2019-06-07

反グローバリズムの潮流(ドイツのメルケル政権は崩壊の危機、環境政党との連立を模索?)

 

20190531at19S_tEU総選挙でメルケル首相率いるCDU・CSUは第1党を維持したものの得票率を大幅に減らし、第2党だったSPDは歴史的な大敗で3位に転落、SPDの党首が辞任し連立政権の崩壊もうわさされています。一方でドイツではEU懐疑派の伸びよりも、環境政党の伸びが大きいと言う結果になりました。今、ドイツで何が起きているのでしょうか、何故、今環境政党が伸びているのでしょうか。

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EUそしてドイツで従来の政党が大敗を喫した原因は、グローバリズムの限界が露呈した事でしょう。グローバリズムとは、簡単に言うと自由貿易を推進すれば市場は拡大し景気が良くなると言う理屈です。EUはヨーロッパと言う限定された範囲ではありますが、自由貿易を実現しました。しかし、その結果はどうでしょうか。

残念ながらEU各国の経済成長は低迷しています。これまで最優等生と言われたドイツも2019年の成長率予測は0.8%で日本やアメリカを下回る結果となっています。当然、EU全体が経済の不振に陥っています。自由貿易を推進しても経済は拡大しませんでした。

市場が拡大を停止したのは、先進国を中心に物的豊かさが実現し消費が伸びなくなったことが根本原因です。自由貿易にしてもこの根本原因は変わりません。そして、自由貿易にした結果EU圏内で弱肉強食の競争が始まります。最初は強い国に富みが集中し一部は経済的に豊かになりますが、最終的には強い国の中でも一部に富が集中し、多くの人は相対的に貧しくなります。今は、ドイツまで格差の拡大が行きついた最終局面なのでしょう。

移民問題も人種差別が根本原因ではなく、国民の経済的な格差が拡大し相対的貧困が広まった結果、移民に使う税金があれば自分たちに使ってくれと言う事態に陥っていると考えるべきです。最早、EUの存在意義を市場の拡大と言う理由では説明できなくなったのです。

そこで新たに登場してきたEU存続の理屈が環境政策だと思われます。グローバリズムを推奨してきた金貸し勢力は、弱肉強食の勝者ですから、社会全体で相対的貧困層が増えてもグローバリズムを継続したい。環境政策を理由にすればEUを延命することが出来ます。

しかし、環境破壊の根源は市場拡大であり、環境を追求すれば本来は市場縮小に向かう事になります。地産地消が最も環境にやさしいはずなのです。環境政策を理由にしたEUの延命も、そんなに長く続くとは思えません。

 

■大丈夫か? ドイツ経済2019年4月11日

今のヨーロッパを覆う景気減速を象徴するのが、ドイツです。EU経済を引っ張る“優等生”のイメージがあるかもしれませんが、今週公表された、2019年の成長率見通し(IMF)を見てください。ドイツの19年の成長率はわずか0.8%。日本やアメリカよりも低く、しかも1月時点の予想よりも大きく下方修正されています。

ドイツのシュツットガルト近郊で、エンジン部品などを製造しているメーカーでは、受注が減っているということです。受注の落ち込みの大きな要因は、中国経済の減速と、それに追い打ちをかけたアメリカと中国の貿易摩擦です。ドイツのメルケル首相も19年3月、中国の習近平国家主席らと会談した際、米中の貿易摩擦の長期化に強い懸念を示しました。

さらにドイツの自動車業界にとっては、4年前に発覚した、ディーゼル車の排ガスを巡る不正問題が尾を引いています。不正問題の後、EUでは、新しい排ガスの試験方法を18年9月に本格導入しましたが、それに対応できない車種も出て、新車販売が落ち込みました。

それに加え、イギリスのEU離脱問題もあります。仮に「『合意なき離脱』となれば、とどめの一撃になって、景気腰折れの懸念もある」と指摘しています。

■ドイツ、難民政策に過去最高の230億ユーロ支出=財務省資料2019年5月21日

財務省が準備した同資料によると、支出は前年の208億ユーロを11%近く上回った。メルケル首相はイスラム諸国を中心に大量の難民を受け入れる2015年の決定について、人道的に必要だと繰り返し主張しているが、難民問題の根本的な原因の解決に取り組むことで難民が再び大量流入する事態を防ぐ方針も示している。

欧州連合(EU)域外に難民をとどめて母国の生活水準を改善させる政策への昨年の支出額は総額79億ユーロで、前年比16%増加した。シリアやイラク、アフガニスタンなどからの難民の住宅供給や社会統合を担う16州への連邦政府の支出額は75億ドルで、前年比14%増加した。

■欧州議会選でドイツ連立2与党が敗北「期待に応えられず」2019年5月27日

欧州連合(EU)の欧州議会選でドイツのメルケル首相の保守系与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第1党を維持したものの得票率を大幅に減らしたことを受け、CDUのクランプカレンバウアー党首は26日、「政府の取り組みが市民の期待に応えられなかった。国民政党として求められる結果には届かなかった」と述べた。

