イギリスのEU離脱、コロナウイルスの混乱で合意は困難、世界は秩序は崩壊に向かっている?
イギリスが1月31日にEUを離脱し、今後、世界秩序はどう変わっていくのか、グローバリズムの解体が前進するか興味深く見守っていましたが、コロナウイルスの感染拡大で、ニュースに取り上げられることも殆どなくなってしまいました。その後、イギリスのEU離脱がどうなっているか調べてみました。
イギリスのEU離脱が実現したときには、合意なき離脱になれば世界経済に大きな悪影響を与えると心配されていました。離脱時は合意が得られ、大混乱は避けられましたが、実は問題を1年先送りしただけで、本当に大変なのはこれからだったのです。イギリスとEUは1年間の移行期間中に、新しい協定を締結しなければ、何の貿易協定もないまま、移行期間を終えることとなり、合意なき離脱と全く同じ状況に置かれます。
移行期間は2020年末ですが、コロナ問題の前から、この期間での合意は難しいと言われていましたが、コロナ問題もあって交渉は全く進展していません。移行期間の延長は1度だけ2年間の延長が可能ですが、それを実行するためには6月中にEUとイギリスで移行期間延長に合意する必要があります。しかし、イギリスは移行期間の延長を断固拒否し、年内の協定締結を目指すとしています。
移行期間延長の合意まで残された期間は1週間ですが、EUもイギリスも歩み寄る様子はありません。もちろん、移行期間が延長できなくても年末までに6か月ありますから、その間に協定が締結できれば混乱は避けられます。ですが、残念ながら今のところ交渉が妥結する気配は見えません。ドイツはEU各国にイギリスのFTAなき離脱に備えるよう要請をはじめました。
コロナウイルスの混乱以降、アメリカでの人種差別大規模デモ、中国とインドの抗争勃発、北朝鮮のビル爆破など、世界中に混乱をもたらす動きが広がっており、世界秩序は崩壊に向かっている危機感が大きく高まってきています。
現在、英国とEUの関係は、「移行期間」として基本的に離脱前と同じ状態が維持されているが、英国政府にとっては居心地の悪い状態でもある。英国は、EUの閣僚理事会や首脳会議に参加せず、欧州議会に議席も持たず、欧州委員会の委員も輩出していない。離脱したものの、主権を制限された状態が続いている。
20年末までの「移行期間」は、7月1日以前に、英国とEUが同意すれば、1回限り2年までの延長が可能だ。主権の奪還を急ぎたいジョンソン首相は、EU離脱が争点となった19年12月の総選挙の段階から、延長拒否の姿勢を明確にしてきた。EU側も、20年末の「将来関係協定なき移行期間終了」という激変回避のために交渉を急ぐつもりだった。
協議の形式の変更も迫られている。本稿執筆時点で、英国も、欧州委員会の本部があるベルギーも、バルニエ主席交渉官の母国フランスも、イタリアやスペインとともに全土都市封鎖(ロックダウン)の最中にある。
20年末までの将来関係協定の妥結は、そもそも野心的な目標だったが、コロナ危機で目標達成の困難さは著しく増した。企業や家計に「カナダ型FTA」への移行準備をする余裕はなく、まして「将来関係協定なき移行期間終了」という激変には耐えられないだろう。英国政府は、新型コロナへの不安の払拭までは、先行きの不確実性を一つでも減らすために、「移行期間」延長に動くべきだろう。
■英・EU交渉、「何も進展ない」6月までに交渉延長判断2020年5月16日
欧州連合(EU)とEUを離脱した英国は15日、今週行われた英・EUの自由貿易協定(FTA)などの将来関係を巡る3回目の交渉が平行線に終わったと公表した。1月末の離脱以降、「公正な競争の確保」や「漁業」など主要な争点で双方はほとんど歩み寄れていない。交渉延長の是非は6月末までに判断することになっており、次回の6月初旬の交渉が山場となりそうだ。
6月末までに英・EUが合意すれば移行期間は最長2年間延長できるが、英は今回の交渉でもこれを強く否定した。FTAを結べないまま移行期間が終われば、経済界には急に通関手続きや関税が発生する「合意なき離脱」と同じ混乱が及ぶ。
■英国、将来関係交渉めぐりEUを痛烈に批判、方針変更迫る2020年5月20日
