反グローバリズムの潮流(2017年は反グローバリズムの潮流がさらに加速)
昨年はアメリカで反グローバリズムを掲げるトランプ大統領が誕生しましたが、今年はヨーロッパでも反グローバリズム勢力が躍進した年でした。以下に今年の反グローバリズムの動きをまとめました。
・ドイツ:極右政党「自由の選択肢」が、議席ゼロから94議席を獲得して、第3政党に浮上する大躍進
・フランス:極右政党「国民戦線」が躍進。大統領選挙で決選投票にまで進む。
・イタリア:EUを支持する現政権が提起した国民投票で、反グローバリズムを標榜する「五つ星運動」が国民投票の否決を強く訴えて否決。
・スペイン:「ポデモス」が総選挙では69議席を獲得し、第3党にまでなっている。
・オランダ:世論調査で極右の「自由党」が前回選挙の2倍以上の33議席を獲得し、第1党に躍進する勢いを示した。
・デンマーク:「デンマーク国民党」が議会第二党になり政権与党に
・フィンランド:「真のフィンランド人」が第二政党となり連立政権に参加
・スウェーデン:「スウェーデン民主党」が支持率20%を集める。
・ノルウェー:第1党の保守党と連立政権を組む第3党の進歩党がいわゆる右翼ポピュリスト政党=反グローバリズム勢力。
・オーストリア:ポピュリズム政党である「自由党」の候補が大統領選挙で一位に。総選挙で国民党と自由党の連立政権が成立する可能性。
・スイス:右派で移民反対を唱える「国民党」が2003年以来、第1党を維持
・ポーランド:2015年の大統領選、総選挙でEU懐疑派の保守系野党「法と正義」(PiS)が勝利。
・ハンガリー:2010年の総選挙で国民議会の2/3を占める圧勝、極右勢力「フィデス」のオルバン首相が再選。
・チェコ:反EU勢力が躍進、チェコのトランプ率いるANOが第1党に
・ニュージーランド:反TPP政権が成立
特にヨーロパで反グローバリズムの動きが活発ですが、その理由はEUにあります。
反グローバリズム勢力がヨーロッパで躍進している理由として、マスコミが良く上げているのが移民の受け入れです。シリア内戦などの影響で多くの移民がEUに流れ込み、EUは人権擁護のために移民受け入れを義務化しているので、移民問題が発生し反グローバリズム勢力が躍進すると言う説明です。
しかし、それは事実ではありません。EU=グローバリズムは自由市場を拡大するために国際資本がとっている戦略です。移民=人の移動を自由化するのも、労働力の供給を自由化することが最大の理由です。安い労働力が手に入れば、国際資本にとってはより多くの利益を上げることが出来ます。ところが、一般大衆にとってみれば、安い労働力が供給されることで平均賃金が低下し生活は苦しくなるのです。
それだけではありません。EUに加盟した国々の多くは、市場拡大のメリットで経済が発展すると期待していたのですが、結果は逆で、多くの国は経済的に疲弊しています。自由競争の経済では、一部の強い企業だけが勝ち大半の弱い企業は負けるのですから、国家間格差や国内での経済格差も拡大するのは必然です。グローバリズムを推進すればみんなが豊かになるかのようにマスコミは発信していますが、そんなのは真っ赤な嘘なのです。
マスコミは、ヨーロッパで反グローバリズム勢力が拡大することが間違いであるかのように報道していますが、それはマスコミが国際資本勢力の手先だからです。グローバリズムは一部強者が利益を追求拡大するための間違ったシステムであることは、EUの盟主であるドイツでも反グローバリズム勢力が拡大していることからも明らかではないでしょうか。
■反グローバリズムの潮流(イタリアの五つ星運動)2017-01-04
イギリスに次いで、反グローバリズムの勢いが強いのがイタリアです。2016年12月には、EUを支持する現政権が提起した国民投票が否決されました。反グローバリズムを標榜する「五つ星運動」が国民投票の否決を強く訴えており、イタリアで「五つ星運動」の勢力が強くなっていることは間違いありません。
■反グローバリズムの潮流(フランスの国民戦線)2017-01-13
フランスでは今年の4月に大統領選挙が行われますが、反グローバリズム、反EU、反移民を主要な政策として主張する極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ル・ルペン党首(48歳)が第1回目の選挙で1位になるかもしれないと予想されています。その背景には、フランスがEUの政策=グローバリズムにより、経済的にも治安維持の面でも、ガタガタになっているという事実があります。
■反グローバリズムの潮流(オランダの自由党)2017-01-20
