2014-11-11

中国分析 アジアから世界を伺う中国の真意は?~シルクロード経済構想をどう見る?(2)~

 

中央アジアの地図;ウクライナはここ

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前回シルクロード経済構想を通して、その基盤となった中央アジアの緩やかな軍事同盟「上海協力機構」について検討しました。

シルクロード経済構想は、中国からロシアインド、中央アジアを通ってドイツ、オランダに至る人口30億人の経済圏構想です。既に、道路、鉄道、エネルギーのパイプラインなどが建設され、次第に現実の物となってきています。

こうした動きに多少の動揺が生じたのが、今年発生したウクライナ問題だと考えられます。

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クリミア半島
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■ウクライナ問題

「クリミア併合」の裏側:「中国」「ウクライナ」の接近を恐れたロシア

中国が新シルクロード構想のハブと考えたのが、ウクライナのクリミアだった。中国はウクライナ企業と組んで、総額100億ドルを投じてクリミア大改造を計画していた。うち30億ドルを投じて、セバストポリ北方にあるサキ付近に深さ25メートルの大型港を建設。同港をハブとして鉄道網を整備し、西欧や北欧を結ぶ方針だった。ロシア海軍黒海艦隊本拠地のセバストポリ港の「漁港再建」も含まれていた。

昨年12月初め、キエフの反政府活動が高まる中、ヤヌコビッチ前大統領が訪中し、習主席との間で友好協力条約に調印した。親露派の同大統領は「新シルクロード計画」を全面支持し、関連プロジェクトを討議した。中国は10億ドルの緊急融資を発表。100億ドルのクリミア改造計画は、中国国営企業などがその際発表した。

中国・ウクライナ関係は近年急拡大し、昨年の往復貿易は100億ドルで、ウクライナにとって中国はロシアに次ぐ第2の貿易相手国。人民解放軍系企業はウクライナ東部で、200万ヘクタールの農地を50年間租借し、中国にとって最大規模の海外農場を建設する交渉を進めていた。租借対象には、クリミアの農地も含まれていた。中国は将来の食糧不足をにらみ、穀倉地帯・ウクライナからの食糧調達を計画していた。

ウクライナの武器輸出先のトップは中国で、昨年は21%を占めた。中国は昨年からクリミアの軍需工場で生産されている世界最大級の揚陸用ホバークラフトを購入しているが、クリミア改造計画には同工場など軍事企業近代化も含まれていた。

中国・ウクライナ友好協力条約には、ウクライナが核の脅威に直面した場合、中国が相応の安全保障を提供するとの一節があり、事実上中国がウクライナに「核の傘」を提供したとも読める。中国とウクライナは水面下で同盟関係に発展しつつあったのだ。

この記事では、ウクライナと緊密になりつつある中国をロシアが懸念していると分析されています。しかし、今年発生したウクライナ問 題で、ロシアのクリミア半島編入に対して中国は特に指摘をしていません。続いて起きたマレーシア航空機撃墜事件で不利な立場に置かれたのはロシアで、これまで欧州に供給していた天然ガスを中国に供給するよう転換させられています。どちらかと言えば、中国とロシアを結びつける結果となっています。

ウクライナ問題をどう読むかがまずは一つの課題と思います。

 

■ウクライナ問題の検討

中でも犯人が不明なのがマレーシア航空機撃墜事件です。誰が仕掛けたのか検討してみます。

結果として追い詰められたのはロシアですので、ロシアが仕掛けたとは考え難いでしょう。では、中国かと言うと、中露が対立していればそうでしょうけれど、実際には、BRICS開発銀行でもシルクロード経済構想でも関係を深め、そもそもウクライナを巡って武器輸出の三角貿易などもあり敵対しているとは言えないでしょう。※三角関係の一例が、かつてロシアで設計されウクライナ軍に編入されて完成させる予定の空母が、結局未完のまま中国に安値で引き取られて中国軍の空母「遼寧」となったことなどでしょう。