英国の首相官邸は5月19日、EUとの包括的自由貿易協定(CFTA)、漁業協定など12の協定の草案を公表した。CFTAの協定案は、EUとの交渉開始に先立ち、政府が発表した交渉方針に沿ったもので、EU・カナダ包括的経済貿易協定(CETA)や日EU経済連携協定(EPA)を土台にしている。また漁業協定は、EUとノルウェーの同協定に近い内容となっている。
(1)英国の協定案はEUと第三国の既存の協定を土台にしているにもかかわらず、不均衡で前例のない条項を追加しようとするのは理解しがたく、(2)EUが新たな条項を押し付けようとするだけでなく、既存の自由貿易協定(FTA)や個別協定に盛り込まれている条項(EUがカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、米国と締結している適合性評価の相互認証など)を再現するのを拒んでいるのは驚きだ、とした。また、(3)EU側協定案に含まれる「公正な競争条件(レベルプレイングフィールド)」をめぐる条項は、EUルールへの一方的追随を義務付けるもので、そのような協定に署名する民主国家など存在しないことをEUは理解する必要があると主張し、EUの姿勢を批判している。
■約束ほごなら「合意なし」 EU、英に警告―FTA交渉2020年6月1日
英国とEUの自由貿易協定(FTA)締結交渉で、EUのバルニエ首席交渉官は、英国が離脱時に約束した「公平な競争条件の確保」をほごにするなら「合意はない」と警告した。
ジョンソン英首相は昨秋、FTAに関する事前協議の結果をEUと共同でまとめた「政治宣言」を公表。EUの基準などに依拠する形で「貿易・競争の歪曲(わいきょく)を防止する強固で包括的な枠組み」を構築すると明言した。しかし、その後の総選挙に大勝して国内のEU残留派を駆逐すると、経済面でEUからの独立を重視する方針に転換。「EUのルールには縛られない」と、国際的な約束を白紙に戻した。
英側は「EUこそ譲歩すべきだ」と反発しており、十分な進展がなければ決裂も辞さない構えだ。
■離脱「移行期間」年末終了 FTA交渉加速へ―英EU首脳2020年6月15日
英国のジョンソン首相と、EUのフォンデアライエン欧州委員長、ミシェル大統領らは15日、テレビ会議形式で会談し、3月に始まった英EUの自由貿易協定(FTA)交渉の中間評価を行った。英国の延長拒否決定を踏まえて離脱後の「移行期間」を年末に終えることを確認。年内の妥結、協定批准に向けて7月に交渉を加速させることで一致した。ただ、会議では懸案について具体的な進展は得られず、今後も行き詰まりを打開できるかは不透明だ。
■英国のFTAなき離脱に備えを、ドイツがEU各国に要請=文書2020年6月17日
ドイツ政府は欧州連合(EU)諸国に対し、英国が自由貿易協定(FTA)を結ばずにEUから離脱する事態に備えるよう求めている。独外務省は移行期間が20年末から延長されることはないと確信している。その上で、こうした状況を踏まえEUと各国レベルで「合意なし2.0」への準備作業を始める必要があるとしている。
■英首相、EU離脱後交渉の早期決着求める 仏大統領と対面会談2020年6月19日
ジョンソン英首相は18日、マクロン仏大統領とロンドンで会談し、欧州連合(EU)離脱後の将来関係を巡る交渉を秋まで長引かせるべきではないとして、早期の決着を求めた。
英首相官邸によると、ジョンソン首相は会談で、交渉を秋まで長引かせるのは意味がないとの英国側の立場を強調した。仏関係筋によると、マクロン大統領は英国とEUが合意に至ることを引き続き支持していると伝えた。ジョンソン首相もEU側も合意は可能とする一方、将来関係で合意しないままに今年末に移行期間が終了する可能性を排除していない。
■金融機関はハードブレグジットに備えを=独財務次官2020年6月22日
クキース独財務次官は22日、金融機関は英国の欧州連合(EU)離脱で最悪事態に備える必要があるとの見解を示した。「全ての金融機関はハードブレグジット(英国の強硬離脱)への備えができているか確認する必要がある」と指摘。「われわれは(ハードブレグジットを)望んでおらず、回避できると願っているが、交渉の最新の状況を聞かされたら、誰もが非常に重大なリスクがあり困難な状況に陥る可能性があることを考慮に入れざるを得ない」と語った。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2020/06/7102.html/trackback