2022-07-22

米ドル離れ⇒新興国・途上国による新しい国際経済圏の構築へ

写真はこちらからお借りしました。

今年の2月から欧米諸国主導によるロシアへの経済制裁が発動されている。外貨準備凍結などの強硬措置がドル離れを加速させることが予測されたが、現実のものとなってきている。とりわけ“非G7”である多くの国々が、従来のドル支配体制に代わる新しい経済圏を構築する動きを取り始めている。

注目すべき点は多々あるが、大きくはG7に代わる勢力の台頭、ドル以外での決済の増大が、新しい経済圏確立への基盤を確かなものにしつつある。

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(1)BRICS陣営の拡大
6/24には、BRICS首脳拡大会議が開催され、BRICS(中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカ)以外の13ヵ国(アルジェリア、アルゼンチン、エジプト、インドネシア、イラン、カザフスタン、セネガル、ウズベキスタン、カンボジア、エチオピア、フィジー、マレーシア、タイ)が参加した。
そのうちイラン、アルゼンチンがBRICSへの正式加盟を申請した。

また、BRICS首脳拡大会議で、中国の習近平国家主席は、“一部の国”による利己的な軍事同盟拡大や一方的な他国への制裁等による覇権維持に疑義を提示し、“一部の国”以外の多くの新興国、途上国が協力する経済的プラットフォーム構築を提唱している。

ロシアが提唱する「新世界G8」は、“旧世界G7”が一方的な経済措置により秩序を崩壊させること、すでに新世界G8のGDPはG7のそれを上回っていることから、新しい経済圏の構築を実現する牽引役となりうると判断している。
※新世界G8:中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、トルコ、メキシコ、イラン
※G7:アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・日本・カナダ・イタリア

(2)米ドル以外での国際貿易決済の増大
ロシアをSWIFTからの排除するなどの経済制裁は、“ロシア特需”を生み出しており、ドル支配からの脱却を志向していた諸国にとっては、大きなチャンスが到来している。
この6月には、インドのセメント大手がロシアから石炭を輸入して人民元で決済する動きを見せている。
また、経済制裁が発動されたのは2月であったが、その直後ともいえる3月にサウジアラビアは、「原油輸出を人民元で決済」する構想を示唆している。
これまでの原油取引のほとんどはドル決済でした(≒ドルは石油本位制)が、ここが崩れると諸国がドルを使用する必然性は大きく低下する。

【参考】ロシアが「新世界G8」を提唱_日本人には見えてない世界
【参考】習近平が発したシグナル「BRICS陣営かG7陣営か」

 

日本国内でマスメディアを通じて流されるニュースを見ていると、対ロシア経済制裁の正当性・有効性が喧伝されているが、世界においては偏った見方と言える。

ロシアへの経済制裁に同意・実行しているのは、国連加盟国193ヶ国のうち48国(約25%)であり、世界の人口から見ると15%に過ぎない。

世界の大多数の国は、ロシアという大規模な市場かつ資源国が、従来のドル支配経済システムから外されたことを契機に、新興国・途上国が新しい経済システムを構築する方向へ歩み始めた。
もちろん、すぐに一枚岩とはならないかもしれないが、“旧秩序”へ逆行することはないだろう。

日本がこのまま欧米諸国に追従していては、“旧G7(≒利己的国家)”のレッテルを貼られ、取り残される日が近いうちに来る。
民間企業では、諸外国のデジタル通貨システムの構築に協力するなどの動きは起きている。
今一度、自分たちの頭で、これから必要な経済システムの在り方を考え、行動する時機に来ているのではないだろうか。

by 小石丸

List    投稿者 nisi-hid | 2022-07-22 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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