2018-07-19

習近平国家主席、米国との経済戦争で、権力に揺らぎ

_102386294_gettyimages-871924788中国では今月に入って、習近平国家主席の肖像画が印刷されたポスターに墨汁や黒インクをかける運動が北京や上海を中心に全土に拡大しており、中国共産党中央弁公庁は最近、地方の党機関に対して、街頭や建物内にある習氏の肖像画入りのポスターや掲示板、宣伝塔、彫像などを撤去する指示を出しているそうです。中国で何が起こっているのでしょうか。

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そのきかっけは、上海で若い女性が「習近平の独裁に反対」と叫んで、習近平の肖像に墨汁をぶちまける動画をツイッターに投稿したことだそうです。その女性は、警察に身柄を拘束されたとも言われています。

気になるのは、その後の中国政府の対応で、肖像画入りのポスターなどの撤去を指示し、また、報道機関が過去中国で個人崇拝が批判され、現役指導者の肖像を飾ることを禁ずる布令が出されたことがあるとも紹介しています。どうも、習近平国家主席の権威を守るためと言うよりも、権力を押さえる方向に舵を切ったように見えます。

あれほど強かった習近平国家主席の力が、アメリカとの貿易摩擦ぐらいで、なぜ、ここまで揺らぐのでしょうか。それは、習近平の権力の基盤が、経済発展の実現にあったからです。習近平氏は、中国をアメリカに次ぐ世界第2位の大国に成長させ、2050年にはアメリカをしのぐ世界第一の強国になると、党大会で宣言したのです。中国人の夢であった、強い中国の復活を成し遂げたと言う意味で、中華人民共和国建国の祖である毛沢東と並び立つ、国家指導者と言う評価を獲得したのです。

今回の米中の貿易摩擦ですが、経済成長力の大きい中国の方が有利に思えるかもしれませんが、そうではありません。中国とアメリカの貿易がストップした場合、どちらによりダメージが多きいかと言えば明らかに中国です。両国の貿易関係は中国の輸出超過ですから、貿易が止まれば中国は黒字が無くなり、アメリカは赤字がなくなります

中国国民が習近平の独裁政治を我慢して支持してきたのは、ひとえに経済発展を実現してきたからであり、これが出来ないとなれば、独裁政治に対する不満が一気に広がることになります。習近平国家主席の肖像画にたいする墨掛け運動はその不満の表れでしょう。さらに大衆だけでなく人民軍の中にも不満は広がっています。

習近平国家主席はアメリカに変わる市場を早期に開拓すべく、中東とアフリカの5カ国歴訪に出発しましたが、アメリカのような巨大市場に変わる需要はそう簡単には見つからないでしょう。市場拡大と言う独裁政権の存立基盤が失われると、習近平独裁は意外ともろく崩壊するかも知れません。

 

■米国301条に基づく対中関税品目を公表2018年6月18日

米通商代表部は6月15日、1974年通商法301条に基づき、中国の技術移転策に対する制裁措置として、中国からの輸入に関税賦課を行う品目のリストを公表した。トランプ政権は5月19日に貿易赤字削減に関する中国政府との共同声明を発表し、関税賦課を見合わせるとしていたが、5月29日に関税賦課の留保を突如撤回し、6月15日までに対象品目の最終リストを公表するとしていた。

■中国、米国301条発動への対抗措置を発表2018年6月20日

米通商代表部が6月15日、1974年通商法301条に基づき関税賦課を行う1,102の輸入品目リストを公表したのを受け、商務部は同等規模の対抗措置を6月16日未明に発表した。米国が国際的義務に違反し、中国に緊急対応が必要な状況を作り出したため、自国の合法的な権益を守るため、「対外貿易法」などの法律・法規、国際法の基本原則に基づき、今回の決定に至ったとしている。

■米国の対中関税、6日から導入 中国も報復措置へ2018年7月6日

米国は6日、340億ドル(約3兆8000億円)相当の中国製品に25%の追加関税を導入し、世界の二大経済大国が貿易面で全面的に争う形となった。中国は、米国が「経済史上最大の貿易戦争」を開始したと述べ、「必要な報復措置」を約束した。世界貿易や世界経済の成長への損害を懸念する声が多く上がっている。

