2021-03-30

スペインのカタルーニャ独立問題:州議会選挙は独立派勝利、暴動も多発し状況は緊迫

4200287_168_508_3014_2048_1000x541_80_0_0_6adb9cef94ec7a8009bb42a0f7fcbcea前回の投稿「スペインのカタルーニャ独立問題(前国王が国外逃亡、スペイン軍は軍事蜂起も検討)」では、前国王の国外逃亡もあり、国の分裂を恐れるスペイン軍が、国王の支持を得て軍事蜂起することを検討するなど、かなり危機的な状況にあることをお伝えしました。その後の状況を調べてみました。

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まず、注目されていた2月14日のカタルーニャ州議会選挙ですが、独立派が過半数を獲得する結果となりました。独立派を阻止するために中央政府を率いる社会党(PSOE)系の政党・カタルーニャ社会党(PSC)は、昨年末までコロナ危機対応の陣頭指揮を取ってきたイッラ前保険相を州首相候補に立て、最多票を獲得することに成功しましたが、政権を取ることは難しく、独立派による連立政権となる可能性が高そうです。トラ同州前首相が公職から追放されて以降、暫定州首相を務めている穏健独立派ERC幹部のアラゴネス氏が同州首相の座に就くとの臆測が広がっています。ERCは、中央政府で政権を担う社会党に協力しており、独立にあたっても対話路線を打ち出していますので、独立運動が過激化するとは思われていませんでした。

しかし、その後状況が変わってきます。反政府的なラッパーとして知られるパブロ・ハセルの逮捕を受けて、バルセロナから全国に暴動が広がりました。表面上はラップ歌手パブロ・ハセルの釈放を求めると言う名目の元に続いている抗議運動ですが、これの参加者には主義主張に関係なく暴動に参加することを意図する者も多く、カタルーニャを中心に幾つかの街で連夜、暴動が続いているようです。言語学者のジョルディ・アマット氏は、「若者の10人に4人が無職」とした上で、暴徒化の背景には教育や経済格差の広がりが影響していると分析しました。新型コロナウイルス感染症によるロックダウンで、彼らの生活は厳しくなり、不満は蓄積される一方で、今回の騒動は氷山の一角にすぎないとも言われています。

3月8日には「国際女性デー」のデモ行進が、バルセロナでは暴動に発展しており、蓄積されている不満はかなり大きなもののようです。3月9日にはEU議会でプチデモン前州知事をはじめとする独立推進派の不逮捕特権を剥奪することが決定されており、もし、プチデモン前州知事が逮捕されるようなことがあれば、独立運動に一気に火が付き、より過激な暴動に発展する可能性もありそうです。

■カタルーニャの独立運動の行方は?2021 年2 月16 日

スペインからの独立問題が燻るカタルーニャ州の議会選挙が14日に行われ、穏健独立派のカタルーニャ共和主義左翼(ERC)、2014年の住民投票を断行した罪で国外逃亡中のプチデモン元州首相が率いるジュンツ・パル・カタルーニャ(JxCat)、強硬独立派の人民統一候補(CUP)の独立派3党が過半数の議席を獲得した。ジュンツ・パル・カタルーニャから分党した独立派のカタルーニャ欧州民主主義党(PDeCAT)は議席獲得に必要な3%に届かなったが、同党を含めて独立派の得票率が50%を上回ったのは同州議会選挙史上で初めてのこと。

中央政府を率いる社会党(PSOE)系の政党・カタルーニャ社会党(PSC)は、昨年末までコロナ危機対応の陣頭指揮を取ってきたイッラ前保険相を州首相候補に立て、最多票を獲得することに成功。独立派のERCなどと左派の連立政権を発足することに意欲を示しているものの、議席構成を考えると独立派の3党が連立政権を発足する可能性が高い。

独立派の州政府が誕生すれば、議席・得票率ともに独立派が50%を超えた選挙結果を受け、スペイン政府に対して改めてカタルーニャの独立を要求するとみられる。中央政府でサンチェス首相が率いる社会党の連立政権誕生に協力した穏健独立派のERCが3党の中で最多票・最多議席を持つ。ERC主導のカタルーニャ州政府が誕生すれば、スペイン政府との対話を通じた独立を模索する動きが継続しよう。

