2018-02-01

アメリカの株価高騰はトランプ大統領の金融規制緩和の影響か?

TPP離脱署名アメリカの株価がどんどん上がっています。比較的株価が安定していた1965年から85年の20年間平均に比べると、現在のアメリカの株価の水準は6.5倍を超えて7倍に近づきつつあります。昔に比べればこのぐらい高くなってもおかしくないと思われるかもしれませんが、2008年のリーマンショックでアメリカの株式バブルがはじけた時の株価水準が4倍を少し超えたあたりだったと聞けば、今の株価水準がいかに危険なものか理解できるのではないでしょうか。

アメリカの株価の上昇理由を調べている中で、トランプ大統領の金融規制緩和がその要因かも知れないと思い、金融規制緩和がどの程度進んでいるか調べてみました。

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確かに、トランプ大統領は、大統領就任直後の2月3日に「金融規制改革法(ドッド・フランク法)」の見直しに関する「大統領令」に署名し、金融規制緩和を進めていました。これはリーマンショックで大銀行が倒産したことを踏まえて、銀行がリスクの高い投資をすることを規制してきたものを撤廃する内容です。

この大統領令への署名から1年たっていますし、株価も上がり続けていますので、これらの金融規制は全て撤廃されたのかと思いました。しかし調べてみると、実はまだ何も撤廃されていませんでした。

これまでにトランプ政権がやったのは、金融規制緩和の報告書を作成し発表する所までです。ドッド=フランク法の大幅な改正については、法案が昨年6月に下院を通過しているものの、現在も上院で審議中で、今後上院での審議が順調に進み法改正が実現するという楽観的な見通しは一般的でないと言われています。

金融規制を行っている組織の人事は、オバマ政権次代の規制強化派から、規制緩和派のメンバーにどんどん交代させていっていますが、法律を変えない以上、出来ることは限られています。

株価の上昇も、トランプ大統領の就任前、金融規制緩和が行われる気配がなかった、オバマ政権の2期目の段階でリーマンショック前の最高水準であった4倍を超え、さらに5倍以上の水準に達していました。今のアメリカの株価の上昇は、明らかに異常であり、合理的な説明が出来る状態ではないと考えたほうが良さそうです。

 

■世界を揺さぶるトランプ金融規制緩和の衝撃 リスクマネーの膨張はバブルを招きかねない2017年02月24日

2月3日に署名した「金融規制改革法(ドッド・フランク法)」の見直しに関する「大統領令」が注目されている。トランプ政権にはウォール街の出身者が数多くいて、入国規制政策を演出したとされるスティーブン・バノン首席戦略官兼大統領上級顧問、財務長官に就任したスティーブ・ムニューチン氏も元ゴールドマンサックス出身者だ。

ドッド・フランク法は、オバマ政権時代のレガシー(政治的遺産)のひとつで、1930年代の大恐慌に匹敵するといわれた「リーマンショック」からの反省で生まれた。2010年に成立し、金融機関の活動に対して一定の制限を設けることで「大きすぎて潰せない」といった状況を防ぐために制定された。簡単にいえば”バブル防止法案”だ。

同法の中核には、銀行などの自己勘定取引を禁止する「ボルカールール」があり、銀行の運用資産の効率化を図るために高いリスクを取って運用をすることを禁止している。デリバティブ(金融派生商品)や商品先物、未公開株式やヘッジファンドなどに莫大な資金を投入し、これまで荒稼ぎしてきたウォール街を代表する金融機関が、ドッド・フランク法によってその活動を大きく制限されている状況だ。

もともと大統領選中は「反ウォール街」で、行き過ぎたグローバリズムなどに反対していたはずだが、その一方で金融取引を中心とした金融資本主義に対しては市場の自由に任せたいという「矛盾した政策」を示していた。それがトランプ流といえばそれまでなのだが、ドッド・フランク法の中核といわれる「ボルカールール」の緩和を進めていくようなら、世界はまたリーマンショック以前に戻る可能性がある。

■トランプ政権の規制緩和は「非常に危険」— FRBのナンバー2が警鐘2017年㋇18日

FRBの副議長スタンレー・フィッシャー(Stanley Fischer)氏は、金融危機以後に施行された規制を撤回する動きに「呆れて」おり、アメリカの現政治体制は「我々を極めて危険な方向へ導いているのかもしれない」と警鐘を鳴らした。

アメリカ財務省は今年6月、経済規制を骨抜きにする、150ページに及ぶ計画を公表した。計画には、大手銀行による金融取引における制限の緩和や、各銀行が毎年パスしなければならないストレス・テスト(健全性審査)の簡素化、金融機関の監督を担ってきた、消費者金融保護局(CFPB)の権限を弱めるといった内容が盛り込まれている。

トランプ政権の顧問らは、金融危機の後、オバマ政権下で取り決められたルールによって、銀行が過度に締め付けられてきたと批判。2016年の大統領選の後、投資家は規制緩和と減税の期待に沸き、金融株は数週間にわたり高騰した。

■米国トランプ政権の税制改革と金融規制改革2017年11月07日

トランプ大統領は、2017年2月に署名した大統領令で金融規制改革に関する「中核的原則」を明らかにし、財務省に対して2008年以降の世界金融危機後に制定されたドッド=フランク法を初めとする現行の金融規制が同原則に合致したものとなっているかどうかを検討し、改善策を提言するよう命じた。

