2019-08-22

反グローバリズムの潮流(イタリアの反EU連立政権崩壊は何を意味しているのか)

 

伊サルビーニ副首相、総選挙を要求 「連立政権は崩壊」イタリアの連立政権を構成する「五つ星運動」と「同盟」が決裂し、同盟のサルビーニ党首がコンテ首相に対する不信任案を提出、議会の採決を待たずにコンテ首相は辞任、連立政権は崩壊しました。マスコミは、同盟党首のサルビーニ氏が首相の座を狙った権力闘争が原因の暴挙であるように報道していますが、実体はどうなのでしょうか。

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「五つ星運動」と「同盟」が決裂する原因になったのが、伊仏高速鉄道計画です。同盟は推進する立場ですが、これに五つ星が抵抗し、計画を阻止する動議を上院議会に提出、結果的に動議は否決され事業は継続されましたが、先に喧嘩を売ったのは五つ星運動とも言えます。

この連立政権、同盟がイタリア北部の経営者層を支持基盤にしているのに対して、つ星運動は地方の中・下流層を支持基盤にしており、支持者の利益を考えれば対立するのは当然です。では、どこが共通項で連立を組んだかと言いますと、反EUです。EU支配によって自由な経済政策が出来ないためにイタリアの経済は回復しない、そこでEUの言いなりだった旧政権を打倒するために連立を組んだのです。

新政権は、EUと戦い前政権よりも財政支出を増やす事には成功しましたが、それでも、政権発足当初に掲げた公約をすべて実現する事は出来ませんでした。EUから勝ち取った財政支出の増額はわずかであり、それを、「五つ星運動」と「同盟」それぞれ支持基盤のために奪い合う結果となり、仲間割れを起こしてしまったと言う事です。

大衆の支持は、より反EU姿勢を強めている「同盟」に大きく傾いています。しかし、今の所、五つ星運動が、親EUであった旧政権と連立を組む方向に進んでいるようです。民意とは違う方向に進んでいることから、何らかの策謀が背景にあることは間違いなさそうです。今EUは、イギリスのボリス新首相がEU離脱を強行しようとして揺れ動いており、EUを維持しようとする勢力が、イタリアの反EU勢力を弱体化させるために仕組んだ動きかも知れません。

イタリアの政局の混乱について、ドイツのショルツ財務相がユーロ圏がイタリア発の危機に陥る兆候はみられないとの認識を示したり、イタリア政局が不透明であるにもかかわらずイタリア国債が買われていると言ったあたりに、金貸し勢力の動きが見え隠れしています。

「五つ星運動」と「同盟」も、反EUを掲げながら、EU離脱は否定しており、EUという大きな市場の魅力は捨てられない。イギリスが、市場の魅力を捨てでも自国の主権を優先すると腹をくくったのに対して、イタリアの反EU勢力はそこまで腹がくくれていないために、付け込まれたとも言えそうです。

 

■欧州債務問題を収束させるヒント、イタリアの「ミニBOT構想」とは2019年8月3日

欧州委員会は7月3日、財政赤字が過剰であることを理由としたイタリアへの制裁を見送った。イタリア政府は10月15日までに、欧州委員会に2020年の予算案を提出する予定だ。経済財政政策を統括するモスコビシ欧州委員は、「2020年の財政政策が健全なものになるという真剣な確証を求めている」と述べ、イタリアの財政赤字拡大を牽制している。

一方、前述のモスコビシ欧州委員の母国であるフランスは、炭素増税に反対するトラック運転手が引き起こした黄色いベスト運動の影響で、2019年の財政赤字は3.2%とイタリアの当初予想の2.4%を大きく上回るどころか、EUが定める3%の財政赤字上限をも超える見込みだ。フランスがお咎めなしの一方で、それより赤字の小さいイタリアが制裁まで議論されている状況に、整合性を見い出すのは難しい。

イタリアの競争力が高まらない理由の1つは、ユーロ圏という単一経済圏のもとで調整メカニズムが十分に働かないことにある。ユーロ圏では、金融政策は欧州中央銀行(ECB)によって中央集権的に管理され、財政政策は欧州委員会の制約を受ける。使用される通貨はユーロで統一されているので、一国の経済状況による為替の変動幅は限定的だ。これはイタリアに限ったことではなく、2008年の金融危機以降、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、スペイン、キプロスなどで、全く同じメカニズムにより問題が入れ替わりに発生している。

