2007-11-22

安全弁ではなく、不安増幅装置。米・政府系住宅金融会社の損失拡大

米国の住宅バブルの崩壊が、欧米の金融不安を高めているが、米国では、2つの政府系住宅金融会社にまで、損失の波が押し寄せている。

米国には二つの政府系住宅金融会社がある。

一つは、ファニーメイ(Fannie Mae)である。

Fannie Mae[ファニーメイ]
FNMA(Federal National Mortgage Association)
連邦住宅抵当公庫
連邦住宅抵当公庫。GSEの一機関である。
(Leonrosa注:GSEとは、Government Sponsored Enterprisesのことで、政府系特殊法人)
民間金融機関からローン債権を買取り、証券化市場で住宅ローン担保証券を発行する業務などをおこなっている。住宅ローンの流通市場を整備・育成し、米国市民が容易に住宅取得することを目的としている。1938年に米国の法律に基づいて設立された政府系金融機関である。1968年に民営化され、1970年に株式がニューヨーク証券取引所に上場した。近年、積極的な資金提供を通して住宅ローン市場におけるシェアを拡大させている。フレディマックとは、競合関係にあるが、役目は基本的には同じであるとされている。
ファニーメイは、民間金融機関から直接住宅ローン債権を買い取り、それをもとにして単純なパススルー証券や、パススルー証券を裏付け証券として発行されるモーゲージ証券の発行・保証を行っている。ジニーメイのように、米国連邦政府の公的保証は受けていないが、政府機関債として米国国債に次ぐ、信用力を保持している。

リンク

もう一つは、フレディマック(Freddie Mac)である。

Freddie Mac[フレディマック]
FHLMC(Federal Home Loan Mortgage Corporation)
連邦住宅金融抵当金庫
連邦住宅金融抵当金庫。愛称をFreddie Mac(フレディマック)と呼ぶ。GSEの一機関である。
住宅ローン市場に安定的に資金を供給するために、米国連邦議会の公認のもと1970年に、ファニーメイがモーゲージ市場で十分カバーしていなかった部分に資金を供給するために設立された政府系金融機関。
ファニーメイとは競合関係にあるが、役目は基本的には同じであるとされている。政府出資は受けておらず、株式がニューヨーク証券取引所とパシフィック証券取引所に上場されている民間会社である。
GSEとされるのは、政府による住宅取得促進政策の一部を担うべく、連邦議会により設立されていることから、住宅都市開発庁と連邦住宅事業監督局の2つの監督官庁が存在し、また公共的な目的が記された定款は、連邦議会による承認を必要とするなど、通常の民間企業とは性格が異なるからである。
フレディマックは、民間金融機関から直接住宅ローン債権を買い取り、それをもとにして、パススルー証券の発行・保証を行っている。ジニーメイのように、米国連邦政府の公的保証は受けていないが、政府機関債として米国国債に次ぐ、信用力を保持している。

リンク

日本の住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)とは違って、民間企業として、NY証券取引所に上場していて、住宅ローン資金は、起債と民間からの借入によっている。

二つの政府系住宅金融会社は、信用力の高い住宅購入者に、住宅ローン(プライムローン)を提供しているので、サブプライムローン問題とは関係がないと見られていた。(8月段階では、サブプライムの破綻を、ファニーメイとフレディマックで救済する案も噂されていた。)

しかし、プライムローンでの破綻も、サブプライム同様に増大していて、二つの政府系金融会社の業績を直撃している。

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米フレディマックの第3四半期は赤字幅拡大、貸倒引当金を積み増し

[ワシントン 20日 ロイター] 連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が20日発表した第3・四半期決算は、赤字が拡大。住宅価格の下落や信用収縮を受けて、住宅ローンのデフォルト(債務不履行)が増加した。

 純損失は20億ドル(1株当たり3.29ドル)となった。前年同期の損失は7億1500万ドル(同1.17ドル)。市場予想平均は1株損失が2.16ドルだった。

 決算発表後、同社の株価は23%安と11年ぶりの安値に下落した。

 第3・四半期には純資産のフェアバリュー(公正価格)が約81億ドル減少した。住宅差し押さえの増加に伴い12億ドルのクレジット損失引当金を計上したほか、住宅ローン支払い保証手数料を引き上げたことを明らかにした。

 損失拡大を受け、フレディマックは米連邦住宅公社監督局(OFHEO)が求める資本基準を確実に満たすため、資本増強を迫られるている。同社は「非常に早期の」資本拡大について調査を進める目的で、ゴールドマン・サックスとリーマン・ブラザーズと契約したことを明らかにした。

 また、第4・四半期配当を半分に減らすことを検討しているとした。

フレディマックの株価推移を見ると、10月初めまでは、60〜65ドルの水準だったが、10月以降値下がりし、21日には、25ドルにまで急落した。

Freddie%20Mac.gif

ファニーメイもほぼ同様の推移。8月のサブプライム不安の第一波に際しては、値上がりしたが、10月以降値下がりし、21日には、30ドルにまで下落。

Fannie%20Mae.gif

住宅バブルの崩壊、住宅ローン資金の循環不安に対して、安全弁の役目を期待される「政府系住宅金融会社」が、逆に、不安の増幅機関になってしまっている。

これが、新自由主義・市場絶対信仰の実態である。

List    投稿者 leonrosa | 2007-11-22 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨4 Comments » 

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コメント4件

 匿名 | 2008.02.10 0:24

「ついに」とは今まで起こっていなかったことが起きたかのようですが、米国債10年物は2003年6月の水準にも落ちていません。過去の値動きからすると、明らかに買いの市況ですがG7前ということで買い控えているのでしょう。

 leonrosa | 2008.02.10 18:19

匿名さんのコメントについて。
2月6日(10年もの財務省証券)、7日(30年もの財務省証券)の入札で、10年債に注目するのか30年債に注目するかで、見方が分かれるのでしょうね。
日経等では分析されていませんが、以下の特徴があります。
30年債への海外中央銀行等の応札が顕著に少なかった。10年債との利率スプレッドが顕著に拡大した。
つまり、米国財務省への信認が崩れる兆しを読み取れるという事です。
よく訪問するブログ「ぐっちーさん・・・」の記事では、地震警報を発していますね。
http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/bd2f78e0c529f724604f013be4064dca

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カッコいい!興味をそそりますね(^m^)

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