どうなるアメリカ大統領選挙 コロナウィルスでバイデン候補が急上昇
前回の投稿では、スーパーチューズデーの結果、バイデン候補が逆転勝利をつかんだことをお伝えしました。この時は、改革を訴えるサンダース氏に対して、民主党を支持する中高年は現実の外圧を捨象し願望の世界に埋没している現状維持派が多くバイデン氏が有利になったと分析していました。その後、アメリカでもコロナウィルスが流行し始め、大衆の意識はどう変わったのか調べてみました。コロナウィルスが蔓延すると国民皆保険を訴えるサンダース氏が有利になるのではないかとも考えたのですが、どうやらコロナウィルスもバイデン氏の追い風になっているようです。
まず、サンダース氏の掲げる国民皆保険ですが、必ずしも労働者全般の評価は高くないようです。実はアメリカで健康保険に加入していないのは15%なのだそうです。そして、多くの労働者にとって健康保険は闘って経営者から獲得したものであり、サンダース氏の国民皆保険は、その獲得した健康保険を廃止するとしており賛成できない人も多いそうです。
そして、コロナウィルスが流行してアメリカ国民が心配しているのは保険制度ではなく、危機管理能力のようです。トランプ大統領が危機管理で失敗しているのを民主党は批判しています。民主党の大統領候補であるサンダース氏とバイデン氏を比べれば、副大統領経験もあるバイデン氏の方が行政経験豊富で危機管理能力が高いと期待されています。コロナウィルス危機で米国民の間に安定要求が高まり、理想を語るサンダース氏よりも、現実的なバイデン氏の人気が高まているようです。
この先の大統領選挙でも、これまでは現職で経済運営も上手く行っていたトランプ大統領が有利でしたが、コロナウィルス対応で後手に回ったトランプ大統領は評価を落としているようです。大統領の本選挙でも、行政経験が無くコロナウィルス対応で後手に回ったトランプ大統領よりも、行政経験があり危機管理能力が期待できるバイデン氏の方が有利になると言う予測も出ています。
トランプ大統領、サンダース氏、バイデン氏を並べると、グローバリズムに最も近いのがバイデン氏です。コロナ危機を契機に、アメリカはグローバリズム派が復権するのかもしれません。それはアメリカだけの動きではなく、これからヨーロッパも含めた全世界的な動きに拡大していくと思われます。インフルエンザより致死率が低いコロナウィルスが、これほど過剰に報道されているのは、グローバリズム勢力が旧勢力の復権を目論んで、マスコミを動かしているからなのかもしれません。
■トランプが落胆したスーパーチューズデー ウイルスと黒人に感謝のバイデン、自信過剰のサンダース失墜2020年3月5日
バイデン蘇生の要因は3つある。
一、若者(特に大学生)を中心に吹き荒れたサンダース旋風は瞬間風速は凄かったが、やはり他の年代層には浸透し切れなかった。
二、予備選で勝利するのは、ブルームバーグ氏のように選挙広告に巨額の金をつぎ込んだだけではダメだったということ。
三、民主党支持者の間にやっとトランプ打倒への真剣味が出てきたことだ。サンダース氏が唱える社会格差是正もよし、公立大学学費無償も若者たちにはありがたいことだ。しかし、新型コロナウイルスが米本土に侵入、感染が拡大する天災が起きた場合、「理想論」を滔々と歌い上げるサンダース氏のようなビジョナリー(理想主義者)に政治は任せておけないことに各州の民主党支持者が気づいたのだ。
もう一つつけ加えれば、スーパーチューズデーの南部州、アラバマ、テネシーなどは黒人が多く居住する州だ。黒人指導者たちはバイデン支持を支持者たちに熱心に説き、黒人支持者の大多数がバイデン氏に投票したこともバイデン勝利の重要な要因だ。
新型コロナウイルス禍が米本土にも「到来」もバイデン蘇生の遠因になったと指摘する向きもある。新型ウイルスは、ワシントン州で死者まで出した。サンダース氏では頼りない。副大統領として国政を取り仕切ってきた経験豊かなバイデン氏の方が安心できる。大統領というものはプラグマティストでなければならない
■バイデン氏の逆襲! ボス政治をバックに実質的勝利2020年3月9日
指名を得るために必要な過半数争いの行方は、まだまだ分からないということ。野球で言えば4回あたりですから。もう1つは、7月に予定される民主党党大会の投票ルールを考えれば、バイデン氏が極めて有利で、バイデン氏は“実質的に勝利”したということです。
党大会を見据えると、第1回の投票は、州単位の予備選で各候補が獲得した代議員数が得票数になります。ここで過半数を得る候補が現れない場合、第2回投票には771人の特別代議員が加わります。議員経験者や党幹部で構成される、いわゆる民主党のドンたちです。彼らは州の投票結果にとらわれることなく、投票することができます。そして、彼らの多くが、同じくドンの一人であるバイデン氏に投票することが予想されるのです。この第2回投票を前提とすれば、サンダース氏に第1回投票で過半数さえ取らせなければ、バイデン氏は指名を獲得することができるわけです。
第1回投票で過半数を獲得する候補が現れない時は、ブローカード・コンベンション(brokered convention)という話し合いが行われます。各候補を推す代議員が、他の候補を推す代議員と話をし、自身が推す候補にくら替えするよう説得する場です。くら替えの見返りは、例えば政策や党の綱領に盛り込む文言、党のポストなどです。
