2018-12-27

米中貿易戦争、焦点はハイテク分野「中国製造2025」

resize今年9月に投稿した、「米中貿易戦争、現時点ではアメリカが優勢か」では、アメリカがやや有利かと分析しましたが、その後の状況を調べてみました。

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お互いに、輸入に関する関税を引き上げて、消耗戦を繰り広げるかと思われた、米中貿易戦争ですが、12月1日に開かれた米中首脳会談で、90日間の停止期間を設けて協議を行う事が決定。農産物や自動車などの貿易については、互いに妥協に至る可能性が見えてきました。

一方で、対立がより明確になってきたのがハイテク分野です。12月1日の首脳会談で協議を行っている裏側で、アメリカはカナダに中国の2大ハイテク企業の一つホァーウェイの孟CFO逮捕を要請します。ハイテク分野は習近平主席が推進する「中国製造2025」の中心的分野であり、アメリカが知的財産権の保護で中国を問題視している中心ポイントでもあります。

中国の2大ハイテク企業のうち、国有企業で通信機器大手のZTE(中興通訊)はアメリカのクァルコムから半導体のほとんどを輸入しており、アメリカが輸出制限をすることで大きな打撃を与えることが出来ました。

しかし、ホァーウェイはクァルコムに勝るとも劣らない半導体製造の子会社を持っており、アメリカが輸出制限をしても影響を与えることはできませんでした。ホァーウェイのCFOを逮捕は、アメリカが中国に対して、どんな手を使っても「中国製造2025」を妨害すると宣戦布告したのに等しい行為と思われます。孟CFOは12月13日に保釈されましたが、その後もカナダ政府の厳しい監視下に置かれているそうです。

また、トランプ大統領は、中国との貿易正常化に向けた交渉を開始する一方で12月27日に安全保障上の重大な脅威となる恐れのある海外メーカーの通信機器の使用を禁じる大統領令を来年1月にも発することを検討していると報じており、中国の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の2社を米市場から閉め出すことを目論んでいるようです。

ハイテク分野、「中国製造2025」を巡る争いは、さらに激化しそうな状況です。

 

■習近平の「自力更生」は「中国製造2025」を達成することを指す2018年10月24日

習近平が最近よく言う「自力更生」は、決して文革時の毛沢東返りではなく、「中国製造2025」によりコア技術の自給自足達成を指している。

いまわれわれは国家戦略「中国製造2025」を推進しており、改革開放40周年を迎えようとしている。ある国が、わが国に高関税をかけて、わが国のハイテク製品輸出に徹底的な打撃を与えようとしている。どこまでもつきまとう執拗な封鎖を通して、われわれは「困難から抜け出すには、ただ一つ、自力更生以外にない」ということを知らなければならない!

ここにある「ある国」とは、言うまでもなく「アメリカ」のことである。アメリカにトランプ大統領が現れて、中国の国家戦略「中国製造2025」が持っている恐るべき狙いを見抜いてしまったものだから、トランプは猛然と「中国製造2025」を完遂させまいと中国への攻撃を始めた。武力攻撃をするわけにはいかないので、「貿易」という手段を使って中国の国家戦略を潰しにかかっているわけだ。

■人民解放軍は、戦術を従来の国防重視から攻撃型へ転換する2018年11月16日

公式SNSを通じて明らかにした見解で人民解放軍は、地上軍と航空戦力を統合し、先制攻撃で敵側の動きを抑える必要性を強調した。この方針は、習近平(シー・チンピン)国家主席が、世界最大の兵力を誇る人民解放軍のハードウエアと戦略構造の見直しを図るなかで示された。

さらに、ドローン技術を軍事戦略に取り入れることの必要性を強調し、中国の支配権拡大によってアジア太平洋地域に279カ所の基地を維持する米軍との衝突がますます現実味を帯びていると指摘する。

■トランプ米大統領、対中関税25%に引き上げる意向2018年11月28日

トランプ大統領は今週末、アルゼンチンで開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて中国の習近平国家主席と会談する見通しだ。大統領は、中国との協議で合意できなければ、同国からの残り全ての輸入品についても関税発動に踏み切ると発言。「合意しなければ、追加で2670億ドル分」を関税の対象にすると述べ、関税率は10%か25%とする考えを示した。

