『ウォールストリート;恐怖の8日間』より(2)世界の株価損失は3000兆
前投稿からの続きです。
▼問題(3):世界の株価下落による損に、見当がついていない。
世界の株価の時価総額は、2007年8月が、$63兆(6300兆円)でした。
(国際取引所連盟:WFEの集計)
世界の、株価時価総額は、2008年10月1日時点で、$20兆(2000兆円)も減っていた。
加えて2008年10月10日時点では、$10兆(1000兆円)分が減っています。
合計の損害は、3000兆円です。
世界平均の株価は、半額に下落しています。
・2007年8月の時価総額 6300兆円
・2008年10月1日の時価総額 4300兆円
・2008年10月10日の時価総額 3300兆円
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・現時点での総損失 −3000兆円
●この3000兆円の、株で露呈した損と含み損が、世界の金融機関・企業・個人の資産を減らしています。
一体どこで、株価下落が止まるのか。見当がついていない。
米欧の金融機関とファンドが持つ株を、30%と仮定すれば、3000兆円×30%=900兆円の含み損です。株価は、後で、回復することがあるので、金融機関の損は数百兆円でしょうか。
▼問題(4):6200兆円の元本の、CDS(債務保証保険)の最終決着が見えない
2000年代の世界金融には、融資、社債、証券に対し、総額で6200兆円のCDS(債務保証保険)がかかっています。
住宅ローンや社債を含めあらゆるローン・融資に対し、裏で、CDSが掛けられていると見ていい。CDSは、相手となった金融機関が倒産すると、清算を迫られる契約のものです。
保証料(プレミアム)をもらい保証していた金融機関(たとえば破産したAIG等)が倒産すると、どうなるか。
【事例1】
2008年10月7日に、国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)は、破産した米住宅証券会社ファニーメイとフレディマックの住宅証券にかかっていたCDS(債務保証保険)の、「清算価格」を決めました。
●ファニーメイが元本の91.51%、フレディマックが94%です。両社の平均で92.75%です。両社のCDSを引き受ける相手となっていた金融機関には、100%−92.75%=元本の7.25%の損害が生じたことを示します。
両社が、発行する住宅ローン証券に掛けていたCDSの元本は、$5000億(500兆円)です。
この清算で、500兆円×7.25%≒36兆円の損害が、相手となっていた金融機関に生じたことを示します。
(注)ファニーメイとフレディマックには、米政府が救済することを決定しています。
これは、米政府の債務(過去は1000兆円)が、500兆円増え、1.5倍の1500兆円になったことを示します。ファニーメイとフレディマックが発行した住宅ローン証券の、今後の増加するデフォルト(未回収)の損は、米政府のものになるということです。
【CDSの損失:事例2】
2008年10月11日には、倒産したリーマン・ブラザーズに関係するCDSの清算価格も、決まっています。
●想定元本$4000億(40兆円)に対し、清算価格は、わずか8.62%です。
想定損は、40兆円×(100%−8.62%)=40兆円×93.8%≒37.5兆円という巨額です。これを、どれかの金融機関が引き受けねばならない。
(注)若干の、受け取っていた保険料(プレミアム)でうずめることはできますが、その分は、わずかです。
▼以上のまとめ
まとめれば、以下の4項です。
(1)米欧を中心とする世界の金融機関の総損失に、見当がつかない。
リスクの高い投資を行っている子会社の、SIV(特定投資目的会社:巨額の損がある)との連結は、まだ、されていない。しかも、住宅関連証券の時価は、市場が消えているので評価ができないのです。
IMF(国際通貨基金)は、米欧の金融機関が、今までに発生している不良債権を「賢明に処理した」と仮定して、$6750憶(67.5兆円)の、新たな資本投入が必要だと計算しています。(英エコノミスト:08.10.11号 p85)
しかしこれは、
・08年10月から今後の株価下落での巨額損と、
・今後の、CDSの解消による損失、
・及び、2009年の住宅価格下落を含めば、
極めて「甘い」見通しに思えます。
金融機関の損失は、「現在進行形」で増えているからです。CDSは、金融機関が倒産して救済の政府資本を入れば、清算し解約しなければならない条項がついています。
(2)米欧の住宅証券関連の損失は、2009年に向かい、総額が600兆円になる可能性が、極めて高い。(これは、IMFの見積もりである145兆円の4倍です。)
(3)世界の株価時価総額では、10月10日時点ですでに、3000兆円分が失われている。どこで下げ止まるか、不明です。
(4)元本6200兆円に掛けられているCDS(債務保証保険:相対)は、相手の金融機関が倒産すると契約が解除され、清算(=損失の確定)を迫られます。
CDSの清算の際に生じる損害は、見当がついていない。CDS問題は、わが国の金融危機にはなかった。CDSは、相対(あいたい)取引であり、交換市場がないため、査定が困難です。
以上のような巨額の損害金額については、正確な計算は、不可能です。仮に、膨大な計算に時間をかけ、正確を期しても、実際の意味はない。時間とともに、動くからです。
重要なことは、一刻も早く、帰着点での、概算数字をつかむことです。それによって予測ができ、対策も打てる。対策が遅れると、金融の損害額は一層大きくなります。
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コメント4件
schweiz hermes | 2014.02.01 20:37
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通行人 | 2009.03.29 21:14
国益優先の政策で、金貸したちのやりたい放題を押さえ込む図式とも見えますね。
プーチンの正体がはっきりしないところがありますが、現在の金融破綻を招いた金貸したちを押さえ込む勢力のひとつとして期待してもよいかなと思います。