2017-11-23

2017年11月9日、米中首脳会談はアメリカが中国に膝を屈した歴史的瞬間か

 

magw171116-xi-thumb-720xauto米通首脳会談の前日11月8日の夕食会は故宮で行われたましたが、中華民国においても、そして中華人民共和国(現在の中国)においても、建国後、故宮に外賓を招いて夕食会を催したことなどありませんでした。つまり、建国後、初めての出来事。

さらに、11月9日の首脳会談後には、米中の企業間で総額2534億ドルの商談がまとまりました。トランプ大統領と中国の習近平国家主席が署名式に出席し、米航空機大手ボーイング、米ゼネラル・エレクトリック(GE)、米通信用半導体大手クアルコムが調印を行ったのです。

これだけを見ると、中国がアメリカに対して最大限の譲歩をして、アメリカのご機嫌を取ったようにも見えますが、外交的に勝利したのは中国だと言われています。この米中首脳会談で中国は何を得たのでしょうか。

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習近平はこの首脳会談を通じて、国際社会に対しても強烈なメッセージを発信することに成功しました。中国には国際問題をカネで解決する力があるのだ、というメッセージです。過激な主張で知られる中国共産党系のタブロイド紙は、もっと率直な言葉で今回の大型商談の意味合いを論評しています。「カネを儲けたければ、中国に逆らうな。さもなければ、貧乏になる。世界は今、このことを知るべきだ」

この首脳会談後にトランプ大統領は中国に対する姿勢を一変させています。中国の貿易黒字を強く批判していたのが、米中の貿易問題を巡り中国を責めることはしないとした発言を繰り返し、「貿易面で中国に米国を利用することを許した過去の政権の能力のなさを責める」と悪いのはアメリカだったと言い出したのです。

さらに、トランプがアメリカの姿勢を軟化させたのは、貿易問題だけではありません。トランプは中国側の要請に従い、共同記者発表で報道陣の質問を受け付けませんでした。また、歴代のアメリカ大統領と異なり、中国の人権問題にも言及しなかったのです。

これだけを見ると中国の経済力にアメリカが一方的に膝を屈したように見えますが、どうもそれだけではないようです。トランプ大統領が親中派になった背景には、キシンジャーや、習近平の母校である清華大学にある経営管理学院顧問委員会の米財界人の大物たち(ゴールドマンサックスやJPモルガン・チェースCEOなど)の動きがあると言うのです。習近平は第19回党大会と一中全会が終わると、早速、この顧問委員会のメンバーと歓談し、ここで今般の米中首脳会談の基本路線は決まっていたと見る人もいます。

清華大学経営管理学院顧問委員会の最も大きな目的は、米中間の経済貿易に貢献する「人財育成」です。顧問委員会メンバーの一人で、習近平の親友であるブラック・ストーンCEOのシュテファン・シュワルツマンは蘇世民という中国名を持っていて、蘇世民書院という人材育成センターを、習近平政権になってから清華大学の中に設立しました。

中国は、一帯一路に示されるように、グローバリズムを志向しており、アメリカやロシアが自国主義(反グローバリズム)を強化しているのとは一線を画しています。中国は鄧小平の時代から経済的豊かさの追求に舵を切っていますが、その過程で欧米の国際金融資本勢力の影響を強く受けるようになっている可能性があります。アメリカやEUが市場拡大の限界を迎え先が見えない中で、国際金融資本勢力は中国を中心としたアジア世界に軸足を移しつつあり、今後、その動きを本格化する。その転換点が今回の米中首脳会談だったのかもしれません。

トランプ大統領が訪中する直前の第19回党大会で習近平の権力を絶対的なものとし、一帯一路=グローバリズム路線も党規約に盛り込んだうえで、トランプ大統領の訪中で、米中関係を一気に好転させ、米中の市場を一体化しながら、世界経済の中心をアメリカから中国に移していく。今のところ、中国の指導部と国際金融資本勢力の思惑は一致していそうです。

 

■中国、米国産大豆の輸入拡大に合意へ トランプ訪中に合わせ2017年11月8日

米産業筋が明らかにしたところによると、今週のトランプ米大統領訪中に合わせ、中国側は米国産大豆の輸入拡大に合意する見通しだ。中国は世界1位の大豆輸入国であり、米国は中国の供給元としては2番目。関係者によると、中国側は米国産牛肉、大麦、チーズなど乳製品の輸入拡大についても合意する方針だという。

■トランプ=習近平2500億ドル超の商談契約 拘束力なく不履行の可能性も2017年11月9日

トランプ米大統領の初の訪中に合わせて成立した米中間の商談は、2500億ドル超規模に上った。ただ多くは拘束力を持たず、契約が実現するかどうかは別の問題となる。

トランプ大統領と中国の習近平国家主席が署名式に出席し、米航空機大手ボーイング、米ゼネラル・エレクトリック(GE)、米通信用半導体大手クアルコムが調印を行った。クアルコムは、中国の携帯電話機メーカーである小米科技、広東欧珀移動通信(OPPO)、Vivoの3社との間で、総額120億ドルの拘束力のない覚書(MOU)を結んだ。3社とは「長期にわたる関係を築いている」とした。中国国営の中国中央テレビ局は、ボーイングが中国で370億ドル規模の商談に調印したと伝えた。

■中国メディア、米中首脳会談を評価「両国関係の新しい青写真が示される」2017年11月10日

トランプ米大統領は10日、中国訪問を終えてベトナムに出発し、中国の習近平国家主席について「高い尊敬を集めている」として称賛した。また、米中の貿易問題を巡り中国を責めることはしないとした前日の発言を繰り返し、「貿易面で中国に米国を利用することを許した過去の政権の能力のなさを責める」とした。