■中国も対米報復関税 大豆・牛肉・ウイスキー…2018年7月6日

中国商務省は6日、米国が知的財産侵害を理由に中国製品に25%の追加関税を発動したことを受け、報復措置を発動すると発表した。大豆や牛肉など総額340億ドル(約3兆8千億円)相当の米国製品を対象に25%の関税を上乗せする。中国商務省は声明で「中国は先に引き金を引かない約束をした。ただ、国家の核心利益と人民の利益を守るために必要な反撃をせざるをえない」と表明した。報復関税の対象は自動車、水産品、たばこ、ウイスキーなど545品目。多くを食品や農産品が占め、トランプ米大統領の票田である農業州を揺さぶる狙い。

■米、中国やEUなどWTO提訴、対米報復関税は協定違反2018年7月16日

米通商代表部(USTR)は16日、中国や欧州連合(EU)など5カ国・地域ついて世界貿易機関(WTO)への提訴手続きを始めたと発表した。米国が課した鉄鋼とアルミニウムの関税に対抗して報復関税を発動したのはWTO協定違反だと主張する。中国などは既に米国をWTOに提訴しており、互いに正当性を訴える事態となった。

提訴するのは中国、EU、カナダ、メキシコ、トルコ。WTOの紛争解決手続きに基づいてまず協議し、解決できない場合は裁判の一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)の設置を求める。

■中国 米国をWTOに追加提訴2018年7月16日

中国商務省は16日、トランプ米政権が2000億ドル(約22兆円)規模の対中追加関税の検討に入ったことを受け、世界貿易機関(WTO)に追加提訴したと発表した。

中国はトランプ政権が今月6日、米通商法301条に基づく340億ドル規模の対中制裁を発動した際にもWTOに提訴している。中国は同じ340億ドル規模の米製品に対する追加関税を課すなど報復措置で応酬しているが、その一方でWTOルールを重視する姿勢も強調。米国による一連の対中制裁が国際ルールに基づかないことを国内外にアピールし、トランプ政権が「一国主義」的な貿易政策を改めるように国際的な圧力をかける戦略をとっている。

■習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている2018年7月17日

解放軍内の粛清は史上最大級だろう。軍位の売買、それに伴う金銭のやり取りはもちろんのこと、これまでは許されていた軍としての営利活動や企業運営、そして灰色収入の獲得も固く禁じられている。正常な接待ができないから軍内でまともなコミュニケーションが取れない。茅台酒すら安心して飲めない」

習近平は“反腐敗闘争”を通じて軍内を粛清しつつ、軍部に対する掌握力と支配力を徹底的に強化しようとしてきた。18回大会以来“落馬”した少将・上級大佐(中国語で“大校”)以上の解放軍幹部は90名以上に及んでいる。そこには徐才厚、郭伯雄両中央軍事委員会副主席・上将も含まれる。また、18回大会から昨年10 月に行われた19回大会直前までの約5年間で、腐敗が原因で処分を受けた軍人は1万3000人以上に上るとされる。

習近平政権成立以来、共産党による絶対的領導下にある解放軍は、過去のどの時代よりも国ではなく党の軍という地位に甘んじている。そのような現状に対して、解放軍の関係者は政策、地位、待遇といったあらゆる角度から不満を蓄積させてきている。実際に、冒頭の元空軍幹部を含め、気心の知れた軍人は酒の席で、筆者に対し習近平への不満や不服を爆発させている。そういう感情が“臨界点”に達した時、若干極端な表現になるかもしれないが、軍人が党・政府・国に対してクーデターを彷彿とさせるような行動を起こす、何らかの引き金が原因で公共の場で、一般民衆に対して発砲する、台湾や他国に対して軍事的行動を起こすといった形で“暴走”するシナリオは大いに想定できる。

■習近平主席の権力に陰り?中国、習近平の顔写真ポスターに墨汁かける運動拡大…人民の不満爆発、独裁体制に危機2018年7月18日

中国では今月に入って、習近平国家主席の肖像画が印刷されたポスターに墨汁や黒インクをかける運動が北京や上海を中心に全土に拡大しており、中国共産党中央弁公庁は最近、地方の党機関に対して、街頭や建物内にある習氏の肖像画入りのポスターや掲示板、宣伝塔、彫像などを撤去する指示を出していたことがわかった。

習氏の肖像画に墨汁などをかける運動が広がったきっかけは、上海在住の董瑶琼さん(29歳=女性)が今月4日早朝、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」に生配信したパフォーマンスだった。董さんは「私は習近平とその独裁主義に反対です」と言うと、背後にある街頭の習氏の肖像画入りポスターに墨汁をかけたのだ。その動画はウェイボー上でシェアされ、瞬く間にインターネット上で拡散した。