オランダでも極右勢力である自由党が力を伸ばしており、その党首がヘルト・ウィルダース(53歳)です。オランダも、テロの影響で治安の維持を求めて反イスラムの動きが出ているのも確かですが、それよりも大きな問題になっているのが、経済の悪化です。EUの中の優等生であるオランダが、このような状態になっているのです。もはや、EUの存在意義が揺らぐのは当然。
■反グローバリズムの潮流(オーストリアの自由党)2017-01-26
オーストリアでは、いわゆるポピュリズム政党である自由党の候補が大統領選挙で一位になりました。決選投票で逆転負けはしましたが、得票率は49.7%対50.3%と本当の僅差。
オーストリアも移民問題だけではなく、経済の低迷にもあえいでいます。経済成長率は低下し失業率が上昇、政府は減税などの対策を行っていますが、効果はあまり出ていません。経済低迷の原因はEU内での東欧諸国との競争の敗北です。
■反グローバリズムの潮流(スペインのポデモス)2017-02-02
これまで、ヨーロッパで見られた反グローバリズムの潮流は、極右勢力と言われる組織でしたが、スペインは極左勢力であるところが特徴です。この違いはどこから来るのでしょうか。
スペインは、失業率が高く、仕事を求めてEUの主流派の国に出稼ぎに行かざるを得ない国です。グローバリズムの中で、国際資本から搾取される側であり、国家はその国際資本の手先で、国民が搾取されるのに手を貸しているという意識になりやすいようです。
■反グローバリズムの潮流(北欧の民族主義政党)2017-02-09
ヨーロッパの中でも優等生と言える国々でも、いわゆる「極右政党」が急激に勢力を伸ばしています。デンマークでは「デンマーク国民党」が議会第二党になり政権与党に、フィンランドでは「真のフィンランド人」が第二政党となり連立政権に参加、スウェーデンでは「スウェーデン民主党」が支持率20%を集めています。
国際金融資本は国民が望まなくても経済成長を実現する必要があり、無理やりにでも経済を成長させるために取っている政策が移民政策なのです。マスコミが、移民政策に反対する政党を「極右勢力」と批判するのは、彼らが金貸しの手先だからでしょう。
■反グローバリズムの潮流(ドイツのための選択肢)2017-02-17
EU最大の経済大国ドイツでも極右勢力と言われる「ドイツのための選択肢」が勢力を伸ばしています。2016年に行われた州議会選挙で0議席から61議席へ大躍進し、州議会の第2党や第3党になりました。
経済拡大を絶対とする一部の金融資本家のためにグローバリズム=EUという枠組みを正当化し大量の移民を受け入れ、その結果、一般大衆は賃金の低下、失業率の上昇、治安の悪化で苦しんでいる、それが現在のドイツの状況であり、EUの状況、グローバリズムの正体なのです。
■反グローバリズムの潮流(ポーランド、ハンガリー)2017-08-10
ポーランドとハンガリーも全く同じ状況で、ソ連崩壊後に民主化を果たし、西ヨーロッパ経済に参加した当初こそ経済拡大できたものの、近年では他のヨーロッパ諸国同様に、経済状況の悪化、貧富の格差増大に悩まされています。
自由経済は、弱肉強食の世界ですから、ごく一部の強い企業に富が集中し、過半の企業、多くの国民は逆に貧しくなることは、少し考えてみたら誰でもわかるはずです。ヨーロッパ諸国でポピュリズム=反グローバリズムの動きが起きているのは、その結果であり、グローバリズム=自由経済でみんなが豊かにうなると言うのは嘘だという証拠でもあります。
■反グローバリズムの潮流(9月24日ドイツの総選挙どうなる)2017-08-24
8月の段階で、メルケル氏が率いる民主同盟および姉妹政党・キリスト教社会同盟の支持率は約40%、ライバルの社会民主党が23%程度、それに対してドイツのための選択肢は8%程度にとどまっています。
ドイツのための選択肢は一時期支持率15%まで躍進しましたが、幹部がホロコーストの記念碑を恥の記念碑と発言したことを受けて、マスコミがドイツの選択肢=ナチズムというキャンペーンを展開し、大きく支持率を落としています。これだけネガティブキャンペーンを張られているにもかかわらず、支持率8%を維持しているのは、逆にドイツでもグローバリズムに対する根強い批判があると言えるのかもしれません。
■反グローバリズムの潮流(スイスの国民党)2017-08-31
スイスでは右派で移民反対を唱える「国民党」が2003年以来、第1党を維持しています。
スイスの経済力は世界でもトップクラスですから、政治力は経済界が掌握していても良さそうなものですが、少数のエリートによる大衆支配を防いでいる一つの要因が国民投票です。近年のスイスでは、国民党や関連団体が国民投票を活用しつつ、政治エリートに否を突きつけているのです。
■反グローバリズムの潮流(ノルウェーの進歩党)2017-09-14