一方、欧州議会選ではEU懐疑派の右派「ドイツのための選択肢」(AfD)は約4ポイント増の約11%。環境政党の90年連合・緑の党は約10ポイント増の約21%で2位に躍り出た。

■ドイツ連立与党SPD、欧州議会選とブレーメン州議会選で敗北2019年5月27日

ドイツ連立与党の一角である社会民主党(SPD)が26日、欧州議会選で議席を大幅に減らした上、牙城ブレーメン州の議会選でも第2党に後退した。結果を受け、ナーレス党首に対して辞任と年末での連立解消を求める動きが強まるとみられるが、同党首はメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と政権にとどまる意向を表明した。

SPDは昨年、メルケル首相率いる大連立に消極的ながら参加した経緯があり、党内には大連立に反発する向きが多い。SPDは年末までに連立を見直す予定で、解消に向けた動きが強まる可能性がある。

■極右を抑えたのは若者だ。親EU世代で緑の党が躍進。ドイツでYouTuber大活躍:欧州議会選挙の総評2019年5月31日

フランスで、ドイツで、フィンランドで。緑の党系が躍進して、上位の議席数を獲得した。そして、彼らを支持したのは、多くが若者だった。ドイツでは、選挙前には極右の「ドイツのための選択肢」が票を伸ばすと言われていたが、蓋をあけてみたらそれほどでもなかった。かわりに伸びたのは、「同盟90/緑の党」。全体では20.7%獲得して、2位につけた。30歳未満では、投票の34%を占めている。

ドイツでは、若者が環境政党に対して魅力を感じるのは、新しくはない。でも今回は、これまで以上に圧倒的だったようだ。若者による緑の党への支持は、新しい能力をもったと言われている。例えば、気候変動問題に対して毎週金曜日に行われるデモ「未来のための金曜日」のイニシアチブがある。

今回ドイツで大スターとなったのが、ユーチューバー(YouTuber)の「Rezo」である。政府が行ってきた気候変動政策は、統計から見て、温室効果ガス排出量削減の目標を達成するのに失敗してきた。また、それは富裕層を支持する決定のためだと言って、与党CDUを攻撃している。

欧州議会の発表によると、若者は「ヨーロッパの建設」に愛着をもっているという数字が出ている。彼らは、欧州連合(EU)があるのが当たり前の世代だ。無いのが当たり前のところに、EUができたりユーロ通貨が導入された世代とは、基本が違うのだ。

敵をつくってまとめるのがネガティブな団結策なら、環境問題を訴えてまとまろうとするのはポジティブな団結策と言えるかもしれない。

極右だ何だと、何だか暗い様相になってきたヨーロッパで、そんな話はもうしたくないし、微妙な問題すぎて語りたくないという気持ちは、すごくわかる(ただ、前述の記事で述べたように、この「環境正義」には、筆者はちょっと不安を覚えている)。

■独首相「無知、偏狭の壁壊せ」=暗にトランプ氏批判2019年5月31日

保護主義や孤立主義を批判し、気候変動をはじめグローバルな問題を多国間で解決する必要性を強調。トランプ米大統領を名指ししていないが、「米国第一主義」を掲げるトランプ氏の姿勢を暗に批判した格好だ。

■メルケル独与党、支持率で首位転落 環境政党に初めて抜かれる2019年6月2日

ドイツ・メディアが1日に伝えた世論調査によると、同国のメルケル首相の保守系、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の政党支持率が26%に減り、首位から転落した。代わって環境政党の90年連合・緑の党の支持率が27%に急増し、結党40年で初めて首位になった。メルケル氏の有力後継候補と目されるCDUのクランプカレンバウアー党首は指導力不足が指摘されている。最近もネット上の言論の自由を制限するともとられる発言をして反発を浴びており、世論調査に影響した可能性がある。

■ドイツ政権崩壊へのカウントダウンが始まった2019年6月5日

ドイツの政治安定が揺らぎ始めている。中道右派のキリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)と中道左派の社会民主党(SPD)の2大政党による大連立政権が再び崩壊の危機に瀕している。選挙戦の敗北を受け、SPDナーレス党首は党首と党議員代表をともに辞任することを表明。同氏の辞任により、連立解消を求める党内の左派勢力が勢いを増すことは避けられない。

メルケル首相は過去に次の連邦議会選挙には首相候補として選挙に出るつもりがないと発言していた。連立解消となった場合、メルケル首相の退任時期が早まる恐れがある。

政権発足の可能性がある組み合わせは、①CDU/CSUと緑の党との連立、②緑の党のプレゼンスが高まった形でのジャマイカ連立、③緑の党、SPD、左翼党による左派連立、の3つといったところだろう。CDU/CSUと緑の党の連立は、地方議会レベルでは前例がある。

List    投稿者 dairinin | 2019-06-07 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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