2019-04-04

反グローバリズムの潮流(イギリスのEU離脱、メイ首相の協定案3度目の否決、突破口は?)

newsweek_20190330_120143-thumb-720xauto-155983前回の投稿では、EUがイギリスの離脱期限の延長を認めたことを受けて、EU推進派がEUに有利な離脱協定案に合意させる方針から転換し、離脱を長期化させ、その間にイギリス世論を動かして国民投票のやり直しをさせる作戦を取ろうとしているのではないかと分析しました。当初の離脱期限を迎えたイギリスは、今どんな状況なのか調べてみました。

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まず、国民投票のやり直しですが、500万人のネット署名が集まり、100万人のデモが行われるなど、盛り上がりも見られ、2回行われた議会の示唆的投票でも、否決されたとはいえ比較的賛成票が多い状況になって来ています。イギリス政府は、国民投票の時も反対派は1600万人いて、今も大勢いることは分かっているが、国民投票を覆すのは民主主義を否定するものだと強硬に反対しています。

一方のEU離脱案ですが、議会提案もすべて否決され、メイ首相の3度目の提案も否決された、という結果ですが、徐々に反対派から賛成派に回る人の数は増えて来ています。EUが国民投票を再度行うと言う作戦に転換したことを受けて、メイ首相の離脱案に反対していた強硬な離脱派(離脱には賛成だが、EUに優位な離脱案に反対する立場)の人たちが、理想的な離脱案でなくても、離脱を優先するという動きに転換し始めたのかもしれません。

EUは4月12日の延期された離脱期限までに離脱案が同意されなければ、合意なき離脱にするとイギリスに圧力をかけています。

メイ首相は、離脱案に合意が得られれば辞任しても良いと、自分の政治生命をかけて取り組んでいます。これまで協定案は3回否決されていますが、回を重ねるごとに賛成の票は確実に増えており、3回目の投票結果では離脱強行派が賛成に回っていれば可決されるところまで来ています。(第1回:賛成202票、反対432票。第2回:賛成242票、反対391票。第3回:賛成286票、反対344票。)

メイ首相は4月12日の離脱に向けて4月10日に4回目の採決に臨みます。このままでは結論が出ずに混迷が続くと思われます。メイ首相がやるべきことはEUと合意できていないイギリス国会が合意できる案で採決を行うことではないでしょうか。そうすれば、それを認めずに合意なきEU離脱に突き進むか、認めて秩序あるEU離脱に進むかはEUの判断に委ねられることになります。

イギリスが合意なき離脱に進んで、本当に困るのはEUですから、EUも妥協せざるを得なくなる可能性が高いと思われます。

 

■ロンドンで「ブレグジット反対」行進 主催者は100万人以上が参加と2019年3月24日

ロンドンで23日、欧州連合(EU)離脱に反対する大勢が市内中心部を行進し、2度目の国民投票の実施を求めた。行進の主催者によると、100万人以上がハイド・パークから議事堂前までの行進に参加した。参加者が実際に100万人を超えていた場合、イギリスでの抗議行進としては、イラク戦争に反対した2003年の大行進に匹敵する規模だったことになる。

行進には人気テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」に出演する俳優レナ・ヘディさんや、人気バンド「ペットショップボーイズ」のニール・テナントさんなど、有名人も大勢参加した。ロンドンのカーン市長は行進の先頭で、「国民に聞け」横断幕を手に歩いた。並んで歩いた野党・自由民主党のヴィンス・ケーブル党首は、「あらゆる立場の人がものすごく大勢参加した」とツイートした。

一方で、与党・保守党の重鎮、ジョン・レッドウッド下院議員はBBCに、「国民投票では1600万人がEUに残りたいと言ったのは分かっている。その一部はまだEUに残りたがっているし、その中のごく一部がまた国民投票をしたいと言っているが、それは一貫してごく少数に過ぎない」と述べた。

