2011-02-01

止まらない円高=世界通貨戦争どうなる?9〜世界通貨戦争の構造は?【後編】

 
前回の記事で、国際通貨戦争の本質は、ドル人民元レートを巡るアメリカと中国の通貨競争にあることが分かった。
 
今回は、この国際通貨戦争をめぐるアメリカと中国の二国間における思惑そして野望をみていきたい。
 
 
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●状況認識
 
アメリカにとって中国は輸入総額が20%を超える最大の貿易相手国の一つだが、下のグラフのとおり対中貿易は赤字を積み重ねている。
 

対中貿易赤字の推移

グラフはこちらからお借りしました
 
 
アメリカにしてみれば、為替を人民元高ドル安へ誘導し、貿易赤字を少しでも解消したいところだ。そのため、元の切り上げを強く求めており、再三の要請を中国へ向けて行っている。
 
一方、それに反して中国は巨額の貿易黒字だ。これは、人民元の為替が比較的割安であることが大きい。つまり現在のドル人民元の為替は、中国有利アメリカ不利となっている。
 
人民元の割安さの目安として、ビッグマック指数を用いて表現すれば、アメリカで買うビッグマックに比べて北京では40%も割安となっている。
 
各国ビッグマック価格

 
 
これが、元の切り上げをアメリカが強く求める根拠となっている。しかしこの要望を受ける中国は、アメリカの思惑に沿った切り上げを行っていない。これが現状の構図だ。
 
 
●中国の国内事情
 
中国は2011年より「第12次5ヵ年計画」に着手する。昨年10月に共産党中央委員会全体会議が開催され、ここで「内需拡大」とりわけ「個人消費の拡大」が最優先課題として決定されている。
 
ここ数年は、インフラや不動産などの分野でグローバル企業が次々に中国市場に参入してきたことで、内需拡大が進展傾向にある。これに拍車を掛けたいという思惑だ。
 
元高になれば、資源を輸入している中国国籍の企業の体力は向上し、それは内陸部の購買力の上昇も意味する。中国国民にとっては、好ましいことなのだ。このように元のレートを切り上げれば、内需拡大は加速する。しかし、ここに安易に踏み込めない中国のジレンマがある。
 
それは、中国の輸出構造にある。2005年以降の中国の貿易黒字の半分以上は、中国に進出している外資系企業の功績による。
中国貿易に占める外資系企業の割合(左:輸出/右:輸入)

中国外資系企業ベスト20

つまり元高に対しては、これら外資系企業からの抵抗が容易に予想できるのだ。また、これまで元安の中国経済を牽引してきた中国沿海部(上海や香港)への影響もありそうだ。
こうした事情が、簡単に元を切り上げられない背景と考えられる。内需拡大のヴィジョンを持ちつつも、このように舵取りにはデリケートさが付きまとっている。むしろ、この状況を肯定的に捉え、儲けられるところまで元安で儲けてやろう。内需はその後。というところが現在の中国の心境かもしれない。
 
 
●アメリカの思惑
 
貿易赤字をなんとかしたいアメリカにとってドル安は不可欠だ。中国に対しての元の切り上げ要望は、アメリカ経済の動向に直結するのだ。ドル安へと適度な速度で推移していくことで貿易収支の回復を狙い、同時にドルの暴落を抑えたい。

米国はずっと前から中国に人民元の対ドル為替を切り上げろと要求し、拒否されてきた。だがバーナンキの連銀は昨年、量的緩和策で巨額のドルの余剰資金を作り、毎日10億ドルの投機資金を米国から中国に流入させ、中国が人民元を切り上げたくなる状況を作った。中国側はドルペッグを維持するため連銀のドル大増刷に合わせて人民元を増刷せざるを得ず、昨年12月には約20%も増刷。中国はインフレが悪化し、国民の不満が高まって、人民元の切り上げが必至となった。

田中宇の国際ニュース解説より

bernanke1.jpg
ベン・バーナンキFRB議長

アメリカはこのように、形振り構わぬ攻勢に出ている。一方、世界的な見地からは、もはやドル基軸通貨体制が限界を迎えているという声も大きい。そんな中でアメリカが必死で推進しているTPPにも、貿易を通じての財政回復を目論むアメリカの思惑が見え隠れする。
 
 
●中国の野望
 
しびれを切らしたアメリカの“攻撃”に対処せざるを得なくなった中国。自らのペースで元高をコントロール出来なくなったとは言え、ドルを暴落させるほどの急激な切り上げは、中国自身もキズを負うので実行には至らないだろう。
 
今後の元切り上げのペースに左右されるが、中長期的には元高基調は米中両国にとって益と見ることが出来る。そして中国の「第12次5ヵ年計画」による内需拡大が成功すれば、中国は13億人の需要を満たす為に、強い元を武器に世界中から資源やエネルギー、食糧などの乱獲に乗り出す可能性が出てくる。それは世界的な物価上昇を齎すと同時に、中国が強い元を備え、世界の覇権を握ることでもある。
 
そういう意味では、元の切り上げのタイミングは中国次第とも言えなくない。今、中国は世界の覇権を手中におさめるために着々と事態を前進させている渦中なのだろうか。
 
今後の為替の動向を注視していく必要がある。
 
 
つまり、なかなか人民元高の切り上げが進まない中で、ひたすらドル安に向かうなかで、途上国は被害を被り、先進諸国はドル安基調に足並みを揃えるように自国通貨安に舵を切る。これが世界通貨安戦争の構造と言える。
 
 
 
またより大きな視点に立てば、進行中のTPPは、環太平洋地域全体の統一通貨構築へ向かう金貸しの戦略かもしれない。即ちそれはドルに替わる新たな基軸通貨の登場を意味する。世界の為替そのものが組み変わるのかも知れない。

List    投稿者 heineken | 2011-02-01 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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