■中国国家主席、市場開放や知財保護を強調 スペイン議会で演説2018年11月29日

習主席は2日間の日程で首都マドリードを訪問。議会上院で行った演説で「中国は対外的に門戸を一段と開放し、投資の分野で市場アクセスを改善すると同時に、知的財産権の保護に向けた一段の取り組みを行う」と述べた。このほか、中国が向こう5年間に10兆ドルを相当の製品を輸入する方針であることも明らかにした。

スペインと中国は「世界貿易機関(WTO)ルールに基づいた開放的で均衡の取れた世界経済」を支持するとし、「保護主義と一国主義への対抗」を再確認するとしている。

■米中首脳、追加関税猶予で合意 90日間の通商協議へ2018年12月3日

ブエノスアイレスで1日開催された首脳会談で、トランプ米大統領と習近平・中国国家主席は新たな関税を一時的に見送り、貿易戦争を悪化させないことで合意した。米ホワイトハウスは声明を発表し、2000億ドル相当の中国からの輸入品に対する関税は2019年に入っても10%に据え置き、25%への引き上げを「現時点で」見送る方針を明らかにした。

声明によると、中国は貿易不均衡解消に向け米国から「相当量の」農産物、エネルギー、工業製品などを輸入することで合意。農産物の購入は「直ちに」開始する。技術移転の強要や知的財産権保護、非関税障壁、サイバー攻撃、サービスや農業分野について、構造改革協議を速やかに開始することでも合意した。これらについて今後90日で合意できなければ、対中関税は25%に引き上げられる。

■クァルコムの買収計画に対する中国の寛容さ、今後の協力を示す兆し=NEC委員長2018年12月4日

米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は3日、トランプ米大統領が中国の習近平国家主席との首脳会議において、米半導体大手クァルコムによるオランダの同業NXPセミコンダクターズの買収計画の問題を取り上げたと述べた。カドロー委員長は、同買収案件に関する習主席の寛容さは企業合併を含む多様な問題に対する一段の協力を示す兆しとの見方を示した。

■Hua-wei(ホァーウェイ)孟CFO逮捕の背景に「中国製造2025」2018年12月7日

アメリカ当局の要請で、Hua-wei創業者の娘がカナダで逮捕された。Hua-weiの子会社ハイシリコンはアメリカ大手半導体メーカー・クァルコムと鎬を削っている。「中国製造2025」を巡る米中ハイテク戦争が火を噴き始めた。

ハイシリコンは2004年にホァーウェイから独立して、専ら半導体の研究開発に専念する半導体メーカーである。このハイシリコン、今ではアメリカ最大手で世界のトップでもある半導体メーカー、クァルコムと半導体の研究開発において互角に競争している。

中国の国有企業で通信機器大手のZTE(中興通訊)のハイテク製品は、キーパーツとなる半導体をほとんど全てクァルコムから輸入していた。だから今年8月、米議会が国防権限法によりZTEとホァーウェイに関して取引を禁止したことにより、ZTEは半導体の購入ルートを断たれて、いきなり経営不振に追いやられた。結果、習近平国家主席は、日本に秋波を送るしかないところに追い込まれたほどである。

ホァーウェイの場合は、どんなにアメリカが取引を禁止しても、他社、特にアメリカから半導体を輸入していないので、少しも影響を受けないのである

だからアメリカはホァーウェイの経営を潰そうと、このたびカナダ司法当局に依頼して創業者(任正非CEO)の娘である孟晩舟CFO(最高財務責任者)を逮捕させたものと考えられる。

一見、「休戦」のように見える米中貿易摩擦だが、米中の対立の根本は「中国製造2025」にあるので、関税のパーセンテージなどを見て分析しても、実は仕方がない。

■インタビュー:中国、大量の米国産大豆購入 自動車関税引き下げへ=米大統領2018年12月12日

トランプ米大統領は11日、中国は「膨大な量」の米国産大豆を購入していると述べた。また、中国が近く米国車への関税を引き下げるとの見方を示した。トランプ氏は「中国が膨大な量の大豆を購入しているときょう聞いた。購入し始めたばかりだ」と語った。大統領はまた、中国が近く米国車への関税を現行の40%から15%に引き下げるとの見方を示した。

トランプ大統領は中国との通商協議について、すでに電話会談で行われているとし、「おそらく再び会談する。両国の高官が会談するかもしれない」と述べた。「必要なら習近平国家主席と再会談する。習氏のことはとても好きだし、非常に気が合う」とも語った。

