2008-09-21

証券のバブル化とその崩壊(1) バブルの形成

AGI%E6%A0%AA.jpg米政府は9月7日、経営が破綻した住宅公社(ファニーメイ・フレディマック)を管理下におき、21兆6000億円の優先株購入枠を設定し、経営状況に応じて公的資金を注入すると発表した。
米証券大手リーマン・ブラザーズは15日未明、連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を裁判所に申請すると発表した。
米政府・連邦準備理事会(FRB)は16日、米保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に最大850億ドル(約9兆円)のつなぎ融資を実施すると決めた。

サブプライムローン問題に端を発した米国の金融不安に、公的資金を活用して正常化をめざすということだが、

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米住宅公社が保有・保証する住宅ローン関連証券は5.3兆ドル(570兆円)にも上る。社債も1.6兆ドル(168兆円)発行している。米国債の発行残高は4.5兆ドルであることを考えれば、保有・保証する証券も社債も、半端な額ではない。
住宅ローン関連証券(MBS)の総額は12兆ドル(1300兆円)にも上り、株式価時価総額14兆ドルに迫る勢いである。この90年半ば以降急速に成長してきた証券化商品こそ、バブル形成の主役であり金融破綻問題の中心に位置する。

債権の証券化とは、(借り手がいる限り)無限大の融資が可能なシステムである。債権を証券化して調達した資金が次の融資の原資となって循環するからだ。
また、この証券は債権のキャッシュフロー(を生み出す資産のクオリティ)のみに依拠して、発行体の経営能力(生産力)とは無関係である。MBSの場合は住宅モーゲージローンを借りている人の返済能力と資産(担保)にのみ依拠している。
だから、住宅価格が上昇しつづけていれば、資産価値の上昇分が返済能力を補填することになる。この上昇局面ではサブプライムローンも成立可能だったわけだ。そのように需要を拡大させ続けることでさらに住宅価格を上昇させ、住宅モーゲージローンを拡大させてきた。
しかし、これだけなら住宅ローン関連証券の総額が12兆ドルにも拡大するわけがない。
バブル化の仕組みは再証券化にある。リスクにより格付けされたMBSを組み合わせてパッケージ化(再証券化)されたCDOによって、無数の組み合わせと無数のランクの(さまざまなリスクとリターンを持つ)証券の発行されることになる。
ここでは、もはや大元の資産(担保)価値など量るすべはない。格付けを信じる以外に手はないのである。キャッシュフローが正常に保たれる確率(=貸し倒れの確率)の計算だけを頼りに拡大を続け、バブルを膨らませていくことになる。
この金融工学という名の怪しげなリスク計算がマネーゲームを支える唯一の根拠だったのである。
しかし、このシステムを維持するための金融工学とは市場拡大(住宅価格の上昇)を前提とした確率計算であった可能性が極めて高い。住宅価格の下落局面にいたって、何のリスクをもヘッジすることが出来なくなったのだから。
そして、この怪しげな確率計算とそれによる格付けが、CDSという爆弾を仕込んでしまうことになる。
〜続く

List    投稿者 KANIKANI | 2008-09-21 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨10 Comments » 

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コメント10件

 ななし | 2009.01.25 10:28

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私も常々鎖国の可能性を考えてるんですが、問題となって来るのはやはり食料と天然資源ですよね。
それから在日米軍を含めた米国がそれを許さないと思いますね。
それが最大のネックになって来ると思います。
天然資源の一部は海底資源が利用可能になる技術革新があれば賄えるようになるでしょう。
リサイクルに関しては100%リサイクルするのは不可能でしょうね。
損耗分がどれくらいになるのかは専門家では無いので分かりませんが。
食料に関しては食生活の水準を落とす事、埋立てで耕作面積を増やす事である程度カバー出来そうな気もします。
農水省あたりの試算では3000万人を養うのが精いっぱいだと言う事ですが、それって江戸期の事ですよね。
農業技術もその頃よりは遥かに進んでおりますからね。
水産資源も養殖を大々的にやる事である程度カバー出来そうな気もします。
私の夢想では、技術の進歩と生活水準の切り下げで1億人程度は食って行けると予想してるんですが、甘いですかね〜。
食って行けると仮定しても、やっぱりネックとなるのは米国だと思いますね。
日本が鎖国するのは彼らの利益に反しますから。
戦争をしてでも開国させるんじゃないでしょうか?
これに抗う術は今のところ核武装しか無いと思われますが如何でしょうか?

