反グローバリズムの潮流(ニュージーランド、反グローバリズム政権誕生でどうなる?)
以前にこのブログで、ニュージーランドに反グローバル政権が登場したことを紹介しました。反グローバリズムの潮流(ニュージーランドで反TPP政権が成立)今回は、そのニュージーランドがその後どうなったか調べてみました。
まず、注目していたTPPですが、結局ニュージーランドは態度を変えて11月11日に参加11か国でTPPに大筋合意してしまいました。ニュージーランドの新政権は、海外投資家がニュージーランドに不動産投資をすることで不動産価格が高騰し、一般の国民が住宅を買えないことからTPPに反対していたのですが、農産物の輸出に頼っている国だけに、TPPのメリットの方が多いと新政権も判断したようです。
また、新政権は中央銀行改革も目指しているという事で注目していましたが、その中央銀行改革の中身は、中央銀行の政策目的に雇用の安定を入れると言う内容でした。雇用の安定を図るために中央銀行が何をするのか調べたら、景気の刺激でした。一般的に中央銀行の役割は物価の安定であり、景気の過剰な刺激は行いませんが、雇用の安定も目標すると景気刺激、インフレ方向に政策が動くようです。そして、世界で唯一、正式に中央銀行の目標に雇用確保を掲げているのがアメリカのFRBでした。
反グローバリズム政権の登場で、金貸し支配から脱する動きがみられるかと期待しましたが、金貸し勢力に良いようにあしらわれている感じがします。反グローバリズムを掲げながら、結局、市場拡大=経済的豊かさという価値観、目標しか持っていないために、新しいことをしようとしても結局、金貸しの言いなりになってしまうのが、現状なのかもしれません。
■ニュージーランドで9年ぶりの政権交代が決定2017年10月20日
NZファースト党は労働党との連立を表明。労働党政権の誕生によりニュージーランドでは9年ぶりの政権交代へ。新首相にはアーダーン労働党党首が就任予定。37歳と史上最も若い首相となり、同国3人目の女性首相に。
労働党とNZファースト党の政策方針には、移民流入抑制や外国人の不動産投資への制限、TPP反対などの共通点。両党はニュージーランド準備銀行(RBNZ)の金融政策に係る改革も提唱。今後は3党間での政策協議の行方に注目。
■ニュージーランド政権交代 TPP「NZ抜き」も検討 日本、再交渉せず2017年10月20日
ニュージーランド(NZ)で環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の見直しを公約に掲げた新政権の誕生が決まり、11月の大筋合意に黄信号がともっている。日本は米国に加えNZも離脱する事態を念頭に、残り10カ国による発効を検討する。9年ぶりに政権を奪還する労働党は「外国人による中古住宅の購入禁止」を打ち出し、高水準の投資自由化を掲げたTPP協定の再交渉を迫る構え。新政権に協力するニュージーランド・ファースト党と緑の党も協定には反対の立場だ。
日本はNZの再交渉要求には応じない構えだ。交渉筋は「ついてこられないならNZ抜きで合意する」と指摘。11月上旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて開くTPP首脳会合で大筋合意するため、NZの意向にかかわらず意見集約を進める方針だ。
■ニュージーランドのアーダーン次期首相、TPPの修正要請へ2017年10月23日
ニュージーランドのアーダーン次期首相は22日、環太平洋連携協定(TPP)への参加継続を望むが、国内中古住宅の購入を外国人に禁止できることが条件になるとの立場を示した。こうした措置は協定案に反するため、来月ベトナムで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、修正を求めるとしている。アーダーン氏は総選挙に先立ち、TPPには参加したいが、住宅対策は譲れないと主張していた
■移民削減、外国人投資家はどうなるの?ニュージーランド政権交代の影響 2017年10月27日
元々労働党は、弱者に優しい党でもあり、彼らが政権を握ると国からベネフィット(手当)を貰っているような失業者達には都合の良い結果となります。そんな中、ジャシンダは、最低時給を現在の$15.75から来年4月より$16.50、さらに2021年までには$20まで引き上げると発表。今でも高い印象の最低時給をさらに引き上げれば、ビジネス経営者達の首を絞める事にもなり兼ねないのでは?さらに、移民の大幅カット、これは間違えなく労働者不足を引き起こすと言われています。建築関連、レストラン業界、観光業等々…移民を当て込んだ分野は数知れず。
移民削減だけでは飽き足らず、さらに労働党は外国人投資家による既存の不動産物件購入を禁止すると発表しました。これはもちろん、不動産価格の高騰を抑えるためとされていますが、外国人投資家が占める割合など、せいぜい5%程度という事で、そこを締め出す事が本来の問題解決につながるのかどうかは謎。
■新政権でどうなるニュージーランド?労働党とNZファースト党の連立協定2017年10月30日