■ファーウェイの副会長が保釈…逮捕劇の裏にはアメリカと中国の「5G」覇権争い?2018年12月13日

中国通信機器大手・ファーウェイの副会長・孟晩舟容疑者が12日保釈された。保釈金は日本円で約8億5000万円。アメリカと中国の間には、以前から通信機器を巡る確執があった。今年8月、アメリカ政府はファーウェイなど中国の通信企業2社の製品をアメリカの政府機関が使用することを禁じた。これを受けて日本政府も10日、菅官房長官が「悪意ある機能が組み込まれた機器を調達しないようにすることは極めて重要」とし、ファーウェイはじめ2つの企業を機密漏えいやサイバーテロを防ぐ狙いで、事実上排除することとなった。

■アメリカの産業スパイ事件、9割に中国が関与2018年12月13日

米司法省が過去7年間で摘発した経済スパイ事件の90%に中国が関与していたことが、12月12日に同省が米上院情報委員会に提出した報告書で明らかになった。中国政府が企業秘密の窃盗を直接指示したことを必ず明らかにできるとは限らないが、実際にあった事例はほぼ例外なく中国の経済政策を利するものだった、という。さらに、中国に知的財産権の侵害を取り締まる法律がないことや米当局の捜査に対する非協力的な態度、中国経済における国有企業の肥大化が、中国の国家ぐるみの犯罪を助長しているとした。

■中国、米国車関税を3カ月間停止 通商交渉の加速化期待2018年12月15日

中国財政省は14日、米国製自動車および自動車部品への追加関税適用を来年1月から3カ月間停止すると発表した。同時に中国と米国がすべての追加関税撤廃に向け交渉を加速させるよう望むと表明した。

トランプ米大統領は中国の関税停止の動きを歓迎。「中国は米国との通商戦争が原因で経済成長が鈍化していることを明らかにした。そして対米関税の停止を発表した」とし、「米国はうまくやっている。中国は規模が大きく、かつ極めて包括的なディール(取引)を望んでいる。近く実現する可能性がある!」とツイートした。

■米、中国製品2000億ドル分への追加関税を正式に延期2018年12月17日

米通商代表部(USTR)は14日、2000億ドル相当の中国製品に対する追加関税適用日を2019年1月1日から同年3月2日に正式に延期した。先の米中首脳会談で合意された90日の猶予期間に貿易や知的財産権保護に関する協議を推進する。中国ハイテク製品500億ドル分を対象に既に導入されている25%の輸入関税は影響を受けない。

USTRは、習近平・中国国家主席とトランプ米大統領の1日の会談を受けて両国政府が、米通商法301条に基づく調査で明らかになった中国の「活動や政策、慣行の排除を達成するために」新たな協議に着手したことを延期の理由に挙げた。

■習氏、改革開放40周年記念大会で演説 中国脅威論の打ち消し狙う2018年12月19日

中国の習近平国家主席は18日、改革開放政策の40周年記念大会での演説で「中国の発展はいかなる国の脅威にもならず、永遠に覇権を唱えない」と主張し、平和的な台頭をアピールした。習氏は演説で「自分の考えを他人に押し付け、内政に干渉することに反対する」と述べ、中国の少数民族政策を非難する米国などを批判。一方で中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」が相手国に過剰債務を負わせているとの批判を念頭に「他国の利益を犠牲にして自国を発展させることは決して行わない」と訴えた。

また「世界一流の軍隊の建設」にも言及したが、目的の一つに「世界の平和と安定を守るためだ」と付け加えた。

■米USTR次席代表率いる代表団、1月7日の週に北京訪問2018年12月27日

米通商代表部(USTR)のジェフリー・ゲリッシュ次席代表が率いる代表団が来年1月7日の週に北京を訪問し、中国当局者と協議を行う。米中当局者はここ数週間に電話で協議を行っているが、直接会って協議するのは12月1日にアルゼンチンで開いた首脳会談以来となる。トランプ大統領と習近平国家主席は同会談で、貿易戦争を悪化させないことで合意。米国が関税引き上げを見送る間に通商協議を行うことでも一致した。

■ファーウェイなどの機器禁止=米、1月にも大統領令―報道2018年12月27日

トランプ米大統領が米国企業に対し、安全保障上の重大な脅威となる恐れのある海外メーカーの通信機器の使用を禁じる大統領令を来年1月にも発することを検討していると報じた。事実上、中国の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の2社を米市場から閉め出すことが狙いだという。

List    投稿者 dairinin | 2018-12-27 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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