これを解決する最も簡単な方法は、競争力が高い地域から低い地域への財政移転制度の設立だ。EUにおいては、東欧向けの補助金は充実しているものの、ユーロ圏域内の財政移転制度がほとんど存在しない。ドイツは金融危機以降も堅調な経済成長を維持し、2018年の財政「黒字」は対GDP比で1.7%、経常黒字は7.4%に達している。しかしこれは、ドイツ人がイタリア人よりも大幅に勤勉で生産性が高いためではなく、わずかな差がユーロ圏域内の経済調整機能の不在によって増幅されているに過ぎない。

この構造的な欠点はユーロ圏発足時に多数の経済学者が指摘していたが、対処がなされないまま今に至る。

■伊サルビーニ副首相、総選挙を要求 「連立政権は崩壊」2019年8月9日

イタリア連立政権を構成する「五つ星運動」と「同盟」との間の対立が深まる中、サルビーニ副首相(「同盟」党首)は8日、連立政権は崩壊しており、総選挙をやり直すしかないと表明した。サルビーニ氏は声明で、連立政権は発足から1年余りで崩壊しており、「有権者に速やかに選択を仰ぐべき」という考えをコンテ首相に伝えたと明かした上で、政権に対する不信任投票や首相辞任に必要な手続きを進めるため、夏季休会中の議会を来週にも再開する可能性があると明らかにした。

連立与党は7日、伊仏高速鉄道計画を巡り激しく対立。推進派の同盟に対して五つ星が抵抗し、計画を阻止する動議を上院議会に提出するなど異例の事態となった。上院は結局、動議を反対多数で否決し、高速鉄道計画は継続する運びとなった。同盟は議席数で五つ星を下回るが、世論調査での支持率は五つ星の2倍に伸びており、こうした支持拡大を背景にこのところ総選挙の可能性に言及している。

■イタリア右派与党が内閣不信任案提出 総選挙前倒しを要請 連立内の対立激化で2019年8月9日

イタリアのコンテ連立政権に参加する第2与党の右派「同盟」は9日、政権に対する不信任案を上院に提出したと発表した。

サルビーニ氏は8日、「有権者に迅速に選択肢を与えるべきだ」と表明。一方、コンテ氏は議会解散権を持つマッタレッラ大統領と協議し、「政治危機への手順を指示するのはサルビーニ氏ではない」と強調した。五つ星のディマイオ副首相は「覚悟はできている」とし、選挙前倒しを辞さない構えを見せた。

■イタリア、ユーロ圏離脱は選択肢にない=サルビーニ氏2019年8月12日

伊紙ラリパブリカは10日、予算を巡り欧州連合(EU)と妥協が成立しなければサルビーニ氏はユーロ圏を離脱すると脅す考えと伝えた。これについてサルビーニ氏は遊説先の南部マテラで記者団に「ユーロ圏を離脱する案はこれまでに一度も浮上していない」と説明し「いつものラリパブリカの妄想にすぎない」と一蹴した。

■イタリア、最低所得保障の見直し必要=サルビーニ副首相2019年8月14日

イタリアのサルビーニ副首相は14日、総選挙で自身が党首を務める「同盟」が勝利した場合、今年導入した最低所得保障を見直す必要が生じると述べた。同副首相は、同盟が総選挙に勝利すれば、ジャンカルロ・ジョルジェッティ内閣官房次官を財務相に起用するとも述べた。

■【舛添要一の僭越ですが】 伊内閣 サルビーニ副首相の野心で崩壊へ2019年8月17日

「五つ星運動」は、最低年金を月780ユーロに引き上げ、年収1万ユーロ以下の所得税廃止、無駄な歳出廃止で財源捻出などを公約で掲げているが、「同盟」のほうは、個人と企業に一律15%の減税をうたった。そして、「同盟」が、元の党名「北部同盟」が示すように、地盤であるイタリア北部のトリノとフランスのリヨンを結ぶ高速鉄道の整備を推進しようとしているのに対し、「五つ星運動」は無駄な公共事業だとして反対している。

移民政策については、サルビーニ内相が難民船の接岸拒否を実行に移すなど排斥方針を徹底しているのに対して、「五つ星運動」はそこまで過激な反応を示していない。また、EUとの関係については、「同盟」がEUのルールには縛られないと強硬姿勢なのに対して、「五つ星運動」は協調姿勢も示している。

このような政策の違いが、連立政権を継続することを困難にしているのであるが、さらに大きな要因は、副首相兼内相のサルビーニ党首の野心である。連立政権樹立から1年の間に、サルビーニ内相の過激な政策が大衆受けして、「同盟」と「五つ星運動」の力関係が前者に有利に傾いた。昨年の総選挙では、「五つ星運動」が約33%、「同盟」が約14%の得票率であったのに、今年5月の欧州議会選挙では、前者が約17%、後者が約34%と逆転してしまった。