一方、中国国営メディアは10日、今週訪中したトランプ大統領と習主席の会談について、米中首脳は両国関係の新たな青写真を描きつつあるとして評価した。

■トランプ訪中、主人公はアラベラちゃん2017年11月10日

皇帝級の扱いを受け、28兆円もの投資協定を結んだトランプ大統領は満足げだった。その陰には孫娘アラベラちゃんの活躍がある。

第19回党大会が終わると、中国の中央テレビ局CCTVでは、「国事訪問+(プラス)」が画面を埋め尽くした。この「+(プラス)」は「超(スーパー)」という意味。その「国事訪問+」では、中国の歴代皇帝が住んでいた故宮を貸し切って、習近平自身がトランプ大統領を歓待した。

清王朝の滅亡とともに、故宮には皇帝がいなくなってしまったわけだが、それ以来、中華民国においても、そして中華人民共和国(現在の中国)においても、建国後、故宮に外賓を招いて夕食会を催したことなどない。つまり、建国後、初めての出来事なのだ。

それに対してトランプは、孫娘のアラベラちゃん(6歳)が中国語の曲を歌っている動画をタブレット端末で披露した。そもそもトランプが最も可愛がり信頼している娘のイヴァンカさん(大統領補佐官)は、根っからの親中派だ。3人の子供たちには、物心ついたときから中国語を学ばせている。家政婦さんも在米華人。

キッシンジャーはトランプが大統領に就任する前から崔天凱をイヴァンカとその夫クシュナーに接触させ、トランプを親中に持っていくように仕掛けていた。

それ以外にも活躍していたのは習近平の母校、清華大学にある経営管理学院顧問委員会の米財界人たちだ。そこにはゴールドマンサックスやJPモルガン・チェースCEOなど、目がくらむほどの米財界の大物たち数十名が名を連ねている。第19回党大会と一中全会が終わると、習近平は早速、この顧問委員会のメンバーと歓談した。ここで既に今般の米中首脳会談の基本路線は決まっていたと見ていいだろう。

清華大学経営管理学院顧問委員会の最も大きな目的は、米中間の経済貿易に貢献する「人財育成」である。投資などが目的ではない。これは実は時間が経てばたつほど大きな効果を発揮することになる。

顧問委員会メンバーの一人で、習近平の親友であるブラック・ストーンCEOのシュテファン・シュワルツマンは蘇世民という中国名を持っていて、蘇世民書院という人材育成センターを、習近平政権になってから清華大学の中に設立した。ここでは設立当時の目的と同じく、アメリカのための活躍できる中国の人材を、アメリカ大企業の関係者が育成して、米中関係を強化し高めていくことが目的だ。キッシンジャー・アソシエイツは、シュワルツマンが経営するブラック・ストーンのビルの中にある。そしてシュワルツマンはトランプ大統領戦略政策フォーラムの議長だった。キッシンジャーは極端な親中であるとともに、反日であることでも有名だ。

28兆円の投資協定の裏には、清王朝から続いている、(アメリカのための)清華大学の米大財閥たちとの、恐るべきベースがあることを見逃してはならない。

 ■中国、トランプ「インド太平洋」発言に警告 「地域協力は政治化すべきでない」2017年11月14日

中国外務省は13日、トランプ米大統領がアジア歴訪で用いている「インド太平洋」という表現に言及し、地域協力は政治色が強かったり排他的であったりすべきではないとの見解を示した。「インド太平洋」は近年オーストラリア、インド、日本の外交・安全保障関係者の間で使用が増えており、中国も含めた「アジア太平洋」に代わり、より開かれた民主主義主導の地域を意味する表現。トランプ氏はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた会合で演説したが、この表現を繰り返し、インドの重要性に言及した。

トランプ籠絡で習近平は高笑い2017年11月16日

今回のドナルド・トランプ米大統領の中国訪問により、中国は対米関係だけでなく、国内的にも国際的にも大きな勝利を収めたと、少なくとも中国政府はみている。はっきり言えるのは、習が「虚栄心をくすぐる」ことにより、トランプのハートをつかんだということだ。中国はトランプを「国賓を上回る」待遇でもてなし、11月8日には明朝と清朝の皇帝の居所だった北京の故宮(旧紫禁城)で夕食会も開いた。49年の共産中国建国以来、故宮に外国首脳を招いて夕食会が行われたのは初めてだ。

ビジネスの面では、トランプの訪中に合わせて米中の企業間で総額2534億ドルの商談がまとまった。これは、米中貿易の歴史上で過去に例のない規模だ。中国の鐘山(チョン・シャン)商務相は、この成果について「本当に奇跡的な出来事」だとたたえた。

習はこの「奇跡」を通じて、国際社会に対しても強烈なメッセージを発信することに成功した。中国には国際問題をカネで解決する力があるのだ、というメッセージだ。過激な主張で知られる中国共産党系のタブロイド紙「環球時報」の胡錫進(フー・シーチン)編集長は、もっと率直な言葉で今回の大型商談の意味合いを論評している。「カネを儲けたければ、中国に逆らうな。さもなければ、貧乏になる。世界は今、このことを知るべきだ」

今回の訪中でトランプがアメリカの姿勢を軟化させたのは、貿易問題だけではない。トランプは中国側の要請に従い、共同記者発表で報道陣の質問を受け付けなかった。また、歴代のアメリカ大統領と異なり、中国の人権問題にも言及しなかった。これは、中国政府としては最も触れられたくないテーマだ。この2つの点も国内と国際社会向けに、中国がアメリカに対して外交上の勝利を収めたことを一層印象付ける効果を持った。

List    投稿者 dairinin | 2017-11-23 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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