これを受けて、6月には財務省から銀行規制に関する報告書が提出された。また、10月に入って、資本市場と資産運用業及び保険業に関する2本の報告書が提出されている。

米国財務省は現在、一連の報告書の最後のものとなる、いわゆるフィンテックを含むノン・バンクに対する規制に関する報告書の作成を進めている。フィンテック・ベンチャーに対してどのような規制を及ぼすべきかといった難しい問題もはらむだけに、報告書の提出時期は、2018年第1四半期にずれ込む可能性もあるという。

今後の展望についても、財務省当局者から、例えば銀行規制に関する報告書の提言内容の3分の2は議会による立法を必要とせずに実施可能だとして、順調に進展するとの見通しが語られた。

もっとも、そうした肯定的、楽観的な見方に対して、やや距離を置こうとするような指摘もみられた。ドッド=フランク法の大幅な改正については、既に法案が下院を通過しているものの、今後上院での審議が順調に進み法改正が実現するという楽観的な見通しは一般的でない 。オバマ政権下で成立したドッド=フランク法を大きく変えることに対する民主党の抵抗は根強い。上院での審議が始まれば、フィリバスター(議事妨害)の活用も予想される。

もともとトランプ氏は、自身を中小企業や労働者の味方と位置付け、ウォール街の大手金融機関を敵視するような姿勢が強かった。選挙戦では、対立候補だったヒラリー・クリントン元国務長官がウォール街と癒着しているという批判も繰り返していた。それにもかかわらず、大手金融機関が歓迎する「ドッド=フランク法の全面廃止」を主張するのは、オバマ前政権の政策を否定するために過ぎないとも言える。

トランプ氏は、ボルカー・ルールを含むドッド=フランク法の廃止を掲げるのと同時に、同ルールよりも厳しく銀行による証券関連業務を制限するグラス=スティーガル法の「21世紀版」を目指すと述べるなど、金融規制のあり方や思想という観点から見れば、その主張には一貫性の欠ける面がある。

■トランプ政権「怒濤の規制緩和」に漂う不安 人事権から伝家の宝刀までフル活用2017年12月11日

目立った成果がないと言われ続けてきたドナルド・トランプ政権が、いよいよ動き出した。税制改革の議会審議が急ピッチで進む一方で、着々と動き始めているのが規制緩和だ。

消費者金融保護局(CFPB)リチャード・コーデレー前局長は民主党のバラク・オバマ政権が指名した局長であり、規制の厳格な運用で知られる。辞任と局長代行に、かつて自らの首席補佐官を務め同じ路線を歩むと目されていたレアンドラ・イングリッシュ氏を指名した。これに反発したのが、規制緩和を公約としてきたトランプ政権である。トランプ政権は、コーデレー前局長の後任指名を認めず、局長代理にミック・マルバニー行政管理予算局(OMB)局長を送り込んだ。前職の下院議員時代から、規制緩和の急先鋒だった人物である。

ドッド=フランク法に代表されるように、金融危機後の米国では、金融規制の強化が進められてきた。FRBでは、オバマ政権が指名したダニエル・タルーロ前理事が実質的に金融規制強化の指揮をとってきたが、トランプ政権下ではパウエル体制が走り出し、その陣容は様変わりする。

商業銀行を監督する通貨監督庁(OCC)の新しい長官には、ジョゼフ・オッティング氏が決まっている。証券会社を監督する証券取引委員会(SEC)の委員長には、ウォール街で金融機関の弁護士として活躍してきたジェイ・クレイトン氏が選ばれている。さらに、商品先物取引委員会(CFTC)のクリストファー・ジャンカルロ新委員長も、同委員会が管轄するデリバティブ業界との結びつきが強いと言われる規制緩和派である。

トランプ政権は、人事以外にも、あらゆる手段で規制緩和を進めている。象徴的なのが、議会審査法(CRA)による規制の廃止である。CRAは、行政府が決めた規制を、その施行から一定の期間内に限って、議会の決議で廃止できる手続きを定めている。上院で野党が議事進行を妨害できない手続きとなっているため、民主党の抵抗を受けずに共和党の議員だけで規制の廃止が可能となる。

またトランプ政権は、「1つの新しい規制を施行するたびに、2つの既存の規制を廃止する」との方針を明らかにしており、2017年の年央の時点では、施行の準備が整った規制の本数が、過去数年の実績を大きく下回っている。

■ドッドフランク法改正 上院審議の行方2018年1月10日

大規模な金融機関の破たんの再発を防ぐために制定された「ドッド・フランク法」の改正に向けた動きが本格化しています。ドッド・フランク法というのは、リーマン・ショック後、2010年に民主党政権下で定められた金融機関への規制強化法のことです。

米国下院では、6月8日に金融規制改革法(ドッド・フランク法)を見直す法案が可決(賛成233/反対186)されています。そして、12月5日に上院銀行委員会で可決されたので、今後は本会議での採決に進みます。

しかし、金融規制改革法を成立させた民主党議員やリベラル色のマスコミは、規制緩和は、リーマンショックのようなリスク再来の可能性を高めると見て、改革に反対しています。

List    投稿者 dairinin | 2018-02-01 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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