ノルウェーの第1党の保守党は反グローバリズム勢力ではありませんが、この保守党と連立政権を組む第3党の進歩党がいわゆる右翼ポピュリスト政党=反グローバリズム勢力です。ノルウェーで、進歩党の主張が受け入れられやすいのには、大きな理由があります。それは、石油資源を持っているからです。
経済的繁栄を享受している中、EU加盟により得られる利益に懐疑的な国民世論、EU加盟による自国農業及び漁業への影響に対する懸念等が理由で、EUにも加盟しておらず、世論は概ねEU加盟賛成3割、反対7割で推移しています。
■反グローバリズムの潮流(ドイツ総選挙、メルケルは勝利したが反グローバリズム勢力が躍進)2017-09-28
選挙の直前には、メルケル首相が国民に極右政党を拒否するよう呼びかけましたが、結果として自由の選択肢は、議席ゼロから94議席を獲得して、第3政党に浮上する大躍進でした。ドイツ左派党の党首はメルケル首相の敗因として、「多くの人々が置き去りにされていると感じる政治を何年もの間、進めてきたことが原因だ」と述べています。
グローバリズム=国際的な経済競争圧力の導入で、貧富の格差が拡大し、全世界的に大衆の不満が高まってきていることが根本的な問題で、移民問題は国際的な経済競争圧力の一つにしか過ぎないのです。
■反グローバリズムの潮流(ニュージーランドで反TPP政権が成立)2017-10-20
与党国民党が第一党を獲得しましたが、過半数を確保することができず、TPPの見直しを求める左派の労働党が政権を獲得する可能性が示されていました。国民党と労働党のどちらが政権を握るか、そのキャスティングボードを握ったのが、民族主義政党のニュージーランド・ファースト党でした。NZファーストが連立政権の相手に労働党を選択し、ジャシンダ・アーダーンは37歳で首相に就任することが決まりました。
■反グローバリズムの潮流(オーストリア総選挙、右派と極右で連立協議)2017-10-26
10月15日の行われたオーストリア総選挙で、中道右派の国民党が勝利しました。現在、極右派と言われる自由党と連立政権の協議を進めており、国民党と自由党の連立政権が成立する可能性が高そうです。両党とも、移民の制限強化を訴えており、反グローバリズムの潮流の高まりがうかがえます。
■反グローバリズムの潮流(チェコ総選挙では、反EU勢力が躍進、チェコのトランプ率いるANOが第1党に)2017-11-02
チェコ総選挙ではEU懐疑派の政党ANOが第一党になり、他にも反移民、反EUを掲げる政党が躍進しました。連立政権協議が難航しているようですが、ついに反EU政権がヨーロッパで誕生する見込みです。
■反グローバリズムの潮流(カタルーニャ独立問題その後、EU・中央政府は強硬路線)2017-11-09
10月28日にはカタルーニャ州議会が独立動議を賛成多数で採決し独立を宣言。これに対してスペイン政府は直ちに上院の承認を受けてカタルーニャ州の自治権はく奪、直接統治。31日にはスペイン司法長官がプチデモン州知事ら計20人を国家反逆罪、扇動罪(最高刑期15年)、公金不正使用罪(同6年)で訴追、プチデモン州知事はベルギーに逃亡、11月4日にスペインの裁判所はプチデモン州知事の逮捕状をだし、11月5日にはベルギーの司法当局はプチデモン州知事らの身柄を拘束しました。そして本日11月8日、スペイン憲法裁は州議会の独立宣言を憲法違反であり無効」として取り消す決定を下しました。
■反グローバリズムの潮流(ドイツ総選挙、メルケル首相は連立協議に失敗、再選挙の可能性も)2017-11-30
緑の党・自由民主党との連立協議が上手く行かなかった理由は、大きく三つあります。三つ目がEUの問題で、マクロン仏大統領が提案するユーロ共通予算、ユーロ財務省などユーロ改革での食い違いは鮮明でした。とくに自民党はマクロン流の財政統合に強く反発し、EU統合を推し進める立場の緑の党との差はぬぐいがたいものがありました。
「政治家もEU官僚も、庶民がどんなに苦しもうと何一つ困らない。EUというネオリベラリズムを極端にしたシステムの中でますます権力を強大化させているのだ。」
■反グローバリズムの潮流(TPP11どうなる?)2017-12-15
TPPを先頭で引っ張って来たニュージーランドで反TPP政権が成立し、合意が危ぶまれたTPP11ですが、11月10日には11か国が大筋合意に達したと報道されました。大筋合意と言う言葉は便利な言葉ですが、言い換えれば、合意が得られていない点がまだあると言う意味です。カナダのトルドー首相が合意に難色を示したのです。その結果、首脳会合は中止となり、閣僚会合で再度大筋合意を確認し、閣僚から各国首脳に報告することになったのです
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2017/12/5630.html/trackback