ただ、1978年に制定されたスペイン憲法は、州政府の自治を認めるものの、スペイン国家の永続的な一体性を保障している。カタルーニャが法的拘束力のある独立の是非を問う住民投票を行うには、スペイン議会による憲法改正手続きが必要で、現在の議会構成やスペイン全体の世論の下でそうした支持が得られる見込みは全くない。独立問題の解決に向けた協議再開、同州への更なる権限移譲、復興基金の重点配分、2017年の独立投票断行で罪を問われた政治家の恩赦などを要求していくことが予想される。

ただ、ジュンツ・パル・カタルーニャやCUPが連立参加の条件に独立投票の実施を要求するなど、独立問題での強硬姿勢を貫けば、スペイン政府との協議が暗礁に乗り上げる恐れが高まる。5月に予定されるスコットランドの議会選挙後に英国からの独立機運が高まる場合、カタルーニャの独立運動が勢いを増す懸念もある。

■カタルーニャ独立派が過半数 州議会選、現与党が最多議席

スペイン北東部カタルーニャ自治州で14日、州議会(定数135)選挙が行われ、独立派が過半数を維持した。この結果を受け、ERCとジュンツ・パル・カタルーニャが連立を組み、ERC幹部のアラゴネス氏が同州首相の座に就くとの臆測が広がっている。同氏は、20年9月にトラ同州前首相が公職から追放されて以降、暫定州首相を務めている。

アラゴネス氏は今回の結果について、カタルーニャの民意が示されたと指摘。「独立を巡る住民投票の実施について協議する時が来た」として中央政府に交渉の席に着くことを呼び掛けた。

■カタルーニャ州議会選挙、独立派が過半数を維持2021年2月17日

独立派では、左派のカタルーニャ共和左派(ERC)が33議席、中道右派のカタルーニャ連合(JxC)が32議席、急進左派の「民衆団結代表の党」(CUP)が9議席を獲得し、合計74議席と過半数の68を上回った。独立派政党は州内の地方部の固定票が多いため、得票率の合計は48.0%と半分を割り込んだ。

今回はわずか1議席ながらJxCを上回ったERCが他の独立派政党やポデモスの閣内外協力を得て政権を樹立する可能性が高いとされている。ERCは下院でキャスティングボートを握り、同じ左派のサンチェス政権の発足や予算案などの重要場面で協力しつつ、カタルーニャに有利な譲歩を引き出すという対話重視の現実路線に転じている。独立についても、現在は住民投票の合法的実施を通じて州民の広い支持を得ることが必要と考えている。新政権は最短の場合、3月下旬に発足する。

■スペイン テロ称賛で有罪のラッパーを支持する抗議デモが暴動にエスカレート2021年2月19日

スペイン各地で、今週逮捕され懲役9か月を宣告されたスペインのラッパー、パブロ・ハセル氏(33)を支持する抗議活動が3日連続で行われている。ハセル氏は今月12日に出頭予定だったものの、出頭を拒み、15日にカタルーニャ州のリェイダ大学内に50人近くの支持者とともに立てこもった。16日、同氏は逮捕された。ハセル氏の逮捕は、マドリード、バルセロナ、ジローナ、リェイダ、グラナダなどスペイン各地で抗議デモや暴動を引き起こした。16日から始まった抗議デモでは70人以上が逮捕され、警察官を含めて120人以上が負傷した。過激派はバルセロナのテトゥアン広場で抗議デモを行い、近隣の通りで暴動を起こした。

さらに、抗議デモはバレンシアで暴動にエスカレートし、そこで警察は警棒を用いたと伝えられている。少なくとも1人が負傷し、8人が逮捕された。マドリードでは、暴動の際の逮捕者を審理している裁判所に若者のグループが一日中押し寄せた。17日に19人が逮捕され、18日にはそのうち13人が釈放された。18日、スペインの左翼系政党による選挙連合「ウニダス・ポデモス」は、司法省にハセル氏を赦免するよう訴えた。