 コスモス | 2009.01.25 16:04

ななしさん、いつもありがとうございます。
今回のシリーズは、共作になりますので皆さんのお考えがあろうかと思いますから、ここではあくまで私の考えということで御理解下さい。
たぶんこのシリーズで位置付けられた「鎖国」というのは、世界経済(特に貨幣)が混乱した際の貿易の停止、またはそれに近い状態に陥った場合の日本の対処の仕方とか可能性を探る、といった所に置いていると想定しています。まぁ、自然な流れで鎖国状態になっちゃたらどうする?ということでしょう。
もしかしたら、未曾有の不安が日本人にも降りかかるかも知れないのですが、日本人らしく気高く節度をもって対応しようよ、と(私は)云いたい訳です。僕らの可能性は無限にあるよと。本来の日本人の節度さえ再生すれば、どんな困難も乗り越えられると信じています。でも、どうにもならないこともあるかも知れないので、それは何で、その為にはどうする?ということも考えようと。
食料と資源に関しては、次回以降の記事を楽しみにすることとして(私もコメントしよう!)、食料と資源が今まで通り全て賄えるというのは楽観過ぎるでしょうが、我慢する所は我慢した上で生きていこうとすれば、それで充分耐えられる。苦しくなったら、みんな物を大事にするでしょうし、米と塩と醤油、味噌があれば生きていける日本人です。
「明日から日本は鎖国します!」という始まり方は出来ないでしょう。仰るように最大のネックはアメリカであり、アメリカ追従の日本のトップです。ちなみに私は積極的鎖国提案派ではなく、消極的鎖国賛成派(結果として鎖国状態になることを否定しない=チャンスと見る)立場です。
積極的に鎖国に向かう場合は、アメリカとの決別を要しますが、その政治的基盤は全く整っておらず(芽も無い)、やろうとしたら日米安保を解消した上で、軍備を持たない国家を国際的に成立させるか、アメリカ以外に頼るか、軍備を持つかの選択肢しかないでしょう。軍備を持つという意味で一番手っ取り早いのが保核だと考えられます。ちなみに日本では技術的には十分可能ですので、内部的な壁は国民の相互理解と政治的判断です。それが出来るか?と云う問題だと捉えています。
アメリカは明らかに反対するでしょう。敵を増やしてしまう、又は奴隷を手放してしまうという感覚でしょうから・・・しかし、アメリカは今後衰退していく事を見据えて、あらゆる準備をしておく必要があるかも知れません。そこで重要なのは、今までの枠組みを超えて、日本人の意志をどの様に統合していくのかということに尽きます(と、考えています)。

 s.tanaka | 2009.01.26 0:13

日本にはレアメタルの資源産出国に匹敵する「都市鉱山」があるというのは聞いていましたが、鉄鋼もかなりのものなのですね。食料などの消耗品以外は、これまでの経済活動で蓄積してきたストックをとことん探し出せば、相当の自立ができそうな感じがしてきました。
・・・・ところで、黒木メイサはこれからも毎回出てくるんですか?

 コスモス | 2009.01.26 10:16

管理人さん
>・・・・ところで、黒木メイサはこれからも毎回出てくるんですか?
・  ・ ・ ・ ・ ・・・・わ か り ま せ ん・・・・ ・ ・ ・

 まかと | 2009.05.08 19:01

私は鎖国派です、でも鎖国の最中に国力が無くなるのでは意味無いと思います。
ちょっと考えてみると
 もしも火星に今の地球と同じレベルの文明があり、貿易をしたいと申し入れが有りました。得る物も有れば失う物もありますし、相手も思惑も有ります。
実は鎖国するより Tough negotiatorが必要なのは今の日本だったりして
 

 コスモス | 2009.05.09 10:25

まかとさん
正直、驚いているんですが、鎖国を指向している人って多いんですね。
その辺でなんとなく感じるのは、結構みんな日本のことを考えているんだということ(素晴らしい!)と、日本的(≒人間本来の姿)なものと他者(≒それ以外のこと)のギャップが顕在化しつつあるということと、そしてそのギャップを埋める答えが見えないということなど・・・
「鎖国」はそのわかりやすい答えのひとつなんでしょうかね?
私も日本にTough negotiatorが必要だと思いますが、問題は、Tough negotiationのためのTheoryが不在なことでしょう。言ってみれば闘う為の武器が無いみたいな状況。御都合主義の交渉は諸外国はお手のもので、世界の歴史はそれで作られているといっても過言ではない(ある時は戦争という形で・・・)
近代に作られた理念が悉く瓦解していく過程が今ですから、new Theoryの生みの苦しみみたいな状況でしょうか・・・・

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