イギリスのEU離脱、戦略の重心をインド太平洋に置き航空母艦を日本に派遣
EU離脱後の貿易の混乱にコロナ感染が重なり危機的な状況だったイギリスが、空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群を年内に初めて日本に寄港させると発表しました。イギリスは今どうなっているのでしょうか。
まず、イギリスの経済状況ですが、英ファイザー製のコロナワクチンの供給を優先的に受けて、ワクチン接種が進み感染は減少に向かっています。それにつれてポンドの通貨価値も上昇しています。経済も昨年はマイナス10%と落ち込んだものの、今年度はプラス4%、来年度はプラス7.3%の成長を見込んでいます。
一見すると好調のようですが、政府の借金が昨年度53兆円、今年度は約35兆円に達すると見込まれています。日本の株がコロナの大不況下で上昇するのと同様、経済実態を伴っていないようです。唯一経済を牽引する英ファイザー製のコロナワクチンも、脳血栓の死亡者を出しており、他のメーカの供給が増えたら、いつまで好調が続くか危うい状況です。
また、イングランド以外のイギリスを構成するスコットランド、北アイルランド、ウェールズでは独立の機運が高まっており、5月に行われるスコットランド州議会選挙の結果によっては、独立の機運が一気に高まるとも言われています。
そんな、状況が不透明なイギリスですが、一番大きな動きが戦略の重点をEUからインド太平洋に移すと正式に発表したことです。イギリスがEUを離脱したのは、EUとの関係を有利にすることが主目的ではなく、EUの将来にはあまり可能性がないと見切りをつけて、将来性のあるインド太平洋地域との関係を強化すると言う戦略があったようです。空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群を日本のほか、シンガポール、韓国、インドにも寄港させることを発表し、イギリスはその戦略転換を世界に強くアピールしました。
■いま英ポンドが米ドルより強い明確な理由。ワクチン戦略は順調、成長見通しも改善、日本は論外の状況で…2021年3月5日
年初2カ月間で見ると、ポンドは対ドルでプラス2%以上上昇。これほどドルに優位を示している通貨はほかにない。2月24日、2018年4月以来の高値を記録している。何がポンドの買い材料になっているのか。考えられるのは以下の3点だ。
1.マイナス金利導入観測の後退。2.ワクチン接種の進捗ペースが早いこと。3.上記2点のため、成長率見通しが相対的に先進国のなかでも高いこと。英製薬大手アストラゼネカが開発・販売する新型コロナワクチンの購入代金が、まとまった額のポンド買いを招いているとの観測もある。
■英米が大増税に舵を切る!?──コロナ対策で膨らんだ政府の借金をどう返すかの議論が始まった2021年3月5日
イギリス財務相は3日、約61兆円のコロナ緊急経済対策とEU離脱後の青写真となる予算演説を行った。その中で約半世紀ぶりとなる法人税率の引き上げを発表した。2023年に法人税を19%から25%に引き上げる。
12万4千人を超える死者を出し、3度のロックダウンを強いられたイギリス経済は昨年、約10%も縮小した。1709年大寒波以来の落ち込みだ。しかし成長率は4%まで回復し、来年は7.3%とV字回復を達成する見通しだ。しかし、その代償は大きい。政府借入金は2020年度 53兆2700億円、21年度は約35兆1100億円に達すると予測されている。
■英国は日本を最も重視し、「新・日英同盟」構築へ──始動するグローバル・ブリテン2021年3月16日
英国政府は3月16日、EU離脱後の国家戦略「グローバル・ブリテン」に関する初めての戦略報告を発表する。注目されるのは、英国が戦略の重心を新たにインド太平洋に置き、日本とこの地域に散在する英連邦国家と同盟を結ぶことによって、インド太平洋に新しい秩序を構築しようとしている点である。
インド太平洋地域は将来、世界GDPの60パーセント、世界人口の65パーセントが集中すると言われている。それはこの地域が将来、世界の政治・経済の中心になることを意味している。
■EU、ワクチン輸出禁止の可能性をイギリスに示唆 不公平だと訴え2021年3月18日