■「ブレグジット大混乱」報道では見えない真のイギリスの現状2019年3月27日

離脱に投票すればただちに経済的打撃に見舞われるだろうと言われてきたが、それは現実にならなかった。3年間の混乱や、ブレグジットをめぐる「混沌と危機」が深刻な影響をもたらしているだろうと思われているかもしれない。でも今のイギリスはこの40年超で最低の失業率(4%)で、インフレ率は目標に近い1.9%。GDP成長率は緩やか(1.3%)ながら好調の域にとどまっている。一応比較すると、フランスの失業率は8.5%、ドイツのGDP成長率は1.5%でイタリアのインフレ率は0.9%だ。

ブレグジットに敵意を抱く人でさえ、イギリス経済は「驚くほど耐性が高い」ことが証明されたと恨めしそうに語っている。公平に言えば現状のイギリスに関して数字を見ると良いものも悪いものも入り混じっているが、多くの人々が予言し、いまだに一部の人々はその証拠をみつけてやろうと躍起になっている、「経済的大惨事」とは程遠い状況だ。

■示唆的投票で何がどうなった? ブレグジット、今後の展開は2019年3月28日

英下院(定数650)は27日夜、テリーザ・メイ首相の欧州連合(EU)離脱協定に代わる議員提出8案に対する「示唆的投票」を行ったが、いずれの案も過半数を得られず否決された。

・4月12日に合意なし離脱――賛成160 反対400

・ブレグジット中止――賛成184 反対293

・確認のための(2度目の)国民投票――賛成268反対295

・関税同盟(EU離脱後、交渉)――賛成264 反対272

・単一市場2.0(EFTAに再加入)――賛成188 反対283

・EFTAおよびEEAへの加入――賛成65反対377

・労働党案:単一市場との「緊密な連携」や労働者の権利保護などを含む――賛成237反対307

・モルトハウス妥協案A:メイ首相の離脱協定からバックストップを除外し、代わりの合意を加える案――賛成139 反対422

■メイ首相 離脱案可決なら辞任 今週中にも3度目の採決の意向2019年3月28日

イギリスのメイ首相は、EU(ヨーロッパ連合)からの離脱案が議会で可決されれば、辞任する意向を表明した。メイ首相は、今週中にもEU離脱案の3度目の採決を行いたい意向で、一部の反対派議員は、賛成に回る姿勢をみせている。メイ首相としては、自らの辞任と引き換えに、離脱案への支持を訴えた形だが、依然、根強い反発もあり、過半数の支持を得られるか予断を許さない状況。

■イギリス議会、離脱案3度目の否決 EU「合意なき公算大」2019年3月28日

英議会は29日、欧州連合(EU)離脱協定案の主要部分を巡る採決を行い、賛成286票、反対344票の反対多数で否決した。結果を受け、欧州委員会は4月12日に合意なき離脱に突入する公算が大きくなったとの認識を示した。

メイ首相は、議会の採決結果について「重大な影響」を及ぼすとして、選択肢がなくなりつつあるとの考えを表明。「議会は合意なき離脱を否決し、離脱撤回も拒否した。27日には議題に上がるすべての選択肢の受け入れを拒み、今日は離脱協定案単体の承認と、将来に関するプロセス継続も拒否した」と指摘した。その上で「下院での手続きはもはや限界に達したと言わざるを得ない。下院の決定が意味するものは重大だ」と語った。また「法的には、英国はEUを4月12日に離脱する」と表明。それ以降に延期する場合は長期的な延期となる公算が大きく、その場合に英国は5月の欧州議会選挙に参加する必要があるとの見方を示した。

EU首脳からは合意なき離脱の可能性が高まったとの見解の表明が相次いだ。フランスのマクロン大統領は、EUは合意なき離脱に向けた対応を加速させる必要があると指摘。オーストリアのクルツ首相は、英国が代替案を提示しない限り「ハードブレグジット」が現実になるとの見方を示した。このほか、オランダのルッテ首相は記者団に対し、「秩序立ったEU離脱に向け残されていた2つの道のうち1つが閉じられた」とし、「残されたもう1つの道は英国が4月12日までに意向を明確に示すことだが、合意なき離脱のリスクは極めて高くなっている」と述べた。

 