この連立協定が新政府の政策計画を明らかにするために発表されました。この協定は、地域経済の発展と雇用創出の優先順位を決める明確な議題を構成している、とArdern氏は述べています。最低賃金は2021年までに20NZドル(日本円で1,600円 1NZD=80円)まで上昇するでしょう、2018年4月に16.50NZドル(日本円で1,320円 1NZD=80円)でスタートし、その後段階的に上昇するとのことです。
優先事項として、すべての人が保健システムを受けられるように資金提供を行い、すべてのニュージーランド人が暖かい住宅に住み、貧困やホームレス対策に取り組み、外国の投機家の数を減らし、川を清掃し、気候変動と低炭素経済への移行に取り組む努力が挙げられています。持続可能な経済発展、地域経済の支援、輸出の拡大、賃金の引き上げ、不平等の削減に焦点を当てています。“われわれは財政的責任を果たし、経済を成長させることを約束し、すべてのニュージーランド人が経済的繁栄をすることをテーマとしています。”
また、Ardern氏は移民の数を2万〜3万人減らす計画も立てています。
■アングル:NZ新政権、総裁人事通じて中銀に改革要求か2017年11月7日
ニュージーランドで新たに発足した労働党政権は、ニュージーランド準備銀行(RBNZ、中銀)との政策目標協定(PTA)を見直し、物価に加えて雇用も金融政策の目標に据える方針だ。ただ、政策目標の手直しは新政権の独自色を出すにはうってつけで、RBNZ総裁の後任選びを通じ、PTA見直しを待たずに中銀に改革を迫る可能性もある。
政府は中銀の政策目標をインフレと雇用の2本立てとするとともに、連立を組むニュージーランド・ファースト党の要請に応じて為替レートをPTAの優先項目と位置付けそうだ。ニュージーランド・ファースト党はニュージーランド(NZ)ドル相場を低めに誘導し、輸出の促進を図るよう求めている。
■NZ首相、TPPは輸出業者に恩恵-日本市場へのアクセスも利益に2017年11月7日
ニュージーランドのアーダーン首相は、環太平洋連携協定(TPP)によって同国が恩恵を受けると述べ、紛争処理手続きを巡る同国の懸念によって、した。アーダーン首相は7日、出発を前に首都ウェリントンでインタビューに応じ、「わが国の輸出業者にとって確かな利益がこの協定には存在する。ニュージーランドは例えば、オーストラリアのような日本市場へのアクセスを持たない。この協定は牛肉やワイン、キウイ業界に利益をもたらす」と語った。
■RBNZ総裁代行「NZドル相場は持続可能な水準に近づいている」2017年11月09日
NZロバートソン財務相は7日、政策目標協定(PTA)の見直し案を発表しました。物価に加え、雇用も金融政策の目標とする内容。政策決定は委員会方式を導入するとしています。PTA案に為替レートの目標を設定することも検討されましたが、とりあえず見送られました。
アーダーン政権は、連立を組むNZファースト党の強い要請もあり、中央銀行法の改正を目指しています。ただ、法改正には時間がかかると予想されています。1年半以上かかるとの見方もあります。
このため、マーケットの関心はRBNZの総裁人事に集まっています。ウィーラー前総裁の任期が切れた9月26日以降、スペンサー副総裁が総裁代行を務めています。代行の期限は2018年3月18日まで。それまでにロバートソン財務相が中銀理事会の意見を参考に次期総裁を指名することになります。アーダーン政権が総裁交代をきっかけに、法改正を待たずに中銀の改革を迫るとの見方があります。
■11か国によるTPP交渉の大筋合意について(外務大臣談話)平成29年11月11日
11月10日(現地時間同日),ベトナムのダナンで行われた環太平洋パートナーシップ(TPP)閣僚会合において,11か国によるTPP交渉の大筋合意が確認されました。我が国は本年5月のTPP閣僚会合以降,高級事務レベル会合を3回主催するなど,TPPの早期発効に向けたプロセスを積極的に主導してきました。今回の成果を歓迎します。
[参考]11か国による環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉の参加国オーストラリア,ブルネイ・ダルサラーム,カナダ,チリ,日本,マレーシア,メキシコ,ニュージーランド,ペルー,シンガポール,ベトナム
この発表に最も喜んでいるのが国内の羊や牛肉業界だ。1994年以来大規模な交渉は無かったので、大きな前進であると、ニュージーランドで食肉業界のパイオニアと呼ばれるGraeme Harrison氏は高く評価している。日本への冷凍肉輸出における関税率はニュージーランドよりオーストラリアの方がとても低い。
今年8月、日本が冷凍牛肉の輸入に対しWTOセーフガードを発動した。これにより関税率が50%に上がってしまったが、経済連携協定を結ぶオーストラリアは関税上げ対象国ではないため22%の関税率のままで輸出が可能。セーフガードが導入されて以来、ニュージーランドの日本向けの冷凍牛肉輸出量は70%まで落ち込んだという。現在国内の羊肉90%以上、牛肉が80%輸出されているニュージーランド。今後日本、メキシコ、ペルー、カナダ等各国への輸出がしやすくなる他、現地雇用の増加も見込めるという。
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