2017-08-16

緊迫する北朝鮮情勢、米中露の動向から何が見えるか

webw170728-navy-thumb-720xauto北朝鮮のキム・ジョンウン委員長がグアム島周辺へのミサイル発射計画を発表し、トランプ大統領が北朝鮮に核兵器を使用することを示唆するなど、緊張が続く北朝鮮情勢ですが、今後どうなるのでしょうか。アメリカもさすがに核兵器まで使うとは思えませんが、これまでも世界中で武力行使をしてきたアメリカのこと、何をしでかすか分からない恐ろしさがあります。

不思議なのは北朝鮮で、なぜこれほど強気なのでしょうか。中国やロシアが背景にいるとは言え、北朝鮮の行動はあまりにも行き過ぎており、国際世論を前にして中国やロシアもどこまで北朝鮮をかばいきれるか疑問です。南北対立の時代ならいざ知らず、中国もロシアも市場経済体制に移行しており、北朝鮮の戦略的意義がそれほど大きいとも思えません。

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北朝鮮の過激な行動がどのような結果を引き起こしているかをよく見ると、誰がその背景にいるのかも見えて来ます。
北朝鮮の過激な行動を受けて、国際情勢で最も大きな影響があったのはアメリカとロシア・中国の関係悪化です。トランプ大統領は就任した直後には、ロシアとの関係改善を目指していました。

ロシアは、トランプ政権になることでアメリカとの関係が改善することを期待していました。特に、ウクライナ問題に対する経済制裁の解除や、EUで台頭する反グローバリズム勢力との連携など、ロシアにとって大きなメリットが期待されていました。

中国の立場は微妙です。トランプ大統領就任時には中国を強く批判しており、ロシアゲート疑惑でトランプ大統領の追い落としを画策しているアメリカの民主党も支援していると思われますが、もう一方で中国は通商を通じてトランプ大統領との関係改善を図っており、国際世論を敵に回して、北朝鮮に過激な行動をとらせるほどのメリットは中国にも無さそうです。

やはり、アメリカとロシア・中国の関係悪化を一番喜んでいるのは、アメリカの反トランプ勢力だと思われます。アメリカの反トランプ勢力の中心はグローバリズムを推進する国際金融資本勢力=金貸し勢力です。アメリカとロシアが手を組むことで反グローバリズムの潮流が世界に広がることを最も恐れています。

ロシアゲート疑惑でトランプ大統領の追い落としを画策したものの、マスコミによる情報操作にもかかわらず、大衆のトランプ大統領支持が予想外に根強く、次の手として打って来たのが北朝鮮問題だと思われます。北朝鮮問題が大きくなってきた時期も、ロシアゲート事件の鎮静化の時期と並行しています。つい最近では、北朝鮮のミサイル技術はロシアから北朝鮮に供与されたとアメリカの研究機関が発表しています。北朝鮮がミサイル開発やアメリカ対する挑発を行っているのが、アメリカの反トランプ勢力の支援によるのであれば、北朝鮮がアメリカから攻撃される心配をするはずもなく、なぜあれほどトランプ大統領に対して強気なのかの説明も付きます。

心配なのは、アメリカ国内の対立構造です。北朝鮮を支援している実行部隊はCIAである可能性が高いですが、今やCIAとトランプ大統領は対立関係にあると思われ、必ずしもCIAの思惑通りに進むとは思えない事です。アメリカ軍は、トランプ大統領に忠誠を誓っており、米海軍太平洋艦隊司令官のスコット・スウィフト大将は「米軍のメンバーは全員がアメリカ憲法の遵守を宣誓している。外国や国内のすべての敵に対して、上官そして最高司令官である大統領の命令に従う」と発言しています。

トランプ大統領の過激な発言は、北朝鮮に向けて発信されたのではなく、北朝鮮の背後にいるアメリカ国内のCIAに対して発せられたのかもしれません。アメリカ国内の対立関係が激化した結果、トランプ大統領がCIAを抑え込むために、北朝鮮に武力攻撃を仕掛けるという可能性はありそうです