2015年、ハセル氏は過激な左翼テロを称賛したとして執行猶予付きの懲役2年刑を宣告された。2018年には再び求刑された。裁判所は、ツイッターでの64件の投稿やYouTubeに投稿した歌の中で、テロリズム(主に極左過激組織「10月1日反ファシスト抵抗グループ(GRAPO)」)を称賛し、王室や国家機関に対する誹謗中傷を含めた発言があったとの判決を下した。

■バルセロナ、6夜連続で暴動2021年2月22日

表面上はラップ歌手パブロ・ハセルの釈放を求めると言う名目の元に続いている抗議運動だが、これの参加者には主義主張に関係なく暴動に参加することを意図する者も多く、カタルーニャを中心に幾つかの街で連夜、暴動が続いている。バルセロナ市では昨夜も、夕刻に暴力を伴わない抗議デモとして始まったが、時間の経過と共に、警官隊に対し石や爆竹を投げる者、道標や信号機を破壊する者、商店のガラスを割り店内に侵入し略奪を始める者が見られ、再び大規模な暴動へと発展して行った。昨夜の暴動ではバルセロナ市だけで逮捕者109名、そして警官隊の中に83名の負傷者が出た模様。

■「国際女性デー」のデモ行進、バルセロナで暴動に2021年3月8日

3月8日は「国際女性デー」として世界各国で様々な催しが予定されているが、新型コロナ危機が続く今年はこれらの開催にも大きな影響が予想される。スペインでは昨年3月、すでにイタリアを中心にEU諸国でも感染拡大が始まっていたにも関わらず、国際女性デーの大規模デモ開催を容認したことにより、その直後から一気に爆発的感染拡大が始まったことはまだ記憶に新しい。今年は同じ失敗を繰り返さないようにと、全州でデモを始め全ての集会について各州行政が定める規制内での開催となるが、最も大規模な集会になると予測される首都マドリッドでは禁止令が出され、女性団体を中心に中央政府、マドリッド州行政、そして禁止令の確認判決を下した裁判所に対する抗議の声が挙がっている。

バルセロナでは本日の国際女性デーに先立ち、日曜日であった昨日の夕刻から、およそ2000人の参加による大規模デモが行われたが、夜になって一部のグループによる暴動へと発展し、商店や銀行、医院などがその破壊行為の被害を受け、またその様子を取材しようとしていた報道陣等への阻止行為、脅迫などもあった模様。尚、これら暴力行為に走るグループは大規模なデモが行われる際、これを利用して暴れようとする集団で、デモの目的、主義主張とは無関係である場合が多い。

■欧州議会、カタルーニャ元首相ら免責剥奪 独立運動で手配中2021年3月9日

欧州連合(EU)欧州議会は9日、スペイン北東部カタルーニャ自治州の独立運動をめぐり国際手配されているプチデモン元州首相ら3議員の免責特権剥奪を賛成多数で採択したと発表した。免責特権を失うのは、ベルギーに逃亡中のプチデモン氏と元州閣僚、英スコットランドにとどまる別の元州閣僚の3人。

■コロナで蓄積された不満 ラッパー逮捕で暴動に至ったバルセロナ2021年3月26日

スペインの王室や警察への批判を続けるラッパー歌手、パブロ・ハセル氏(33歳)が2月16日に逮捕されたことを受け、同国内で解放を求める抗議デモが連日行われた。第2の都市バルセロナでは、若者のデモが暴徒化し、銀行や商店が破壊や強奪の被害に遭った。

サンチェス首相は「スペインは確立された民主主義国家だ。暴力は許し難い」と非難。カタルーニャ州のアラゴネス次期首相は「ハセルの解放を願う人たちと、強奪のためにデモを行う人々は無関係だ」との区別を明確にした。

言語学者のジョルディ・アマット氏は、地元紙バングアルディア紙への寄稿文で「若者の10人に4人が無職」とした上で、暴徒化の背景には教育や経済格差の広がりが影響していると分析した。新型コロナウイルス感染症によるロックダウンで、彼らの生活は厳しくなり、不満は蓄積される一方だ。今回の騒動は氷山の一角にすぎないだろう。

List    投稿者 dairinin | 2021-03-30 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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