しかし、董さんは同日午後2時過ぎ、ウェイボー上で「自宅のドアの外に制服姿の警官数人がいます」などと報告したあと、音信を断った。その後、ウェイボー上での董さんの投稿自体が削除され、董さんの電話番号も使われていない状態になったという。

■中国主席、アフリカ外交再強化=BRICSで対米けん制―歴訪で新興・途上国結束2018年7月19日

中国の習近平国家主席は19日、中東とアフリカの5カ国歴訪に出発した。アフリカ外交を再強化するほか、南アフリカでは新興5カ国(BRICS)首脳会議に出席。保護主義的な通商政策を掲げ、中国を筆頭に各国との貿易摩擦が激化しているトランプ米政権を強くけん制するため、新興国・途上国の結束を主導して中国の存在感をアピールする狙いだ。

■米中貿易戦争激化で、ついに習近平に「激烈批判」が続出2018年7月19日

中国で夏恒例の北戴河会議が開催される時期が近づいてきたが、過去1週間、中国政治が風雲急を告げ始めた。

7月4日:上海で若い女性が「習近平の独裁に反対」と叫んで、習近平の肖像に墨汁をぶちまける動画をツイッターに投稿(これが反響を呼んで、「墨かけ」が流行しそうになったため、当局が慌てて女性や家族を拘束する事態に)

7月9日:北京の街中の習近平肖像を撤去するように求めるご当局のお達しがあったとするニュースが流れる(未確認)

7月9日:香港で「江沢民、朱鎔基ら党の長老が連名で習近平の独裁傾向を批判し、政治局拡大会議の開催を求める意見書を提出した、王滬寧は既に解任された」等の噂が報じられた

7月9日:人民日報第1面に「習近平」の名前が見当たらなかった(5年ぶりの出来事、なお15日1面にも習近平の名前はなかった)

7月11日:新華社傘下の「学習時報」が、1980年に華国鋒が個人崇拝を許したと批判されて自己批判、以後現役指導者の肖像を飾ることを禁ずる布令が出された故事を紹介

北京の政治ムードが急変した原因はずばり、米中貿易戦争勃発に代表される米中関係の悪化だ。「長老が連名の意見書」、「王滬寧解任」と論ずる香港情報も「習近平が無用な挑発をしたせいで対米関係が悪化して貿易戦争を呼び込んでしまったからだ」と論じている。

「中国は『国家資本主義』や『産業政策』を手段として、米国の覇権と米国がこれまで維持してきた世界秩序を引っ繰り返そうとする『戦略的競争相手』であり、国の行いをこれ以上容認する訳にはいかない……」こういう認識がトランプ政権だけでなく、いまや米国政策エリートたちの間で超党派的コンセンサスになったからだ。

いまの米中関係は、中国があと15年、できれば30年続いてほしかった「戦略的機遇期」を、突然米国から「もう終わりだ」と通告されて呆然としているようなところがある。自信をつけて自己主張を強める中国だが、一方では「いまの中国はまだまだダメだ」といった否定的なセルフイメージも根強いので、米中貿易戦争勃発に直面して、とくに経済の先行きについて、にわかに不安が広がっている。

■米中貿易戦争「中国の負けは最初から確定している」その理由は… 国際投資アナリスト・大原浩氏が緊急寄稿2018年7月19日

いま「米中貿易戦争」が話題になっているが、中国の負けは最初から確定している。なぜかといえば、現在の世界経済は常に「供給過剰」だからだ。米国のように大きな需要を創出できる国はわずかなのに対して、ベトナム、パキスタン、アフリカ諸国など、供給を行える国は数多くある。米国は中国製品を輸入しなくてもどこからでも買えるが、中国が米国に代わる売り先を見つけるのは至難の業である。

それほど遠くない将来に、中国では毛沢東時代のような「北朝鮮化」が行われるだろう。逆にそれができなければ、「反乱分子」によって政府が転覆させられるかもしれない。毛沢東氏やトウ小平氏のような「革命の英雄・建国の父」ではないため、習主席のカリスマ性はそれほどないし、人民解放軍も統率しきれていないはずだ。

List    投稿者 dairinin | 2018-07-19 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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