イタリアはドラギ政権=金貸し勢力が優勢、しかし足元はぐらついている
イタリアでは、コロナの蔓延を受けて今年2月に親EU派=金貸し勢力のドラギ政権が成立しました。それから約半年がたち、イタリアの金貸しと反金貸しの勢力がどうなっているか調べてみました。一見、金貸し勢力が圧倒的に強いように見えますが、その足元はぐらついているようです。
まず、ドラギ政権の支持率ですが約7割に達しています。欧州中央銀行(ECB)前総裁という経歴を活かして、EUのコロナ復興基金から1,915億ユーロ(約25兆円)の資金を獲得しました。これはEUの中でも最大規模の基金です。
もともと、EUの中での負け組だったために、反EU=反金貸し勢力が優勢だったイタリアですが、負け組ゆえに財政が厳しくコロナの景気低迷を受けてEUの復興基金に頼らざるを得ない状況に追い込まれ、金貸し勢力の復権を許してしまいました。
しかし、そのイタリアも金貸し勢力が圧倒しているのかと言えば、そうでもないようです。イタリアの政党支持率を見ると、右派=反EU政党である「イタリアの同胞」と「同盟」が第1位、第2位となっています。そして、もともと強力な反EU政党だった「同盟」が政権を取るためにドラギ氏支持に回り反EU姿勢を弱めると支持率が落ち、反EU=反ドラギを貫いている「イタリアの同胞」の支持率が第1になっています。
加えて、前首相のコンテ氏がドラギ政権に対抗するために「五つ星運動」から分離独立し新党を設立する動きも見られます。
ドラギ政権は、金貸し勢力の意を受けて、EUから資金を調達することはできましたが、それはイタリアがEUの負け組であると言う現実を何ら改善することにはなっていません。前のコンテ政権はEUに対抗して負け組から脱する気概がありましたが、ドラギ政権の路線はEU=金貸し支配に屈服する政策です。それが分かっている国民が多数いるからこそ、反EU=反ドラギである「イタリアの同胞」の支持率が上がっているのでしょう。
■イタリア、復興パッケージを欧州委に提出、グリーン革命に重点2021年5月10日
欧州委員会に今回提出した計画は、計2,351億2,000万ユーロの投資計画となっており、主に3つの財源から構成される(添付資料表参照)。「次世代のEU」の核となる新型コロナウイルス危機からの復興のための加盟国への支援基金「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」が1,915億ユーロと全体の8割超を占め、「結束と欧州の地域のための復興支援(REACT-EU)」から130億ユーロ、イタリアの独自財源「補足ファンド」が306億2,000万ユーロとなっている。RRFは、689億ユーロが補助金、残りは融資の形式でEUから配分される予定だ。
■ドラギ氏、イタリア首相としての給与を辞退2021年5月14日
イタリアのドラギ首相(73)は、首相として受け取る権利のある約11万ユーロ(約1400万円)の給与を辞退すると発表した。理由は明らかにしていないが、ドラギ氏は少なくとも2つの公的年金を受給し、約10件の不動産を所有、もしくは部分的にしている。イタリアの政治家は納税申告書の開示が義務付けられているが、ドラギ氏は開示の際に給与受け取りを辞退すると表明した。
12日に公表されたドラギ氏の2020年度納税申告書によると、19年の総収入は58万3470ユーロだった。その内の49万8144ユーロは、財務省およびイタリア中央銀行の公的年金だという。ドラギ氏は54歳で財務省を退職し、ゴールドマン・サックスのロンドンの幹部職に就いた。イタリア中銀を退職したのは64歳の時だった。
■伊首相が中国製ワクチンの有効性に疑問 中国は反発2021年6月28日
イタリアのドラギ首相は25日、チリで中国製ワクチンが普及しながら感染が再拡大している現状に触れ、「中国のワクチンは有効ではない」との見解を示しました。
これに対し、中国外務省は28日の会見で「WHO(世界保健機関)はすでに中国製のワクチンを緊急使用リストに入れている」としたうえで、「安全性と有効性は十分に証明されている」と反論しました。
ドラギ首相就任後に政治リスクが封印されているイタリアで、政局流動化の兆しが広がっている。政権奪取の機会を伺う右派ポピュリスト政党・同盟の支持率は、ドラギ政権支持に回って以降、一段と低下している。最新の世論調査では、主要政党で唯一政権を支持していない別の右派ポピュリスト政党・イタリアの同胞との支持率が逆転した。このまま政権支持を続けていれば、次の総選挙での第一党獲得や首相の座が遠退く恐れがある。同盟は徐々に政権から距離を置き始めることが予想される。
議会第一党でかつて同盟とともにポピュリスト政権を率いた五つ星運動は、今後の党運営を巡って内部分裂の危機にある。国民から圧倒的な人気を誇りながら、首相の座を追われたコンテ前首相(法学者出身で非政治家)を、新たな党首に擁立しようとする動きがある。コンテ前首相が新党を結成する場合、現在の五つ星運動よりも多くの支持を集めるとの世論調査が多い。
イタリアの同胞を除く主要政党が支持するドラギ政権は、上下両院の8割前後もの安定的な過半数の支持を得ている。ただ、同盟と五つ星運動のコンテ派が政権支持を取り止めれば、議会の過半数を確保するのは難しくなる。
イタリアは、他のG7のメンバーに比べて中国寄りだと見られる事が多かった。特に、2019年3月に習近平主席がイタリアを訪問した際に、G7のメンバーとして初めて「一帯一路」の覚書に署名して、翌月には、当時のコンテ首相が、第二回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに参加した時であった。
「大西洋主義」と「親EU」を政権の基本方針として掲げるドラギ政権になり、コンテ政権の頃より明らかに中国に対する見方は、より厳しいものとなっているが、その背景としては、欧米と歩調を合わせる伝統的なイタリア外交に大きな方向性が戻ってきたことや、一帯一路に潜む中国側の隠れた意図に対する認識が高まったこと、5G等の経済安全保障上の問題が認識されたことがあるが、それに加えて、香港情勢、新疆ウイグル情勢、更にはミャンマー情勢に対する中国の態度に対する反発が非常に大きいと感じられる。
ドラギ政権は、具体的な行動としても、本年4月に中国によるミラノの半導体企業の買収を阻止する等、複数の中国による投資を止めている。さらには、本年のG7において、中国への厳しい認識がG7各国で共有されたことは記憶に新しいが、その際の記者会見において、「一帯一路」覚書について問われたドラギ首相は、同覚書を「慎重に検証していく」旨発言した。
■イタリア、飲食店利用はワクチン証明が義務 感染再拡大2021年7月23日
イタリア政府は22日、飲食店や映画館の利用時にワクチン接種などを記録した「グリーンパス」の提示を義務付けると発表した。8月6日から適用する。欧州でもインド型(デルタ型)の変異ウイルスが猛威を振るい、規制の強化に追い込まれる国が増えている。ドラギ首相は「すべてのイタリア人にワクチンを接種してほしい」と呼びかけ、接種スピードを速める必要があるとの認識を示した。
■伊ドラギ首相、支持7割、景気対策手堅く、就任から半年2021年8月13日
イタリアのドラギ首相が就任してから13日で半年がたった。景気対策や外交で手腕を発揮し、支持率は約7割に達する。長年の懸案である構造改革は手つかずで、失業対策など多くの課題に直面している。
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