■緊張緩和へ“提案”2017年7月5日
ロシアを訪れた中国の習近平国家主席とプーチン大統領は4日、モスクワで会談し、朝鮮半島問題に関する共同声明を発表しました。その中で、北朝鮮が核・ミサイル開発を凍結するのと引き換えにアメリカと韓国が大規模な合同軍事演習を停止するべきだとして、今週ドイツで開かれるG20サミットを前に、アメリカのトランプ政権と一線を画す姿勢を明確にしました。

■安保理で結論出ず 米中協議へ2017年7月6日
アメリカのヘイリー国連大使は、「同盟国とみずからを守るため、あらゆる能力を駆使する準備ができている」と述べて、軍事的な対応を排除しない姿勢を示して北朝鮮をけん制しました。さらに「北朝鮮が挑発をエスカレートさせた分だけ国際社会にもより厳しい対応を求める決議を数日中に提出する」と述べて、北朝鮮への石油の供給や航空、海運の制限を含む新たな制裁決議の必要性を訴えました。
一方、中国の劉結一国連大使は、「朝鮮半島の緊張を緩和するため、関係国は北朝鮮との無条件の対話に乗り出すべきだ」と主張し、ロシアも中国を支持したため、緊急会合では結論は出ず、北朝鮮への対応は、アメリカと中国が今後、協議することになりました。

■対北 非難声明をロシアが阻止2017年7月7日
国連の安保理は5日、対応を協議する緊急の会合を開き、アメリカが北朝鮮の発射を厳しく非難し、制裁の強化に言及した報道機関向けの声明の草案を日本を含むメンバー国に示しました。しかし、国連外交筋によりますと、ロシアは6日、ミサイルは長距離のICBMではなく中距離であり、中距離ミサイルの発射で制裁を強化する必要はないなどとして、全員一致が前提の声明の発表を阻止したということです。

■圧力強化か 緊張緩和か2017年7月9日
米中首脳会談が8日、ドイツのハンブルクでG20サミットの閉幕後に行われました。トランプ大統領は北朝鮮をめぐる、これまでの中国の対応に謝意を示したうえで、「何らかの行動を取らなければならない問題だ」と述べ、習主席にさらなる圧力を促しました。一方、習主席は「中国は対話と協議に基づく問題の解決を主張している。国際社会は対話を促し、危機管理を強める努力が必要だ」と述べ、圧力よりも緊張の緩和が優先だという考えを示しました。

■増えていた中朝貿易額2017年7月13日
中朝貿易のうち、北朝鮮からの輸入額は8億8000万ドルと、去年の同じ時期に比べ13.2%減り、国連安全保障理事会の制裁決議で原則禁止されている北朝鮮からの石炭輸入が、ことし2月以降、停止していることなどが減少の原因と見られます。一方で、北朝鮮への輸出額は16億7000万ドルと、29.1%増え、制裁対象ではない繊維製品などの輸出が増えたことが増加の要因だとしています。北朝鮮に対する国際的な圧力が強まる中でも、中国との貿易が北朝鮮経済を支えている状況が一層、鮮明になっています。

■CIA長官「秘密工作も検討」2017年7月28日
これはCIAのポンペイオ長官がアメリカのニュースサイト「ワシントン・フリー・ビーコン」のインタビューに対して明らかにしたものです。
「過去の政権は、まだ時間があると考えていたかもしれないがその段階は過ぎた」と述べ、CIAとしては外交による解決ができなかった場合に備えて、秘密工作やアメリカ軍の支援などいくつかの選択肢を検討していることを明らかにしました。ポンペイオ長官は、先週行われたフォーラムで、北朝鮮について「核の能力と核を手に入れたい者を切り離すことが重要だ」と発言していて、北朝鮮の体制転換は求めないとするトランプ政権の方針とは異なり、体制転換を目指す可能性を検討しているのではないかという見方も出ています。

