧州の金をもつ中央銀行が加わって、市場に金を放出したのです(ロスチャイルド家のエージェント、フェルディナント・リップスの記述に基づく。抄訳『いまなぜ金復活なのか』原著Gold War 参照)。

1981年から98年まで18年間、「反ゴールドキャンペーン」は続きました。

その結果、98年の金価格は1オンスが294ドル、1980年のピークの1オンス800ドルからは2.7分の1に下がったのです。当時の金融市場では、「金は死んでしまった。生き返ることはない」といわれ、99%の投資家は見向きもしなくなっていたのです。

マネタリーベース(FRBの当座預金+紙幣発行高)の金額に対する、金レシオ、つまり「金価格 ÷ マネタリーベース」を見ると、1980年の4.5から1999年には0.4まで、11分の1に下がっています。

出典:Gold to Monetary Base Ratio | MacroTrends

出典:Gold to Monetary Base Ratio | MacroTrends

1980年代から90年代は、金に対するドルの価値は上がり、米ドルは、世界で一強の基軸通貨に復活したのです。ただし90年代の最終の1999年には、欧州ではドイツとフランスの信用をバックに、19か国のユーロが開始されています。

ユーロの結成は、EU(27ヵ国)のうち19か国が、ドル基軸通貨圏から脱出したことを意味します。関税がゼロの域内自由貿易で、労働の移動も自由なEUのGDPは、19兆ドルで米国の86%です。ユーロがない時代は、フランスとドイツもドルを使って貿易していたのです。

<第4期:1999〜2008年>軛(くびき)を解かれた金価格の上昇
1999年には、主要国の中央銀行が「金の放出は1年400トン以下に制限する」という協定を結びました(ワシントン合意)。99年までの金レシオの20年つづいた暴落は、米国FRBが主導した中央銀行の金放出によって果たされていたからです。金価格は1オンス290ドル台に下がっていました。

一般には知られていない「ワシントン合意(1999年)」は、奇妙な宣言です。「金は、信用通貨の価値を担保する準備通貨として重要である。このため中央銀行の金の放出は、合計で1年400トン以下に制限することに合意する」というもの。

つまり、1980年から99年の20年間、金価格を下げたのは、中央銀行の金放出が要因だった。米欧の主要な中央銀行が持つ金は、2万トンも減ってしまった。金価格は1オンス290ドル台(当時の円では1グラムが約1,000円)と十分に下がった。金の復活はないだろう。ここで金の放出をやめることにするという合意です。

ところが金には、宝飾用、工業用、投資用ゴールドバーとして、市場で一定量の需要があります(1年に約3,500トン)。中央銀行からの放出が減ると、ロンドンとNYの金市場では「需要>供給」になり、価格が上がります。

これがワシントン合意のあとの1999年からリーマン危機が起きる2008年までの、金レシオ0.4から1.2までの3倍の金価格の上昇です。

<第5期:2008〜2015年>リーマン危機後のドル危機で、金価格は上昇
2008年はリーマン危機でした。FRBは、銀行危機への対策として、当座預金のマネタリーベースを4兆ドル(440兆円)に増やしました。このため、マネタリーベースを分母にした金レシオは1.2から0.2まで6分の1に下がっています。現実の金価格は、1オンス800ドルから1,923ドルにまで、3年間で2.4倍に上がっています(11年9月)。

2.4倍の上昇には、1年に400トンという「ワシントン合意(1999年)」の上限枠で、2008年までは金を売ってきた中央銀行が、リーマン危機のあと、逆に、合計で400トンの買い越しに転じたことが、もっとも大きな要因として働きました。

金供給のプラス・マイナスでは、金市場に1年800トンの供給が減ったことになります。

金を買ったのは誰か。以下の通りとなっています。

1位:中国の政府と人民銀行
2位:ロシア中央銀行
3位:新興国の米ドルを準備通貨にしている中央銀行のグループ
※新興国の政府・中央銀行の平均400トンの金買いは、2019年も続いています。

このときの2011年の1,923ドルが、2020年6月までのドルベースでの最高値です(6月19日現在の国際卸価格は1,730ドル:1グラムの小売価格は日本では6,527円)。

List    投稿者 tasog | 2021-01-28 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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