反グローバリズムの潮流(イタリアの総選挙、与党政党も反EU政策を掲げる)
イタリアの総選挙が3月4日に決まり、各政党が政策を固めて来ていますが、かなりの混乱が予想されています。どんな状況なのか、イタリアの選挙戦の様子を調べてみました。
イタリアの総選挙の政党支持率ですが、第1党になると予想されているのが反体制派でポピュリズム政党と言われている「五つ星運動」です。予想されている得票率は29%。この五つ星運動は、欧州連合(EU)条約の再交渉が行われない限り、ユーロ圏離脱を問う国民投票の実施を目指す、という政策を掲げています。
政党では、第1党にならないものの、政権を取る可能性があるのが中道右派連合で、フォルツァ・イタリア15%、北部同盟13%で合計28%の支持を集めています。フォルツァ・イタリアは国内で、「新リラ」を導入、EU域内では、ユーロを使用する新通貨制度を提案。また、大型減税も提案しています。北部同盟はさらに大きな減税も主張しています。
そして、現在の与党の民主党の支持率は25%と低迷しています。五つ星運動や中道右派連合に負けている現状を踏まえて、民主党もポピュリズム政党よりの政策を掲げています。これまではEUの政策を受けて緊縮財政を進めてきましたが、一転して緊縮財政の見直しや減税を打ち出しています。
このような状況で、選挙後もすぐに政権が樹立できるとは思えず国内政治が混乱することが予想されていますし、どの政党が政権を取ったとしても、EUと対立することは避けられない状況であり、EUも混乱することは確実だと思われます。
これまで、反EUを掲げた政党が少数与党ながら政権を取った事例はヨーロパでもありましたが、政権与党が政策転換し、EUと対立する政策を掲げたのはイタリアが初めてではないかと思われます。
■イタリアで3月4日に総選挙-絶対多数政党不在、政治不安再燃も2017年12月29日
イタリアではマッタレッラ大統領が28日に議会を解散し、来年3月4日の総選挙実施が決まった。選挙後の議会は絶対多数政党不在の「ハングパーラメント」となり、政治的混乱が続く可能性がある。
世論調査によれば、首相を支える中道左派の与党民主党、ベルルスコーニ元首相率いる「フォルツァ・イタリア」など中道右派勢力を抑えて、既存政党への不満の受け皿となっている「五つ星運動」が支持率でリードしている。欧州連合(EU)条約の再交渉が行われない限り、ユーロ圏離脱を問う国民投票の実施を目指すというのが、五つ星運動の主張だ。
だが世論調査の結果を見る限り、五つ星運動も、レンツィ前首相が書記長(党首)を務める民主党も、中道右派勢力も議会で過半数を確保できない見通し。さらに民主党とフォルツァ・イタリアが「大連立」も組んでも、過半数には届きそうにない。
■イタリア総選挙の日程が決まる 予想では「五つ星運動」が第1党に 政局不安定化も
イタリアでは1993年以来、3回、選挙法が改正されてきましたが、今回の総選挙は、2017年11月に改正された選挙法に基づいて行われます。これまでは、上院(定数320)、下院(同630)とも、すべての議席が比例代表制で選ばれてきましたが、今回の総選挙では、上、下院どちらとも、定数の36%を小選挙区で、残りの64%を比例代表で選出することになりました。並立制です。また、これまでは、得票第1位の政党に、過半数の議席を割り当る「プレミアム制」を適用していましたが、今回はこれを廃止しました。
主要政党の支持率は、世論調査による予想で、以下のようになっています。
反体制
五つ星運動 29%
中道左派陣営
民主党 25%
中道右派陣営
フォルツァ・イタリア 15%
北部同盟 13%
内政の不安定化が懸念されますが、EUとの対立も激化しそうです。ポピュリズム(大衆迎合主義)と言えば、五つ星運動ですが、民主党、フォルツァ・イタリア、北部同盟とも、五つ星運動が躍進する中で、ポピュリズムとも言える「ばらまき政策」を前面に掲げているためです。EUは緊縮財政をイタリアに求めています。