■EUに残りたい地域政党と労働党が合意案を葬った。英国解体の覚悟は?:イギリスEU離脱ブレグジットで2019年3月30日

3度否決されてしまった。3度の投票のたびに、合意案に賛成する数は増えている。今回は、このままでは合意なき離脱になってしまうと考えた保守党内の強硬派が、一部賛成にまわった。賛成286票、反対344票。(第2回賛成242票、反対391票。第1回賛成202票、反対432票。)

与党の保守党であるが。確かに、保守党の議員は、最終的に34人が「反対」に投票した。この全員が「賛成」に投票していれば、賛成320票、反対310票で、可決できたのだ。

今後は合意なき離脱になる可能性は高い。予測していた4つの行く末のうち、合意案が否決されたことで一つ消えたので、3つの可能性になったと思う。

1,「合意なき離脱」2,「総選挙+欧州議会選挙(=再国民投票のかわり)」3,「英国側は延長を申し出るも、EU側に拒否される。この場合、合意なき離脱になる可能性が極めて高い」

■イギリスのEU離脱、「示唆的投票」また全否決の今の状況は?2019年4月2日

英下院(定数650)は1日夜、欧州連合(EU)離脱について2度目の「示唆的投票」を行ったが、今回も議員が提出した4案全てが否決された。「示唆的投票」のために提出された案は以下の4つ。議員は1日の議会でこれらを審議し、夕方から投票を行った。

・関税同盟:あらゆるブレグジット協定に「イギリス全体とEUの恒久的・包括的な関税同盟」を加える交渉を行う案 ――賛成273 反対276

・共同市場2.0:欧州自由貿易協定(EFTA)に再加入し、欧州経済領域(EEA)にとどまる案 ――賛成261 反対282

・確認のための(2度目の)国民投票:議会を通過した離脱協定に対し、批准の前に国民に是非を問う案 ――賛成280 反対292

・合意なし離脱の回避:合意なし離脱となるあらゆる可能性を排除する案。選択肢にはブレグジット中止も含まれる ――賛成191 反対292

どの案も下院を通過しなければ、イギリスは12日にEUとの合意のないまま離脱となる。EU側はいまや、12日の「合意なし」ブレグジットが最もありえる結果だと考えている。

■EUが離脱再延期の条件示す2019年4月4日

難航するイギリスのEU離脱について、EUのユンケル委員長は、今月12日までにイギリス議会が離脱協定を承認することが離脱の再延期の絶対条件だと述べました。

EUのユンケル委員長は3日、イギリス議会が12日までに、これまで3度否決した離脱協定を承認すれば、5月22日までの延期を認めるが、承認しなければ延期はないと強調しました。

■「結論は出なかった」EU離脱めぐる英党首会議続く、下院は独自に法案通過2019年4月4日

イギリスのテリーザ・メイ首相は3日、最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首と新しい欧州連合(EU)離脱計画をまとめるための協議を行った。協議は「建設的」だったとされているが、コービン党首は「結論は出なかった」と述べた。イギリスは現在、離脱条件をまとめた協定の可否を問わず、4月12日にEUを離脱することになっている。

メイ首相は「できるだけ短い」追加の延長をEUに求めるため、労働党の協力を得て新しい離脱計画をまとめ、4月10日までに下院採決にかけたい考え。10日にはブレグジット(イギリスのEU離脱)について欧州理事会の緊急首脳会議が予定されている。

こうした中イギリス下院(定数650)は3日、メイ首相にEUからの離脱プロセスを延期するようEUに要請することを義務付ける法案を、313対312の1票差で可決した。最大野党・労働党のイヴェット・クーパー議員が提出したこの法案は合意なしブレグジットを避けるためのもので、わずか1日で下院を通過した。

■英中銀総裁、合意なしブレグジットのリスクに危機感2019年4月4日

英中銀イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は3日、「無秩序な」合意なしブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)の可能性が「危機感を覚えるほど高まっている」と警告した。欧州連合(EU)との合意のないまま離脱する事態への準備は「具体的に進んでいる」ものの、それでも「懸念点はたくさんある」あると話した。また、合意なし離脱が簡単に制御できるという考えは「全く馬鹿げている」と一蹴した。

イギリスはこのまま状況が変わらなければ、4月12日にEUを離脱する。

List    投稿者 dairinin | 2019-04-04 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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