(※中国が仕掛けることが全くない事ではないように思うのは、これより数ヶ月前に起きた同じマレーシア航空の失踪事件が有るためです。この飛行機にはマレーシアのクアラルンプールから中国北京に向かう多数の中国人が搭乗していました。本来なら中国政府は大騒ぎするのでしょうが、実際は割と静かです。ここでは一旦保留します。)

もう一つの可能性は、欧米諸国の関与です。

ウクライナはかねてからロシアとヨーロッパに挟まれた要衝で、一時はソ連の一員でもありました。ソ連崩壊で独立したものの2004年には親欧派政権(アメリカが介入したと見る向きも)、2010年親露派政権、2014年ウクライナのロシア併合により争乱状態となり再び親欧派政権となるなど常に東西間での振り子の様な状態でした。※ロシアからの欧州へのガス供給の途中にあるウクライナでは度々ロシアとのガスを巡る紛争を起こしていました。

結局、今回も切っ掛けはロシアによるクリミア併合でしょうけれど、その後の反ロシアの展開は欧米側の主導によるものでしょう。つまり上海協力機構の中心でもある2大国家、中国とロシアを牽制するために起こした工作だと考えられます。撃墜事件に対してアメリカは親露派の仕業であると盛んに喧伝しています(対してロシアは、別の犯人を知っているかのようなそぶりです)。

事実として欧米諸国によるロシアへの経済制裁があり、ロシアは中国との結びつきを強め、ロシア、中国による反米同盟がより鮮明になりつつあります。

この間中露は、BRICS 開発銀行、上海開発機構でも関係を強化し、反米の存在感を増しています。ウクライナ上空で何者かによって撃墜されたマレーシア航空は、オランダアムステルダムのスキポール空港からマレーシアクアラルンプールに向かう便で、乗客の殆どはオランダ人です。当然西欧諸国の怒りが沸騰するでしょうから、ユーラシアで結束する反欧米勢力の中心である中露を牽制するにはうってつけとなります。

<ウクライナ情勢> 欧米のロシアへの経済制裁はどんな影響があるの?

米欧のロシア制裁
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「西側」がロシアを制裁したのは、この3月にロシアがクリミア併合を宣言したことを端緒とします。その後ロシアが東ウクライナに義勇兵を送り込み、都市の占拠を続けたこと、また7月のマレーシア航空撃墜にロシア義勇兵がからんでいる可能性が強いことにより、対ロ制裁は数次にわたって強化されました。その内容は当初、ロシア政府・財界要人の入国禁止、及び彼らの在外資産の凍結が主でしたが、7月に米国が発表した追加制裁にはロシアのエネルギー関連案件及び大銀行への融資の禁止、エネルギー開発関連技術の供与の禁止、またEUが発表した追加制裁にはロシアでの投資案件に対する融資の禁止が含まれました。

EUはこれまで対ロ制裁を強化しろとの米国の圧力に抵抗してきましたが、撃墜されたマレーシア航空の乗客にオランダを初めとするEU諸国国民が多数いたことから、世論の対ロ反発が高まったのを受けたものです。

要するにロシアを封じ込めるため、マレーシア航空機撃墜事件を利用したと言えるでしょう。

 

重慶鉄道
重慶-ドイツ鉄道 画像はこちらから

シルクロード経済ベルトの実現体の一つである鉄道網が完成したようです。

中国重慶市とドイツ間に初の定期貨物列車 New Freight Train Line Links Chinese City of Chongqing to Germany

中国の鉄道専門紙『人民鉄道報』によると、今年7月末、重慶市の鉄道コンテナターミナルで電子製品を詰め込んだコンテナ41個を載せた貨物列車がドイツ・デュースブルグに向け出発した。途中、カザフスタン、ロシア、ポーランドを経由する。今年1月もドイツ行きの貨物列車が運転されたが、メーカーのチャーター便で、定期列車はこれが初めてだ。

