コロナウイルス下のロシア経済 低迷しながらも安定、感染者の急増が不安要因
7月の投稿、プーチン大統領が憲法改正で、2036年まで続投可能にしたのは何故?では、プーチン大統領がコロナウイルスによる世界的混乱を予測して、大統領の続投を決めたのではないかと予測しました。その後のロシアの状況を調べてみました。
まず、マスコミの報道を見ると、今後SDG‘sが進むにつれてロシアの最大輸出品である石油や天然ガスの需要が減るとか、毒殺未遂事件の結果、ドイツが天然ガスパイプラインの事業から手を引く可能性があるとか、将来の低迷を予測する記事しか見つかりませんでした。
一方でロシア自身の発表では、ロシア経済の落ち込みが欧米に比べて限定的だとしています。マスコミは概ねロシアに対して否定的であり、そのマスコミが将来の不安しか報道できないとすると、ロシアの発表はほぼ正確なように思われます。
また、政治的な安定については、プーチン大統領の支持率が6割まで低下したとか、地方選挙で与党が圧勝したがこれは政治的圧力によるものだという報道もありますが、これもマスコミの否定的論調を差し引けば、政治的にもかなり安定していると言えそうです。
ただし、不安要因が一つだけあり、それはコロナウイルスの感染が9月末から急速に拡大してきていること。9月30日にはプーチン大統領が直接会談する全ての人に対し、事前に2週間の隔離措置を義務づけることが報道されており、プーチン大統領もかなり危機感をもっていると思われます。
トランプ大統領のコロナ感染報道も少し遅れてほぼ同時期に発生しており、今後、コロナウイルス感染の第二波は急激に拡大し、世界的な混乱につながっていく可能性をプーチン大統領は感じているのかもしれません。
■感染第2波の背景に「個人主義」、プーチン氏が批判2020年8月28日
プーチン氏は欧州での感染拡大の「第2波」の兆しについて問われ、「個人主義」による規律の欠如が引き起こしたとの持論を展開した。ロシアは他国に比べてコロナによる死亡率が低く、適切な対策が講じられていると自賛した。
プーチン氏はロシアが11日に世界で初めて承認したワクチンに言及した。自らの娘が接種したことにも改めて触れ、「元気にしている」と効果を強調した。
新型コロナを受けたロシア経済の落ち込みが欧米に比べて限定的だとの見解も示した。「政府の決定の結果だ」と自信をみせ、マクロ経済は安定していると主張した。
ロシアの新型コロナ感染者数は9月3日現在、約101万人で世界第4位。死者は約1万8千人。新型コロナ感染抑止のためのロックダウンにより、ロシアの内需は激減。主要輸出品目である原油の需要減に伴う油価下落によって政府歳入も激減した。ロシア政府は20年度の連邦予算編成に当たり、ウラル原油価格を1バレル42.4ドルと想定したが、油価下落に伴う歳入減によって、手厚い経済対策を打ち出せない状況にある。
プーチン大統領は7月21日、新国家目標「2030年までのロシア発展のための国家目標」を発表し、人口・医療政策、社会政策、生活環境改善、経済成長、デジタルトランスフォーメーション(DX)の5分野を今後の重要政策に。
コロナ禍で多くの産業が打撃を受けるなか、農業生産は一貫して拡大しており、経済成長をけん引している。「巣ごもり消費」の代表例であるオンラインスーパーの宅配、配食、ミールキットなどの食品サービス分野は好調。
新型コロナ感染対策での国際協調が必要な状況下でも、欧米諸国との関係改善の兆しは見られない。ロシアは、安全保障やエネルギー分野で中国に接近する動きを強めつつ、地域紛争への介入や原油協調減産、ロシア製ワクチンを梃子に中東、アジア、中南米など非欧米諸国との協力関係を強化している。
ロシアで13日、州や共和国など連邦構成体(自治体)の首長や地方議員を選ぶ統一地方選が行われた。首長選は18の連邦構成体で行われ、いずれもプーチン政権の与党「統一ロシア」系の候補が優勢だ。
ただ、複数の露メディアは、一部地域で有力な野党系候補が政権側に立候補登録を却下されたり、政権側から提案された将来的な上院議員ポストの見返りに立候補を取りやめたりしたと報じた。プーチン政権は現在、支持率が過去最低の約6割まで低下。18年の統一選では複数の首長選で与党側候補が敗れたほか、昨年のモスクワ市議会選でも与党側議席が大幅に減少していた。
■ロシアを襲うコロナ禍、毒殺未遂、SDGsの三重苦2020年9月17日