サルビーニは10月の総選挙を念頭に置いているようだが、その頃は、2020年度予算についてEUとの交渉の大詰めの時期である。国益を考えれば、その時期は問題なのだが、首相の座を射止めるにはなりふりは構って入られないというのだろう。

■解散総選挙の行方不透明に=不信任案に対抗し左派連携-伊2019年8月18日

イタリアで、与党右派「同盟」を率いるサルビーニ副首相が早期実現を要求する解散総選挙の行方が不透明さを増している。解散に否定的な与党第1党の新興左派「五つ星運動」に前与党の中道左派・民主党が同調する動きを見せているためだ。

同盟は解散総選挙に追い込むため、9日に内閣不信任案を提出。サルビーニ氏は即時の採決を求めていたが、五つ星と民主党は13日、20日に先送りすることで一致した。当初は不信任案可決が有力視されていた。サルビーニ氏は依然として「20日に可決させる」と強気の姿勢を崩していない。しかし、五つ星、民主党とも一枚岩でないとはいえ、これまで反目していた両党が連携の動きを示した上、反対票取りまとめに向けた時間的余裕が生じたことで、否決の可能性も出てきた。

■伊、「衝撃的な」刺激策に500億ユーロの予算必要=同盟党首2019年8月20日

「同盟」のサルビーニ党首は20日、「衝撃的な」財政刺激策をもたらすためには来年に500億ユーロ(550億ドル)規模の予算が必要だと述べた。イタリアは、欧州連合(EU)の財政ルールを順守するため、来年1月1日に付加価値税(VAT)を引き上げ、230億ユーロの歳入を確保することで欧州委員会と合意している。サルビーニ党首はラジオ24に対し、VATの引き上げを回避するだけでなく、大幅な減税が必要だと主張。

■イタリア発のユーロ圏危機の兆しみられず=ドイツ財務相2019年8月21日

ドイツのショルツ財務相は21日、イタリアの政局の混乱について、ユーロ圏がイタリア発の危機に陥る兆候はみられないとの認識を示した。同相は、ユーロ圏の新たな危機を懸念しているかとの質問に「いや、その兆候はない」とし「異なる構成で新たな政権が樹立されるようにも見える」と述べた。

■イタリア首相が怒りの辞意表明、「政権崩壊導いた」と内相を強く非難2019年8月21日

イタリアのコンテ首相が20日、辞意を表明した。議会上院での演説で、連立政権の一角である「同盟」を率いるサルビーニ副首相兼内相について、自身や党の利益を優先させ、連立政権を崩壊に導き経済を危機にさらしたと強く非難した。コンテ首相は、サルビーニ氏の決定は「国に深刻なリスクをもたらす」とし、「政治的不確実性と財政不安」について警告した。

サルビーニ氏はコンテ首相の厳しい批判を一蹴。他の政党は選挙で議席を失うのを恐れていると主張した。サルビーニ氏は、総選挙を予定より3年半前倒ししたい考え。急上昇する支持率を背景に、自身が首相の座に就き、連立相手の「五つ星運動」を野党に追いやることを目指している。

■イタリア民主党、五つ星運動と連立協議へ EU残留など条件2019年8月22日

民主党のジンガレッティ党首は、次期総選挙までの3年間、五つ星運動と連立を組む可能性を探りたいとしたが、協議が不調に終われば、選挙が実施されるべきだと述べた。

ジンガレッティ氏は連立交渉の重点策として、欧州連合(EU)への加盟維持、議会への中心的な役割付与、環境持続性に基づく経済発展、移民対応の変更、投資推進に向けた経済政策変更を掲げている。

一部の投資家は、サルビーニ氏が首相として同盟率いる政権を樹立するために選挙を利用した場合、同氏は支出を拡大させ、多額の債務を抱えるイタリアがEUと衝突する事態につながると懸念している。

■政局不安でもイタリアの国債は買われた理由2019年8月22日

イタリアの政局の行方に不透明感が強まり、欧州の株式市場はロンドン株式市場も含めて総じて売られ、欧州の国債は総じて(イタリアも)買い進まれた。しかし、ことイタリア国債に関していえば、自国の政局不透明感が強まることで、これまで売られることが多かった。これはリスク回避の動きというよりも、イタリアの政局不安によって、ECBが追加緩和を行うであろう可能性を強めたからとの見方ができるかもしれない。

List    投稿者 dairinin | 2019-08-22 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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