現在の対欧貿易の大部分は、沿岸部の天津などを経由する海運で、沿海部の港からドイツのハンブルク港へは約38日を要する。しかし、鉄道だと半分で済むため、今後は鉄道利用による輸出が増加すると見られる。海のない重慶市が、欧州向け貨物の一大中継拠点になる可能性が出てきた。

重慶からの鉄道は、オランダ・ロッテルダムにも到達するようです。

[メモ] 渝新欧(重慶―新疆―欧州)鉄道開通でIT産業集積が進む重慶 2011/02/26

重慶から新疆ウィグル自治区、ロシアを経由してオランダのロッテルダムに抜ける貨物鉄道が開業したそうです。「新ユーラシア・ランド・ブリッジ」とも「渝新欧(重慶―新疆―欧州)鉄道」とも呼ばれる全長10,000kmの路線です。

 

前回のシルクロード経済構想の実現体の一つである鉄道が、既に開業していると言います。シルクロード経済構想は、「上海協力機構」としてユーラシアに展開する反米国家連合の表の顔でしかありません。このような状況で、今回のウクライナ問題は、やはり中露が展開するユーラシア反米連合をを牽制するものと考えられるように思います。

 

■まとめ~中国の意志~

中央アジアの割と小さな軍事同盟を新シルクロード経済構想にまで発展させた中国の意図は何なのでしょうか?そもそも、中国は今後の世界戦略をどの様に考えているのでしょうか?

 

①中国は東の太平洋ではなく、西のユーラシアに照準を絞り、ロシア、ドイツ、インドなどを含む同盟関係を構築しようとしている

②その母体となった上海協力機構にはモンゴル、インド、アフガニスタン、イラン、パキスタン、東南アジア諸国連合 (ASEAN) が加盟申請し、アフリカや南米諸国からもNATOに対抗できる勢力となる事を期待されている。一方米国やアフガニスタンのオブザーバー申請を拒否している。

③結果としてNATOやIMF,世銀といった米国主導の世界統治機構に対して二極化を生む可能性が高い。

 

これらの動きから中国は明らかに米国に替る覇権を目指していると考えられます。果たしてその背後に金貸しは居るのか?ということですが、

仮設として、「やはり居る」と考えた方がよいのではないでしょうか?

対立する双方に金を貸して儲けるのが金貸しの常套手段です。これまで米国に対してロシア、EUなどを「用意」してきましたが、今ひとつ盛り上がりに欠けます。※先進国は成熟しすぎていて金儲けがしづらくなっているということでしょう。

対して中国は13億人の巨大な発展途上国であり、まだまだ金貸しの期待に応えられそうです。先進国では金儲けがしづらいことの象徴が米国一極支配であると思います。先進国の中でも唯一世界の覇権を有し、経済だけでなく軍事力でも常に世界をリードし続ける米国は、既に衰退過程に入っているのかも知れません。各国の米国に対する嫌悪は日本が考える以上に強いも知れません。

そうした期待を背景に登場し得たのが、シルクロード経済構想やBRICS開発銀行などの中国世界戦略なのでしょう。

中国もそのことを承知して進めているのでしょうけれど、中国は元々英資本との親近性の高い国です。今でもそれなりにつきあっているでしょうけれど、「何時までも西欧金貸し追従ではない」と考えているようにも思われます(表だって反金貸し色が出てしまうとあっという間に命の危険にさらされるので慎重になっているのでしょう)。

多極化を進めたい金貸しと、米国に替る覇権を目指している中国共産党(更にはロシアのプーチン大統領)の「方法論」が一致した実現体がシルクロード経済構想=ユーラシア反米国家連合と考えられます。

 

問題は、金貸しに近く米国に替る覇権をも狙いつつある中国との同盟関係を、もう一つの超大国ロシアはどう考えているのか?

次回以降引き続き検討します。

 

 

 

List    投稿者 dairinin | 2014-11-11 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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