ロシア経済は、コロナ禍、反体制指導者ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件、環境問題への対応を重視するSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の三重苦により大きな打撃を受けている。
ロシアは、新型コロナウィルス感染症拡大により3月末から厳しい都市封鎖を実施した。ロシアの連邦統計局が8月に出した2020年4-6月のロシアの国内総生産(GDP)は、前年比8.5%減少となり、11年ぶりの最低水準になった。
次に、反体制指導者ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件が、ロシア経済の生命線ともいえる天然ガス輸出のためのパイプライン敷設に暗い影を落としていることも懸念材料だ。ドイツとロシアとは天然ガスの新規パイプライン「ノルドストリーム2」の建設には合意をして建設が進められてきた。しかし、ドイツはナワリヌイ氏事件を受けて同建設の見直しを示唆している。同氏が搬送されたのが、パイプライン敷設において大きな影響があるドイツであったことがロシア経済にとって不幸であったといえるだろう。
パイプライン敷設は何らかの形で政治的に妥協される可能性がある。しかし、この化石燃料である石油・天然ガスに依存した経済は構造的な問題を抱えている。SDGsにおいては、エネルギーについて「再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。」(目標7.2)と定められている。いうまでもないが、化石燃料である石油・天然ガスは再生可能エネルギーではない。一度使ってしまっては、再生できないからだ。
世界の投資家は、SDGsへの取り組みが遅れている企業からは資本退避(Divestment)をしている。投資家の圧力もあり、世界経済は再生可能エネルギーに大きく舵を切っている。例えば、UAE(アラブ首長国連邦)は世界最大級の太陽光発電を稼働させている。
エネルギーのよる収益で国民経済を浮上させてきたプーチン大統領にとって、再生可能エネルギーへの世界的転換は真綿で首を絞められるようなものではないか。いつになるかはわからない。しかし、プーチン後を見据えた動きもフォローしていくべきであろう。プーチン政権の終焉は意外と早いかもしれない。
■プーチン大統領 国連総会の演説で国際社会に一連の提案2020年9月23日
プーチン大統領はコロナウイルスのワクチンは万人に手の届くものでなければならず、国連組織のメンバーにはロシア開発の「スプートニクⅤ」は無償で保障することを提案した。このほかプーチン大統領はパンデミックという状況では貿易戦争を排し、制裁を受けない「グリーンコリダー」を食糧に対しても設けることを提案した。
ロシア政府は25日、新型コロナウイルスの1日の新規感染者数が7212人だったと発表した。新規感染者数が7千人を超えたのは6月25日以来。
■プーチン氏、会談者は事前に隔離 感染防止で2週間義務付け2020年10月1日
プーチン・ロシア大統領の新型コロナウイルス感染を防ぐため、大統領府がプーチン氏と直接会談する全ての人に対し、事前に2週間の隔離措置を義務付けていると独立系ニュースサイト「プロエクト」が9月30日、報じた。ペスコフ大統領報道官も同日、事前隔離の事実を認めた。
■ロシアの新規感染者、約1万人 新型コロナ2020年10月3日
ロシアでは過去24時間に新型コロナウイルスの感染者が新たに9859人確認された。ロシアでは9月末から新規感染者数が増加している。新型コロナ対策本部が発表した。
■コロナで需要減、毒殺で欧米と対立 露の天然ガス戦略暗雲2020年10月5日
ロシアの外貨獲得を担ってきた天然ガス事業が困難に直面している。新型コロナウイルスの影響でガス需要が急減する中、露反体制派指導者の毒殺未遂事件で建設中のロシア-欧州間の新パイプラインは稼働に暗雲が垂れ込めた。ロシアが有望な輸出先とみなすトルコでもガス田が発見された。主要輸出先の欧州でも今後のロシアのシェア低下が予測され、ロシアは販路多角化を急いでいる。
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