■「トランプ大統領が命令すれば、米軍は中国を核攻撃する」米太平洋艦隊司令官2017年7月28日
7月27日、米海軍太平洋艦隊司令官のスコット・スウィフト大将は米軍最高司令官である大統領への忠誠を示した。オーストラリア国立大学の安全保障会議でスウィフトは、大統領の命令なら中国に核ミサイルを撃つことも辞さない、と語ったのだ。「米軍のメンバーは全員がアメリカ憲法の遵守を宣誓している。外国や国内のすべての敵に対して、上官そして最高司令官である大統領の命令に従う」

■「中国に大変失望」2017年7月30日
北朝鮮が、2回目のICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験に成功したと発表したことを受けて、アメリカのトランプ大統領は、29日、みずからのツイッターに「中国には大変失望している。アメリカの過去の愚かな指導者たちが貿易で中国に大金を稼がせたのに、中国は北朝鮮に対して口先だけでわれわれのために何もしていない」と書き込み、北朝鮮への影響力を行使していないとして、中国への強い不満をあらわにしました。さらに「われわれはもはやこの事態が続くのを見過ごすわけにはいかない」と投稿し、今後、中国に対して何らかの措置を取る可能性を示唆しました。

■軍事力か、対話か2017年8月2日
アメリカの与党・共和党のグラム上院議員は1日、NBCテレビの番組で北朝鮮への対応をめぐってトランプ大統領と交わした会話の内容を明らかにしました。それによりますと、トランプ大統領は北朝鮮がアメリカを標的にICBM=大陸間弾道ミサイルの開発を続けるなら北朝鮮に対して戦争を行う可能性に言及したということです。そして「戦争が起こるとしたら向こうで起こる。大勢が死ぬとしてもアメリカではなく向こう側だ」と述べたということです。

■中朝外相 1年ぶり会談2017年8月6日
中国の王毅外相は、北朝鮮のリ・ヨンホ外相と訪問先のフィリピンでおよそ1年ぶりに会談し、朝鮮半島情勢について、「危機の臨界点に迫っているが、交渉に戻る決断をする転換点でもある」と述べて、北朝鮮に弾道ミサイルの発射などをやめ、アメリカなど関係各国との対話に臨むよう促しました。

■「過去最大の経済制裁」決議2017年8月6日
北朝鮮がICBM=大陸間弾道ミサイルだとする発射実験を2回行ったことを受けて、国連の安全保障理事会は、北朝鮮の主な収入源となっている石炭や海産物などの輸出を全面的に禁止する新たな制裁決議を全会一致で採択しました。アメリカは「北朝鮮に対する過去最大の経済制裁だ」として各国に着実な実行を求めました。
中国の劉結一国連大使は「アメリカが北朝鮮の政権転覆や崩壊を求めず、朝鮮半島の統一を急がず、南北の軍事境界線を越えて米軍を投入することはないと主張していることに留意している」と述べました。また、北朝鮮が核実験と弾道ミサイルの発射を停止するのと同時に、アメリカが韓国との合同軍事演習を中止するという、中国とロシアからの提案を受け入れるようアメリカに呼びかけました。
ロシアのネベンジャ国連大使は「決議の草案に盛り込まれたわれわれの提案が、支持されなかったことを懸念している」と述べました。また、「制裁と圧力だけでは朝鮮半島の問題は解決できない。追加制裁だけで終わるのではなく建設的な対話への手段とするべきだ」と訴えました。

■「炎と怒りに直面」トランプ氏、北朝鮮けん制 2017年8月9日
トランプ米大統領は8日、記者団に対し、北朝鮮が米国を脅かすなら「世界が見たこともないような炎と怒りに直面するだろう」と述べ、武力行使を示唆して核・ミサイル開発をけん制した。「北朝鮮にとって最善の策は、米国をこれ以上脅かさないようにすることだ」と警告した。

