2017-03-29

シリア内線の停戦合意、トランプ政権がロシアへ歩み寄り

シリア内戦

6年間続いたシリア内線が、トランプ政権の樹立と前後して終結の動きを見せています。2016年12月30日に停戦合意に至り、2017年1月23日には停戦交渉が始まりました。トランプ大統領もアメリカも具体的には何もしていないのですが、アメリカが何もしないことが、実は内戦終結にとても重要な事だったのです。

そもそも、なぜシリア内戦が始まり、ここまで泥沼化したのか。その経緯を整理すれば、トランプ政権が何もしないことの重要性が明確になります。

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内戦勃発のきっかけは2011年に起こった、アラブの春と言われる民主化運動。シリアでも独裁的なアサド政権に反対する民主化運動が盛り上がり、それが内戦の出発点でした。それが、ここまで泥沼化した理由は、諸外国の介入です。アサド政権をロシア・イラン、反政府勢力をアメリカ・トルコ・サウジアラビアなどが支援し、一気に戦火が広がっていきます。(詳細は、こちらシリア内戦の原因や理由が簡単に分かる解説シリア内線原因 わかりやすく解説

諸外国が支援しなければ、アサド政権が大衆運動を抑え込んで、独裁政権という問題は残しながらも平和な状態は続いたことでしょう。また、内戦の混乱に付け込んで、イスラム国がイラクからシリアへ勢力を広げて行き、さらに問題は複雑になりましたが、根本的にはロシアとアメリカを筆頭にした諸外国の対立が、ここまでシリア内戦を泥沼化させた根本原因です。イスラム国はそのスキを突いたにすぎません。

従って、対立国の一方の筆頭であるアメリカが手を出さないとなれば、内戦の力のバランスは大きく崩れ、ロシアが支援するアサド政権側が圧倒的に有利になるのは明らかです。前回の投稿では、「トランプ大統領就任後は対ロシア政策であまり目立った動きがありません。」と書きましたが、トランプ大統領が手を出さないと判断したことは、何もしない事を選択したのではなく、アサド政権=ロシアの行動を後押ししたのに等しいと言えます。

 

■アサド政権、トランプ氏勝利喜ぶ? 政権存続容認に期待2016年11月10日

トランプ氏は10月の候補者討論会で「アサド政権が倒れれば、よりひどい結果になる」「私はアサドは嫌いだが、アサドはISを殺している」と発言した。アサド政権関係者は、政権の存続を容認する考えだと受け止めた

さらにトランプ氏が、アサド政権の後ろ盾となっているロシアのプーチン大統領に好意的な発言を繰り返したことも大きい。アサド政権関係者は「オバマ氏と違って、トランプ氏はプーチン氏とうまくやれそうだ。プーチン氏の助言を受け入れ、対ISで米国とロシア、我々で協力することも可能になるかもしれない」と語った。

■トランプは内戦不介入を宣言2016年12月15日

次期大統領はこのほど、ノースカロライナ州での演説で、「われわれが知らない外国の政権を打倒することに血道を上げるのを止めなければならない。そうしたことに関与すべきではない」と強調した。この発言は、アサド大統領の追放を要求し、反体制派への支援を行ってきたオバマ政権のシリア政策を批判、否定するものであり、トランプ政権が「シリア内戦には干渉しない」と宣言したのに等しい。

■アサド政権軍 アレッポ奪還を正式に宣言2016年12月23日

内戦が続くシリアで、アサド政権軍が制圧したシリア北部のアレッポから反体制派の戦闘員や市民らの撤退が完了し、政権軍は22日、アレッポ奪還を正式に宣言した。5年以上にわたる内戦で最大の戦果となった。

■シリアのアサド政権と反体制派が停戦へ2016年12月30日

プーチン露大統領は29日、アサド政権と反体制派がシリア全土で停戦し、和平に向けた協議を始めることで合意したと発表した。トルコ外務省も「ロシアとトルコが停戦の保証人になる」との声明を出した。ロシアのラブロフ外相は、「トランプ次期政権の参加を期待する」と強調し、アメリカに揺さぶりをかけている。

■トルコ、シリア和平協議にトランプ政権招待2017年1月16日

トルコ外相は14日、ロシアとトルコが主導するシリア和平協議にアメリカを招待することを決めたと明らかにした。これについて、米露からの発表はないが、実現すれば、トランプ氏とプーチン氏が初めて国際舞台で協力することに。

■カザフスタンの首都でシリア停戦交渉が開始2017年01月23日

カザフスタンの首都アスタナで、今日からシリア内戦の停戦の拡大交渉が開始される。カザフスタンの副外相によれば、反体制派は15以上の多数のグループに別れており、反体制を取りまとめるルールや共通の代表が不在の状態だと言う。今回の停戦拡大交渉はロシア、イラン、トルコによって仲介されており、2月に予定される、国連に舞台を移した交渉に向けた前向きな空気作りが意図されている。

■シリアの惨状伝えた7歳少女、トランプ氏にメッセージ記す2017年1月24日

「シリアの子どもたちのために、あなたは何かをしなければなりません。なぜなら彼らはあなたの子どもと同じで、あなたと同じように平和に生きるべきだから」と訴えた。

■トランプ、シリア国内に避難民向けの「安全地帯」設置計画を指示2017年1月26日

トランプ米大統領が近日中に、避難民のための「安全地帯」をシリアに設ける計画を策定するよう国防総省と国務省に命じる見通しが明らかになった。ロイターが25日、大統領令の草案を入手した。トランプ氏の署名を待つ草案には、「故郷を逃れたシリア国民に安全地帯を提供する計画を90日以内に立案するよう国務長官と国防長官に命じる」などと書かれていた。

■シリア和平協議再開=実質交渉の機運探る-国連2017年02月23日

長引くシリア内戦の打開を目指す国連主導の和平協議が23日、ジュネーブで再開した。デミストゥラ国連特使は「大きな進展は期待していない」と述べており、停戦の徹底を確認しながら、アサド政権と反体制派が今後、実質的な交渉に臨める機運づくりを目指す。

■ジュネーブでのシリア和平協議、「明確な協議事項」で合意2017年03月04日

デミストゥラ特使は報道陣に対し「今われわれの前には明確な協議事項があると考えている」「われわれは手続きについて議論した……しかし実質的な内容についても議論した」と述べた。反体制派の主要組織「高等交渉委員会(HNC)」は、最新のジュネーブでの協議についてこれまでの協議よりも「建設的」だったと述べた。

■シリア和平協議が再開 双方の主張に隔たり、難航予想2017年03月24日

主要な反体制派でつくる「最高交渉委員会(HNC)」の代表団と、ジャファリ国連大使をトップとするアサド政権側が参加。国連シリア担当特使代理が双方との協議を始めたが、主張の隔たりが大きく交渉は難航が予想される。反体制派は、一定期間後にアサド大統領が退陣することを和平の条件としている。一方、北部アレッポを掌握して基盤を固める政権側は、反体制派の一部を「テロ支援組織」として非難している。

List    投稿者 dairinin | 2017-03-29 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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