EUからのワクチン輸出と、その禁止の可能性に関する問題が持ち上がったのは、EUが十分な供給を受けられず、ワクチン接種を思うように進められていないためだ。さらに、EUにとって最大の輸出国がイギリスだということも理由となっている。ワクチンを輸出しているのはEUに製造拠点を置いている英アストラゼネカなどの企業だ。
アストラゼネカは1月、英政府との契約について、「まず私たち(英政府)に供給を」という内容だと説明した。イギリスの保健相は、契約によって、アストラゼネカ製ワクチンの最初の1億万回分は英政府が受け取ることになっていると説明した。
EUのワクチン接種は、深刻な問題に直面している。そのため輸出を規制しワクチン販売の際に、政府の許可を求めることを義務付けた。イタリアは今月に入り、アストラゼネカ製ワクチン25万回分が、オーストラリアへの輸出されるのを阻止した。
■ロックダウン1年イギリスでコロナ死者を追悼 2021年3月24日
新型コロナウイルスによる死者が12万6000人超と欧州最多の英国では23日、最初のロックダウン(都市封鎖)から1年となった。死者を悼むため黙祷がささげられた。
英国では、国民の大半が暮らすイングランド地方で1月から3回目のロックダウンが続くなど、今も厳しい外出制限措置がとられている。
■ワクチン接種進むイギリス 感染状況改善し高齢者の活動活発に 2021年4月10日
イギリスでは去年12月からワクチンの接種が始まり、これまでに人口のおよそ47%以上が1回目の接種を受けています。65歳以上の1日の入院患者数は1月中旬には700人を超えていましたが、3月初めには7分の1まで減少しています。先月からは厳しい規制が段階的に緩和されていて、町なかや公園を家族や友人と散歩したり、スポーツを楽しんだりと高齢者の行動も活発になっています。
■新型コロナウイルスワクチン「血栓」で混乱…各国政府、ベネフィット強調も対応に追われる2021年4月12日
オーストラリア政府は4月9日、英アストラゼネカ製ワクチンの接種開始を延期すると発表した。香港政府も、血栓への懸念から同社製ワクチンの調達を中断すると表明した。
欧州と英国の医薬品規制当局は、接種後にきわめてまれに起こる脳血栓がワクチンと関連している可能性があると発表。欧州医薬品庁(EMA)は、4月上旬までに3400万回中169件の脳血栓が報告されたと明らかにした。報告された症例のほとんどは60歳未満の女性で発生している。
アストラゼネカのワクチンは、これまでに使用が認められたワクチンの中で最も安価で、大量に生産されている。アストラゼネカのワクチンは、弱毒化したチンパンジーのアデノウイルスを使ってコロナウイルスの遺伝子を運ぶものだ。
■イギリス連合王国崩壊へのカウントダウンが始まった2021年4月24
2021年5月6日にはスコットランド議会選挙が開催されるが、その結果によっては独立の機運がさらに高まる可能性がある。スコットランド住民の約65%は依然として欧州連合への加盟を望んでおり、世論調査では分離独立派がわずかにリードしている。
北アイルランドでも1月に行った調査では、47%が英国への残留を望み、42%がアイルランドとの統一を支持していた。
ウェールズでも、最新の世論調査で14%が英国からの離脱を支持、2014年の5%から上昇。2月の調査では35%が独立を支持という無視できない数値が出た。昨年実施した世論調査では、特に若い世代18歳から24歳の43%が独立を支持した。
■英空母「クイーン・エリザベス」、初の日本寄港へ 自衛隊と共同訓練検討2021年4月26日
英国防省は26日、空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群を年内に初めて日本に寄港させると発表した。日本のほか、シンガポール、韓国、インドにも寄港するという。英政府は3月に、中国と対峙するインド太平洋地域で存在感を高めていく「インド太平洋への傾斜」という考えを打ち出している。
■EUとイギリスの貿易協定が正式に成立:「離婚」の完全な終結2021年4月28日
欧州議会は4月28日水曜日にEUと英国の間の貿易協定を正式に承認した。英国とEUの貿易協定は、まだ正式に成立していなかったのだ。欧州議会での投票は、27日の夜の本会議で行われた。697人の投票者のうち、660人の欧州議会議員がこのテキストを承認、5人が反対し、32人が棄権した。
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