同氏が勢いを回復したのは、第4戦であるサウスカロライナ州での予備選でした。投票日の直前に同州民主党の“ボス”、ジェームズ・クライバーン氏が「バイデン支持」を表明。さらに勢いを加えました。クライバーン氏は同州選出の下院議員。院内幹事を務める民主党下院のナンバー3です。同氏自身がアフリカ系で、アフリカ系有権者の動向を大きく左右できる存在です。
加えて、スーパーチューズデー直前の3月1日、ブティジェッジ氏が撤退。翌2日にはクロブシャー氏も撤退を表明しました。「クロブシャー氏が副大統領候補になるかもしれない」という話が、ニューハンプシャー州で予備選が行われた直後から出ていました。ブティジェッジ氏の撤退も不自然です。撤退する見返りに、バイデン政権の国務長官のポストが提示された可能性があります。
サンダース氏の政策は、こうした政治信条の違いだけでなく、「経験」と「実績」を重視する立場からも受け入れがたいものになっています。健康保険を例に説明しましょう。実は、米国で健康保険に加入していない人は米国全体で15%程度しかいません。収入が基準より低い低所得者は「メディケイド」で、65歳以上の高齢者や身体障害者は「メディケア」でカバーされています。生産年齢にある人々も、多くが健康保険に加入しています。米国の労働組合の歴史を振り返ると、健康保険を取得すべく戦ってきました。彼らにとって健康保険は血と汗をもって勝ち取ったものなのです。これに対してサンダース氏の提案は、新たな制度を導入する一方で、既存の健康保険を廃止するとしています。
■バイデン氏3勝、ミシガン制す サンダース氏との差広げる―米大統領選民主指名争い2020年3月11日
米大統領選の民主党候補指名争いは10日、6州で予備選・党員集会が行われた。CNNテレビによると、バイデン前副大統領(77)は焦点となった中西部ミシガン州(代議員数125)を制し、3勝を確実にした。一騎打ちの構図となった急進左派サンダース上院議員(78)に対するリードをさらに広げた。CNNによると、10日深夜(日本時間11日昼)時点の代議員獲得数はバイデン氏が724、サンダース氏が591。
■打倒トランプも見えてきた、バイデンの“アンストッパブル”な勢い2020年3月12日
米大統領選の民主党候補指名争いはこの日、6州で予備選・党員集会が行われ、バイデンが中西部ミシガンなど4州で勝利。指名獲得に必要な代議員数を着実に伸ばし、バーニー・サンダース上院議員との差を広げた。
新型コロナウイルス感染拡大におけるドナルド・トランプ大統領のいい加減な対応を見た民主党支持者は「もはやトランプに一番勝てそうな候補を選ぶという単純な話ではなくなった。大統領としての能力が一番ある候補を選ぶべきだ」との考えに至っているという。 「そうなると、急進的なアウトサイダー(サンダース)よりも前副大統領(バイデン)に信頼を置くのも無理はない」
米「CNN」の出口調査によれば、危機対応で誰を信じるかとの問いに対し、ミズーリ州では60%がバイデンと答え、サンダースは25%ほどしか信頼を得られなかった。本選予測でもバイデンに有利な数字が出ている。米クイニピアック大学が行った最新の世論調査によると、危機対応能力が優れているのは誰かとの問いで、バイデンがトランプを16ポイント上回った(サンダース対トランプでは、サンダースのリードは6ポイントにとどまった)。 上記の調査は3月初めに実施されたものであり、新型コロナウイルスが今後さらに米経済や社会に深刻な影響を及ぼしていけば、その数字も変わってくるだろう。ガーディアン紙いわく、「向こう2ヵ月間で民主党候補が事実上決まるだけでなく、トランプ政権も事実上終わるかもしれない」。
■米民主党内からサンダースに撤退要求、バイデンで団結目指す2020年3月12日
米大統領選の民主党候補の公認指名争いは、注目された3月10日のミシガン州の予備選で、ジョー・バイデン前副大統領がバーニー・サンダース上院議員に勝利した。これを受けて一部の民主党関係者は、バイデンの指名獲得が確実になったとし、ドナルド・トランプの追放に向けて一致団結すべきだとの主張を開始した。
ミシガン州はサンダースが指名獲得を果たす上で、最後の頼みの綱とされてきた。そのミシガンで、サンダースが破れたことにより、バイデンの指名獲得を確実視する見方が強まった。サンダースが選挙戦を続行した場合、今後はかなり不利な戦いが待っている。次の予備選が開かれる4州(アリゾナ、フロリダ、イリノイ、オハイオ)において、バイデンの支持率はサンダースを二桁台も上回っている。政治予測ブログFiveThirtyEightは、バイデンの指名獲得の確率を99%としている。
■サンダース氏、撤退せず 民主党候補選び 米大統領選2020年3月12日
米大統領選に向けた民主党の候補選びで、サンダース上院議員は11日、選挙運動を継続すると宣言した。10日に6州で行われた予備選のうち、焦点の中西部ミシガン州などでバイデン前副大統領に敗れたが、記者会見で「15日にアリゾナ州で行われる討論会を楽しみにしている」と述べ、撤退しない決意を明確にした。
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