■トランプ氏「この力を使うことがなければいいが…」2017年8月9日
トランプ米大統領は9日朝、さらに米国の核兵器について、「核兵器の更新と現代化が、私の大統領としての最初の命令だった。今はかつてないほど強力だ」「この力を使うことがなければいいと望むが、我々が世界最強の国でなくなる時は決してない」などとツイートした。

■トランプ大統領 ツイッターで北朝鮮に再び強く警告2017年8月12日
11日には自身のツイッターに、「北朝鮮が愚かな行為をすれば軍事的に解決する手段は、今、完全に整っている。戦闘準備完了」と投稿し、軍事的な対抗措置も辞さない構えを示しました。そのうえで、「キム・ジョンウン(金正恩)が異なる道を進むことを願う」と書き込み、グアム島周辺に向けた弾道ミサイルの発射計画を今月中旬までに完成させると発表した北朝鮮に対して挑発行為をやめるよう再び強く警告しました。
ロシアのラブロフ外相は11日、アメリカと北朝鮮との間で激しい言葉の応酬が続いていることについて、「強く懸念している」と述べました。さらにアメリカと北朝鮮が軍事衝突する可能性について「危険性は非常に高い」と答えました。そのうえでアメリカに対し事態の沈静化に向けた行動をとるよう促しました。
中国外務省の耿爽報道官は11日、「現在、朝鮮半島情勢は、複雑かつ敏感であり、関係各国は言動を慎み、緊張緩和の助けとなることをするよう望む。緊張をエスカレートさせるような道を歩むべきではない」として、米朝双方に強く自制を求めました。

■中国 北朝鮮の石炭など全面禁輸 制裁実行をアピール2017年8月14日
中国の商務省は14日、採択を受けて対象となった石炭や鉄鉱石、海産物などの北朝鮮からの輸入を15日から全面的に禁止すると発表しました。発表によりますと、すでに中国に到着しているこれらの貨物についても来月5日以降は輸入手続きを禁止するとしていて、制裁を着実に実行する姿勢をアピールしています。

■北朝鮮 ICBM開発で旧ソビエト製ロケットエンジン入手か2017年8月15日
アメリカのロケット技術の専門家で、IISS=国際戦略研究所のマイケル・エルマン氏は14日、北朝鮮のICBM=大陸間弾道ミサイル級の「火星14型」や新型の中距離弾道ミサイル「火星12型」について、発射映像などに基づく最新の分析結果を発表しました。これらのミサイルには旧ソビエト製のロケットエンジンの改良型が使われている可能性が高いということです。このエンジンは旧ソビエトのICBMなどにも使用された液体燃料式で、北朝鮮では去年9月ごろから発射実験などで使われるようになったとしています。また、このエンジンを製造していた旧ソビエトのウクライナの工場が去年、財政難に陥っていたほか、過去に北朝鮮がこの工場からミサイル技術を得ようとした形跡が見られることから、この2年間に闇市場を通じて旧ソビエト製の強力なロケットエンジンの入手に成功した結果、ICBMの技術を急速に進展させた可能性があると指摘しています。

■ウクライナで製造のロケットエンジンを北朝鮮に提供か2017年8月16日
このエンジンについてウクライナ宇宙庁のラドチェンコ長官代行は「ウクライナで2001年まで製造され、ロシアに供給したロケットにすべて使用された」と述べ、そのうえで「北朝鮮との友好的な関係を考えると、ロシアにはロケットそのものやエンジンなどを提供する理由があるだろう」と述べ、ロシアが北朝鮮にエンジンを提供した疑いがあるという見方を示しました。
北朝鮮のミサイル開発をめぐる今回の指摘をめぐってはロシアのロゴージン副首相が15日、「北朝鮮はウクライナの専門家なしではエンジンの製造はできなかっただろう」としてウクライナによる技術提供があったという見方を示しています。

List    投稿者 dairinin | 2017-08-16 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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