各党の政策を見てみましょう。
・五つ星運動
生活レベルの低下は、欧州連合(EU)から科された緊縮財政政策によるとして、EUとの再交渉を要求しています。その要求が満たされない場合は、ユーロ圏からの離脱を問う国民投票を実施するとしています。また、景気刺激のための歳出増、貧困層への補助金支給、経営に苦しむ銀行を救済する特別銀行の設立などを政策として掲げています。
・民主党
EUと交渉し、緊縮財政を押し進めましたが、五つ星運動の躍進に危機感を強め、一転、緊縮財政の見直しを打ち出しています。また、家庭や企業への減税も計画しており、その規模は、500億ユーロ(約6兆7500億円)に及びます。
・フォルツァ・イタリア
国内で、「新リラ」を導入、EU域内では、ユーロを使用する新通貨制度を提案しています。また、現行23~43%の所得税率を15%か23%にする大型減税を訴えています。
・北部同盟
フォルツァ・イタリアと同様の新通貨制度のほか、企業、個人に対する税率を一律15%にすることを提案しています。
■イタリア五つ星運動、選挙綱領を発表 ユーロ離脱の国民投票盛り込まず2018年1月23日
3月4日のイタリア総選挙に向けて、各種世論調査で支持率トップを走る反体制派政党「五つ星運動」は22日、20項目から成る選挙綱領を発表した。ユーロ圏離脱の是非を問う国民投票は盛り込まれなかった。
世論調査によると、「五つ星運動」は支持率が約28%で、与党の民主党を約5ポイントリード。ベルルスコーニ元首相率いる「フォルツァ・イタリア」を中心とする中道右派連合の支持率は合計で約37%と、最多議席を獲得する見通しだが、過半数には達しないとみられる。「五つ星運動」はこれまでは、他の党とは連立を組まないとの方針を掲げてきたが、今回公表した選挙綱領では、この方針が撤回された。
■インタビュー:イタリア北部同盟、EU離脱目指す可能性=党幹部2018年2月14日
3月4日のイタリア総選挙で勝利が予想されている中道右派連合の一角を占める北部同盟は、欧州連合(EU)が財政や移民を巡る政策で交渉に応じない場合、イタリアのEU離脱を目指す可能性がある。党の経済政策責任者を務めるクラウディオ・ボルジ氏がインタビューで述べた。
同連合はEU予算への拠出削減や欧州の条約見直しのほか、EU法にイタリアの憲法を優先させることなどを掲げている。ボルジ氏は、新政権誕生後2年以内に進展がみられなければ、北部同盟は「英国のように離脱条項を発動する可能性を排除しない」と述べた。
■イタリア、移民議論過熱 来月4日総選挙 争点急浮上2018年2月15日
中部マチェラータで三日、政党「同盟(北部同盟から改称)」の候補者として地方選挙に立候補したこともある警備員ルカ・トライニ容疑者(28)が銃を乱射し、アフリカ出身の移民六人が負傷した。数日前にイタリア人女性(18)の遺体が見つかり、難民申請中のナイジェリア人の男が逮捕された事件への報復だと主張した。
事件後、中道右派連合の一角を占め、反移民・反EUを掲げる「同盟」のサルビーニ書記長は「非難されるべきは不法移民の流入を許している政府の対応だ」と持論を展開。中道右派「フォルツァ・イタリア」のベルルスコーニ元首相も「移民は社会的な爆弾だ」と述べ、政権への批判を繰り広げた。
一方、中道左派の与党、民主党所属のジェンティローニ首相は「憎悪と暴力の連鎖に歯止めをかけよう」と呼びかけた。左派各党も「サルビーニ氏は恐怖と混乱を生み出している」と非難したが、有効な移民対策を示せていない。世論調査で支持率トップの新興政治組織「五つ星運動」は移民政策で党内が割れており、ディマイオ党首は事件数日後「非人道的な犯行だ」と述べるにとどめた。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2018/02/5670.html/trackback